2017年5月7日(日)
2017年5月5日(金)日本経済新聞
賠償不払い防止 進むか 犯罪加害者の口座 裁判所特定 差し押さえ容易に
法改正議論 負担減へ被害者側期待
養育費徴収も対象 悪質業者の取り立て懸念
(記事)
民事執行法の改正についての過去の関連コメント
2017年1月12日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201701/20170112.html
2017年1月20日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201701/20170120.html
公正証書と秘密証書についての昨日のコメント
2017年5月6日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201705/20170506.html
一番平易と思われるインターネット上の解説記事
民事執行法概説
ttp://civilpro.law.kansai-u.ac.jp/kurita/minjiSikkou/lecture/
民事執行の概略
ttp://civilpro.law.kansai-u.ac.jp/kurita/minjiSikkou/lecture/outline.html
【コメント】
民事執行法の改正についての記事です。
民事執行法の改正については、2017年1月12日(木)と2017年1月20日(金)にコメントを書いていますので参考にして下さい。
民事執行法の改正については、「強制執行」が最重要論点になっているかと思います。
現在議論されている「強制執行」の具体的手段については、今日紹介している記事にも書かれてある通りであるわけですが、
実は、その「強制執行」に至る前段階のことを理解しておかないと、議論の全体像が見えてないのではないかと思いました。
それは、実は「始めに公正証書ありき。」とでも表現するべき取引のあり方です。
すなわち、「取引を行う際、公正証書を作成できる場合はできる限り公正証書を作成しておくべきだ。」ということです。
公正証書を作成しておけば、後で当事者間で主張に食い違いが生じることを未然に避けられるのです。
逆から言えば、公正証書を作成しておかないから、後で当事者間で主張に食い違いが生じる余地が生まれてしまうのです。
取引の流れを踏まえれば、債務者による債務不履行の発生以前に、債権者と債務者との間で主張の食い違いが生じるわけです。
主張に食い違いが生じることを未然に防ぐために、公正証書を作成するわけです。
国家的な大きな視点から取引を捉えれば、公正証書を作成しない契約は「秘密証書による取引」に過ぎない、
という見方になるわけです。
「秘密証書による取引」を行うので、後で当事者間で主張に食い違いが生じる、ということになるわけです。
もちろん、民法理としては、契約内容は全て事前に公証人に確認(双方の意思確認)してもらわないといけない
などということはないのですが、将来の主張の食い違いを未然に防ぐためには、公正証書を作成することが一番なのです。
民法理としては、まさに「私的自治の原則」というだけのことであるわけですが、
契約を締結するに際し、「この契約内容で間違いないことを国家に保証してもらおうじゃないか。」ということで、
取引を側面から支援する役割として公証役場を活用する(公正証書を作成する)ことは、
トラブルを未然に防ぐためには重要なことであるわけです。
今日紹介している記事で言っているは、犯罪被害者が受け取るべき賠償金についての強制執行です。
確かに、刑事の場合は、事前に加害者と被害者との間で公正証書を作成するということができません。
被害者に対しては、民事訴訟で約5500万円の賠償金が支払われることになった、とのことですが、
その支払い命令はまさに「確定判決」という位置付けになるかと思います。
つまり、賠償金の支払いに関して公正証書を作成する、ということはできない(理論的には確定判決で十分)かと思います。
しかし、民事の場合は、当事者間で事前に契約書を作成することができるわけです。
その契約内容について事前に公証人に双方の意思を確認してもらい公正証書を作成してもらう、
ということができるわけです。
実務上は、公証人は民事上の全ての種類の取引(契約)について公正証書を作成できるわけではないかとは思いますが、
理論的には、依頼があれば、公証人は民事上の全ての種類の取引(契約)について公正証書を作成しなければならないと思います。
たとえば、裁判所は、民事上の全ての種類の取引(契約)について訴訟の提起を受理するのではないでしょうか。
少なくとも、どちらの主張が正しいのかの判断は行うのではないかと思います(理論的には裁判所はそうあるべきでしょう)。
理論的にはそれと同じであり、「私甲と相手方乙はこのような内容の契約を締結しました。」と当事者が公証人の前で明らかにし、
公証人はその契約内容を公正証書にする、ということは、あらゆる取引(契約)について行われなければならないはずなのです。
それが取引(契約)に対する国家的支援というものでしょう。
「後で当事者間に主張に食い違いが生じることを未然に避けること」、これが公正証書の本質的役割なのです。
後で当事者間に主張に食い違いが生じた場合に裁判を行う、というだけなのです。
現行の民事執行法には実効性がないのは確かなのだと思いますので、実効性を持たせるための法改正は行わねばならないのですが、
理論的には、債務不履行の前段階として、主張の食い違いがある、ということを理解しておくべきだと思います。
実は強制執行に至る前段階がある、という点について図を描いてみましたので、参考にして下さい。
理論的には、「判断と執行は全く別だ。」(判断は国家、執行は当事者)という考え方になります。
特に民事ではそうです。
刑事は、判断も執行も国家が行います。
いずれにせよ、民事では、「公正証書があればそもそも裁判にならない。」という理解が大切だと思います。
そして、「公正証書がない場合は、契約(書)は秘密(証書)になる(誰も証明してくれない)。」ということになります。
「強制執行までの流れ」
理論的には、「債権者が主張している権利内容は正しい。」と判断するまでが国家の役割。
公正証書を作成していると、始めから「債権者が主張している権利内容は正しい。」と国家が
認めていることになる。(言わば、私人間の契約書に国家がお墨付きを与えていることになる。)
公正証書の作成には、「債権者も債務者も、この契約書の記載内容で間違いありませんね?」と
国家が契約内容について事前に両者に確認を取ることで、
その後両者の主張に食い違いが生じることを未然に防ぐという目的がある。
逆から言えば、両者の主張に食い違いが生じるからこそ、結果的に裁判になってしまう。
公正証書を作成しておけば、両者の主張に食い違いが生じることを国家が認めない。
公正証書が確定判決と同じ意味を持つというのはそういう意味である。
理論的には、むしろ確定判決の方が公正証書と同じ意味を持つ、と言うべきであろう。
全ての取引おいて公正証書を作成するわけではない(特に商取引ではなく日常生活では)ので、
代替的手段として、事後的に自分の主張が正しいことを裁判で認めてもらうに過ぎないのだ。
⇒理論的には、強制執行は「主張が正しいこと」とはまた別の議論になる。
逆から言えば、公正証書を作成していても、債務者が債務を履行しない
ことはあり得る(公正証書は強制執行の手段ではない)。
⇒理論的には、内容の証明や主張の判断が国家の役割(国家による取引の支援)、
執行は当事者の役割(取引を行うのは当事者達)、という位置付けになる。
Relationship between the civil and the penal. (民事と刑事の関係)
On the principle of law, a government doesn't support the realization of
rights of a private individual.
法理的には、国家は私人の権利の実現を支援したりはしないのです。