2018年8月12日(日)



昨日は株式移転の問題点について再度考察を行ったわけですが、昨日のコメントにさらにもう一言だけ追記をします。
また、2018年7月3日(火)と2018年8月8日(水)のコメントも適宜参考にしていただければと思います。

 

「投資家が会社の株式の本源的価値を算定するためには会社の少なくとも過去5年分の計算書類が必要なのだから、
例えば投資家保護(証券制度)の観点から言えば、設立時株主は会社の株式を会社設立後5年間は譲渡できない
(会社設立後少なくとも5年間が経過していなければ株式を上場できない等)、という結論になる。」、
という点について指摘をした昨日のコメント↓

2018年8月11日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201808/20180811.html

 

株式移転の問題点に気付かされた時のコメント↓

2018年8月8日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201808/20180808.html

 

「極論すれば、株式移転における共同持株会社では、完全子会社の業務執行者が業務を行う必要がある。
なぜならば、株式移転における共同持株会社は完全子会社株式が元手(また、会社成立の拠り所でもある)だからである。」、
という点について指摘をした時のコメント↓

2018年7月3日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201807/20180703.html

 

昨日は、株式移転においては「株式が株主から切り離される」、という点について、次のように書きました。

>端的に言えば、株式移転において、完全子会社の業務執行者の委任者は一体誰になるのか不明である、と私は思います。
>簡単に言えば、株式移転においては、完全子会社の委託者と受託者とが切り離されてしまうわけです。

また、2018年7月3日(火)のコメントでは、同じ論点に関して、
「極論すれば、株式移転における共同持株会社では、完全子会社の業務執行者が業務を行う必要がある。
なぜならば、株式移転における共同持株会社は完全子会社株式が元手(また、会社成立の拠り所でもある)だからである。」、
という趣旨のことを書きました。

 



株式移転を承認するための株主総会では、完全親会社の業務執行者も新たに選任する(議案に候補者が記載される)わけですが、
では、株式移転後の完全子会社の業務執行者は一体どうなるのか(株式移転後も完全子会社では同じ業務執行者のままでよいのか)、
という問題が生じるわけです(つまり、同時に完全子会社の業務執行者も選任し直さないといけないのではないか、と)。
なぜならば、株式移転前の完全子会社の業務執行者は、完全子会社の旧株主(株式移転前の株主)が選任したからです。
「新たに会社が設立される(しかも、会社の『株主』として)。」というのは、委任関係という点から考えると、
非常に大きな問題を生じさせる(つまり、株式移転に伴い完全子会社から委任者がいなくなるわけです)のだと思います。
この点について考えていましたら、元来の合併が理解のヒントになるなと思いました。
元来の合併では、自動的に「合併後の会社の取締役=存続会社の取締役+消滅会社の取締役」という取り扱いになっていた
(元来の合併では取締役会の構成員も単純合算されていた)、という話を聞いたことを昨日思い出しました。
現行の実務上も、対等合併の精神から、「合併後の会社の取締役=存続会社の取締役+消滅会社の取締役」という陣容にする
ことが多いわけですが、元来の合併では当然に「合併後の会社の取締役=存続会社の取締役+消滅会社の取締役」であったわけです。
この取り扱いですと、会社の委託者と受託者とは合併前後で一切切り離されてはいないわけです。
この取り扱いの対極にあるのが、株式移転における会社の委託者と受託者との関係であろうと思います。
株式移転後の完全親会社の取締役と完全子会社の取締役との間には、理論上は一切関係がないわけです。
実務上は、「株式移転後の完全親会社の取締役=株式移転前の完全子会社甲の取締役+株式移転前の完全子会社乙の取締役」
という陣容にすることもできるわけですが、そうするくらいなら合併をする方が早い(論理的だ)と思うわけです。
「取締役を単純合算するわけなのだから、なぜわざわざ別の2つの会社で事業を営んでいるのだ?」、という疑問が生じるわけです。
元来の合併との対比で考えてみると、今私が言いたいことが分かるのではないでしょうか。
「株式と株主だけを2社で共通化しても本質的には意味がない。」、ということではないかと思います。
株式移転とは、ある2つの会社の株式と株主を共通化・一本化することであるわけです。
株式会社甲株式と株式会社乙株式を株式会社丙を新たに設立することで株式会社丙株式へと一本化し、
株式会社甲の株主総会の構成員と株式会社乙の株主総会の構成員を共通の株式会社丙の株主総会の構成員へと一本化するわけです。
しかし、肝心要の事業自体は、従来通り株式会社甲と株式会社乙とで別々に営む、では、全く意味がないわけです。
事業や業務執行の統合が本質的に重要なのであって、株式や株主の統合には意味はないわけです。
株式の本源的価値は、事業や業務執行で決まるのです。
株式の本源的価値は、株主や株主構成では決まらないのです。
例えば、これはある意味株式移転の最も典型的な事例だと私は思っているのですが、
セブンアンドアイホールディングスの事例では、株式移転を行うことで、イトーヨーカ堂を中心とするセブンアンドアイグループは、
セブンイレブンジャパンの株式時価総額を有効活用するという点では非常に大きな意味があったわけですが、
株式の本源的価値に影響を与える事業や業務執行という点では実は何らの意味もなかった(今も何の意味もないままだ)、
と言わねばならないと思います。
株式時価総額が非常に大きなイトーヨーカ堂グループの会社が誕生した、という意味しかなかったと言っていいわけです。
話を一般化して言えば、株式移転は事業や業務執行には何らの影響も与えないのです(株式移転は株主構成に影響を与えるのみ)。
株式交換に関しても、実はこの問題点と同じ問題点が一定度はあると言えると思います。
ただ、委任関係という点から言いますと、株式移転とは異なり、
株式交換では会社に新しく「株主」を設立するということはしませんので、
昨日も書きましたように、株式交換ではやはり株式が株主から切り離されていないと感じるわけです。
完全子会社の旧株主は、完全子会社株式と同じ株式と見なせる完全親会社株式を受け取る(つまり、出資は承継される)わけです。
株式移転では、株式が株主から切り離される(出資が承継されていない)と私は感じるわけです。
その根本原因は、株式移転では会社が新しく「株主」を設立するからなのです。
端的に言えば、受託者が委任者を設立する、ではあべこべなのです。