2017年12月27日(水)



2017年12月27日(水)日本経済新聞
川重が今期下方修正 資源開発船の建造中止 純利益350億円
(記事)




2017年6月28日
川崎重工業株式会社
第194期(平成29年3月期)有価証券報告書
ttps://www.khi.co.jp/ir/pdf/y_194.pdf

(ウェブ上と同じPDFファイル)



造船業専業(かつ上場企業)で言えば、業界1位は三井造船株式会社のようです。

2017年6月28日
三井造船株式会社
第114期 有価証券報告書 (平成28年4月1日から平成29年3月31日まで)
ttp://www.mes.co.jp/investor/reports/pdf/h29securities.pdf

(ウェブ上と同じPDFファイル)



2017年12月26日
三井造船株式会社
三井造船100年史掲載
ttp://www.mes.co.jp/company/catalog.html

 

「工事進行基準」の問題点についての考察

2017年12月25日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201712/20171225.html

2017年12月26日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201712/20171226.html

 


【コメント】
一昨日2017年12月25日(月)と昨日2017年12月26日(火)のコメントの内容を踏まえた上で、一言だけ追記をします。
今日紹介している本日2017年12月27日(水)付けの日本経済新聞の記事は、
昨日紹介した、川崎重工業株式会社が発表した「オフショア作業船の造船契約の合意解除に伴う特別損失の計上について」
というプレスリリースと同じ内容の記事になります。
川崎重工業株式会社は、造船業を手掛けているのですが、造船は起工から竣工まで非常に長い時間がかかりますので、
造船業で行う会計処理は建設業における工事に関する会計処理と同じ(収益認識等に関する基本的考え方は同じ)になります。
財務諸表で用いる勘定科目名だけが異なる、と言っていいかと思います。
このこと確認するために、川崎重工業株式会社の有価証券報告書を見てみたのですが、
川崎重工業株式会社の財務諸表には建設業会計特有の勘定科目は用いられていないようです。
また、造船業専業(かつ上場企業)で言えば、業界1位は三井造船株式会社のようなのですが、
有価証券報告書を見ても、三井造船株式会社の財務諸表には建設業会計特有の勘定科目は用いられていないようです。
開示されている実際の財務諸表により各勘定科目名を確認したかったのですが、
両社の有価証券報告書を見る限り、用いられている勘定科目は全て、建設業ではない一般の会社のそれでした。
しかし、三井造船株式会社の有価証券報告書には、例えば”大型プロジェクトの進行基準工事の売上計上”
といった文言がありますし(15/140ページ)、また、「重要な収益及び費用の計上基準」としては、
「当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事」については、
「工事進行基準(工事の進捗率の見積りは主として原価比例法)」を適用している、との記載もあります(70/140ページ)。
造船業に関しては、両社はやはり「工事進行基準」を適用している、と考えてよいと思います。
それで、昨日は、「工事進行基準」の問題点として、「完成工事未収入金」勘定について書いたわけです。
一言で言えば、「工事進行基準」における「完成工事未収入金」勘定は、工事契約にない対価の金額を計上していることから、
「自己創設債権」(Internally generated receivables)である、と昨日は書きました。
「工事進行基準」における「完成工事未収入金」勘定が回収(決済)されることはないのです。
他の言い方をすれば、「工事進行基準」における「完成工事未収入金」勘定は、実は確定債権(金銭債権)ではないのです。
確定債権とは、相手方が支払う約束をしている債権(まだ支払期日が到来していないだけの債権)のことです。
「工事進行基準」における「完成工事未収入金」勘定は、相手方にまだ代金を支払う義務が発生していない状況下で、
会社が自社だけで完成工事高に相当する債権が生じた、と言っているだけの勘定科目なのです。
収益を認識するためには、相手方に代金を支払う義務が発生していることが条件になります。
このことは、現代会計における収益認識の基礎概念だと思います。
相手方に代金を支払う義務が発生しているからこそ、自社には代金を受け取る権利が発生するわけです。
自社1人だけで("internally")債権が発生することなどあり得ないことです。
物権とは異なり、債権債務関係とは「人と人との関係」(人と人との約束事)という意味です。
会計上も、全ての勘定科目は、"enternally"に (外部から)"generate"(発生)したものでなければならないわけです。
ですので、「工事進行基準」という会計処理方法は、金額や期間に関する「見積りの精度」が問題なのではなく、
工事契約や法律上の権利・義務と「貸借対照表に計上・表示される勘定科目」との不整合が本質的に問題となるのです。
たとえ工事についての金額や期間に関する「見積りの精度」が完璧だ(100%正確に見積もることができる)としても、
「工事進行基準」に基づく会計処理は、相手方における債務の発生状況を鑑みれば、間違いだと言わざるを得ないのです。
自社が債権を計上したということは、相手方は債務を計上した、ということです(当事者の債権と債務は「同時に」計上される)。
相手方は、工事契約に基づく目的物の引渡しをまだ受けていない(工事契約に基づく義務をまだ履行してもらっていない)以上、
相手方は代金を支払う義務をまだ負っていない(会計上、相手方は確定債務をまだ計上していない)、
という点が「債権の確定」(自社の「債権の確定」のためには相手方の「債務の確定」が条件となる)では重要なのです。