2018年9月18日(火)
「株式の重複上場は、たとえ投資家は上場有価証券の取引所外での取引は行わないとしても、
売買需給が集中していない(複数の証券取引所に売買需給が分散している)という点において、
結局『市場集中原則』に反している。
『市場集中原則』は、『売買の成立は証券取引所に集中していなければならない。』という意味ではなく、
『売買の需給は証券取引所に集中していなければならない。』という意味である。」、
という点について指摘をした昨日のコメント↓。
2018年9月17日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201809/20180917.html
「日本企業は、新たに米国内で米国預託証券を発行し上場させた後も、少なくとも日本国内においては、
引き続き日本基準を適用して財務諸表を作成し決算短信の発表なり有価証券報告書(さらには他の法定開示書類)の提出なりを
行っていけばよい(それほどまでに、米国預託証券に関しては、日本の証券制度と米国の証券制度は完全に分かれている)。」、
という点について指摘をした時のコメント↓。
2018年9月6日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201809/20180906.html
まず最初に、「米国預託証券」とはどのような仕組みなのかについて概念図を描きましたので理解のヒントにして下さい。
「『米国預託証券』の概念図」
2018年9月6日(木)のコメントでは、「米国預託証券」について次のように書きました。
>The ADR system is an emulation securities system and the "SEC
registration" is exactly an emulator,
>which disguises an overseas issuer
as a pure American issuer independent of the original share.
>米国預託証券制度は仮装証券制度であり、「SEC登録」はまさにエミュレーター(仮装装置)なのです。
>そして「SEC登録」は、海外の発行者を、原株式からは独立して純粋な米国の発行者に仮装するのです。
2018年9月6日(木)のコメントでは、
「米国預託証券」における「SEC登録」のことを「エミュレーター」(仮装装置)と表現しました。
しかし今日は、「有価証券の流れ」という意味では、「エミュレーター」よりももっと的を射た表現があると気付きました。
それは「マスカレード」(仮装)という言葉です。
先ほど紹介しました「『米国預託証券』の概念図」を描く中で、
「米国預託証券」の制度では有価証券に関する「マスカレード」(仮装)が行われている、と思いました。
ここでの「マスカレード」(仮装)の意味合いは、IT用語としての「マスカレード」(仮装)のそれです。
「米国預託証券」の制度は、変換対象(技術分野)は違いますが、概念的にNATやIPマスカレードに似ている、と思いました。
NATやIPマスカレードとは、IPアドレスを変換する技術であり、
グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスを紐付けて変換する技術です。
NATやIPマスカレードについては、次の解説記事が分かりやすいなと思いましたので紹介します↓。
NATとIPマスカレードって?
(ヤマハ株式会社 RTシリーズの使い方や役割などに関するFAQ 最終変更日 2015/Jul/23)
ttp://www.rtpro.yamaha.co.jp/RT/FAQ/Intro/nat.html
紹介している解説記事では、NATは「Network Address Transfer」と書かれていますが、
正確には「Network
Address Translation」が正しいと思います。
紹介したNATやIPマスカレードに関する解説記事を下敷きにして、次のような文章を書いてみました。
IPアドレスの変換を行う「NAT」になぞらえて、「SIT」
(Securities Issuer Translation)という言葉を考え付きました。
「SIT」 (Securities Issuer
Translation)とは、「有価証券の発行者の変換」という意味です。
「SIT」 (Securities Issuer Translation)
まず、典型的な用途から考えると、既に日本国内において株式が発行されていて、新たに米国で株式の上場を計画しているのだが、
米国内で原株式の上場を行うことは米国の証券制度上不可能であるので、証券制度上何らかの変換処置が必要になります。
そんな時、役に立ってくれるのが、「SIT」です。
つまり、日本国内で発行されている株式が外出するとき(米国で上場をする)には、
外行き用の洋服に(つまり、米国用の有価証券に)
着替えさせてくれます(つまり、米国の発行者が発行した有価証券であると仮装してくれます)。
「SIT」は、有価証券の発行者の変換をします。
単に「有価証券の発行者の変換」をしますので、もちろん以下のような事も可能です。
「上場株式(日本国内)←→上場株式(米国内)」の発行者の変換
「非上場株式(日本国内)←→上場株式(米国内)」の発行者の変換
米国の投資家からすると、米国預託証券に関しては
簡単に言えば、日本国内のそれらと比べると、発行者も異なりますし有価証券も異なるのです。
株式時価総額が日本一大きいトヨタ自動車株式会社を例に挙げて言いますと、
日本の投資家から見ると、「トヨタ自動車株式会社株式」という上場有価証券を発行しているのは「トヨタ自動車株式会社」
であるわけですが、米国の投資家から見ると、
米国内には「トヨタ自動車株式会社株式」という上場有価証券は存在していない(米国の株式市場に上場していない)のです。
米国の投資家から見ると、米国の株式市場に上場しているのは、
あくまで「American
Depositary Receipt of a Toyota Motor Corporation Share」であり、
「American
Depositary Receipt of a Toyota Motor Corporation
Share」という上場有価証券を発行しているのは
あくまで「Toyota Motor
Corporation」なのです。
米国の証券制度上は、「Toyota Motor
Corporation」は「トヨタ自動車株式会社」とは別の会社なのです。
「American Depositary Receipt of a Toyota
Motor Corporation
Share」の裏付けである「トヨタ自動車株式会社株式」を
発行しているのは(すなわち、原株式を発行しているのは)、日本の「トヨタ自動車株式会社」であるわけですが、
米国の投資家から見ると(米国の証券制度上は)、
「American
Depositary Receipt of a Toyota Motor Corporation Share」を発行しているのは、
米国の「Toyota
Motor Corporation」なのです。
米国の「Toyota Motor
Corporation」は米国の発行者だからこそ、米国の証券制度に服することができるのです。
日本の「トヨタ自動車株式会社」は、米国の証券制度に服することができないのです。
米国預託証券の制度は、「有価証券を変換する技術」だと言えるでしょう。
米国預託証券の制度は、日本国内で発行されている有価証券と米国内で発行される有価証券を紐付けて変換する技術です。
例えば、米国預託証券の制度では、日本国内で発行されている「トヨタ自動車株式会社株式」を
米国で発行される「American
Depositary Receipt of a Toyota Motor Corporation
Share」へと変換するわけです。
また、米国預託証券の制度は、「有価証券の発行者を変換する技術」だと言えるでしょう。
米国預託証券の制度は、日本国内で発行されている有価証券の発行者と
米国内で発行される有価証券の発行者を紐付けて変換する技術です。
例えば、米国預託証券の制度では、日本の発行者である「トヨタ自動車株式会社」を
米国の「Toyota
Motor Corporation」へと変換するわけです。
The "American Depositary Receipt" system is a "securities masquerade"
system.
And an "Depositary Bank" in U.S. is a "securities
masquerader."
Inside U.S., the original share masquerades as an American
Securities.
An American Depositary Receipt is fundamentally a Japanse
Share.
「米国預託証券」制度というのは、「有価証券マスカレード(仮装)」制度なのです。
そして、米国にある「預託銀行」は、「有価証券のマスカレーダー(仮装装置)」なのです。
米国内では、原株式は米国の有価証券のふりをするのです。
米国預託証券というのは、本質的には日本株式なのです。
To put it in the image of the special term of the Information
Technologies (i.e. "NAT" (Network Address Translation)),
The "American
Depositary Receipt" system is a "SIT" (Securities Issuer Translation).
ITの専門用語(すなわち、「NAT」(Network Address
Translation))になぞらえて表現するならば、
「米国預託証券」制度というのは「SIT」 (Securities Issuer
Translation)(有価証券の発行者の変換)なのです。
A depositary receipt is another share separate from the original
share
only with the fact that its intrinsic value is equal to that of the
original share.
預託証券というのは、その本源的価値は原株式と同じであるだけの原株式からは分離した別の株式なのです。