2018年10月12日(金)



2018年10月10日(水)日本経済新聞
自社株 報酬・M&A対価に 4〜9月最多292件 戦略的な活用広がる
(記事)



2018年8月18日(土)日本経済新聞
現物株報酬 外国人にも 日本電産や東エレク 導入相次ぐ 人材獲得競争に対応 個人信託口を活用
株で支給、欧米は一般的
(記事)


2018年7月24日(火)日本経済新聞
自社株報酬 導入600社超 株式給付信託、3年で4倍 6月末時点
(記事)


2018年7月16日(月)日本経済新聞
自社株付与、狙い多様化 社員にやる気、表彰や昇進時 統治指針が後押し 働き方改革動機づけも
内ケ崎茂氏(三菱UFJ信託銀行HR戦略コンサルティング室長) 一体感生み 求心力保つ
橘・フクシマ・咲江氏(人材会社のG&Sグローバルアドバイザーズ社長) 社員の自立 効果も期待
(記事)


2018年7月8日(日)日本経済新聞
自社株報酬 発行価格を「保管」 成長後入社組も利益大 新興勢、AI人材獲得狙う
(記事)

 



【コメント】
計5本の記事を紹介していますが、全て「自社株を用いた報酬」(株式報酬)に関する記事になります。
「自社株を用いた報酬」(株式報酬)には様々な方法があるようです。
信託を活用する方法や現物株をそのまま付与する方法や新株予約権(ストックオプション)を付与する方法などがあるようです。
従来は経営陣(役員)のみを対象とした株式報酬が多かったのですが、最近では従業員を対象とした株式報酬が増えているようです。
従来とは異なり、現在では株式給付信託制度で付与した株式の時価相当額を損金とすることが法人税法上可能となっており、
税制改正も株式報酬を後押ししている状況です(理論的には、株式の付与等は資本取引なのではないかとは思いますが)。
株式報酬制度の問題点はいくつかあるのですが、経済的な観点から言えば、株主の利益を損ねるという問題点があります。
株式というのは、株主の利益(権利や持ち分)を表象しているわけです。
その株式を報酬に用いますと、株主の利益(権利や持ち分)が減少してしまうわけです。
株式時価総額が大きな企業になりますと、株式報酬として用いられる株式数は発行済株式総数の僅か数パーセント未満
しか占めませんので、その悪影響が分かりづらくなっているだけであり、
会社が株式報酬を付与すれば付与するほど、株主の利益(権利や持ち分)は減少します。
株式報酬を付与する場合には、必ず株主総会決議を取るようにすることが実務上求められるでしょう。
さらに言えば、株式の概念や定義にまで遡る議論になるのですが、
「株式というのはそもそも『出資』を表象するものだ。」という株式会社制度における基本概念があるわけです。
経営陣(役員)や従業員は、会社に対し労務は提供したかもしれませんが、会社に対し出資はしていないわけです。
株式というのは、「出資」に関して用いるものであり、何かの対価として用いるものではないのです。
株式というのは、「出資」を表象するものであり、労務か何かを表象するものではないわけです。
定義にまで遡った概念論になりますが、株式を財や役務や労務の対価として用いることは概念的にできないのです。

 


A share is not a consideration of goods nor services nor labor
but a token of the fact that a person pays up his cash into a company as a capital (i.e. as an ivestment).
A share is, as it were, a "Registration Certificate" concerning an investment in a company.
A share is a certificate stating that an investment in a company is settled.
A share is a document certifying the completion of an investment in a company.
A share is never a consideration of anything.

株式というのは、財や役務や労務の対価ではなく、
人が現金を会社に資本金として(すなわち、出資として)払い込んだことの証なのです。
株式というのは言わば、会社に対する出資に関する「登記済証」なのです
株式というのは、会社に対する出資は済んでいる旨明言する証明書なのです。
株式というのは、会社に対する出資が完了していることを証する書面なのです。
株式というのは、何かの対価では決してないのです。

 



2018年9月26日(水)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
株式会社サカイホールディングス
(記事)



2018年9月18日(火)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
サンセイ株式会社
(記事)


2018年5月18日(金)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
コタ株式会社
(記事)

 

2018年9月25日
株式会社サカイホールディングス
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ
ttp://sakai-holdings.co.jp/wp-content/uploads/2018/09/7256d3e6c5d7ef64b39f1f5a8d016974.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2018年9月14日
株式会社サンセイ
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ
ttp://www.sansei-group.co.jp/ir/pdf/press_release/20180914.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)

 


2018年5月17日
コタ株式会社
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1589847

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2018年6月12日
コタ株式会社
自己株券買付状況報告書
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=announcement&sid=43907&code=4923

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2018年6月15日
コタ株式会社
自己株式の公開買付けの結果及び取得終了並びにその他の関係会社の異動に関するお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1601194

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2018年6月15日
コタ株式会社
公開買付報告書
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=announcement&sid=41995&code=4923

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)

 


2018年7月5日
コタ株式会社
自己株券買付状況報告書
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=announcement&sid=43908&code=4923

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2018年8月10日
コタ株式会社
自己株券買付状況報告書
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=announcement&sid=43909&code=4923

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)

 


H30.09.26 15:04
株式会社サカイホールディングス
公開買付届出書  
(EDINET上と同じPDFファイル)

H30.09.18 14:14
サンセイ株式会社
公開買付届出書
(EDINET上と同じPDFファイル)

H30.05.18 11:32
コタ株式会社
公開買付届出書
(EDINET上と同じPDFファイル)

H30.06.15 11:41
コタ株式会社
公開買付報告書
(EDINET上と同じPDFファイル)

H30.09.26
株式会社サカイホールディングス
公開買付開始公告
(EDINET上と同じhtmlファイル)

H30.09.18
サンセイ株式会社
公開買付開始公告
(EDINET上と同じhtmlファイル)

 

 


【コメント】
一番最初に株式報酬に関する計5本の記事を紹介しましたが、2018年10月10日(水)付けの日本経済新聞の記事だけは、
「自己株式」(金庫株、自社株買いで取得した株式)を報酬に用いることについての内容となっています。
株式報酬と聞きますと、何か会社自身が保有している株式(金庫株)を付与するかのようなイメージがあるかもしれませんが、
株式報酬制度で使用される株式は、一般的には会社自身が保有している株式(金庫株)ではなく、新たに発行される株式です。
つまり、会社は、株式報酬として付与する株式を予め保有しているのではなく、
株式報酬を付与する際になって初めて株式を新たに発行する、という付与方法を行います。
その理由は、予め保有している株式を付与しますと、会計上「自己株式処分差損益」が計上されてしまうからです。
報酬として株式を付与する場合は、無償か極めて低廉な価格で株式を付与することになりますので、
株式報酬の付与に伴い通常は「自己株式処分差損」が計上されます。
損益計算書に計上される損失ではありませんが、少なくとも株式報酬のためにわざわざ自社株買いをするのはおかしいと思います。
それから、株式報酬で会社自身が保有している株式(金庫株)を付与することと関連があるのですが、
自己株式の公開買付についての事例を3つ(3社)紹介しています。
自己株式の公開買付を題材にして、証券制度や「『ディスクロージャー』(情報開示)について考えてみたいと思います。
3社とも、「自己株券買付状況報告書(法24条の6第1項に基づくもの)」という法定開示書類を提出しています。
金融商品取引法第24条の6第1項の条文は以下の通りです。

>(自己株券買付状況報告書の提出)
>第二十四条の六 金融商品取引所に上場されている株券、流通状況が金融商品取引所に上場されている株券に準ずるものとして
>政令で定める株券その他政令で定める有価証券(以下この条、第二十七条の二十二の二から第二十七条の二十二の四まで及び
>第百六十七条において「上場株券等」という。)の発行者である会社は、会社法第百五十六条第一項(同法第百六十五条第三項
>の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による株主総会の決議又は取締役会の決議があつた場合には、
>内閣府令で定めるところにより、当該決議があつた株主総会又は取締役会(以下この項において「株主総会等」という。)
>の終結した日の属する月から同法第百五十六条第一項第三号に掲げる期間の満了する日の属する月までの各月
>(以下この項において「報告月」という。)ごとに、当該株主総会等の決議に基づいて各報告月中に行つた自己の株式に係る
>上場株券等の買付けの状況(買付けを行わなかつた場合を含む。)に関する事項その他の公益又は投資者保護のため
>必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書を、
>各報告月の翌月十五日までに、内閣総理大臣に提出しなければならない。

条文を簡単に要約しますと、次のようになります。

「上場株式の発行者は、自己株式の取得のための決議を取った株主総会等が終結した日の属する月から
自己株式の取得の期間が満了する日の属する月までの各月毎に、自己株式の買付けの状況に関する事項その他を記載した報告書を
各月の翌月15日までに内閣総理大臣に提出しなければならない。」

以前、上場企業が行う自己株式の取得は相対取引や市場取引ではなく公開買付によるべきだ、と書きました。
発行者と市場の投資家との間には必然的に情報格差がありますので、「株式の買い手は発行者自身である。」旨明示した上で、
上場企業は自己株式の取得を行う必要があるのです。
相対取引は市場の一般の投資家に株式売却の機会を与えていないという点で問題がありますし、
市場取引は株式の売り手から見ると株式の買い手が誰か分からない(板には買い注文しか表示されない)という点で問題があります。
公開買付のみが「株式の買い手は発行者自身である。」旨明示した上での自己株式の取得ということになります。

 



考えてみますと、この「自己株券買付状況報告書(法24条の6第1項に基づくもの)」という法定開示書類は、
相対取引による自己株式の取得と市場取引による自己株式の取得の2種類の取引を前提とした法定開示書類であるのだと思います。
なぜならば、公開買付による自己株式の取得では、金融商品取引法の規定に基づき、
発行者は始めから自己株式の取得状況を詳細に記載した法定開示書類を提出することになっているからです。
その法定開示書類とは、ご存知「公開買付報告書」です。
公開買付による自己株式の取得における「自己株券買付状況報告書」が「公開買付報告書」に相当するわけです。
公開買付による自己株式の取得においては、発行者は、公開買付者として「公開買付報告書」を提出するわけですが、
その法定開示書類がそのまま発行者として提出する「自己株券買付状況報告書」をも兼ねる形になるわけです。
公開買付による自己株式の取得を行った場合、金融商品取引法上は、発行者は、
「公開買付報告書」と「自己株券買付状況報告書」の両方をそれぞれ所定の時期に提出せねばならないわけですが、
その理由は「自己株券買付状況報告書」は株主総会決議等で決めた会社法上の期間との関連性・整合性に重きを置いているからです。
金融商品取引法上、「上場企業が行う自己株式の取得は公開買付によらなければならない。」、と定めさえすれば、
発行者が提出するべき法定開示書類は必然的に「公開買付報告書」のみとなるのです。
関連する議論になりますが、株式会社サカイホールディングスは、
2018年9月25日に「自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ」というプレスリリースを発表しているわけですが、
同日に以下のような「自己株式取得の終了に関するお知らせ」というプレスリリースを発表しています。


2018年9月25日
株式会社サカイホールディングス
自己株式取得の終了に関するお知らせ
ttp://sakai-holdings.co.jp/wp-content/uploads/2018/09/2bf75da18b358d86aa9f7d98fe4cd51b.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



株式会社サカイホールディングスは、従来は、市場取引により自己株式を取得する旨取締役会決議を取っていたのですが、
このたび、自己株式の取得方法を変更し、自己株式の公開買付により自己株式を取得することにしましたので、
取締役会で従来の自己株式の取得を終了することを決議した、という内容になります。
投資家保護の観点から言えば、公開買付による自己株式の取得ということで、より望ましい取得方法に変更になったと私は思いますが、
先ほども少し書きましたように、株式会社サカイホールディングスは今後とも継続的に
「自己株券買付状況報告書(法24条の6第1項に基づくもの)」という法定開示書類を提出していくわけです。
それで、先ほど書きました議論の流れとはやや逆になってしまう(どちらが先というわけでもありませんが)のですが、
「公開買付報告書」の相対取引版・市場取引版に相当する法定開示書類が
「自己株券買付状況報告書(法24条の6第1項に基づくもの)」という法定開示書類だと思いました。
つまり、相対取引や市場取引では、「公開買付報告書」が提出されませんので、
「自己株券買付状況報告書(法24条の6第1項に基づくもの)」という法定開示書類の提出が義務付けられていると思いました。
いずれにせよ、発行者による自己株式の取得の状況を開示させることが投資家保護に資するとの考えが証券制度上あるわけです。
理論的には、会社法上自己株式の取得が解禁されるとの同時に、金融商品取引法上も「自己株券買付状況報告書」の提出を
発行者に義務付けることが証券制度上求められるのです。
会社法と金融商品取引法は互いに整合性がなければならないのです。