2017年12月28日(木)


ここ3日間書きました「工事進行基準」の問題点についての考察の内容を踏まえた上で、一言だけ追記をします。

 

「工事進行基準」の問題点についての考察

2017年12月25日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201712/20171225.html

2017年12月26日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201712/20171226.html

2017年12月27日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201712/20171227.html

 



まず、昨日のコメントに誤植(タイプミス)がありましたので訂正をします。
私は昨日のコメントの中で、物権とは異なり、債権債務関係とは「人と人との関係」(人と人との約束事)という意味である、
と書いた後、次のように書きました。

>会計上も、全ての勘定科目は、"enternally"に (外部から)"generate"(発生)したものでなければならないわけです。

文中の"enternally"は"externally"の間違いです。
正しくは次のようになります。

会計上も、全ての勘定科目は、"externally"に (外部から)"generate"(発生)したものでなければならないわけです。

「externally」とは「対外的に」という意味であり、文脈に沿って意訳すれば、「社外との関係の中で」という意味です。
これはただの誤植(タイプミス)だったのですが、"externally"と似た単語が他にもありますので、念のため訂正をしました。
"external"に最も文字(アルファベット)の配列が似ているのは"eternal"(永遠の、果てしのない)という単語かと思います。
辞書に載っている用例を書きますと、「eternal chatter」で「とめどもないおしゃべり」という意味になります。
「the eternal」で「永遠なもの」、「the Eternal」で「神」、という意味になります。
"eternal"の語源は、ラテン語で「長い年月にわたる」という意味とのことです。
辞書には、他にも、「the Eternal City」で「永遠の都 《Rome のこと》」と載っていますし、
また、これは私には全く無縁の言葉になりますが、「an eternal triangle」で「(男女の)三角関係」と載っています。
蛇足ですが、この社会が一夫一妻制でなければ、
「三角関係」という概念も(そして「愛」や「恋」という概念も)ないのだろうな、と思います。

 

All roads starting from monogamy lead to all of the troubles in this society.

一夫一妻制から始まる全ての道は、この社会の全てのトラブルに通じる。

 

All of the troubles in this society derive from monogamy.

この社会の全てのトラブルは、一夫一妻制から生じているのです。

 

I am a realist to the core.

私は骨の髄まで現実主義者です。

 


話が脱線しましたが、基の議論に戻ります。
物権との相違点を鑑みますと、「obligations」(債権債務関係)とは、昨日書きました論点に沿って意訳しますと、
「human relations」(人間関係)と訳してもよいと私は思います。
"obligation"の基本的意味は、「義務」や「債務」であるわけですが、
結局のところ、人が自分1人だけで("by himself"(ひとりでに))義務を負っている、ということはあり得ないわけです。
「義務」や「債務」というのは、人に対して("to the other party"(相手方に))負っているものなのです。
端的に言えば、物権は人間関係ではありませんが、債権債務関係は人間関係なのです。
ですので、確かに、"obligation"の基本的意味は「義務」や「債務」であるわけですが、
自分が相手方に対して何らかの「義務」を負っている時は、
相手方もまた自分に対して何らかの「義務」を負っているわけですので、
人間関係全体で見れば、"obligation"には「権利」や「債権」の意味合いも自然と含まれているわけです。
"obligor"は債務者(債務を果たすべき者)という意味ですが、
"obligor"の相手方である"obligee"(債権者)もまた、その"obligor"に対し別の種類の義務を負っているわけです。
簡単に言えば、"obligor"(債務者)と"obligee"(債権者)は相互に義務を負っているわけです。
その意味において、取引においては、当事者の両方が「債務者」であり、
両債務者は自分が負っている義務を「同時に」履行しなければならないのです。
この考え方のことを、民法では、「同時履行の抗弁権」と言います。
ただ、商取引の場面では、一方が先に目的物の引渡しを行い、他方は目的物の引き渡しを受けた後に対価を支払う、
という取引を行う慣習が一般にあります。
会計上は、そのような取引のことを「掛取引」と言います。
「掛取引」を行う場合は、債務の同時履行とはなりません。
一方が先に相手方に対し債務を履行し、その後、他方が相手方に対し債務を履行する、という流れになります。
「掛取引」を行う場合は、目的物の引渡しを受けるまで、目的物の引渡しを受ける側に債務は発生しない、と考えるのです。
法律上は、「目的物の引渡しを受けた後、×月×日に代金を支払う。」という約束を相手方としているという意味において、
目的物の引渡しを受ける側も債務者だ、と言っていいわけです(法律の文脈ではやはり両当事者が債務者)が、
会計上は、目的物の引渡しを受けるまでは、目的物の引渡しを受ける側は債務者ではない、と考えるのです。
会計上は、目的物の引渡しを受けて初めて、目的物の引渡しを受ける側は債務者になる、と考えるのです。
他の言い方をすると、目的物の引渡しを受けて初めて、目的物の引渡しを受ける側に金銭債務が生じるのです。
原則的考え方である「同時履行の抗弁権」の考え方を応用して考えてみますと、掛取引においては、買い手の立場から言えば、
「相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の発生を拒むことができる。」、という言い方ができると思います。
相手方の立場から言えば、「自分がその債務の履行を提供するまでは、自己の債権の発生を相手方から拒まれてしまう。」、
という言い方ができると思います。
簡単に言えば、掛取引においては、相手方(売り手)は、債務の履行を提供するまでは、債権者になれないのです。
以上の考え方を「工事進行基準」に適用してみましょう。
工事契約において、施工者は、目的物を引き渡すまでは、債権者になれないのです。
施工者は、発注者に目的物を引き渡して初めて、債権者になれる(施工者に金銭債権が発生する)のです。
そして、現代会計の基礎概念の1つである実現主義会計では、「確定債権の発生」が収益認識の基本要素となっています。
したがって、「工事進行基準」に関して実現主義会計の観点から言えば、
「完成工事未収入金」勘定は何ら確定債権(金銭債権)ではなく、そして、「完成工事高」勘定は何ら収益を表してはいない、
と言わざるを得ないのです。