2017年2月23日(木)
過去の関連コメント
2017年2月18日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201702/20170218.html
2017年2月19日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201702/20170219.html
【コメント】
2017年2月22日(水)の日本経済新聞の記事を読んで、相続税額の算定方法について自分が少し誤解をしていることに気付きました。
というより、「その考え方だと相続税の申告はどうやって行うんだ?」と思うようなことが記事に書かれていました。
記事は、現行の相続税法の考え方を解説しているだけだとは思います(つまり、私が現行の規定を知らなかったのは確かです)が、
現行の規定は私の理解(法理や原則的な考え方)とは大きく異なっているように思いました。
現行の相続税法上、「基礎控除額」と呼ばれる金額が定められているのですが、その計算式は、
「3000万円+600万円×法定相続人」となっています。
そして、記事の記述を引用すれば、
>財産評価の結果、合計額がこの金額を下回っていれば相続税はかかりません。
という取り扱いになっているようです。
しかし、現行の相続は、制度上は法定相続人は複数であり、また、
結局のところは、「相続において各法定相続人が相続する相続財産額は全て異なる。」ことが実務上の前提となっているわけです。
本来であるならば、相続財産額は法定相続人の間で皆同じであるわけです。
いや、これも本来というよりも、民法の規定上は、法定相続人が被相続人の配偶者か被相続人の子かで相続割合が異なります。
例えば、被相続人にとって、配偶者1人、子2人という場合、相続財産は、配偶者に2分の1、子には2分の1の2分の1(つまり4分の1)、
が規定上「均等」に相続されることになるわけですが、実際には、相続財産には現預金以外の財産も当然に含まれることから、
「金額面において」相続財産を法定相続人間で均等に分割することは、理論上も実務上も始めから不可能であるわけです。
現実には、配偶者は年齢を考えて少しの金額だけでよいと言い、弟は現預金の相続がよいと考え他の財産は遠慮し、
兄は母を世話してきた関係上土地と家屋などを含めてより多くを相続する、といった具合に、家族関係を考慮した上で、
法定相続人が家庭裁判所に相談をしながら、皆が合意の上で相続財産の種類と金額を決定する、ということを行うわけです。
一言で言えば、法定相続人によって相続財産の種類と金額は全て異なる(しかし、家族の情状を考慮すれば心理面では均等と言える)、
というのが実務上の前提と言えるわけです(理論上も、現預金以外の財産を金額面で均等に分割することは不可能)。
しかし、上記「3000万円+600万円×法定相続人」の計算式というのは、明らかに「相続財産金額が皆同じ」であることが前提なのです。
率直に言えば、配偶者と子の法定相続割合すら同じ、ということをこの計算式は前提にしているのです。
率直に言えば、この計算式は民法の規定に反している(少なくとも民法の規定とは整合性が全くない)のです。
一言で言えば、「基礎控除額」の計算・適用は納税者単位でなければならない、ということです。
「基礎控除額」を複数いる法定相続人(複数いる納税者)に割り振る(分割する)ということはできないのです。
「控除される金額」も「納付する相続税額」も、実際には(理論上も実務上も)法定相続人毎に異なるわけです。
相続税を納付するのは、被相続人(つまり死亡者)ではなく、相続人です。
相続税を納付するのが被相続人であるならば、上記の計算式でもある意味整合性があると言えますが。
私には、上記の計算式を見ていると、相続税を納付するのはあたかも被相続人であるかように思えてしまいます。
気になりましたので、「相続税 申告書」で検索してみました。
国税庁のサイトから「相続税の申告書」を紹介します。
相続税の申告書等の様式一覧(平成28年分用)
ttps://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/h28.htm
一覧表の一番上に「第1表」という申告書がありますが、この「第1表」を見るだけでも今私が何を言いたいか分かると思います。
「第1表」を見ますと、確かに「被相続人」の氏名・住所等の欄が強調する目的で太線で囲ってあり、
あたかも「被相続人」が相続の主体であるかのように感じるかもしれません。
「被相続人との続柄」には斜線まで引かれてあり、まさに相続税を納付するのは被相続人本人であるかのように感じます。
しかし、違うのです。
相続税を納付するのは、その右に小さな文字で書かれてある「財産を取得した人」(つまり、相続人)なのです。
相続人が3人いれば、その3人全員がそれぞれこの「相続税の申告書」を提出しなければならないのです。
その相続においては、「相続税の申告書」は計3枚必要だ、ということになるわけです。
上記計算式が意味をなしていないと私が思いますので繰り返しますが、
相続税は、「相続財産を取得した人」が支払う(相続税の申告をする)わけですが、
「相続財産を取得した人」とは相続人のことです。
そして、その相続財産の取得総額(「取得財産の価額」(の合計額))は
相続人毎に異なる(相続人が3人いれば3つの「取得財産の価額」がある)、ということに(現行の種々の規定上は)なるわけです。
なぜ(「相続税の申告書」に記載する)「取得財産の価額」が相続人毎に異なるのかと言えば、
まず第一に、民法の規定(法定相続割合は、配偶者2分の1、子は残りを子の人数で分割したした割合)が原因ですし、
第二に、現預金以外の相続財産はそもそも物理的に分割のしようがないことが原因ですし、
第三に、家族の情状を考慮すれば、「相続財産の種類」を柔軟に組み合わせてそれぞれ相続することにした方が、
家族の事情に即しており相続人も現実には合意しやすい(当人達の納得度がそちらの方が高い)、ということが原因になります。
上記第三の理由に関して付け加えるならば、現預金以外の財産の「相続税評価額」は、相続人当人達にとっては何の意味もないのです。
「金額」という意味において「相続税評価額」に意味があるのは現預金だけであり、
現預金以外の相続財産に関しては、当然に家族の情状が含まれてきますので、金額面において「相続税評価額」に意味はないのです。
今日書きましたことは、2017年2月18日(土)
と2017年2月19日(日)のコメントが非常に関連のあることだと思います。
2017年2月18日(土)
のコメントでは、「相続では『相続財産の種類』が極めて重要だ。」と書いたわけですが、
それはどういうことかと言えば、「相続財産の種類」が異なると金額では判断できない(当人達にとって)、ということなのです。
この文脈においては、「相続財産の種類」が極めて重要だ、という点を改めて強調したいと思います。
現預金以外の相続財産については金額(「相続税評価額」)では全く測れない、という意味において、
現預金以外の相続財産については、税務当局の出る幕はない(つまり、相続税の課税対象外とする)、というふうにも思います。
家族が今現に住んでいる家屋の相続税評価額1000万円と今は空き家となっている家屋の相続税評価額1000万円とは、
たとえ相続税評価額は同じでも、家族(相続人)にとっては全く意味が異なるはずです。
そして、税の納付は相続人1人1人が行う、という意味において、「基礎控除額」は相続人1人1人に適用されなければなりません。
例えば、「基礎控除額」は相続人1人当たり1600万円まで、という考え方を行うのはどうでしょうか。
2017年2月19日(日)のコメントでは、「所得に『合計をする』という考え方はない」、といった観点からコメントを書きました。
「『N分N乗』所得課税」では所得を合計して捉えているわけなのですが、
所得税は所得を稼得した者1人1人が納付する以上、所得を合計することはできないのです(納付金額が他者と合計されるでしょうか)。
相続税も、相続人1人1人が(被相続人はあくまで1人ですが)他の相続人とは言わば独立した形で被相続人の財産を相続するわけです。
相続税の納付も他の相続人とは独立しており、したがって、「基礎控除額」も上記の計算式は決して計算できないのです。
つまり、「基礎控除額」は他の法定相続人とは独立している、ということです。
Law is drawn up by theory.
法は理論によって策定されます。