2017年2月25日(土)



2017年2月20日(月)日本経済新聞
地銀の預金6割 相続時流出 都市部の親族、大手銀口座に移動
(記事)





過去の関連コメント

2017年2月18日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201702/20170218.html

2017年2月19日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201702/20170219.html

2017年2月23日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201702/20170223.html

 


【コメント】
特に2017年2月23日(木) のコメントに一言だけ追記をします。
2017年2月23日(木) のコメントでは、現行の規定における基礎控除額の計算式「3000万円+600万円×法定相続人」について、
「この計算式では実際に行われる相続との理論的整合性が全くない。」、と批判をしました。
国税庁のサイトから「相続税の申告書」の「第1表」まで紹介し、
「これではまるで相続税を納付するのは被相続人(死亡者)本人であるかのようだ。」、と現行の規定を揶揄しました。
理論上の結論として、所得税であろうが相続税であろうが、「基礎控除額」は他の法定相続人とは独立しているものだ、
と書きました。
先に合計の「基礎控除額」が決まっておりその「基礎控除額」を他者と融通し合う、などという考え方はない、と指摘しました。
所得税であろうが相続税であろうが、基本的考え方は「納税者は1人1人が独立している。」という考え方なのです。
それで、理論上の結論は2017年2月23日(木) のコメントで書いた通りなのですが、一方で、
現行の規定における基礎控除額の計算式「3000万円+600万円×法定相続人」について、好意的に解釈することもできるとは思います。
それは、2017年2月23日(木) のコメントにおける揶揄と当然に似通う部分であるわけなのですが、
被相続人(死亡者)から相続財産を見るとそのような考え方はできると思いました。
どういうことかと言うと、「被相続人は『3000万円+600万円×法定相続人』に相当する金額の財産は、
生前から家族への扶養に充てようと考えていた。」という考え方です。
「3000万円+600万円×法定相続人」に相当する金額は、被相続人が自分自身のために所有していた金額ではなく、
家族のためだけに所有していた金額だ(だから非課税だ)、という考え方を行うことはできると言えばできると思います。
家族が多ければ多いほど、法定相続人の数も増加します。
孫は通常法定相続人に該当しませんが、例えばですが、祖父は孫の今後の大学進学のための学費と生活費の仕送りのためだけに、
財産を所有していた(学費と生活費の仕送りも扶養の一形態であると思います)とします。
扶養を目的とした財産の相続に、相続税が課税されるというのはおかしいのではないでしょうか。
もし祖父がその後も生きていれば、孫のため、それらの財産の仕送りを自分自身が行ったことでしょう。
孫はその仕送りを受けることで、大学に通うことができるのです。
扶養が目的であるにも関わらず、祖父が死んだからと言って財産に税を課するというのはおかしな話であるわけです。
相続財産を被相続人の立場から見ると、「3000万円+600万円×法定相続人」という計算式に一定の合理性が出てくると思います。
これは、「扶養を目的とする財産の公正な金額」の算定、といった議論になろうかと思いますが、
現行の規定では、「3000万円+600万円×法定相続人」という金額が、生前被相続人が家族の扶養のために必要だと考えていた金額だ、
という考え方をしている、という見方(一種の条文解釈・規定の背景の解釈)はできると思います。
税制改正により、2015年度から基礎控除額が大幅に切り下げられたようですが、これも1つの解釈としては、
デフレが原因だ、といった考え方はできると思います。
デフレ経済が進行した結果、食費や学費や家の立て替え費用を始めとする様々な生活費全般が以前に比べかからなくなったとします。
そうすると、「家族の扶養のために必要な金額」も減少するわけです。
ですので、それに伴い、基礎控除額も切り下げられる、というわけです(これが合理的な税制改正です)。
以上が、「相続財産を被相続人の立場から見た場合」の考え方です。

 


ただ、いざ相続だ相続税の申告だとなりますと、
相続の主体も相続税の申告の主体も、どちらも被相続人ではなく相続人になるわけです。
これは「被相続人の遺志」はどれくらい有効か、という議論とも関連してくるところだと思います。
「相続財産を被相続人の立場から見た場合」は確かに以上のような考え方になるわけですが、
「相続財産を相続人の立場から見た場合」はまた別かもしれないわけです(相続人は相続財産について別のことを考えている)。
さらに、現行の家族制度ですと、被相続人がよほどの早死(概ね50歳以下)でもない限り、
被相続人と相続人はそもそも一緒には住んでいません(つまり、両者はそもそも生計を一にはしていません)。
被相続人が例えば40歳で死亡したという場合、
被相続人と相続人は家族制度上当然に一緒に暮らしています(つまり、両者は生計を一にしています)。
その場合は、生前被相続人が所有していた財産というのは、家族の扶養のため、という論理立てになるわけです。
ところが、現行の家族制度のように、
一定の年齢以上になると相続人は被相続人とは独立して生計を立てている(ことが制度上の前提だ)、となりますと、
生前被相続人が所有していた財産は家族の扶養のためだ、という論理は成り立たないわけです。
こうなりますと、現行の相続税法における基礎控除という考え方は、現行の家族制度にそぐわない、ということになります。
他の言い方をすると、昨日も同じようなことを書きましたが、
現行の相続税法の規定は現行の民法の規定と理論的に整合していない、ということになります。
現行の民法上そして相続税法上、「人は当然に50歳以下で死亡する」ということは何ら前提とはしていない
(むしろ、種々の制度や規定を踏まえれば、人は少なくとも自分が結婚をするまでは親は生きていることが制度上の前提といえる)
わけですから、逆に相続税に基礎控除の考え方は全く不要(なぜなら、相続財産にそもそも扶養を目的とした部分は一切ないから)、
という考え方に分があることになるわけです。
ですので、現行の家の制度なども踏まえますと、結局のところは、
「相続財産というのは相続人の立場からしか見れない。」という結論になるわけです。
「相続財産を被相続人の立場から見ることはできない。」のです。
現行の相続税の申告方法・「相続税の申告書」は、どこか「相続財産を被相続人の立場から見ている」と言えるのですが、
民法の規定等も踏まえれば「相続財産というのは相続人の立場からしか見れない。」以上、
相続税の申告方法・「相続税の申告書」は、「相続財産を被相続人の立場から見た」申告方法に改めるべきであろうと思います。
仮に、相続税に基礎控除という考え方を用いるならば、相続人毎に「基礎控除額は相続人1人当たり1600万円まで」といった具合に
定める他ないと思います(基礎控除の総額(パイ)を相続人で分け合う、という考え方は根本的に間違いなのです)。
紹介している記事についても一言だけコメントを書きます。
近年、相続に伴い、地方銀行から都市銀行等へ預金が流出している、という内容になりますが、
これも考えてみますと、被相続人(親)と相続人(子)が一緒に住んでいないことが原因であるわけです。
親と子が同じ家に住んでいますと、子は親と同じ銀行に口座を作るものです。
わざわざ「俺は父ちゃんと違ってシティバンクに口座を作る。」などというませた子供はいないわけです。
ところか、世に地方銀行と呼ばれる金融機関があってその営業地域は主にその地方地方のみという場合、
結婚後は子は親とは遠く離れた場所に住んでいるとなりますと、
必然的に親(地方在住)が口座を持っている銀行と子(都市部在住)が口座を持っている銀行とは異なってしまうわけです。
端的に言えば、人は地元の銀行に口座を作るものでしょう(例えば、横浜に住んでいたら横浜銀行に口座を作ったりするでしょう)。
地方に住んでいて、わざわざ都市銀行に口座を開設する人はいないのです。
ですので、相続に伴いこの記事のような預金流出が起こるのは、ある意味民法(現行の家族制度)が原因だと言えるわけです。
親と子が同じ銀行に口座を持っていない(家族制度上持つのは合理的でない)以上、相続に伴う預金流出は必然的結果なのです。
相続と預金流出について、地方銀行と都市銀行を念頭にコメントを書きました(議論の都合上、ゆうちょ銀行は度外視しました)。