2017年2月19日(日)



自民有志議員 子多いほど税軽減…「世帯方式」検討へ

 自民党の有志議員が近く、子どもの多い世帯ほど所得税が軽減される「N分N乗(世帯課税)方式」の導入に向けた
勉強会をスタートさせることが分かった。
少子化に歯止めをかける所得税改革と位置付け、党税制調査会での本格的な議論につなげる考えだ。
 所得税は所得が大きいほど税率が高くなる累進課税で、現在は5%から45%までの7段階。現行制度は個人に課税するため、
共働きの場合は夫と妻にそれぞれ課税される。
これに対し、N分N乗方式は課税所得を世帯で合計して家族の人数で割り、税率を掛け合わせて1人当たりの税額を算出。
さらにこの額に家族の人数を掛け合わせ、世帯が払う税額を決める。
 課税所得は家族の人数で割ることで決まるため、子どもが多い世帯ほどより低い税率が適用され、税額が少なくなる仕組みだ。
所得が1000万円で両親と子ども2人の4人世帯の場合、控除を省略して考えれば課税所得は4分の1の250万円で
適用される税率は10%。同じ所得の単身世帯に税率33%が適用されるのと比べ、所得税額は3分の1以下になる。
 N分N乗方式はフランスで1946年に導入され、80年代に拡充された。
同国の2015年の合計特殊出生率は1.96と日本(1.45)を大幅に上回っており、
N分N乗方式が人口減少を食い止めたと評価されている。
一方、もともと所得税額が少ない中低所得世帯への恩恵は限られる。
自民党も07年度税制改正で議論したが、「効果が出るかどうか判断できない」として見送った経緯がある。
 勉強会は西田昌司参院議員が発起人で、民間の税の専門家らもメンバーに加える。細田博之総務会長ら党幹部も出席する予定だ。
党内では「民主党政権の『子ども手当』のようにインパクトのある政策になる」との期待がある。
(毎日新聞2017年2月19日 10時20分(最終更新 2月19日 12時00分))
ttp://mainichi.jp/articles/20170219/k00/00m/010/082000c


「『N分N乗』所得課税のイメージ」

 

Who moved my wife's income?

妻の所得はどこへ消えた?

 



【コメント】
自民党の勉強会で、「N分N乗方式」という所得税の課税方法について議論がなされているようです。
「N分N乗方式」という所得税の課税方法は、元々はフランスで考案・実施されている課税方法であるようです。
「N分N乗方式」という所得税の課税方法は、「世帯課税」と呼ばれることもあるようです。
日本の現行の制度は、「個人」に課税をしますので、共働きの場合は夫と妻にそれぞれ個人の所得として課税されることになります。
記事の記述を引用しますと、「N分N乗方式」とは、次のような課税方法とのことです。

>N分N乗方式は課税所得を世帯で合計して家族の人数で割り、税率を掛け合わせて1人当たりの税額を算出。
>さらにこの額に家族の人数を掛け合わせ、世帯が払う税額を決める。

記事には解説図「『N分N乗』所得課税のイメージ」も掲載されていますので、この課税方法の意味は分かると思います。
ただ、この課税方法の問題点は、「結局、誰がいくら所得税を納付するのかは明らかにならない。」という点だと思います。
この課税方法ですと、確かに「世帯が払う税額」は算出されます。
しかし、「世帯」というのは法律上の「人」ではありません(つまり、「N分N乗方式」では共働きの場合の各納付割合が不明)。
税というのはあくまで法律上の「人」が納付するものです。
「世帯」というのは、主に民法上そして社会通念上定義される概念のものに過ぎません。
基本的には、「世帯」は、(元来的には「戸籍」なのですが)現代社会では「住民票」で定義されると思います。
同じ家に住んでいるから、世帯であり家族なのです。
ただ、マンションの部屋が手狭なので1世帯(1家族)でマンションの複数の部屋(101号室と102号室など)を使用する、という場合や、
大きな一軒家に住んでいる人の家にいわゆる間借りをする(一軒家のある一部屋を借りてそこを住居に生活をする)、という場合や、
そして、中学・高校や大学などの「学生寮」に住んで学生生活を送っている時は、アパートやマンションなどとは異なり、
住居表示上は部屋番号は認識されません(住民票上の住所は「ニコニコ寮」で終わりであり「ニコニコ寮201号室」とはならない)ので、
中学・高校や大学などの部屋番号が表示されない「学生寮」に住んで生活をしている、という場合は、
住民票と世帯・家族とが一対一にはリンクしていない(住民票と家族が関係ない)こともあり得ます。
住民票をアパートに移し、そこで子は親から仕送りを受けて生活をしているという場合、
家族を住民票で定義するのは不可能だと言えるでしょう。
「世帯」や「世帯主」は基本的には住民票から定義されると言ってよいかと思うのですが、
考えてみますと、住民票というのは、そもそも「1人暮らし」や何らかの形の単身での生活を前提にしている、と言えると思います。
なぜなら、この世に「1人暮らし」も間借りも寮生活も一切ないのなら、人が住んでいる場所というのは必然的に戸籍の住所、
ということになるからです。
他の言い方をすれば、住民票というのは、そもそも「一緒に住んでいるわけではない家族」を表現するための公的書類である
にも関わらず、現在の社会制度(税や社会保障)は、主に住民票を通して家族を明らかにしようとしている、と言えるでしょう。
日本でも個人識別番号「マイナンバー」が導入されましたが、これは福祉が充実している北欧などの国にあるかどうか分かりませんが、
主に世帯とリンクしている住民票ではなく、「家族票」と呼ばれる家族関係(法律上の家族の構成員)を明らかにする公的書類が
社会には別途必要なのではないかと思いました(日本の現在の住民票は上記のように矛盾を抱えており中途半端な位置付けにある)。
率直に言えば、戸籍や住民票では、家族のことは明らかにならないのです。
元来的・本来的には、「戸籍」がまさに私が言わんとしている「家族票」なのですが、
現代の社会制度では、進学や就職や結婚を機に、住民票の異動や戸籍の変動が生じますので、
別途家族関係を明らかにする公的書類が必要なのです。
続柄、配偶者控除や扶養控除の取り扱い、そして扶養の義務やまさに相続などなど、それら一連の家族に関する事柄を、
簡単に言えば「あなたの家族は誰か?」を、一意に定義し明らかにする「家族票」と呼ばれる公的証明書が社会には必要だと思いました。