2017年2月5日(日)



一昨日2017年2月3日(金) と昨日2017年2月4日(土) 、そして公開買付制度について一言だけコメントを書きたいと思います。


公開買付に関する過去のコメント

2017年2月3日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201702/20170203.html

2017年2月4日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201702/20170204.html


昨日キャプチャーして紹介しました公開買届出書の「@  【届出当初の期間】(9/27ページ)」を再度見ていただければと思います。
「公告日」は「平成29年2月3日(金曜日)」となっており、「公告掲載新聞名」に関しては、次のように記載されています。

>電子公告を行い、その旨を産経新聞に掲載します。
>電子公告アドレス(http://disclosure.edinet-fsa.go.jp/)

私は産経新聞は購読していませんので、
自然人が公開買付者であるこのたびの公開買付に関する「公開買付開始公告についてのお知らせ」は、
私は公開買付の開始日(2017年2月3日(金) )に見ることはなかったわけです。
2017年2月4日(土) になって初めて、日本経済新聞の記事を読んでこのたびの公開買付について知ったわけです。
2017年2月4日(土) に、日本経済新聞の記事を読んだ後、EDINETのサイトを閲覧し、関連する法定開示書類を閲覧したわけです。
それで、2017年2月3日(金) から2017年2月4日(土)にかけての私の一連の行動を振り返ってみますと、
公開買付の開始日は「2017年2月3日(金) 」であったのだから、
私は「2017年2月3日(金) 」には公開買付の開始に関する事実を知っておかなければならなかったはずだ、と思いました。
これまでのほとんど全ての事例では、公開買付の開始日に日本経済新聞に「公開買付開始公告についてのお知らせ」が
掲載されていましたので、公開買付の開始には公開買付の開始に関する事実を知ることができたわけですが、
このたびの事例では、「私は公開買付の開始日に公開買付の開始に関する事実を知ることができなかった」、
という状況が実際に生じてしまいましたので、この点について少し考えたいと思いました。

 


このたびの事例において、「私は公開買付の開始日に公開買付の開始に関する事実を知ることができなかった」理由は、
一言で言えば、「公告掲載新聞」がこれまでの事例とは異なり日本経済新聞ではなく産経新聞だったからである、となります。
では、投資家が情報を受領する(第一報に触れるべき)「公告掲載新聞」は理論的にはどうあるべきであろうかと思いました。
そこで、日刊新聞について少し調べてみました。
端的に言えば、「発行部数が少ない日刊新聞」であれば投資家の目に触れづらい、ということが言えるのではないかと思いました。
全国紙と対比して、県内の情報の発信に注力する「県紙」と呼ばれる新聞が発行部数が少ない日刊新聞になろうかと思います。
一般社団法人日本新聞協会という団体のサイトがありました。

日刊紙の都道府県別発行部数と普及度
ttp://www.pressnet.or.jp/data/circulation/circulation02.html

青森県の朝刊の発行部数である「226,462」部が、都道府県別で言えば一番少ない朝刊の発行部数となります。
青森県には「東奥日報社」という地元新聞社があります。

Web東奥
ttp://www.toonippo.co.jp/

詳細な調査を行ったわけではなく、インターネットでざっと検索した限りではありますが、おそらく、
「東奥日報社」が発行している「東奥日報」という新聞が、日本で一番発行部数が少ない日刊新聞であろうと思います。
青森県には「東奥日報」以外の新聞を購読している人もいるでしょうから、「東奥日報」の発行部数は20万部未満だと思います。
そう思いながら「Web東奥」のサイトを見ていますと、広告掲載に関する資料がありました。

広告掲載のご案内
ttp://www.toonippo.co.jp/koukoku/mediums/document.pdf

このファイルの大きな見出しとして、

>新聞発行部数(朝夕刊完全セット)/25万部

と書かれています。
より正確に言えば、「東奥日報」は、

>発行部数は250,960部(2010年4月現在、ABC部数)で、青森県内で読まれている新聞部数の半数を超えています。

とのことです。

 



「東奥日報」は、全国的にも珍しい「朝夕刊完全セット」(例えば、朝刊だけの購読はできない)となっているようでして、

>青森県全世帯の過半数が購読、発行部数No.1。

と書かれています。
発行部数である「ABC部数」とは何のことだろうかと思ったのですが、
雑誌や専門誌やフリーペーパーなどの発行部数を調査する一般社団法人日本ABC協会という団体があり、
「ABC部数」とはその団体の調査(公査)による発行部数という意味であるようです。
簡単に言えば、自称の発行部数ではなく、「日本ABC協会調べ」の発行部数という意味であるようです。

ABC部数とは
ttp://www.jabc.or.jp/circulation

最初は、朝刊と夕刊の合計で250,960部、という意味であろうかと思った(それだと実質的な発行部数は)のですが、
「東奥日報」は、朝刊も250,960部、夕刊も250,960部、発行しているのだと思います。
仮に、朝刊と夕刊の合計で250,960部という意味なのだとすると、
「東奥日報」の実質的な発行部数は第三者が確認した発行部数の半数の125,480部、ということになってしまいます。
「朝夕刊完全セット」という新聞は全国的にも珍しい(ほとんどの新聞は例えば朝刊だけの購読ができる)わけですが、
朝刊と夕刊がセットにはなっていない新聞というのは、どのように発行部数を数えるのだろうかと思いました。
発行部数の少ない県紙の中には、朝刊しかない(夕刊がそもそもない)県紙もあります。
朝刊と夕刊の両方を発行している新聞に関しては、その朝刊のみを購読している、という購読者もいるわけです。
その夕刊のみを購読しているなどという購読者はさすがにいないかとは思いますが、
朝刊と夕刊がセットにはなっていない新聞に関しては、発行部数は明らかに「朝刊>夕刊」であるわけです。
この辺り、新聞の発行部数の計算方法は、「朝刊の発行部数+夕刊の発行部数」で算出するのではなく、
「朝刊の発行部数」で算出しているのだろうと思います。
いずれにせよ、一般社団法人日本新聞協会の調査によると、47都道府県で言えば、発行部数が概ね20万部の県紙が
発行部数が一番少ない日刊新聞ということになるのではないだろうかと思います。
ただ、インターネットで検索していますと、他にも次のようなサイトがヒットしました。

■新聞71紙の発行部数とランキング(新聞広告.com)
ttp://ameblo.jp/sinbunkoukoku/entry-10298437217.html

2004年現在、日本に「日刊新聞」はなんと71紙もある、ということのようです。
発行部数が一番少ない「日刊新聞」は「八重山毎日」という新聞であり、発行部数は「14,836」部、とのことです。
「八重山毎日」は県紙とは異なると思うのですが、「日刊新聞」には該当するのだと思います。

 



それで、以上の「日刊新聞の発行部数」の議論とこのたびの公開買付の事例とは関係がある話になるわけですが、
結局のところ、「投資家は公開買付の開始日に公開買付の開始に関する事実を知らなければならない。」ということになるわけです。
では、どのような手段で「投資家に公開買付の開始日に公開買付の開始に関する事実を知らせるべきか」についてですが、
簡単に言えば、「公開買付開始公告についてのお知らせ」を投資家に見てもらうことにより
その事実を知ってもらうようにするべきであるわけです。
「公開買付開始公告についてのお知らせ」は、本来的には「官報」に掲載するべきであるわけです。
しかし、投資家全員に「官報」を購読することを求めるのは、現実問題としては難しいと思います。
それで、実務上は、日本経済新聞に「公開買付開始公告についてのお知らせ」を掲載する、という手段が取られているわけです。
ただ、このたびの事例のように、日本経済新聞ではなく産経新聞に「公開買付開始公告についてのお知らせ」を掲載する、
となりますと、投資家が公開買付の開始に関する事実を知り損ねる、ということになってしまいます。
そういった事態が生じるのを避けるためには、現実問題に対する対応ということで、実務上は、
「『公開買付開始公告についてのお知らせ』は日本経済新聞に掲載する。」、と法律で定めるしかないと思います。
私は日本経済新聞社の回し者では決してありませんが、現実に生じ得る問題の対応として「官報」以外の手段を用いるのならば、
「公告掲載新聞」を法令で定めるしかない、とこのたびの事例を通じて思いました。
ただ、改めて金融商品取引法の条文を読んでみますと、
「公開買付開始公告についてのお知らせ」を日刊新聞に掲載しなければならない、とは定められていないようです。
金融商品取引法上、公開買付者に義務付けられているのは、公開買付届出書の提出はもちろんですが、
「『公開買付開始公告』を何らかの方法で公告すること」、と定められているようです。
つまり、金融商品取引法上は、公開買付者は「EDINET」に電子公告の形で「公開買付開始公告」を行いさえすればよい、
となっているだけであり、
「公開買付開始公告についてのお知らせ」を官報や日刊新聞に掲載する義務は金融商品取引法上はないようです。
現実には、「公開買付開始公告についてのお知らせ」を日本経済新聞に掲載してもらわないと知ることができないと思うのですが、
金融商品取引法上は、公開買付者は「EDINET」に電子公告の形で「公開買付開始公告」すればよい、となっているようです。
「公開買付開始公告についてのお知らせ」を官報や日刊新聞に掲載することは任意(任意の通知)、となっているようです。

 


また、上記の議論に通じる議論になりますが、「公開買付代理人」に関しても同じようなことが言えると思います。
「公開買付代理人」の指定に関する現実上の問題については、2016年12月4日(日) にコメントを書きました。

2016年12月4日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201612/20161204.html

「公開買付代理人」を誰にするかにより、公開買付者は現実には公開買付への応募の受付場所を投資家に不利なように限定できる、
という問題点について書いたわけです。
公開買付者は全国に支店がある大手証券会社(例えば野村證券等)を「公開買付代理人」に指定するべきだ、とこの時は書きました。

2017年2月4日(土)日本経済新聞
野村株、独歩高の死角 個人資金流出、兜町に春遠く
(記事)


それで、このたびの公開買付の事例を踏まえ、今日改めてこの点について考えていたのですが、
現実上生じる問題への対応策としては、「『公開買付代理人』は野村證券株式会社とする。」、
と金融商品取引法で定めるのが一番よいと思いました。
年間の公開買付の実施件数を鑑みても、野村證券株式会社の一社のみで十分対応し切れるかと思います。
「公開買付代理人」としての報酬額(少額のみ)も金融商品取引法で定めれば、利益誘導というような疑いも生じないと思います。
公開買付者や対象者によらず、公開買付という制度における「投資家の平等」を担保するためには、
公開買付者が指定できるという部分そのものをなくすべき(つまり、法令で決めるべきことを決めてしまうべき)であると思います。
「公開買付代理人」になったらどれくらい大変か(現実にどのくらいの事務作業量になるか)は、対象者の株主数で決まります。
「株主数、最大」というキーワードで検索しますと、次のサイトがヒットしました。

株主数ベスト100 (ストックウェザー)
ttp://www.stockboard.jp/flash/sel/?sel=sel543

2017年2月3日現在、株主の数が日本最大なのは株式会社みずほフィナンシャルグループであり、
その株主数は「1,002,023人」となっています。
第二位は第一生命ホールディングスで株式会社あり、株主数は「833,827人」、
第三位は株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループであり、株主数は「773,572人」、
となっており、株式会社みずほフィナンシャルグループの株主数が頭一つ飛び抜けている状態です。
例えば、株式会社みずほフィナンシャルグループに公開買付を実施する(そして証券会社がその「公開買付代理人」になる)、
となりますと、現実に「1,002,023人」が応募をし得る(「公開買付代理人」は全員に対応を取っていく)、ということになります
そして、「1,002,023人」全員が、公開買付の開始日に公開買付の開始の事実を知らなければならない、ということになります。
発行部数20万部の日刊新聞に、そんなことができるでしょうか。
回覧板ではないのですから、発行部数そのものが「1,002,023人」を超えていなければならないのではないでしょうか。
そして、公開買付代理人も、20営業日で「1,002,023人」分の応募を事務処理し切れないといけない、ということになります。