2017年2月18日(土)


2017年2月12日(日)日本経済新聞
「現預金に相続課税」増加 新たに6国税局 「土地」超え首位 15年
(記事)



【コメント】
税務当局に納付すべき相続税額の算定のためには、いくつかの要素を明らかにしなければなりません。
その明らかにすべき要素は主に以下の通りです。

@相続財産
A相続税評価額
B相続税控除額
C相続税率

税務当局に納付すべき相続税額は、上記の4つを明らかにすることで算定されます。
記事では、土地よりも現預金の相続が近年増加している、という趣旨のことが書かれていますが、
それは「相続税評価額」ベースで見た場合の相続金額(相続財産の金額)ということだと思います。
記事には、2010年と2015年の棒グラフが載っていますが、
これは、各相続財産を「相続税評価額」で評価し、合計の「相続税評価額」に占める各相続財産の割合を示したものだと思います。
棒グラフには、土地、現預金、有価証券、家屋という4つの相続財産の種類が記載されていますが、
相続財産の種類毎に相続税評価額の評価方法は異なるわけです。
基本的考え方は、どの種類の相続財産に関しても、相続発生日の時価で相続財産を評価する、という考え方になります。
つまり、相続財産の評価を行うに際し、相続人は被相続人の取得原価を承継する、という考え方は行いません。
このことは、別の言い方をすれば、相続人と被相続人は別の人格である、ということです。
さらに他の言い方をすれば、現代の相続は、相続人と被相続人との間の一定の人間関係を認めつつも、
結局のところは、寄附と贈与に過ぎないものだ、ということを表しているでしょう。
現代の相続は、寄附と贈与が死亡者とその家族とされる者との間で行われるもの過ぎない、と言っても過言ではないと思います。
それで、私が思いましたのは、現行の相続税法では、上記4つの要素のうち、
@相続財産とA相続税評価額は、相続財産の種類毎に分かれるの対し、
B相続税控除額とC相続税率は、相続財産の種類に関わらず一定だ、という取り扱いになっているという点です。
つまり、ある相続人の相続税評価額は様々な方法で算出したにも関わらず、
相続税控除額と相続税率はあたかも相続財産の種類は1種類であるかのような取り扱いになっているわけです。
他の言い方をすると、B相続税控除額とC相続税率は、相続財産の種類毎に分かれていない、ということです。

 



確かに、相続税を納付すべき相続人は、納税という場面では1人の人なのだから(相続における相続人は複数でも納税者は1人)、
その相続人に適用されるB相続税控除額とC相続税率が複数あるというのはおかしい、という考え方もあるとは思います。
例えば、兄は土地と家屋を相続し、弟はその代わりに現預金全部、というような柔軟な相続も今後法制度上容易になると思うのですが、
相続財産の種類によってB相続税控除額とC相続税率が異なるとなりますと、
そのような柔軟な相続を行うことが結果的に当事者(各相続人)にとって実務上不便になることは考えられると思います。
しかし、今日紹介している記事は、まさに「相続財産の種類」が、土地から現預金へと変遷している、という内容であるわけです。
これは、「相続財産の種類」というのは相続において本質的な要素であることを表していると私は思ったのです。
「相続財産の種類」はどれでも同じだ、ということは全くない(むしろ「相続財産の種類」が相続の本質部分の1構成要素)わけです。
土地ではなく現預金で相続するように近年人々が変遷している、ということは、
「相続財産の種類」が各相続人にとって重要だ(どの「相続財産の種類」を相続しても同じだ、ではない)、ということでしょう。
そうであるならば、「相続財産の種類」毎にB相続税控除額とC相続税率が異なることにも一定の合理性があると思ったのです。
土地・家屋は税控除額が大きく税率も低い一方、現預金は税控除額が小さく税率も高い、という相続税の課税方法は考えられるわけです。
現行の相続税法は、「相続財産の種類」を重要性や特性を度外視し悪い意味で一律に取り扱っている、というふうに思いました。

 

 

The fact you inherit land is quite different from the fact that you inherit cash in meaning
when you take your family circumstances into account.

各家庭の事情を考慮に入れれば、土地を相続することと現金を相続することは全く意味が異なるのです。