2016年8月23日(月)
>5月下旬、バイオ関連のそーせいグループが開示した3月末時点の大株主名簿に市場関係者が驚いた。
>筆頭株主に躍り出たのは、株の売買を手掛けない短資会社のセントラル短資だ。
>金融機関との短期資金の融通の際にそーせい株を担保として受け取り、それが3月末に重なったのが理由だが、
>機関投資家が多くのそーせい株を持つことを示唆した。
2016年3月末時点におけるそーせいグループの筆頭株主はセントラル短資であったようですが、
その理由は、セントラル短資が複数の金融機関に短期資金を貸し出す際に、
セントラル短資はそーせいグループ株式を金融機関から担保として受け取ったからである、とのことです。
ここでいう「担保」とは、民法でいう「質権」なのであろうと思います。
ここでの質権設定契約では、そーせいグループ株式が質物(目的物)、
セントラル短資が質権者(債権者)、各金融機関が質権設定者(債務者、質物の所有者)、ということになろうかと思います。
記事を読んで私が思ったのは、「質権を設定すると、質物の所有権は質権者へ移転するのか?」という点です。
結論だけを言いますと、「質権を設定しても、質物の所有権は質権者へ移転しない。」だと思います。
すなわち、質権を設定しても、質物の所有権は質権設定者(債務者)が有したままであり、質権者へは移転しないわけです。
質権者はあくまで、担保として質物を占有するだけであるわけです。
質権設定者(債務者)が債務を弁済したならば、質権者は質権設定者(債務者)へ質物を返還しなければならないわけです。
この間、質物の所有権は移転はしていないわけです。
逆に、質権設定者(債務者)が債務を履行しなかったならば、質権者は占有している質物を自己の物にできるかと思います。
すなわち、質権設定者(債務者)が債務を履行しなかったならば、
質物の所有権は質権設定者(債務者)から質権者へ移転するかと思います。
そうしますと、質権を設定するというだけでは質物の所有権は移転しませんので、質権設定後も、
質物としてセントラル短資へ引き渡されたそーせいグループ株式の所有者は、従来通り各金融機関のままなのではないかと思います。
つまり、質権設定後も、セントラル短資がそーせいグループの株主になることはないのではないかと思います。
質権設定契約では、質物は質権者に引き渡される(質物は質権者が占有する)ものの、
従来通り質物の所有権は質権設定者(債務者)にあるままとなる、という点が特徴と言えると思います。
ただ、この点について法理的に考えますと、「物というのは、その物を手許に現に持っている(占有している)人のものだ」
という考え方も一方にはあるように思えます。
目的物を相手方に引き渡してしまうと、その時点で所有権が相手方に移転する、という考え方も法理的にはあり得るように思えます。
「質権」と「抵当権」の相違点 〜理論的に考えてみた場合の参謀案〜
(The difference between pawn and
mortgage.)(質権と抵当権の相違点)
「PDFファイル」
「キャプチャー画像」
On the principle of law, persons can make the joint exercise of voting
rights,
but they can't make joint holding of one object.
法理的には、人は共同で議決権を行使することはできますが、ある1つの目的物を共同で保有することはできません。