2018年10月15日(月)



2018年10月15日(月)日本経済新聞
M&A拡大へ自社株対価 課税繰り延べ可能/手続きに課題 改正産業競争力強化法 後押し
現金以外の手法 海外では一般的 買収後の連携に効果も
(記事)



 

「『産業競争力強化法』は言わば『スーパー特別法(超特別法)』であり現代版『国家総動員法』である。」、
という点について書いた時のコメント↓。

2018年3月3日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180303.html

 

「自社株を対価とする公開買付」についてコメントを書き、さらに、
「『フォームF4』と呼ばれる開示ルールが日本企業に適用されるのは根本的に間違いである。」、
という点について書いた時のコメント↓。

2018年3月4日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201803/20180304.html

 

自社株を報酬として用いたりM&Aの対価として用いることに関する過去のコメント↓

2018年10月12日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201810/20181012.html

 

 


2018年10月15日
松井証券株式会社
「貸株サービス」の開始について
ttps://www.matsui.co.jp/news/2018/detail_1015_01.html


貸株サービス 取引ルール
6.貸株金利の計算方法
ttps://www.matsui.co.jp/service/stock/kashikabu/rule/#cont06

「貸株金利の計算方法」

>貸株金利は銘柄ごとに日々計算を行い、翌月の第1営業日にまとめて入金します。

>貸株金利 日次 受渡ベースの貸出数量 × 当日の評価額 × 銘柄ごとの金利 ÷ 365

 


2018年10月15日
三菱UFJ国際投信株式会社
「投資環境デイリー動画版」を毎営業日朝に配信開始 直近の主要金融市場と本日の注目点を3分程度で解説!
ttps://www.am.mufg.jp/text/release_181015.pdf

「当日の投資判断材料としてご利用いただきたい」

>前営業日の主要金融市場の動きと本日の注目点を3分程度で解説する「投資環境デイリー動画版」を、
>本日より当社ホームページに掲載し、皆さまにいつでもどこでもご活用いただける環境を整えたことをお知らせいたします。

>東京証券取引所が開く毎営業日朝9時を目安に、前営業日の国内の株式市場のみならず、
>世界主要金融市場の動きと本日の注目点を3分程度にまとめた動画を当社ホームページに掲載いたします。

>当日の投資判断材料としてご利用いただきたいと考えています。

 



【コメント】
松井証券株式会社のプレスリリースには、”日々計算を行い”や”当日の評価額”といった言葉が書かれています。
また、三菱UFJ国際投信株式会社のプレスリリースには、”デイリー”、”毎営業日”、”前営業日”、”本日の”、
”毎営業日朝9時”、”当日の投資判断材料として”、”直近の主要金融市場”、といった言葉が並んでいます。
証券会社や投資信託会社が投資家に提供しているサービスの解説を読んだだけで、
株価というのは毎日変わる(さらに言えば、出来高が大きな銘柄は分単位で変わる)ということが分かります。
今日私が議論をしたい「自社株式を対価としたM&A」という論点では、
プレスリリース中の”当日の評価額”という文言がその問題点の本質を一言で表現しているように私は思いました。
会社が自社株式をM&Aの対価として用いるというのは、「自社株式の換金性の高さ」に着目しているということです。
すなわち、実務上は、自社株式の換金性が高いからこそ自社株式をM&Aの対価として用いることができると言えるのです。
自社株式をM&Aの対価として用いる場合は、自社株式の"expire"(満了)ではなく、
自社株式の"exchange"(交換)を実務上は念頭に置いている、というようなことが言えると思います。
極端な話をすれば、非上場企業が自社株式を対価として上場企業に対してM&Aを実施するというのは、
上場企業株主からすると証券投資の前提でもある株式の換金性が完全に失われてしまうことから、
証券制度上は認められないことである、と言わねばならないと思います。
現代の証券制度では、会社の"expire"(満了)を前提に証券投資をしている投資家は1人もいないのです。
自社株式を対価としたM&Aは、実務上は、対価となる株式の換金性が前提となるのです。
それならば、それこそ上場株式がM&Aの対価であれば問題はないのではないかという話になるわけですが、
すると今度は、「株式の評価額が毎日変わる。」という問題に直面するわけです。
現代の証券制度では、投資家は株式の"exchange"(交換)を前提に証券投資をしている以上、
投資家としてはM&Aの対価として受け取る株式の価額が証券投資の上では最も気になるわけですが、
その株式の価額が日々変動している、という状況に否応なしに直面するわけです。
M&Aに同意をするか否かの判断が、厳密な等価交換になっているか否かという点から言えば、非常に難しい部分があるわけです。
現実には、比較的安定した銘柄だから同意するであったり今後の値上がりの見込みなどを考慮して同意をする、
といった漠然とした投資判断が行われるわけなのですが、ある銘柄の株価と別の銘柄の株価とを比較することは、
どちらの株価も日々変動する以上、実際にはできないのです。
また、たとえ非上場株式であっても、株式の評価額は算定者毎に異なります(株式に絶対的な・客観的な評価額はない)ので、
非上場株式同士の交換であっても価額の点で厳密な等価交換になっているという保証はどこにもないのです。
「自社株式を対価としたM&A」の最大の問題点は「対価の金額が不明である」(したがって、漠然とした投資判断になりやすい)
という点であり、その根本原因は一言で言えば「株式に価額はない」ということなのです。
株式の数え方(単位、助数詞)は、「一株」であって、「一円」ではないのです。
株式を「円」で表現することは実はできないのです。
なぜならば、債券とは異なり、株式に「元本」("principal")に相当する概念はないからです。
いわゆる株価というのは、「株式の取引成立価格」を表しているだけなのです。
株式の取引をするに際し株式を評価するということはもちろんあります(株式の評価額を「円」で表現することは確かにある)が、
投資家によるその株式の評価額と市場での株価(株式の取引成立価格)とは異なります。
非常に大勢の買い手と売り手が市場に参加している状況では、
多数の投資家による最大公約数のような株式評価額によって株式の取引が成立する、というだけなのです。
その意味では、「自社株式を対価としたM&A」では、株価を対価の評価の基準値とすることは間違いではないのですが、
その株価自体が毎日変動する(対価の金額に客観性がない)という解決不可能な問題点が内在しているのです。

 



それから、紹介している記事についても一言だけ書きたいと思います。
「自社株式を対価としたM&A」において、実務上最大の障害となっていたのは金融商品取引法の規定と整合性のない税制であった
わけなのですが、このたび、産業競争力強化法が改正され一定の要件を満たせば税制でも問題はなくなる、という内容になります。
記事には、「被買収会社の株主に対する課税繰り延べ」が改正法の中で最も影響力が大きいと指摘されており、
この点について次のように書かれています。

>買収企業が自社株を対価にTOBを実施した場合、
>被買収企業の株主は受け取った買収企業株の売却時まで課税を繰り延べることができる。

改正産業競争力強化法の条文はまだ読んでいないので、
条文に「売却時まで課税を繰り延べる」という旨の記述があるのかどうかは分かりません。
しかし、取引を踏まえて課税関係について正確に言えば、「売却時まで課税を繰り延べる」ではなく、
「被買収企業の株主が受け取った買収企業株の取得原価は被買収企業株の取得原価とする」であるべきなのです。
「自社株式を対価としたM&A」では、「買収企業株の取得原価は被買収企業株の取得原価を承継する」という課税関係の整理を
しなければなりません。
「取得原価を承継する」と「課税を繰り延べる」は本質的に異なります。
納税者にとって税を納付するタイミングはどちらの規定であろうと同じ(納税だけを見れば差異はない)かもしれませんが、
納税者にとっては「所有株式が異なる」という点や「納税者が売却したのはどの株式なのか」という点を鑑みれば、
「買収企業株の取得原価は被買収企業株の取得原価を承継する」という規定でなければならないのです。
「課税を繰り延べる」とは、
納税者は目的物を譲渡した(そして現に所得を稼得した)のだが一定の時期まで所得計算や納税を猶予する、
という意味です。
「自社株式を対価としたM&A」では納税者はそもそも被買収企業株を譲渡してはいない、という捉え方をするべきなのです。
「自社株式を対価としたM&A」では、納税者の出資は被買収企業株から買収企業株へと承継されたもの、
というふうに課税関係を整理しなければならないのです。
また、記事には「フォームF4」という米国における情報開示ルールについても書かれています。
「フォームF4」について、記事には次のように書かれています。

>経営統合に際して株式交換を使った場合、たとえ日本企業同士の統合でも米国籍の株主が10%を超えるケースでは、
>「フォームF4」と呼ばれる米国の情報開示ルールが課される。
>米国会計基準や国債会計基準での決算開示が求められる。

以前も指摘したことですが、この「フォームF4」と呼ばれる米国の情報開示ルールは根本的に間違っていると私は思います。
米国人投資家が日本企業の株主になっているということは、その米国人投資家が海を渡って日本にやってきた、という意味です。
日本企業が米国において出資を募ったということ(例えば、米国における米国預託証券の発行)とは本質的に異なるわけです。
この場合は、米国人投資家が日本のルールを守るべきであって、日本企業が米国のルールを守るというのは根本的におかしいのです。
「郷に入りては郷に従え。」("When in Rome, do as the Romans do.")と言いますが、
この場合、「郷」に入ってきたのは米国人投資家なのです。
日本企業が「郷」に入ってきたわけでは決してないのです。
日本にいる日本企業が米国の情報開示ルールに従わなければならないというのは文字通り「お門違い」(out of place)なのです。

 



To put it simply, a share has no value in it.
That is to say, each investor in the market has his own valuation of a share.

簡単に言いますと、株式に価額はないのです。
すなわち、株式の評価額は市場の投資家毎に異なるのです。

 

Tomorrow's is another valuation.

明日はまた別の評価額です。

 

Every day has its own valuation of a share.

株式の評価額は毎日異なるのです。

 

A valuation of a share is daily.
That is to say, a share price in the market fluctuates day after day.

株式の評価額というのはその日限りなのです。
すなわち、市場の株価というのは毎日毎日変動するのです。

 

Share as a consideration.

対価としての株式

 

In this article above, American investors are in Japan and the Japanese company is not in U.S.
Therefore, concerning this distribution of shares above, American investors must obey the Japanese rules.

上記のこの記事では、米国人投資家が日本にいるのであって、日本企業が米国にいるわけではないのです。
したがって、上記の株式の流通に関しては、米国人投資家が日本のルールに従わなければならないのです。