2017年8月9日(水)



昨日までの一連のコメントに一言だけ追記をします。
特に昨日2017年8月8日(火)のコメントの続きとして一言だけ書きたいと思います。

 

過去の関連コメント

2017年7月25日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170725.html

2017年7月27日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201707/20170727.html

から

2017年8月8日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201708/20170807.html

までの一連のコメント。

 


昨日2017年8月8日(火)のコメントでは、東和フードサービス株式会社の事例について書きました。
まず、東和フードサービス株式会社の事例について一言だけ追記をします。
昨日キャプチャーした「定款一部変更に関するお知らせ」の「3.日程」を見ますと、

>3.日程
>定款変更のための株主総会開催日 平成29年7月25日(火)
>定款変更の効力発生日           平成29年7月25日(火)

と書かれています。
これは、会社は、定款の変更については株主総会で決議を取ると同時に効力を発生させる、という意味であるわけです。
このことと関連があることになるのですが、2017年8月4日(金)のコメントでは、配当支払いの効力発生日について、

>注:変更前であれ変更後であれ、「効力発生日」に収益(益金)を認識するわけではない、という点には注意が必要です。

と書きました。
さらに、2017年8月4日(金)のコメントの最後には、

>A company should pay both a dividend to shareholders and a compensation to company organs at the same time.
>
>会社は、株主への配当と会社機関への報酬とを同時に支払わなければなりません。

と書きました。
これらの点について一言だけ追記をします。
例えば、取締役の選任や定款の変更であれば、株主総会で決議を取ると同時に・同日に効力を発生させる、
ということがほとんどではないかと思いますが、
配当支払いの場合は、株主総会開催日から数日後に支払うということも実務上多いわけです。
また、役員報酬の支払いについて株主総会で決議を取る場合、役員報酬を実際にいつ支払うのかという問題もあるわけです。
すなわち、配当の支払いについての議案と役員報酬の支払いについての議案の両方について、
株主総会で決議を取る場合、株主総会会決議日は当然にどちらも株主総会開催日であるわけですが、
それぞれの実際の支払日(それぞれの効力発生日)が、配当の支払いと役員報酬の支払いとで異なることがあり得るわけです。
例えば、株主総会開催日(株主総会決議日)は6月20日、配当の支払日(効力発生日)は6月21日、
役員報酬の支払日(効力発生日)は6月30日、というスケジュールに設定する、ということは実務上はあり得るわけです。
しかし、私が思うに、配当の支払日(効力発生日)と役員報酬の支払日(効力発生日)は同じ日でなければならない、と思います。
なぜならば、配当の支払いであれ役員報酬の支払いであれ、支払いの原資は同じ利益剰余金だからです。

 



より理論的に言えば、決算期末日以降、配当の支払いと役員報酬の支払いが完了するまで、
会社は営業を停止するべきである(役員が行ってよい業務施行は定時株主総会関連の事柄のみ)、という考え方になるわけです。
その目的は、会社の貸借対照表を変動させないためです。
計算書類が確定しているとは、決算期末日時点では間違いなくその貸借対照表であった、という意味です。
そして、株主は、確定した計算書類に基づいて、配当の支払いと役員報酬の支払いについての決議を取らなければなりません。
計算書類を見て株主が決議を取る時点で、会社の貸借対照表はその計算書類記載の貸借対照表でなければならないのです。
会社の貸借対照表が計算書類記載の貸借対照表ではないとしたら、
株主は一体何を根拠に株主総会決議を取っているというのでしょうか。
極端に言えば、株主は全く別の会社の貸借対照表を見て、
配当の支払いと役員報酬の支払いについての決議を取っているようなものなのです。
現行実務上、会社は決算期末日の翌日も営業を行っているわけなのですが、
会社の貸借対照表はもはやその時点で計算書類記載の貸借対照表とは異なってしまっているのです。
「今現在の会社の貸借対照表はこれである。
だから、その貸借対照表に基づき配当の支払いと役員報酬の支払いについての決議を取る。」
という関係に、計算書類と株主総会決議はあるわけです。
ところが、会社が決算期末日後も営業を続けるとなりますと、
株主総会開催日には会社の実際の貸借対照表と計算書類記載の貸借対照表と異なる、ということになるわけです。
簡単に言えば、決算期末日後は、株主総会開催日まで、さらには、配当の支払いと役員報酬の支払いが完了するまで、
会社は自社の財務状況(資産状況や利益剰余金の金額等全て)を確定させ続けておかなければならない、
ということになるわけです。
そうでなければ、株主総会開催日に株主が見ている計算書類記載の貸借対照表の意味がなくなってしまうからです。
その意味では、より正確に言えば、
配当の支払日(効力発生日)と役員報酬の支払日(効力発生日)は異なっていてもよいのですが、
両方の支払日(両方の効力発生日)が到来するまで(実際に両方の支払いが完了するまで)、
会社は自社の財務状況(資産状況や利益剰余金の金額等全て)を一切変動させてはならない、という結論になります。
例えば、毎年6月下旬に定時株主総会を開催している3月期決算の企業があるとします。
この企業は5月には倒産しない、などという保証があるでしょうか。
3月末時点では営業を行っていたのに5月に倒産するということは、
3月末時点と比較して、5月に会社の財務状況が変動したからであるわけです。
5月に会社の財務状況が変動した理由は、3月末以降も営業を続けたからであるわけです。
理論的には、所定の全ての支払いが完了するまでは会社は自社の財務状況を変動させてはならないのです。

 



現行の実務を踏まえて言いますと、配当の支払いと役員報酬の支払いの両方について、
より理論的には同時に利益剰余金を減少させる必要があると思います。
利益剰余金は確定しているわけです。
そして、利益剰余金は1つしかない(確定した1つの利益剰余金があるだけ)わけです。
利益剰余金の減少は同時にでなければならないと思います。
例えば、配当の支払いを先に行うので配当の支払いの分先に利益剰余金を減少させるとなりますと、
その時点で、役員報酬を支払うために取った決議の根拠がなくなってしまうように思うわけです。
役員報酬を支払うために決議を取った時には、
配当の支払いのこと(その分の利益剰余金)も考慮した上で、決議を取ったわけです。
逆から言えば、「同時に利益剰余金が減少すること」を前提に、配当の支払いと役員報酬の支払いの決議を取る、
ということではないでしょうか。
簡単に言えば、利益剰余金の減少日が異なる(利益剰余金の減少日が2日ある)、ということに違和感を感じるわけです。
会社は株主総会決議日に、利益剰余金をそれぞれ「未払配当金」勘定と「未払役員報酬」勘定に(同時に)振り替える、
という会計処理が求められるのではないかと思います。
これにより、株主と役員には、それぞれ受取配当金と受取役員報酬という収益が認識される(金銭債権の確定)ことになります。
別の観点から言えば、これらの効力発生日とは利益剰余金の減少日(利益の分配日)ではない、という考え方になると思います。
効力発生日と聞きますと、何となく利益剰余金の減少日(利益の分配日)のことではないかと思ってしまいますが、
現行の実務を踏まえて言いますと、効力発生日とはこの文脈では、
実際の支払日(確定債務の弁済日)を指す、と理解するべきなのだと思います。
ただ、会社は株主総会決議日に配当と役員報酬の両方を支払う(株主総会日に利益剰余金も減少する)、
という考え方を行うのが一番理論的ではないかと思います。

 

Concerning a payment of a dividend to shareholders and a payment of a compensation to directors,
"firm fiancial statements" of a company is required.
"Firm financial statements" of a company in this context means
that they represent a financial condition of the company
as of now (i.e. as of a date of an annual meeting of shareholders).
Even "fiancial statements which used to be definitely correct and absolutely firm about three months ago"
are not "firm financial statements" in a true sense from a standpoint of annual meeting of shareholders.

株主への配当の支払いや取締役への報酬の支払いに関して言えば、会社の「確定した計算書類」が要求されます。
この文脈における会社の「確定した計算書類」とは、
「その計算書類は今現在の(すなわち、定時株主総会開催日現在の)会社の財務状況を表している」という意味です。
「3ヶ月前には間違いなく正しく絶対的に確定していた計算書類」でさえ、
定時株主総会という立場から言えば、真の意味で「確定した計算書類」ではないのです。

 


それから、基準日と株主総会決議の効力発生日との関係に関して、次のようなプレスリリースがありました↓。
エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社が今後商号を変更する、という事例です。


2017年5月25日
エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社
商号の変更及び定款の一部変更に関するお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1478162

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



先ほどの配当の支払いと役員報酬の支払いについては、「効力発生日=株主総会決議日」、
と考えるのが一番理論的であると思うのですが、定款の変更についてはどうでしょうか。
商号は定款で定めますので、結局のところ、「商号変更日=定款変更の効力発生日」ということになるわけですが、
この事例では「定款変更の効力発生日(商号変更予定日)」は「未定」となっています。
効力発生日は、平成29年10月31日までに開催される取締役会で決定する、とプレスリリースには書かれています。
エイベックス・グループは2018年4月に創業30周年を控える、とのことです。
商号を変更するのなら、創業30周年に合わせる、という考え方はあると思います。
すなわち、2018年4月1日に商号を変更する、という考え方はあると思います。
しかし仮に2018年4月1日に商号を変更するとなりますと、基準日から丸1年経過しているわけです。
商号の変更日を取締役会で決定するとは、株主総会決議の効力発生を取締役会で決定する、と言っていることに等しいわけです。
端的に言えば、効力発生日まで含めて株主総会で決議を取るようにしなければならないと思います。
決議を取る株主総会議案というのは、株主総会決議さえ取れば効力を発生させることができる状態でなければならないわけです。
議案に「後日取締役会で決定する」という部分を残してよいのなら、
新しい商号そのものも取締役会で決定できることになってしまう(文字通りの白紙委任ができてしまう)わけです。
「当会社は、株主総会の決議事項を全て取締役会に委ねる。」などと株主総会決議を取れば、
株主総会そのものが不要となるわけですが、そのようなことは株式会社の概念的にも会社法上もできないわけです。
例えば、以下のような定款変更について株主総会で決議を取りさえすれば、後は取締役会で自由に商号変更ができるわけですが、
やはり、「効力発生日」まで含めて株主総会で決議を取る(明確な効力発生日も議案内容に含める)べきであると思います。


(商 号)
第1条 当会社は、平成100年12月31日までに新しい商号へ変更する。
      新しい商号は平成100年12月31日までに開催される取締役会において決定する。

附則 商号の変更日において定款第1条を以下のように変更する。
     「当会社は、(新商号)と称し、英文では、(新商号)と表示する。」
     なお、本附則は、第1条の効力発生日経過後削除されるものとする。

 



最後に、株主総会の開催と関連のある記事をいくつか紹介します。


2017年6月29日(木)日本経済新聞
春秋
(記事)


この記事には、昨日書きました東和フードサービス株式会社のことが、次のように書かれています。

>高級喫茶店を展開する東和フードサービスのように、基準日変更の動きは出始めている。

また、この記事には、総会屋の活動人数について、次のように書かれています。

>警察庁調べでは83年に1700人いたが、昨年末は230人に減った。

私が昨日書いた人数と根本的に異なるのですが、私も昨日は警察庁のサイトの資料から8万人(ただし構成員合計)と書きました。
株主総会に出席して因縁をつけるだけなら、商法の知識も会計の知識も簿記の理解もいらないのではないかと思ったわけです。
株主総会の開催日を上場企業が意図的に集中させることは、商法の「株主提案権」が実は少数株主の利益を害するのと同様、
一般に言われているのとは実は正反対に、一般株主・個人株主が株主総会に出席することを拒む効果しかないわけです。
開催日を集中させることで実は総会屋に便宜を図っているのではないか、などと痛くもない腹を探られたくないのなら、
経営者は意図的に株主総会開催日を分散させるよう努めるべきではないか、と思いました。
株主総会の開催日を集中させても、一般株主に不利になるだけなのです(総会屋は痛くもかゆくもない)。
警察庁による株主総会の集中日に関する記事がもう1つありましたので紹介します。


2017年6月23日(金)日本経済新聞
集中日の23日 株主総会656社
(記事)


また、株主総会の集中開催の緩和に関しては、実は企業の9割超が対応に消極的である、という内容の記事を紹介します。
その理由として、「何も問題を感じないから」と企業の約38%が回答したとのことですが、
「問題を感じているのは一般株主の方だ。」ということを経営者は忘れないでいただきたいと思います。
「株主が何も問題を感じない株主総会を開催すること」も「フィデューシャリー・デューティー」の範囲に含まれると思います。


2017年2月22日(水)日本経済新聞
総会の集中緩和 9割超が消極的 経産省調査
(記事)