2018年9月26日(水)



次のプレスリリースを題材にして、2018年9月19日(水)のコメント(民法上の「共有」について)の追記をしたいと思います。


2018年9月26日
株式会社東京會舘
固定資産の譲渡および特別利益の計上に関するお知らせ
ttps://www.kaikan.co.jp/ir/files/30_9_26.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



「共有物の各共有者の取得原価は『共有物の取得原価÷共有者の人数』である。」、と書いた時のコメント。

2018年9月19日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201809/20180919.html


2018年9月19日(水)のコメントでは、共有物の各共有者の取得原価は「共有物の取得原価÷共有者の人数」である、と書きました。
2018年9月19日(水)のコメントでは、共有物の各共有者の取得原価について、次のようなことを書きました。

>1,000万円の共有物(家族で住む住宅)を購入するのに夫は900万円拠出し妻は100万円を拠出したという場合であっても、
>民法(理論)上の持分割合(共有持分の割合)は「50:50」である、という考え方になると思いました。

>例えば共有物を譲渡した場合は、「共有物の購入のために負担した金額」(各共有者の実際の支出金額)に関わらず、
>共有物の各共有者の取得原価は「共有物の取得原価÷共有者の人数」である、という取り扱いになると私は思います。
>先ほどの例で言えば、共有物を購入するのに実際には夫は1円も負担してない(妻が1,000万円全額を負担した)のだとしても、
>共有物の譲渡の際には、夫の取得原価は500万円であり妻の取得原価も500万円である、という課税関係になると思います。
>その理由は、夫と妻は同じ所有者だからです。
>理論的には、民法上の「共有」では、ただ単に、各共有者は全員が同じ金額を拠出して共有物を購入する、と考えるのです。

紹介しているプレスリリースを題材にして民法上の「共有」について考えていましたら、
2018年9月19日(水)に私が書きました共有物の取得原価の考え方は間違っているのかもしれない、と自分で思いました。
引用しました上記の記述は間違っているようだと思いました。
正しい考え方は、共有者甲の持ち分の取得原価と共有者乙の持ち分の取得原価は互いに独立している、なのだと思います。
共有物を譲渡した際の課税関係は、譲渡金額は持ち分に応じて(すなわち、各共有者に均等に)分配される一方、
各共有者の取得原価はそれぞれの持ち分の取得原価である、という考え方になるのだと思います。

 



2018年9月19日(水)のコメントでは、次のようなことも書きましたが、次の記述自体は正しいのだろうと思います。

>「実際に負担をした購入資金(各自の負担金額)とは無関係に、持分割合(共有持分の割合)は共有者間で均等である。」

>実際に負担をした購入資金(各自の負担金額)に応じて持分割合(共有持分の割合)が変動する、
>という考え方自体が原理的にない、と私は思ったわけです。

しかし、2018年9月19日(水)のコメントでは、「持ち分の譲渡」について十分に考えていなかったように思います。
持ち分の大きさ(割合)は拠出金額(各自の負担金額)で決まると考えてしまいますと、
例えば共有者の1人が非常に高い価格でその持ち分を他者へ譲渡した場合、
他の共有者の持ち分が減少する(拠出金額割合が減少するから)、ということになっていいます。
他の共有者による持ち分の譲渡に伴い各共有者の持ち分の割合が変動する、というのは考え方としておかしいわけです。
ではなぜ、2018年9月19日(水)のコメントでは間違えたことを書いてしまったのかと言えば、
一言で言えば、「持ち分の譲渡」が頭になかったからであるわけです。
「共有」において、「持ち分の譲渡」を想定しますと、概念的に所有権と目的物とがあまりに離れてしまう、と感じたわけです。
「共有」において「持ち分の譲渡」が可能となりますと、「持ち分」が所有権を表していないと感じるわけです。
「共有」における「持ち分の譲渡」とは、目的物の譲渡ではなく、使用権の譲渡に過ぎない、と感じるわけです。
「共有」における「持ち分」が譲渡可能な場合は、「共有」における「持ち分」は所有権を表象していないと感じるわけです。
ただ、「共有」における「持ち分」が譲渡可能な場合は、「持ち分」の取得原価が共有者毎に異なることが前提になりますので、
「『持ち分』の割合は均等だが『持ち分』の取得原価は共有者毎に異なる。」、という状態(課税関係)になるのだと思います。
では次に、「共有」における「持ち分」が譲渡不可能な法制度を想定してみますと、
まず最初に共有物に関する取得原価が決まるわけです。
そして、その取得原価はその後変動しないわけです。
共有物の譲渡時には、その取得原価を共有者間でどう分けるかの問題(課税関係)になると思ったわけです。
「共有」における「持ち分」が譲渡不可能な法制度では、「共有」にあるのは共有物の譲渡だけなのです。
「共有」における「持ち分」が譲渡不可能な法制度では、共有物の取得原価を共有者間で均等に分ける、
というだけだと2018年9月19日(水)のコメントを書いた時には思ったわけです。
今日考察を深めていく中で、「共有」における「持ち分」は譲渡可能なのかそれとも譲渡は不可能なのかで、
課税関係(取得原価の捉え方)が根本的に変わってくると思いました。
「共有」における「持ち分」が譲渡可能な法制度では、「持ち分」の取得は「共有物」の取得ではないわけです。
「持ち分」の取得はあくまで「持ち分」の取得なのです。
「共有物」の取得原価と「持ち分」の取得原価は異なるのではないでしょうか。
「共有」における「持ち分」が譲渡可能な法制度では、各共有者の「持ち分」の取得原価の合計金額は、
「共有物」そのものの取得原価とは当然一致しないわけです。
すなわち、「共有物」の譲渡と「持ち分」の取得原価とが関係がない、と感じるわけです。
ただ、「共有」における「持ち分」が譲渡可能な法制度では、
両者は関係がある(所得計算上・会計上、費用と収益が対応している)、と見なしているのだと思います。

 


そして、「共有」における「持ち分」が譲渡不可能な法制度では、
「『共有』をするからには、『共有物』を取得するための拠出金額は各共有者間で同じなはずだ。」、
という考え方になるのではないかと2018年9月19日(水)のコメントを書いた時には思ったわけです。
「『共有物』を取得するための拠出金額が共有者毎に異なるのはおかしい。」、
と2018年9月19日(水)のコメントを書いた時には思ったわけです。
なぜならば、共有者は皆、共同で購入した共有物を全く同じように(全く同じ条件で、全く区別なく)使用するからです。
したがって、「民法上の『共有』では、『共有物』を取得するための拠出金額は各共有者間で同じであることが前提だ。」、
という考え方になるのではないかと2018年9月19日(水)のコメントを書いた時には思ったわけです。
「共有物」を取得するための拠出金額が共有者間で同じでなければ逆に論理的におかしいわけです。
「共有」における「持ち分」が譲渡不可能な法制度における「共有物」の譲渡に関する課税関係について、
あくまで個人的な・思考実験上の概念整理になりますが、次のような案(参謀案)を考えてみましたので参考にして下さい。
「共有」に関する課税関係に関しては、「持ち分」や「拠出金額」ではなく、「共有物」に着目をする、と考えるわけです。
「『共有物』に関する取得原価と譲渡金額はいくらか?」という点から発想すると、次のような課税関係になると思います。
一見すると、参謀案では「妻」の税負担が大きいように思えるかもしれませんが、それは概念的には妻は夫に寄付をしたからです。
拠出金額は0円なのに夫が「共有物」を使用している時点で、それは概念的には寄付なのです。
いずれにせよ、「共有」における「持ち分」は譲渡可能なのかそれとも譲渡は不可能なのかの違いは根源的だと思いました。


From a standpoint of the tax authorities, the number of owners of property in co-ownership is conceptually only one.
(税務当局の立場から見ると、共有物の所有者の人数は概念的には1人だけなのです。)

「PDFファイル」

「キャプチャー画像」



Concerning a transfer of a share of land in co-ownership,
one co-owner sells not the property in co-ownership itself but his own share only.
For other co-owners continue to use the entire property in co-ownership.
At however high price one co-owner purchases a share of property in co-ownership, each co-owner's share is equal.
In other words, each acquisition price of a share of property in co-ownership
has nothing to do with each  co-owner's share.

共有している土地の持ち分の譲渡に関して言えば、
共有者の1人は、共有物そのものではなく自分自身の持ち分のみを売却するのです。
というのは、他の共有者たちはその共有物を使用し続けるからです。
共有者の1人が共有物の持ち分をどんなに高い価格で購入しようが、各共有者の持ち分は相等しいのです。
他の言い方をすると、共有物のそれぞれの持ち分の取得価格は各共有者の持ち分とは関係がないのです。