2018年9月27日(木)



2018年9月19日(水)と2018年9月26日(水) のコメント(民法上の「共有」に関する考察)について追記をしたいと思います。


「共有物の各共有者の取得原価は『共有物の取得原価÷共有者の人数』である。」、と書いた時のコメント。

2018年9月19日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201809/20180919.html


「税務当局の立場から見ると、共有物の所有者の人数は概念的には1人だけである。」、という参謀案を提示した昨日のコメント↓。

2018年9月26日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201809/20180926.html


昨日は、株式会社東京會舘のプレスリリースを題材にして、民法上の「共有」に関して再度考察を行いました。
プレスリリースをざっと読んだ時は、、”当社が保有する土地の一部を譲渡する”と書かれていますし、
さらには次の記述ようなもありましたので、株式会社東京會舘は他の共有者と土地の共有を行っており、
このたびその土地の「持ち分」を他者に譲渡することになった、という内容なのだろうと思いました。

>2.譲渡資産の内容
>資産の内容及び所在地 土地(旧東京會舘ビル敷地の一部持分(301.05u相当))

しかし、プレスリリースをよく読みますと、株式会社東京會舘は、他の共有者と土地の共有を行っているわけではなく、
土地は純粋に単独で所有しており、土地の「持ち分」ではなく、土地そのものを他者に譲渡する、
という内容であると分かりました。
ただし、昨日のコメントでは、民法上の「共有」について考察を行ったわけです。

 



それから、共有物の「持ち分」に関する会計処理は非常にややこしい面があると思います。
理論的には、「共有」における「持ち分」が譲渡可能な法制度では、共有物の取得(共同での購入)に伴い
貸借対照表に計上される勘定科目名は、「共有物」の名称(「土地」、「建物」等等)ではなく、
「投資有価証券」勘定になる(「持ち分」は「投資有価証券」の一類型であると整理される)のではないかと思います。
なぜならば、「持ち分」を譲渡する際には、会社はあくまで「持ち分」のみを譲渡するからです。
共有物の使用権は「持ち分」勘定(投資有価証券勘定)で表象されている、と考えるべきだと思います。
会社は「共有」という法的形態で共有物を所有してはいるものの、それはあくまで「共有」に過ぎない、と考えるわけです。
まして、その「持ち分」が譲渡可能となりますと、「持ち分」は法的権利(使用権)を表しているに過ぎないわけです。
昨日も書きましたが、「共有」における「持ち分」が譲渡可能な法制度では、「持ち分」と目的物とが始めから分離している、
というふうに私には感じます(両者は分離しているからこそ、共有者は「持ち分」のみを譲渡することができるわけです)。
では次に、「共有」における「持ち分」が譲渡不可能な法制度ではどのような会計処理になるのかと言いますと、
理論的には、この法制度では共有物の取得(共同での購入)に伴い貸借対照表に計上される勘定科目名は、
「共有物」の名称(「土地」、「建物」等等)そのものになると思います。
「共有」における「持ち分」が譲渡不可能な法制度では、「共有」における「持ち分」が譲渡可能な法制度に比べて、
共有者はより直接的に目的物を所有している(「持ち分」と目的物とが全く分離していない)、と私は感じるわけです。
したがって、他者との「共有」という法的形態ではありますが、目的物を購入するために拠出した金額を目的物の取得原価とし、
目的物の名称(「土地」、「建物」等等)を勘定科目名として貸借対照表に計上するべきだと思います。
ただし、「共有」という法的形態には1つだけ問題があります。
それは、共有物の処分行為の不自由さです。
平時(円満な状態)であればまだ問題は少ないかもしれませんが、会社清算時には円滑な清算手続きの妨げとなり得ます。
例えば、現行の会社更生法では、担保権者による担保権の行使は禁止される規定となっていますが、
共有権を解除するような規定はさすがにないわけです。
つまり、会社更生手続きの中で、会社財産の処分に際しては、共有者全員の合意が必要となるわけです。
管財人は会社債務の弁済金額の最大化を使命としています(つまり、会社財産の換金額の最大化を目指さなければなりません)が、
その時他の共有者達は最も高い価格で買う人物以外の人物に共有物を売却したいという意向を持つかもしれないわけです。
会社の清算のことまで考えると、会社は「共有」を行うべきではない、という結論になると思います。
また、一般に、目的物の支配力の強さは、強い順に「所有権≧共有権>担保物権」となると思います。
ただ、少し話が込み入ってしまい分かりづらいかもしれませんが、「共有」における「持ち分」が譲渡可能な法制度では、
たとえ会社がある財産について「共有」を行っていても、会社はその「持ち分」のみを自由に譲渡することができますので、
例えば会社更生手続きにおいても管財人はその「持ち分」を他の共有者達の意向とは無関係に処分していくことができる、
ということになります。
現行の民法では、「共有」における「持ち分」が譲渡可能な法制度となっていますので、
結果的には、実務上は「共有」は清算手続き(会社財産の処分)の妨げにはならない、と言えると思います。
結論だけ言えば、現行の民法の規定を踏まえれば、会社が「共有」という法的形態で共有物を所有している場合には、
その共有物に関しては貸借対照表には理論的には「投資有価証券」勘定が計上されることになると思います。