2013年12月14日(土)



2013年12月14日(土)日本経済新聞
■伊藤忠 国際会計基準を任意適用
(記事)


 

2013年12月13日
伊藤忠商事株式会社
国際会計基準(IFRS)の任意適用に関するお知らせ
ttp://www.itochu.co.jp/ja/ir/doc/disclosure/files/2013/pdf/ITC131213_j.pdf

 


(連想記事)

2013年12月14日(土)日本経済新聞
社債発行額 4年ぶり増加 今年、8.5兆円程度に ソフトバンクなど大型案件押し上げ
(記事)


 



【コメント】
”商事”で思い出したのですが、私は今までに何回か、仕入債務は他の債務に比較して弁済の優先順位が高い、と書きました。
その点について書きたいと思います。

 

2013年12月4日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201312/20131204.html

>仕入債務に対する債権者(仕入元)であれば、その債権者一人一人で言えば、金額は少額のみであり期間も短期間のみ、という形ですから、
>無担保のリスクに耐えられるわけです。
>また、仕入債務であれば、会社倒産時の弁済順位も相対的には非常に高いわけです。

>ただ実際の法の定めはこの考え方を少しだけ修正していて、大まかに言えば、
>会社倒産時は、全債権者の中でも、まず従業員の未払給与の弁済に会社財産を使うこととなっており、
>次に仕入元に対する仕入債務の弁済に会社財産を使うこととなっています。
>通常はこの時点で会社財産はゼロになります。
>これより弁済順位の低い債権者(株主は言うに及ばず)の債務は1円も弁済されません。
>メザニンだなどと言わなくても、弁済の順位というのははじめからあるわけです。
>これは労働者保護の観点であったり商行為を行っている者(仕入元)を優先して保護するといった考え方が根底にあるのだと思います。
>これはこれで現実の取引を踏まえた適切な修正であろうと思います。


2013年12月11日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201312/20131211.html

>商債権の決済までの期間は金融債権に比べ非常に短く、そして一債権者ごとの債権金額も金融債権に比べ非常に少なく、
>さらに、無担保の金融債権よりも弁済の順位は高い(無担保債権の中で一番高い)

 


仕入債務は他の債務に比較して弁済の優先順位が高いというのは何を根拠に言っているのかと言えば、
債権の中でも「仕入債務は先取特権である」、ということが根拠なのです。

先取特権については次のページが一番簡潔にまとまっていると思いました↓。

先取特権―分類・種類
ttp://naiyoshomei.k-solution.info/2010/08/_1_364.html

先取特権とは、一言で言えば「債権者平等の原則の例外」なのですが、その先取特権が仕入債務に関してもあるのです。

>2.動産の先取特権
>たとえば、商品を売った代金債権を持っている人には、動産の先取特権が成立します。
>動産の先取特権とは、債務者の特定の動産を目的とする先取特権をいいます。
>「特定の動産」とは、この場合であれば、当該商品となります。

これは、商品を仕入れた取引先は「(他の債権者よりも)優先してその商品を返してもらう権利がある」という意味なのですが、
会社の方は当然、仕入れた商品を消費者に販売してしまったり、製造業であれば生産工程に入ってしまいもうその原材料や部品は会社にはない、
ということはあるわけでして、その場合は、厳密な法律用語ではありませんが「逆代物弁済」のようなイメージで、商品を仕入れた取引先は
先取特権の目的物を対象に競売にかけて(そのように見なし)、その競売代金から、他の債権者より優先して弁済を受けることができる、
と考えるわけです。
つまり、仕入れた商品はもう会社にないのですから、仕入債務は先取特権であることを理由に、
代わりに「代金を支払え」と他の債権者よりも優先して請求する権利が、商品を仕入れた取引先にはあるわけです。
動産の先取特権は、確かに債務者の「特定の動産」が目的物ではありますが、
会社がその目的物そのものを返すことができないからと言って先取特権が消滅するということはないでしょう。
「特定の動産」に先取特権が成立するのなら、仕入債務を他の債権者よりも優先して弁済を受ける権利は当然あるわけです。
「仕入債務には先取特権が成立する」、これが仕入債務は他の債務に比較して弁済の優先順位が高い理由です。
ある商品を販売した結果会社に現金がある場合、それはその商品の仕入れがあったからこそ販売できたわけですから、
その商品の仕入れ代金(仕入債務)は他の債権よりも優先して弁済されるべきだ、という考え方もこの背景にはあるでしょう。
動産の先取特権の成立に登記は必要ありません(例えば抵当権とは異なり登記をしなくても第三者に対抗できます)。
仕入債務には法律上当然に先取特権が成立し、優先的に弁済を受けることが認められているのです。

 


以上の議論をまとめますと、以下のような表になるのではないかと思います↓。

「会社倒産時(注:平時ではなく)の債権の弁済順位」


仕入債務は債権の種類としては「代金債権」になります。
先取特権の効力により、仕入元は労働者(賃金債権)の次に高い弁済順位となっています。


それにしても、この表を見ると実際には「債権者平等の原則というのは極めて限定的な意味合いしかない」ということが分かるかと思います。
「同じ弁済順位者の中で債権者は皆平等だ」、という意味しかないわけです。
債権者平等の原則とは、あくまで、同一の債務者に複数の同じ弁済順位の債権者が存在する場合、
債権発生の時期や原因とは無関係に全ての同順位の債権者が平等に扱われる(平等に弁済を受ける)、という原則に過ぎないのです。
抵当権などの担保が設定されている場合のみならず、先取特権が当然に成立する債務が会社にある場合は、
先取特権の効力によりそれら該当する債権者は資産処分による資金について優先的な弁済権利を有することになります。
「債権者平等の原則」とは一体何だろうか、と考えされられました。

 


こちらのインターネット上の解説を読んでも「債権者平等の原則」について考えされられたのですが、
破産法においても(民法の規定や考え方に合うように?)「債権者平等の原則」に修正を加えているのだと思います。

 

Yahoo! 知恵袋
「債権者平等原則の根拠法令を教えてください。」
ttp://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q149581104

>民法には、債権者平等の原則に関する直接的な規定は存在せず、債権者平等の原則は、民法の当然の前提であると考えられています。
>破産法第194条第2項は、債権者平等の原則のあらわれです。

>破産法第194条(配当の順位等)
>@配当の順位は、破産債権間においては次に掲げる順位に、第1号の優先的破産債権間においては第98条第2項に規定する優先順位による。
>1 優先的破産債権
>2 前号、次号及び第四号に掲げるもの以外の破産債権
>3 劣後的破産債権
>4 約定劣後破産債権
>A同一順位において配当をすべき破産債権については、それぞれその債権の額の割合に応じて、配当をする。

 

仕入債務は先取特権の成立する債権ですから、仕入債務は破産手続きの際は「優先的破産債権」として取り扱われるのだと思います。

 


また、次のページは極めて詳しい説明になっているのですが、先取特権の中にも順位があります。


先取特権の成立と効力の及ぶ範囲、物上代位
ttp://www.geocities.jp/pekepence/5tanpoho/tanpo3.html


先取特権の順位について詳細な表が載っていました。
私が作成した表(あれは全債権者ですが)と比較するためにこの表をキャプチャーさせていただきました↓。

「先取特権の種類と順位」



先取特権だけでここまで詳細に分かれています。
「債権者平等の原則」とは一体何だろうかと、本当に考えされられます。
これはもはや「債権者平等の原則」ではない、と思ってしまいました。

 

というわけで、様々なページを紹介し、「債権者平等の原則の例外」について考えてみました。
仕入債務は他の債務に比較して優先して弁済される、その理由は「仕入債務には先取特権が成立する」からだ、
ということが十分に説明できていればと思います。

なお、私は法律は専門ではありませんので、実務上の取り扱いは私の解釈や見解とは異なることもあると思います。
私は理屈面・理論面から法律を論じているだけですから、実際の取り扱いについては具体的にはどのようになっているのか
については知識・理解が不十分だと思います。
理論上は正しいが実際の取り扱い(通説や判例等)は異なるということはあると思いますので、実務上は適宜担当の専門家にお尋ね下さい。



 


2013年12月12日(木) に会社更生法を適用した後、更生会社を清算しない場合の問題点について書きました。


2013年12月12日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201312/20131212.html


このコメントの中で、会社更生手続きの中で会社を清算しないことが分かっている(会社と債権者が共謀してる)のならば、
債権の届出はしない方が有利だ、と書きました。
この理由は端的に言えば、更生会社に残っている債務(=債権者が債権放棄した債務)は会社を清算させてはじめて法的に消滅するからです。
債権者は債権を放棄する、更生会社(債務者)は清算する、だから両者の債権債務が消滅するわけです。
ここで会社を清算しないならば、債権者は債権者で(更生会社は当然清算されたものと考え)債権を(自社の会計上も)放棄するわけですが、
更生会社(債務者)は結局清算しないわけですから、
更生会社は(言わば騙す形で)債権放棄された分の債務は債務免除益を計上する(債務は消滅する)しますが、
(共謀し計画的に)債権者から届出のなかった債務については(清算しないわけですから)まだ会社に残っているわけです。
ですから、更生計画が終結した後、その届出のなかった債務を会社は何食わぬ顔で弁済していくことができるのではないか、と考えたわけです。

 



ただ、以上の議論で私がカバーし切れていないのは、更生会社の会社財産(積極的な財産)と債務(消極的な財産)を
管財人がどこまで深く調査するのか、なのです。
保全と精査を目的に、更生会社の会社財産(積極的な財産≒現預金、動産、不動産、債権等)の方は非常に深く厳密に調査するかと思いますが、
債務(消極的な財産)の方はどれくらい調査を行うのだろうか、と思いました。
というのは、更生計画立案に際し、会社の債務の金額を確定しなければならないわけですが、
その会社の債務の金額を単に「債権の届出」だけで把握するとすると、上記に私が述べた”抜け穴”が生じてしまうと思ったからです。
つまり、管財人は管財人で(管財人の調査のみで)深く厳密に会社の債務を把握する必要があるわけで、
その上で届出がなかった債権に関しては、管財人が届出をしなかった債権者の元へ赴き、その債務を法的に消滅する手続きを取る必要がある
のではないかと思ったわけです(そうしないと、更生計画に盛り込まれない債務が会社に残ってしまう→終結後弁済を受けられてしまう)。
会社更生手続きにおいて会社清算を前提条件としないならば、別の手段で会社の債務を全て法的に消滅させないと、
債権者平等の原則に反する(まじめに届出をした債権者の方がバカを見る)ことになるでしょう(これなら届出をしなかった分は弁済額ゼロ)。
管財人は債権調査(=会社にとっての債務の調査)をどこまで行うのか。
万が一、管財人には債務(消極的な財産)の方は十分に調べ切れない恐れがある場合は、会社清算を前提条件としなければならないでしょう。
現時点の定めで、届出がなかった債権は言わば自動的に法的に消滅する(=更生計画外の会社の債務金額は法的にゼロとなる)、
ということであれば何の問題もないかとは思いますが。
会社清算(会社の消滅)と債務の消滅とがセットである(会社が消滅するからこそ会社の債務も消滅する)、
という考えが私の中にありましたので書いてみました。

 



ただ、私が上記に書きましたような計画的”抜け穴弁済”を行いますと、法的なリスクはやはりあるようです。
極端な話をすると、届出がなかった債権を更生手続き終結後こっそりと弁済したことが最後の最後までバレなければいい
と言えばいいのですが、万が一周囲にバレてしまいますと、やはり問題は生じるのだと思います。
他の債権者の立場からすると、
「他の債権者達は更生計画に従って債務の弁済を受けたのに、なぜその債権者だけは全額弁済されているのか」という意見が当然出てきます。
管財人は透明性のある債務の弁済を第一目的としていますから、当然このような弁済は認められない、と考えるでしょう。
そこで管財人は、弁済先の債権者(=届出をしなかった債権者)に対し、「否認権」という権利に基づいて、
弁済を受けたお金の返還請求を行う場合があり得るようです。
これに応じない場合、訴訟提起がなされることもあるようです。
つまり、弁済を受けた金額の一部をかつての更生会社へそして更生会社は他の更生債権者達へ弁済しなければならないかもしれないわけです。
そういうわけで、2013年12月12日(木) に私が書きました会社と債権者とが共謀した”抜け穴弁済”作戦は、
実際には上手くいかないかもしれません(上手くいっても後でお金は返還しないといけないかもしれません)。
私は法律は専門ではありませんので、実務上は適宜担当の専門家にお尋ね下さい。