2016年8月26日(金)
2016年8月23日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201608/20160823.html
2016年8月24日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201608/20160824.html
2016年8月25日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201608/20160825.html
ここ3日間は、民法上の質権を中心に、法理的な観点から担保物権についてコメントを書きました。
ここ3日間で、法理的な観点から見た質権と抵当権の違いについて、自分なりに概ねのまとめることができたように思います。
ここ3日間のコメントは、「株式に質権を設定する」(2016年8月23日(火)紹介の記事が題材でした)ということから、
議論が始まったわけですが、現行の規定や実務上の取扱いは非常に複雑ですので、法理的な観点から話を整理してきたわけです。
それで、民法の教科書には、「債権質」という言葉が載ってきまして、民法上は債権を質権の目的物とすることができるようです。
また、債権に限らず、民法上は、有価証券全般を質権の目的物とすることができるようです。
まずは、その点について、民法の教科書から解説部分をスキャンして紹介したいと思います。
「ゼミナール 民法入門(第4版)」 道垣内弘人
著 (日本経済新聞社)
8 各種の物権
X 質権と抵当権
有価証券への質権設定
(スキャン)
ただ、有価証券への質権設定についてスキャンはしましたが、昨日「株券」(株主名簿の書き換え)を題材に書きましたように、
株券であれ手形であれ小切手であれ社債であれ国債であれ売掛金(請求書)であれ、
有価証券(紙媒体の証書)というのは、ただ手許に持っているだけでは有価証券が表している権利の権利者にはなれないわけです。
有価証券(紙媒体の証書)というのは、あくまで権利内容を紙の形で表象しているだけであって、
有価証券(紙媒体の証書を持ってさえいれば権利者になれるわけでは全くないわけです。
なぜなら、その権利の相手方(債務者や会社等)は、権利者を個別に把握しているからです。
有価証券(紙媒体の証書)を持っているか否かだけで、人(権利者)を判断するわけでは決してないわけです。
その意味では、法理的には有価証券全般が質権の目的物とはなり得ないように思います。
結局のところ、昨日の最後に書きましたように、法理的には質権の目的物というのは「有体物」だけなのだと思います。
また、この点についてさらに厳密に言えば、法理的には、質権の目的物というのは「動産」だけなのだと思います。
なぜならば、不動産の場合は、「質権設定者(債務者)所有の質物(不動産)を占有する」ということが、
観念できないように思うからです。
不動産に関しても、引渡しを受け占有していることを質権の成立要件と考えるならば、
質権者(債権者)は質権設定者(債務者)所有の質物(不動産)の場所にいなければならないのではないでしょうか。
しかし、質権者(債権者)には質権者(債権者)所有の不動産(日々居住している自宅など)があるわけです。
体は1つしかないわけです。
質権者(債権者)が両方の場所にいることなどできるでしょうか。
確かに、現行民法上は、不動産質の対抗要件は登記となっています。
すなわち、現行民法上は、質権者(債権者)は、引渡しを受けた質権設定者(債務者)所有の質物(不動産)の場所に
いる必要は全くなく、質権設定の登記をしさえすれば、それでよいわけです。
しかし、そもそも「登記をしない簡便な担保物権」が質権である、というふうに私には思えるのです。
ですので、極端に言えば、「質権設定の登記を行う」ということ自体が、何か担保物権に関する定めが、
整理されていない(定めがダブっている)と感じるのです。
もちろん、質権者(債権者)は物理的に同時に2つの場所にはいられません。
要するところ、不動産を担保物権の目的物とすることに関しては、抵当権に一本化するべきであると思うわけです。
わざわざ担保物権設定の登記をするのならば、不動産を目的物とする質権はそもそも不要であると思うわけです。
ですので、民法上、「担保物権に関する定め」を整理し、
目的物が動産の場合 → 質権(登記なし)
目的物が不動産の場合 → 抵当権(登記あり)
というふうに、目的物の種類に応じて「担保物権」を分けるようにするべきであろうと思います。
In my opinion, on the principle of law, the object of pawn is movable
property only.
For a person can't be at two places at the same
time.
Conceptually speaking, without the real property registry system in our
society,
the fact that a person owns real property would be indicated by the
conditions that he actually is at the real property.
The fact that a person
stands his own signboard in real property doesn't means that he owns the real
property.
私の考えでは、法理的には、質権の目的物は動産だけなのです。
というのは、人は、2つの場所に同時にいることはできないからです。
概念的に言えば、仮に社会に不動産登記制度がないとすると、
人が不動産を所有しているという事実は、人が実際にその不動産の場所にいるという状態によって示されることになるでしょう。
不動産の場所に看板を立てることは、その不動産を所有していることを意味しないのです。