2017年12月23日(土)
2017年10月11日(水)日本経済新聞
ファンド攻勢、株底上げ 個人の塩漬け株に動き
(記事)
「物言う株主(アクティビスト)とMBO(マネジメント・バイアウト)の関係」についての昨日のコメント↓
2017年12月22日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201712/20171222.html
欧米の競争法(公正取引に関する法令)に定めがある「ガンジャンピング規制」についてのコメント↓
2017年12月20日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201712/20171220.html
2017年12月21日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201712/20171221.html
【コメント】
昨日のコメントに一言だけ追記をしたいと思います。
まず、紹介している2017年10月11日(水)付けの日本経済新聞の記事についてです。
この記事には、2017年の1月から9月までの投資ファンドによる日本企業の買収金額について書かれているのですが、
昨日は、2016年の買収金額と2017年の買収金額について次のように書きました。
>2016年は、ファンドによる日本企業の買収金額は8870億円と2015年の2.4倍で、買収件数は過去最多だった、とのことです。
>ちなみに、今年2017年は、大手ファンドによる大型の買収事例が例年になく非常に多かったため、
>ファンドによる日本企業の買収金額は2016年よりもさらに増加しているのは間違いないかと思います。
この記事には、2017年の買収金額について、次のように書かれています。
>M&A助言のレコフによると、ファンドによる日本企業の買収金額は
>今年1〜9月で2兆8千億円強と、既に16年の2.7倍、15年の5倍に達した。
統計を取る上で、買収件数や買収金額についてはいつの日を基準としているのかは分かりません。
M&Aの発表日なのか、公開買付の開始日なのか、公開買付の終了日なのか、株主総会の開催日なのか、
それとも、全株式の取得の効力発生日なのか、など、いずれを基準日とすることもあり得るのかもしれないと思いました。
記事中の図(2017年分の棒グラフ)には、現在進行中のM&A(現在手続きの最中)も含まれているのではないかと思います。
特に、全株式の取得となりますと、公開買付の終了日からさらに実務上は2〜3ヶ月時間をかけている事例が多いようです。
「2017年に実施されたM&A」の中には、投資ファンドが対象企業の全株式を取得する日(株主総会決議の効力発生日)が
実は来年(2018年)にずれ込むスケジュールとなっている、というM&Aもあるのではないかと思います。
この辺り、どの日付をM&Aの実施日と考えるかで、M&Aの件数と金額が統計上変わってくると思います。
欧米の競争法(公正取引に関する法令)に定めがある「ガンジャンピング規制」の議論や完了日の判定基準ではありませんが、
統計を取る上では、やはり「完了日」(それ以上手続きを行うことはないという日)という考え方が重要であるわけです。
確かに、公開買付で投資ファンドが3分の2以上の株式を取得できた場合は、
それ以降の手続き(株主総会の招集や効力発生日の決定)は、純粋に法律上求められる手続きというに過ぎず、
実際には、投資ファンドの意思・目的を鑑みれば、公開買付の終了日(成立日)の時点で、
半ばM&Aは完了したようなもの(その後M&Aが途中で頓挫することはまずあり得ない)、と言っていいわけです。
つまり、公開買付の終了日(成立日)を統計上の「M&Aの実施日」と考えることもできるわけです。
ただ、実施日の判定基準として一番明確なのは、全株式の取得の効力発生日であると私は思います。
M&Aに関連しそれ以上法手続きを行うことはもはやないという意味でもそうですし、
買収のために投資ファンドがそれ以上資金を投じることはない(つまり、M&Aのための現金支出は全て完了した、という意味)、
という意味でもそうです(つまり、投資ファンドがM&Aのための資金を全て投じ終わった日がM&Aの完了日と考えるべきでしょう)。
記事中の買収金額の棒グラフは、「M&Aの発表日」を基準に、統計を取っているのではないか、と思いました。
これは「ガンジャンピング」ならぬ統計上の「フライング」ではないか、と思ったのですが、
フライングは和製英語のようでして、「フライングをする」は英語でまさに「jump
the
gun」というようです。
紹介してる本日2017年12月23日(土)付けの日本経済新聞の記事にも、2017年に行われたM&Aについて書かれてあるわけですが、
表中の各M&Aには、明らかにまだ手続きが開始されてもいない案件(文字通り計画の発表だけ)もあるわけです。
金融商品取引法では、報道機関等を通じた「公表」が法定開示書類の提出に準ずるもの、という考え方を行うわけですが、
これでは「jump
the gun」(フライング)どころか、まだ競技場にすら入っていないのではないか、と思いました。