2013年11月3日(日)



2013年10月31日(木)日本経済新聞
ソニー 配当12.5円 9月中間
(記事)





2013年10月30日
ソニー株式会社
剰余金の配当(中間配当)に関するお知らせ
ttp://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/news/20131030_01.pdf

 


2013年10月31日
ソニー株式会社
2013年度 第2四半期 連結業績のお知らせ
ttp://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/financial/fr/13q2_sony.pdf

 


【コメント】
2013年11月2日(土) のコメントで、「法律と会計とで認識日が違うということがある」と書きました。

2013年11月2日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201311/20131102.html

このコメントでは、「子会社株式評価損が発生した日」が法律と会計で異なる、という事例でした。
では、配当支払いの日付に関してはどうでしょうか。
法律と会計とで日付に違いはあるでしょうか。

「1. 2013年度(2014年3月期)中間配当の内容」
(1/1ページ)


ここに書かれている日付は二種類です。
一つは「基準日」でありそれは「2013年9月30日」です。
もう一つは「効力発生日(支払開始日)」でありそれは「2013年12月2日」です。
さらに敢えて言うなら、このプレスリリースの発表日は「2013年10月30日」です。

 



結論だけ先に言えば、配当支払いに関しては、法律と会計で日付に違いは全くありません。
法律上の基準日は間違いなく「2013年9月30日」であり、
それは会計で言えば、配当支払いの基準となる貸借対照表は「2013年9月30日」付けの貸借対照表である、となります。
そして、法律上の「効力発生日(支払開始日)」は間違いなく「2013年12月2日」であり、
それは会計で言えば、(基準である「2013年9月30日」付けの貸借対照表を基にして)「2013年12月2日」に貸借対照表から配当が実際に支払われる、
言い換えれば、「2013年12月2日」に貸借対照表から現金が社外流出し利益剰余金が減少する、となります。

「基準日」の方は問題ないと思います。
「効力発生日(支払開始日)」の方は少し分かりづらいかもしれません。
法律上の日付は問題ないと思いますが、会計上の日付はどちらなのか分かりづらいかもしれませんが、会計上の日付も「2013年12月2日」です。
これは次のように考えればよいと思います。
会計上、「効力発生日(支払開始日)」の仕訳はいつ切るのか、と。
配当支払いの仕訳はいつ切るのか。
「2013年12月2日」でしょう。
ですから会計上の「効力発生日(支払開始日)」も法律上と同じ「2013年12月2日」なのです。

 


ただもう少し厳密に言いますと、配当支払いに関する日付は、法律上も会計上ももう一段細かく考えることができます。
それは「配当支払いの債務の発生日(債務の確定日)」です。
ソニー株式会社は中間配当を支払うことについてこのたび取締役会で決議を行ったわけですが、
決議と同時にソニー株式会社は会社として株主に対して配当を支払うという債務を負ったのです。
これは法律上も債務であり、会計上も債務です。
この「配当支払いの債務の発生日(債務の確定日)」とはいつかと言いますと、プレスリリースに「当日」とありますように、
プレスリリースの発表日すなわち「2013年10月30日」です。
ソニー株式会社は、法律上もそして会計上も、「2013年10月30日」に会社として株主に対して配当を支払うという債務を負ったのです。
債務の発生(債務の確定)と同時(ここではもちろん「2013年10月30日」)に、会計上は「未払配当金」勘定を計上することになります。
ソニー株式会社は配当支払いの決議を取締役会で行う旨定款変更を行っているわけですが、通常は配当支払いの決議は株主総会で行います。
そうしますと、通常は、「配当支払いの債務の発生日(債務の確定日)」は株主総会決議日になります。
配当支払いも含めた株主総会議案は一旦取締役会決議を取ることになっているかと思いますが、それはあくまで議案が確定しただけであり、
「配当支払いの債務の発生日(債務の確定日)」は取締役会決議日ではなくあくまで株主総会決議日になります。
いずれにせよ、法律上も会計上も、最終的な会社決議機関による決議をもって、
配当支払いに関する債務が発生する(債務が確定する)ことになります。

 


以上の議論をまとめると、各法律上の日付における会計上の仕訳はそれぞれ次のようになります。

 

@法律上の「基準日」の仕訳

(仕訳なし)


A法律上の配当支払いの決議日の仕訳

(繰越利益剰余金) xxx / (未払配当金) xxx


B法律上の「効力発生日(支払開始日)」の仕訳

(未払配当金) xxx / (当座預金) xxx

 



@の日(基準日)、会計上は少なくとも配当支払いに関する仕訳は切りません。
ただ、基準日付の財務諸表はもちろん作成します(通常は決算期末日が基準日ですから、期末日付の財務諸表がそのまま基準日の財務諸表です)。
法律上の基準日には「配当を受け取る権利がある株主を確定する基準日」という意味合いがあるのだと思いますが、
株式と株主資本との関係は一体不可分なのですから、「配当を受け取る権利がある株主を確定する」のなら、
必然的にその日付けの(=基準日の)株主資本額を確定させないといけないわけです。
「配当を受け取る権利がある株主を確定する日」=「配当支払いのための株主資本額を確定させる日」、となります。
この両日付はイコールであり、それは概念上株式と株主資本とはイコールであることと対を成すものなのです。
法律上の基準日と会計上の財務諸表作成日(≒決算期末日)とが異なることは、株式と株主資本とが整合性が取れていないことになるのです。
分かりやすく言えば、「配当を支払いたいのなら、基準日付けの財務諸表を作成して下さい。」となります。
他の言い方をすれば、「会社は配当を支払う都度、その基準日毎に財務諸表を作成しなけばならない。」となります。
これは、株式と株主資本の関係から導かれる必然的結論です。

 



このことに関連して、旧商法において、「中間配当の財源」とは何か、という議論がありました。
私は今までに二度、この論点についてコメントをしました。


2013年4月29日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201304/20130429.html


2013年10月7日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201310/20131007.html


2013年4月29日(月)のコメントで、

>@配当可能限度額の計算は、直近期末日(中間期や四半期も当然含む)の貸借対照表を基準に行う、

と書きましたが、これはまさに「基準日毎に財務諸表を作成しなければならない」という意味です。
そして、「中間配当の財源」とは何かと言う議論の答えは実ははじめから出ていたのだと思います。
答えは、「『中間配当の財源』は基準日の財務諸表(の株主資本)から必然的・自動的に一意に決まる」です。

配当を取締役会決議のみで行っていたり、基準日毎に財務諸表を作成していないから、どれほど深く議論をしても一向に答えは出ないのです。
中間配当制度はその誕生の時から全く機能してこなかった(少なくとも理論上矛盾があった)のはある意味当然だったのです。

 



旧商法においても現会社法においても、配当を支払う都度財務諸表を作成したりはしておらず、
中間配当の場合も四半期配当の場合も、基準となる財務諸表は通期の財務諸表(前決算期末日付)となっています。
当中間期や当四半期の財務諸表を基準に配当を支払うわけではありません。
これは当中間期や当四半期の業績とは完全に無関係に会社は中間配当や四半期配当を支払っている、ということを意味します。
現にこのたびのソニー株式会社も当四半期は赤字(四半期純損失を計上)なのに、安定配当を理由に配当を支払うことを決議しています。
四半期純損失を計上を計上した分、前決算期末日付の財務諸表よりも利益剰余金は減少しているのに、
そのことは無視して四半期配当を支払っているわけです。
もちろん、配当財源の根拠となる会社法上の財務諸表とは法律上通期(1年間)の財務諸表を指しますから、
中間財務諸表や四半期財務諸表を配当支払いに関する法律上の財務諸表とするわけにはいかない(法理上整合性がない)というのは分かります。
特に、会社財産に対する優先順位を考えると、株主よりも税務当局の方が優先するわけですから、
配当を支払うのは法人等を支払った後という流れになるわけです。
中間期や四半期ではまだ法人税等を支払っていない(支払額が当然まだ確定していないという言い方でもいいと思います)わけですから、
確かに中間財務諸表や四半期財務諸表を配当支払いに関する法律上の財務諸表とするわけにはいかないわけです。
ただそうであるならば、中間配当も四半期配当も認めるわけにはいかないのではないでしょうか。
中間配当や四半期配当はいつを基準に(いつを基準日とした)配当を支払うつもりなのでしょうか。
通期(1年間)の財務諸表を配当の基準にするのなら、当然「配当を受け取る権利がある株主」は通期(1年間)末日の株主になるはずです。
中間期末日や四半期末日の株主ではないはずです。
これもまた、株式と株主資本の関係から導かれる必然的結論です。
「配当を受け取る権利がある株主を確定する日」は中間期末日や四半期末日、
「配当支払いのための株主資本額を確定させる日」は前決算期末日、
これは矛盾です。


 


さらに、会社財産に対する優先順位について上で少し書きましたが、
中間配当や四半期配当を支払う場合のことを考えますと、中間期末日や四半期末日というのは
法律上も会計上も当期ではなく「次期」(来期)に既に入っているわけです。
もちろん配当支払いのための通常の株主総会でも時期としては「次期」(来期)に入っているわけですが、
それは実務上致し方ない面があるわけです。
ここで、その「次期」(来期)に稼いだ利益や現金に関してなのですが、この「次期」(来期)に稼いだ利益や現金に対する優先順位は
株主よりも税務当局が高いわけわけです。
そして会社はまだその「次期」(来期)に稼いだ利益に対する法人税等を当然支払っていません。
それなのに、中間配当や四半期配当では、表面上は前決算期末日の財務諸表を基準としつつ、
実際にはこの「次期」(来期)に稼いだ現金をも配当に使用していることになるわけです。
これは重大なる税務当局に対する徴税権の干犯、
・・・の恐れありといったところではないでしょうか。
通常の配当支払いのための株主総会でも、時期としては「次期」(来期)に入っているわけでして、
理論上厳密言えば、やはり「次期」(来期)に稼いだ現金を配当に使用しているという側面は現にあるわけです。
しかしまあ実務上は決算期末日の翌日の0時に株主総会を招集して配当支払いの決議を行い配当を支払うことはできませんから
(もしくは決算期末日の翌日から実際の配当支払日まで全事業活動を停止する(例えば債務の弁済も一旦停止する)わけにもいきませんから)、
税務当局としては決算期末日から3ヵ月以内であれば会社財産(現金)を配当に使ってもよしとしよう、
という考えでいるのだと思います。
理論上厳密には配当支払いに「次期」(来期)の会社財産を使っている、しかしそれは実務上致し方ないと考えているのでしょう。

 



未払配当金も会社にとってはれっきとした一つの債務ではありますが、通常の債権者にとっても、税務当局同様、
会社は配当支払いに本来は債権者に優先権があるはずの「次期」(来期)の会社財産を使っているのだが、
しかしそれは実務上致し方ないと考えているのでしょう。
未払配当金という債務とそれ以外の通常の債務とはどちらが弁済の順位が高いのかについては、法律上の取り扱いについては分かりません。
ただ理論上厳密に言えば、会社は未払配当金を全額弁済した上で「次期」(来期)の事業活動に入らなければならない、
すなわち理論上厳密に言えば、会社は当期の配当を全額支払ったした上で「次期」(来期)の事業活動に入らなければならない、
という考え方になるのだと思います。
そうでなければ会社財産に対する優先権に関して矛盾が生じると思います。
もちろん実務上のことを考慮し、現実には会社には会社法上3ヶ月間という猶予が与えられているわけですが。
いずれにせよ、中間配当や四半期配当には、より正確には言えば年に一回の通常の期末配当以外には、
株式会社における株式と株主資本の関係に照らしてもすわなち株主と財務諸表との整合性に照らしても、そして税務当局や債権者との整合性に照らしても、
極めて大きな矛盾がある、という点だけは確かかと思います。
分かりやすく言い換えれば、概念上、会社は中間配当や四半期配当を本来は一切支払えないはずだ、という意味です。