2016年8月24日(水)



昨日2016年8月23日(火) のコメントに一言だけ追記をします。

2016年8月23日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201608/20160823.html

昨日のコメントでは、セントラル短資がそーせいグループ株式を金融機関から担保として受け取っても、
セントラル短資はそーせいグループの株主にならない、と書きました。
「質権を設定しても、質物の所有権は質権者へ移転しない。」ということがその理由です。
2016年3月末時点において、セントラル短資がそーせいグループの筆頭株主になった、というのは間違いであろうともいます。
今日は、この点について少しだけコメントを書きたいと思います。
まず、そもそも「株式を目的物とする質権の設定は可能なのか?」という点について、インターネットで検索してみました。
解説記事はたくさんヒットするわけですが、3つほど紹介し、解説文を引用したいと思います。

 


株式の担保権者への対応
(ロア・ユナイテッド法律事務所 ビジネスQ&A)
ttp://www.loi.gr.jp/knowledge/businesshomu/homu02/houmu03-02-07.html

>Q株式に質権が設定されていることを公示する方法がありますか。
>株式の担保権者が株主名簿の書換えを請求してきました。会社はどのように対応したらよいですか。
>担保権が実行された場合はどうですか。

>Aはい。株主名簿と株券とに記載します。これを登録質といいます。
>1.株式についての担保設定
> 株式についての担保の設定
>株式は経済的価値のある権利ですから当然担保の対象となります。
>株式についての担保方法としては、譲渡担保の方法と質権設定の方法とがあります。
>質権設定の方法にも、株主名簿及び株券への記載の有無に応じて略式質と登録質とがあります。

 


株券の電子化
(日本証券業協会)
ttp://www.jsda.or.jp/shiraberu/minasama/kessai/

>従来、株主が上場株式を担保として金融機関から融資を受けるときには、
>金融機関(質権者)に対し、質権設定者として所有する株券を引き渡す略式質が主流でしたが、
>株券電子化実施後は、次のとおり、証券会社等金融機関の口座間の振り替えによって質権設定する方式に変わりました。

「上場株式の株式担保の取扱方法」
(キャプチャー)


株券の電子化に伴う株式担保取引Q&A(全国銀行協会 平成19年10月)
ttp://www.jsda.or.jp/shiraberu/minasama/kessai/files/tanpo1.pdf

 



現行の各種法令の定めや実務上行われていることというのは、非常に複雑だなと思います。
「株式を目的物とする質権の設定は可能なのか?」という点について、
現行の取扱方法をきれいに整理するのは簡単ではないなと思いました。
株式が上場株式なのかそれとも非上場株式なのか、また、会社が株券を発行しているのか発行していないのか、により、
実務上は取り扱いが大きく変わってくるようです。
それで、現行の定めや実務上の取扱いは非常に煩雑ですので、
「株式を目的物とする質権の設定」について、いつものように法理的に考えてみたのですが、
法理上の考え方は、実は極めて簡単なのではないか、と思いました。
法理上の答えは、「誰が株主かは株主名簿一本で判断する。」というだけではないか、と思います。
会社にとっても他の株主にとっても、「株主名簿に記載されている株主のみが、株主としての全ての権利を有する。」
というだけのことであるように思えます。
質権の設定の有無によらず、いかなる場合も「誰が株主かは株主名簿のみで判断する。」というだけであるのだと思います。
この点において、当事者2人と、会社や他の株主との間で争いが生じる部分というのは一切ないわけです。
つまり、当事者のどちらかが、「あなたは株主ではない。」と会社や他の株主から主張される場面というのは一切ないわけです。
もちろん、株主名簿に記載されていないのに「私は株主である。」と他者に主張しても、全くその主張は通りません。
つまり、「株主は誰であるか」は株主名簿によりあまりにも明らかであるため、主張に食い違いが生じること自体がないわけです。
では、「質権の設定によって、株主名簿は書き換えられるのか?」という点が、次に論点になろうかと思います。
この論点についても、極端に言えば、会社や他の株主には関係がない話だ、ということになろうかと思います。
結局のところ、株式の所有権が移転すると株主名簿が書き換えられるわけです。
そして、株主名簿を書き換えるために、株式の所有権が移転した事実を売買を行った当事者2人は会社に伝えることになるわけです。
会社としては、株式の所有権が移転したということであるならば、粛々と株主名簿を書き換えるだけであるわけです。
譲渡人から譲受人へ株式の所有権が移転したという事実を、譲渡人と譲受人2人から会社が通知を受けたならば、
会社としては、株式の名義を譲渡人から譲受人へ変更するだけであるわけです。
この際、株式は一方から他方へ引き渡されたものの、それは所有権の移転ではなく実は質権の設定であったのだとして、
その間違いは、会社や他の株主には全く関係がないことであるわけです。
もしくは、「株式を目的とする質権の設定では、株式の所有権は移転する。」などと質権者(債権)と質権設定者(債務者)が
勘違いをしていた(そして会社に間違って株主名簿書き換えの申請・通知をした)のだとしても、
その勘違いは、会社や他の株主には全く無関係なこと(会社の利害にもならず他の株主の利害にもならない)であるわけです。
その間違いや勘違いは、純粋に質権者(債権)と質権設定者(債務者)との間のみの問題であるわけです。
不動産に関しては登記内容が絶対であるように、株式に関しては株主名簿の記載内容が絶対である、
と法理的には考えなければならないのだと思います(株式の所有権の移転理由は、会社も他の株主も問わない(問えない)はずです)。


On the principle of law, the fact that a share is in pawn has very little to do with a company nor other shareholders.
For who a shareholder is is determined uniquely only by a shareholder register.

法理的には、株式に質権が設定されているという事実は、会社や他の株主にはほとんど関係がありません。
というのは、誰が株主かは株主名簿のみに基づき一意に決まるからです。