2016年9月6日(火)


昨日、株式会社パレモ株式に対する公開買付についてコメントを書きました。
昨日は組合について(民法上の組合と投資事業有限責任組合の違いについて)書いたわけですが、
今日は公開買付が株価に与える影響(買付期間中の株価の値動き)について書きたいと思います。
現在日本で実施されている公開買付は一定数あるかと思いますが、
株式会社さが美と株式会社ノバレーゼと株式会社パレモの3つの事例を題材にしたいと思います。
これら3つの事例については、主に以下の日にコメントを書いています。

 

株式会社さが美の事例

2016年8月27日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201608/20160827.html


株式会社ノバレーゼの事例

2016年9月2日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201609/20160902.html


株式会社パレモの事例

2016年9月5日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201609/20160905.html

 


では、3つの対象会社の値動きを見てみましょう。

 

「○公開買付後も上場は維持される場合の買付期間中の値動き」(株式会社パレモ株式の値動き)

公開買付の成立(下限以上の応募)は始めから確定している(大株主と応募契約締結済み)。
公開買付成立後も上場は維持される計画となっている。
⇒以上のような状況の場合は、公開買付は株価に影響を与えない、と言える。

 

「○公開買付後も上場は維持される場合の買付期間中の値動き」(株式会社さが美株式の値動き)

公開買付の成立(下限以上の応募)は始めから確定している(大株主と応募契約締結済み)。
公開買付成立後も上場は維持される計画となっている。
⇒以上のような状況の場合は、公開買付は株価に影響を与えない、と言える。

 

「○公開買付後は上場廃止(完全子会社化)が計画されている場合の値動き」(株式会社ノバレーゼ株式の値動き)

公開買付者は大株主と応募契約を締結しているが、それは「47.66%」分のみ。
一方、買付予定数の下限は「73.83%」に設定されている。
つまり、公開買付の成立は確定しているわけではない。
しかし、買付価格が直近の株価水準に比べ著しく高いため、
公開買付が成立する見込みは極めて高いと言える。
また、公開買付成立後は上場廃止となる計画となっている。
⇒以上のような状況の場合は、株価は買付期間中は買付価格に張り付くことになる。

 


各値動きに関するコメントは、各チャート図の下に書いている通りです。
今後とも、数日毎にこれら3つの対象会社の値動きは見ていきたいと思います。

 



それから、2016年9月2日(金)のコメントで、公開買付が株価に与える影響(買付期間中の株価の値動き)について書きました。
その中で、

>公開買付後に上場が維持されるのか上場は廃止されるのかでは、投資家にとっては株式の取り扱いが完全に異なってしまいます。
>当然、公開買付が株価に与える影響も両者では大きく異なることになります。

>公開買付が成立する可能性は非常に高い場合などを考えますと、
>理詰めで考えると、買付期間中は対象会社株式の売買は市場でなされない、という結論が導き出されるように思いました。
>この結論は、「公開買付後も株式の上場は維持される場合かつ買付価格には直近の株価水準に対しプレミアムが付いている場合」、
>ということになります。
>また、「公開買付後は株式は上場廃止の場合かつ買付価格は直近の株価水準に対しディスカウントとなっている場合」は、
>今度は株式の買い手が現れない(市場において買い注文が出されない)ということになり、
>やはりこの場合も、買付期間中は対象会社株式の売買は市場でなされない、という結論になるように思います。

といったことを書きました。
2016年9月2日(金)のコメントでも書きましたように、買付期間中の値動きに関しては、

>公開買付の成立可能性なども言い出すと、非常に多くの設例が考えられる

わけです。
そして、2016年9月2日(金)のコメントの最後には、

>”公開買付期間中は株価は買付価格に張り付く”とよく言われますが、理詰めで考えてみると、
>実はそうなる場面・状況・要因はあまりないのかもしれないな、と思いました。

と書いて2016年9月2日(金)のコメントは終わったわけです。

 



この辺り、様々なパターンが考えられ、上手く説明し切れていないな、と思いました。
自分でももう少しパターン(設例)を整理したいと思いましたので、設例別に表を作成してみました。
基本的には、この表を見ていただければ、私が何を言いたいのか分かるのではないかと思います。
実務上は、「公開買付は成立するのか否か?」という点が市場の投資家にとって非常に影響が大きいと言えます。
公開買付者は、当然のことながら、公開買付の成立を目的に公開買付を実施します。
「私が実施する公開買付は成立しないだろう。」などと考えて公開買付を開始する公開買付者はいないわけです。
しかし、公開買付というのは、実施しさえすれば必ず成立する、というものでは全くありません。
これまで実施された全公開買付のうち、何例が成立し何例が不成立に終わったのかは分かりませんが、
過去の事例としては、成立した公開買付の方が不成立に終わった公開買付よりもはるかに事例数として多いのだろうとは思います。
しかし、それは、「この買付条件であれば公開買付は成立するであろう。」と公開買付者が十分な根拠や自信を持った上で、
公開買付を実施するに至っているからこそ、成立する公開買付が実務上は非常に多いというだけのことであり、
公開買付は実施しさえすれば成立するというものでは全くないのです。
そういったことも踏まえ、作成した表では、「公開買付が成立する可能性は極めて低い場合」も書きました。
また、「公開買付後、株式の上場は維持されるのかそれとも上場廃止になるのか?」という点も影響として非常に大きいと言えます。
むしろ、「公開買付が成立する可能性は極めて高い場合」には、
「公開買付後、株式の上場は維持されるのかそれとも上場廃止になるのか?」という点は、
市場や株式の売買に決定的な影響を与えるものと言わねばならないでしょう。
「株式が上場廃止になる」ということは、今後は事実上「買付価格以外では株式を売れない」という状態になる、ということです。
さらに、買付価格が直近の株価水準よりも高いのか低いのかでも、公開買付が株価に与える影響というのは変わってくると思います。
買付価格が直近の株価水準よりも低い場合には、単純に考えると、公開買付には誰も応募しないのではないか、
と考えられるわけですが、理詰めで考えて表を作成してみると、
買付価格の高い低いは株価には影響をあまり与えない、という結論になるように思いました。
この辺り、話の論点を絞るために、極端な2つの場合を想定して、表を作成してみました。
表を作成して思ったのは、一般によく言われているように「株価が買付価格に張り付く」のは、実は、
「公開買付が成立する可能性は極めて高い場合」かつ「公開買付後株式は上場廃止となる場合」のみ、ということなると思います。
話の簡単のため、表を作成するに当たっては極端な場合分けをしたわけですが、この表が何かの理解のヒントになれば幸いです。

 

「買付期間中の対象会社株式の値動き(理論上考えられる値動き)」
"Does a takeover bid have any influence on a stock price?"
(公開買付は株価に何か影響を与えるだろうか?)


(PDFファイル)

(キャプチャー画像)