2018年12月3日(月)



2018年12月3日(月)日本経済新聞
倒産手続き IT化へ議論 専門家が研究会設立 ウェブ上で債権者集会 費用・時間削減めざす
韓国や中国で先行
(記事)




2018年11月21日(水)日本経済新聞
劣後債の発行4割増 低金利追い風/資本コスト意識 ドンキは1400億円調達
(記事)


 

「会計学辞典 第五版」をスキャンして「清算」や「破産」についてコメントを書いた時のコメント↓。

2018年11月17日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201811/20181117.html

 

「取引の公平性に関する疑義の問題は『受託者責任』で解決を図るしかない。」、という点について書いた時のコメント↓。

2018年11月18日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201811/20181118.html

 

「会計学辞典 第五版」をスキャンして「民事再生」や「会社更生」や「債権者集会」についてコメントを書いた時のコメント↓。

2018年11月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201811/20181119.html

 

 



【コメント】
法務省における正式な審議会とは異なるのですが、会社の倒産手続きを電子化しようという研究会が設立されたとのことです。
安全性や確実性という意味では、電子データによる申し立てではなく書面による申し立てを行うべきでしょうし、
ウェブ会議や電子投票ではなく対面の債権者集会を開催するべきでしょうし、
必要書類の提出も電子データではなく書面による提出であるべきだと思います。
ただ、記事によりますと、韓国や中国では倒産手続きのIT化が進んでいるとのことで、
日本でも今後検討していくべき議題なのだろうと思います。
さて、記事を読んで今日書きたいと思いましたのは、「劣後債権の清算手続きにおける取扱い」と「債権の届出」についてです。
私はこれまで何回も、
「清算手続きにおいては債務の弁済順位は考慮されない。劣後債務も通常の債務と同じように(同じ順位で)弁済される。」
という趣旨のことを書いてきました。
この点については、
「債務の弁済条件については当然清算人が把握をしているのだから、
その弁済条件に応じて(弁済順位を勘案した上で)各債務の弁済を清算人が進めていけばよいのではないか?」
という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
確かにその考え方もあるとは思うのですが、仮に私が清算人であったならばやはり債務の弁済順位は考慮しません。
なぜならば、「債権者は他の債権者の弁済条件を知らない。」からです。
ある債権者の弁済条件は他の債権者の弁済条件とは無関係です(各債権は弁済の条件としては全て独立している)。
債権者は他の債権者の弁済条件を知らないまま、会社と取引を行うのです。
逆から言えば、債権者は他の債権者の弁済条件を知らないまま会社と取引を行うからこそ、
清算手続きにおける債務の弁済条件は皆同じでなければならないのです(つまり、清算時には債権者平等の原則が貫徹される)。
ある債権者が劣後債権者であることなど他の債権者には関係がない(その事実を知ることもできない)のです。
ある債権者が劣後債権者であることすら他の債権者は知らないわけですから、
「その債務の弁済は後のはずではありませんか。」と主張する債権者はいないと考えなければならないと私は思います。
ある債権者の利益は他の債権者の利益とは無関係のはずです。
以上が「清算手続きにおいては債務の弁済順位は考慮されない。」と私が考える理由です。
また、関連する議論として、「清算手続きにおいて、債権者が『債権の届出』を行うというのはそもそもおかしい。」
という指摘があります(倒産した会社が債権者に対し倒産した事実を通知しなければならないはずだ、と)。
昔の商法では、倒産に備え、会社は債権者の一覧表を常に作成しておかなければならなかった、という話を聞いたことがあります。
この点については全くその通りだと私も思うわけですが、私が今日書きたいのはそのことではありません。
私が今日書きたいのは、債権者が閲覧することができる「対外的な債権者名簿」のことなのです。
昔の商法で規定されていた件の債権者の一覧表というのは、「社内の債権者名簿」を意味していたのだと思います。
債権者が閲覧することは制度上想定はされていない「社内の債権者名簿」を常に作成することを昔の商法は会社に要求していた、
ということだと思います(つまり、債務不履行が生じたら即座に債権者に通知をすることが可能なように、がその趣旨だった)。
債権者が会社と取引を行う上で判断の根拠とするために、昔の商法は債権者の一覧表の作成を会社に求めていたわけではないのです。
私個人の私案になりますが、仮に会社制度上、会社清算時において債務の弁済順位を考慮に入れることにするならば、
会社は債権者が閲覧することができる「対外的な債権者名簿」を作成しなければならない、ということになるわけです。
債務の弁済条件を詳細に記した「対外的な債権者名簿」を会社は常に作成しなければならない、という考え方になると私は思います。
債権者が他の債権者の弁済条件を知っていて初めて、清算時における債務の弁済順位というものを観念できる、と私は思います。
昔の商法が作成を要求していた件の「社内の債権者名簿」というのは、実務上は実は始めからあるものだと言っていいと思います。
商業帳簿(元帳)こそが件の「社内の債権者名簿」のことのはずです(おそらく、大企業の倒産を想定しての規定だったのでしょう)。

 

 


The reason why the existence of subordinated debts in general is not taken into consideration in a liquidation procedure
is that there exists no such thing as a "creditor register" in a company in operation.
That is to say, creditors can't recognize the existence of subordinated creditors.
One shareholder can recognize the existence of the other shareholders,
whereas one creditor can't recognize the existence of the other creditors.
A "creditor register" can probably be prepared in a company in possession,
whereas it can practically not be prepared in a company in operation.
For example, if you take the existence of a "cash transaction" into consideration,
a company operates its businesses
on the presupposition that it doesn't prepare a "creditor register" on its commercial transactions.
Each creditor doesn't care about terms of commercial transactions made by the other creditors.
For, if he does, he should make a "cash transction" from the beginning.
If he is a creditor of a "financial transaction," he should not be a creditor from the beginning.
In other words, he shouldn't make a "financial transaction" with a company from the beginning.
Therefore, if the existence of subordinated debts should be taken into consideration in a liquidation procedure,
the Companies Act must prescribe that a company should prepare a "creditor register" on a transction basis everyday.
A "creditor register" enables "order of a settlement of debts" to be conceived in the company system. 
To put it simply, a creditor should be able to refer to a "creditor register"
for detailed terms of the other debts of a company.
With order of a settlement of debts in a liquidation procesure, an "outward creditor register" is required.
Without a "creditor register" in the company system, it means that all creditors are equal.

清算手続きにおいて、劣後債務全般についてその存在が考慮はされない理由は、
営業中の会社には「債権者名簿」のようなものは存在しないからです。
すなわち、債権者は劣後債権者の存在を認めることができない、ということです。
ある株主は他の株主の存在を認めることができますが、ある債権者は他の債権者の存在を認めることができないのです。
「債権者名簿」は、管理下にある会社ではあるいは作成可能かもしれませんが、
営業中の会社では「債権者名簿」を作成することは実務上はできないのです。
例えば、「現金取引」の存在を考慮に入れますと、商取引に際して「債権者名簿」は作成しないということを前提に
会社は事業を営む、ということになります。
各債権者は、他の債権者が行う商取引の条件については気にしないのです。
なぜならば、そのことを気にするのならば、その債権者は始めから「現金取引」を行うはずだからです。
その債権者が「金融取引」の債権者である場合は、その債権者は始めから債権者にならないはずです。
他の言い方をすれば、その債権者は始めから会社と「金融取引」を行わないはずです。
したがって、万が一清算手続きにおいて劣後債務の存在を考慮するならば、
会社は毎日取引の度に「債権者名簿」を作成するよう会社法が規定をしなければならない、ということになります。
「債権者名簿」があれば、「債務の弁済順位」を会社制度上観念することができるのです。
簡単に言えば、債権者は会社の他の債務の詳しい条件を知るために「債権者名簿」を参照できなければならないのです。
清算手続きにおいて債務の弁済順位を付ける場合は、「対外的な債権者名簿」が求められるのです。
会社制度に「債権者名簿」がない場合、それは全ての債権者は平等だということなのです。