2017年8月12日(土)
昨日までの一連のコメントに一言だけ追記をします。
特に昨日2017年8月11日(金)のコメントの続きとして一言だけ書きたいと思います。
過去の関連コメント
2017年7月25日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170725.html
2017年7月27日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170727.html
から
2017年8月11日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201708/20170811.html
までの一連のコメント。
今日は次の記事を題材にして一言だけコメントを書きたいと思います。
また、今日の議論の中では、2017年7月27日(木)のコメントが重要になりますので参考にして下さい。
さらに、今日の議論の中では、2017年8月6日(日)
のコメントも重要になりますので参考にして下さい。
2017年6月27日(火)日本経済新聞
株主総会支える信託銀 議案可決へ準備周到 株主特定し効果的に対話
(記事)
諸外国ではどうか分かりませんが、日本では主に「信託銀行」が上場企業の株主名簿の管理等の「証券代行業務」を担っています。
株主総会の運営や準備に深く関わり、裏方として支えているのが信託銀行の証券代行業務だ、と記事には書かれています。
会社提案の議案を原案通り可決に導けるかどうかも信託銀行(証券代行業務)の重要な任務である、と記事には書かれています。
記事を読みますと、この場面において信託銀行が担う役割とは、証券代行業務というよりも、
まさに顧客企業(上場企業)に対する「助言」である、というふうに感じました。
例えば株主名簿を管理している人が顧客(会社)に有利になるよう会社に対して「助言」を行う、
というのは理論的には何か問題はないのだろうか、とは思いました。
信託銀行(証券代行業務)はどこまで顧客企業(上場企業)や株主に中立でなければならないだろうか、と思いました。
この場合、信託銀行(証券代行業務)は顧客企業(上場企業)の株式は所有しないのだと思いますので、
その意味では自社に有利となる行動は取らないとも言えますが、やはり「会社にも株主にも敵対的株主にも肩入れしない。」、
という姿勢が信託銀行には求められるのではないかと思いました。
記事に書かれている証券代行業務では、明らかに信託銀行が会社に肩入れしているわけです。
上場企業の株式は市場で誰が買ってもいいわけです。
会社が選好するような株主ばかりになるように信託銀行が一定の役割を果たす、という懸念もないわけではないわけです。
やはり、証券代行業務を担う上では中立性が求められると思いました。
以上指摘したこととと少しだけ関係があるかと思いますが、記事には、証券代行業務を担う信託銀行の役割として、
>株主名簿に載っている人や組織と実質的な株主が異なる場合も少なくない。
>背後にいる信の投資家を割り出す「株主判明調査」が欠かせない。
と書かれています。
以前も書きましたが、理論的には誰が株主であっても何の問題はないわけです。
なぜならば、理論的には、取締役が少数株主の利益までも考慮した業務執行(株主総会議案の作成を含む)を行うからです。
支配株主の意向に沿った業務執行を取締役が行う、ということは理論上はあり得ないわけです。
この理論上の結論については、「フィデューシャリー・デュティー」の考え方により説明が付くわけです。
とは言え、現実には、理論上の「フィデューシャリー・デュティー」を実務上補完するために、
様々な対策が講じられているわけですが、その中の1つが会社に「会社の株主は誰であるのか?」を明らかにすることであり、
また、株主に「大量保有報告書」を提出することを義務付けることであるわけです。
その際、株主名簿に載っている株主と実質的な株主とが異なるとなりますと、
「会社の株主は誰であるのか?」を明らかにしても意味がないということになりますし、
「大量保有報告書」の提出も意味がない、ということになってしまうわけです。
そこで、「株主名簿に載っている株主と実質的な株主とが異なる」という問題に対する実務上の対応策の1つとして、
金融商品取引法上、「共同保有者」という考え方を「大量保有報告書」に導入しているわけです。
「大量保有報告書」を提出するに当たっては、名義上の大量保有者本人だけではなく、
共同保有者の保有分も含めることを義務付けているわけです。
名義上の株主(甲)は1%しか保有していなくても、共同保有者(乙)が4%保有していれば、
結果、甲は「大量保有報告書」を提出する義務が生じるのです。
また、結果、乙にも「大量保有報告書」を提出する義務が生じるのです。
このような形で、誰が本当の株主かをできる限り明らかにしていこうと金融商品取引法は努めているわけです。
ここで、2017年7月27日(木)のコメントを見ていただきたいのですが、2017年7月27日(木)のコメントで、
「H29.04.28
10:19」にパナソニック株式会社が提出した「公開買付届出書」について興味深い指摘をしているかと思います。
この時私は、公開買付では「公開買付者及び特別関係者による株券等の所有状況」が極めて重要である、と書きました。
公開買付では、公開買付者による株券等の所有状況だけではなく、「特別関係者による株券等の所有状況」が極めて重要なのです。
なぜなら、簡単に言えば、公開買付者と特別関係者は、対象者株式の保有や議決権行使について意向を同じにしているからです。
今日の議論と併せて考えてみますと、「大量保有報告書」における「共同保有者」と「公開買付」における「特別関係者」とが、
概念的には同じ位置付けにあると言えると思います。
公開買付制度と大量保有報告制度は全く別の制度ですが、両制度で用いている当事者の関係者の概念は同じなのだと思います。
さて、私は、「理論的には、会社法の『株主提案権』は実は少数株主の利益を害する。」と何回も書いてきました。
仮に支配株主が議案を提案したならば、その議案はどんな内容であろうとも必然的に原案通り可決・承認されてしまうからです。
そこで今日私が思いついたのは、2017年8月6日(日)に紹介した記事に書かれていますように、
現在法務省では「株主提案権」の部分に関する会社法の改正(乱用的行使を防止する目的)が検討されているようですが、
「『本人と共同保有者による株券等の所有状況の合計』が、過半数を超えている場合は、
本人も共同保有者も株主提案権を行使できない。」というふうに改正してみてはいかがでしょうか。
簡単に言えば、(共同保有分も含めた)支配株主は株主提案権を行使できない、と定めれば少数株主の利益は保護されるのです。
私のこの案を法務省の方で検討なさってはいかがでしょうか。