2018年9月6日(木)
2018/09/05 08:30
株式会社ペッパーフードサービス
米国NASDAQ市場でのADR上場申請のお知らせ
(TDnet(適時開示情報閲覧サービス)に入力された情報と同じPFファイル)
H30.03.30
12:28
株式会社ペッパーフードサービス
有価証券報告書−第33期(平成29年1月1日−平成29年12月31日)
(EDINET上と同じPDFファイル)
【コメント】
株式会社ペッパーフードサービスが米国預託証券を発行して米国NASDAQ市場に上場させる計画であるようです。
紹介している日本経済新聞とプレスリリースには、ADR上場に伴い会計基準の変更を検討している、という旨の記載があります。
私はその記述を読んですぐに、米国基準を適用していないとADRの上場は不可能なのではないかと思いました。
有価証券報告書を見ますと、株式会社ペッパーフードサービスは現在、日本基準を適用して財務諸表を作成していますので、
米国基準を適用して財務諸表を作成し直さなくてはならず(そしてさらに、監査法人から監査を受けなければならず)、
とても今月中にADRの発行と上場は不可能だ、とすぐに思いました。
しかしすぐに、その考え方は少し違うな、とも自分で思いました。
ADRの発行と上場のために、株式会社ペッパーフードサービスが米国基準を適用して財務諸表を作成しなければならない
のは確かですし、その財務諸表を監査法人に監査してもらわなければならないのも確かですが、
そのことと日本国内における情報開示とは別だ、と思いました。
すなわち、ADRの発行・上場後も、株式会社ペッパーフードサービスは今後とも日本基準を適用して財務諸表を作成し、
決算短信の発表なり有価証券報告書(さらには他の法定開示書類)の提出なりを行っていけばいいわけです。
少なくとも日本国内においては、です。
米国内では、米国の証券制度に従い、米国の発行者として、米国会計基準を適用した財務諸表を作成し、
米国の証券制度が求める法定開示書類(当然、英語で記載せねばなりません)を当局に提出していけばそれでよいわけです。
それほどまでに、米国預託証券に関しては、日本の証券制度と米国の証券制度は完全に分かれているわけです。
株式会社ペッパーフードサービスが現在日本国内で行っている法定情報開示と、
株式会社ペッパーフードサービスが今後米国国内で行っていく法定情報開示とは、実は全く関係がないのです。
米国内の投資家は、株式会社ペッパーフードサービスのADRに投資をする際に、
株式会社ペッパーフードサービスが金融庁に提出した有価証券報告書(さらには他の法定開示書類)は一切閲覧しないのです。
米国内の投資家は、株式会社ペッパーフードサービスのADRに投資をする際には、
株式会社ペッパーフードサービスが米国内で米国の金融当局に提出をした(英文の)法定開示書類を閲覧するのです。
日米両国の証券制度を俯瞰すれば、
「株式会社ペッパーフードサービスのADRと株式会社ペッパーフードサービスの原株式とは全く関係がない。」、
と言わねばならないのです。
率直に言って、米国内におけるADRの取引に日本国内の原株式に関する情報開示は一切関係がないのです。
米国の投資家は、ADRを取引する際、原株式に関する開示情報は一切閲覧しないのです(それが証券制度上の前提でもある)。
話を一般化すると、日本の上場企業は、ADRを上場させていようがさせていまいが、
日本国内における情報開示に関しては、全て日本会計基準を適用して財務諸表を作成すればよいわけです。
そして、ADRに関しては、米国会計基準を適用した財務諸表を別途作成し、米国の金融当局に提出すればよいわけです。
一見すると、上場企業が財務諸表を2種類作成しており裏帳簿か何かのように感じるかもしれませんが、それは違います。
証券制度自体が分かれていますので、投資家が投資判断をする際に閲覧する開示情報もまた異なるということになりますので、
原株式とは別にADRも発行している場合は、財務諸表そのものが必然的に2種類になってしまうだけなのです。
いつのころからか、ADRを発行する日本企業が米国会計基準を適用した財務諸表を作成し、
日本において決算短信の発表をしたり有価証券報告書(さらには他の法定開示書類)の提出をしたりするようになったのですが、
発行者は日米2つの証券制度に服していることを鑑みれば、その開示方法は完全に間違っているのです。
日本企業は、たとえADRを米国に上場させていようとも、日本国内では日本会計基準を適用した財務諸表を作成・開示するべきなのです。
ADRを上場させている場合、日本企業は異なる2種類の情報開示を各国で行わなければならないのです。
株式会社ペッパーフードサービスは、日本国内では日本の法人(発行者)ですが、米国内ではあくまで米国の発行者なのです。
米国預託証券というのは、純粋に米国の上場株式なのです。
米国預託証券というのは、純粋に米国市場に上場する銘柄の1つなのです。
米国の投資家の立場から見ると、米国預託証券というのは海外にある原株式とは独立・分離しているのです。
例えば、たとえ原株式そのものはどの国のどの株式市場にも上場していないとしても、
米国預託証券を米国内の株式市場に上場させることができるのです。
米国預託証券を米国内の株式市場に上場させるのに、原株式をどこかの国のどこかの株式市場に上場させる必要はないのです。
簡単に言えば、「非上場原株式の上場米国預託証券」というものが全く考えられるわけです。
極端な話をすると、例えばですが、トヨタ株式の米国預託証券は米国の株式市場において上場を維持したまま、
トヨタ株式そのものは日本の株式市場から上場廃止にするということができるのです。
米国預託証券は、それほどまでに独立し分離した株式なのです。
米国預託証券制度は仮装証券制度であり、「SEC登録」はまさにエミュレーター(仮装装置)なのです。
そして「SEC登録」は、海外の発行者を、原株式からは独立して純粋な米国の発行者に仮装するのです。
Extremely speaking, a depositary bank can issue an ADR without
leave
independent of intentions of an issuer of the original share.
In
theory, an ADR is a very far share from the original share.
極端なことを言えば、預託銀行は、原株式の発行者の意向とは無関係に無断で米国預託証券を発行することができるのです。
理屈では、米国預託証券は原株式からはるか遠く離れた株式なのです。
2018年9月6日
サッポロホールディングス株式会社
株主優待制度の変更に関するお知らせ
ttp://www.sapporoholdings.jp/news_release/0000020451/pdf/20180906stock.pdf
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
【コメント】
サッポロホールディングス株式会社が、個人投資家による自社株式の長期保有を促して安定株主を増やすことを目的に、
現行の株主優待制度の一部を見直し、長期保有株主を優遇する制度を新たに導入する、とのことです。
3年以上保有する長期保有株主は、短期保有の株主よりも充実した優待内容とするとのことです。
「株主が株式を長期間保有すれば保有するほど株主優待の内容が豪華になる」、という株主優待制度を導入している企業は
他にもあり、この事例が唯一の事例というわけでも初めての事例というわけでもないわけですが、
株式の保有期間の長期化を促すこの種の株主優待制度は証券制度上の問題がある、ということに今日気付きました。
より正確に言えば、上場維持基準と言いますか、株式市場の活況度と関連がある問題が生じると気付きました。
それは、「株主が長期保有すると、株式市場内の流通株式数と流通株式比率が低下する。」という問題です。
理論的には、既存株主が株式を長期保有したところで(既存株主が所有株式を誰にも売却しなかったところで)、
株式の本源的価値が低下するわけでは全くない(その意味では、株主による長期保有に証券制度上の問題はない)のですが、
現代の証券取引所では、投資家による株式の取引可能性(すなわち、株式の購入可能性や売却可能性)が1つの論点になります。
「株式市場内の流通株式数と流通株式比率が低下すると、市場の投資家の利益が害される。」(投資を"exchange"できないから)、
という考え方が現代の証券制度にはありますので、この種の株主優待制度は証券制度上は控えるべきではないかとふと思いました。
A complimentary system for shareholders aiming at long-term holding by
shareholders
lowers liquidity of shares in the market.
The longer existing
shareholders hold their shares, the less the shares are traded in the
market.
What you call a stable shareholder deteriorates the number of shares
tradable in the market.
株主による長期保有を目的とした株主優待制度は、市場内の株式の流動性を低下させるのです。
既存株主が株式を長期間保有すれば保有するほど、市場内ではその株式は取引されなくなるのです。
いわゆる安定株主は、市場内の取引可能な株式数を減少させるのです。
2018年8月31日(金)日本経済新聞
長崎の2地銀統合 上
「独占」懸念、揺れた10年 「やめるか」一転 地域疲弊に焦り
(記事)
2018年9月5日(水)日本経済新聞
長崎の2地銀統合 中
公取委 幻の差し止め命令 官邸仲裁、揺らいだ独立性
(記事)
2018年9月5日(木)日本経済新聞
長崎の2地銀統合 下
「信頼なくして地銀なし」 その言行、顧客は見ている
(記事)
@経営統合後は、統合銀行は長崎県内の他のどの金融機関よりも高い利率で貸し出しを行わなければならない。
A経営統合後は、統合銀行は長崎県内の他のどの金融機関よりも低い利率で預金を預からなければならない。
金融庁等の金融検査等の協力を得ることになりますが(もしくは、公正取引委員会の権限でそこまでできるのか分かりませんが)、
経営統合前に統合当事会社に競争環境を維持するための何らかの施策を実行すること求めるのではなく、
経営統合後の銀行業務(預金の預かりと資金の貸し出し)に当局が一定の影響を与えることで競争環境を維持する、
という承認方法が考えられるなと思いました。
経営統合の承認に際し、競争規制当局が統合当事会社に上記の2つの条件を付ければ、
経営統合後、統合銀行の貸出市場シェアは大なり小なり自然と逓減していくと考えられるわけです。
銀行業の競争環境の維持に関しては、経営統合時の貸出市場シェアを基準にすることには意味がないと最初に書きましたが、
競争環境の維持というのならば、より本質的には経営統合後の長期的な貸出市場シェアの方が重要であるわけです。
統合当事会社に債権譲渡(貸出金の他行への移転)を実行させれば一気に貸出市場シェアが引き下がるのは確かですが、
そのような曲芸ともいえる施策を実行させるよりも、経営統合後の貸出利率と預金利率に影響を与えるようにする方が、
より円満・円滑な経営統合が実現できる(融資先や預金者に経営統合にまつわる心配をかけることも一切ない)と思います。
今私が提唱しているのは従来の金融当局による行政指導に近い概念のものとなるわけですが、
最初に書きましたように、債権譲渡(貸出金の他行への移転)を実施することでたとえ一時的に貸出市場シェアを引き下げても、
銀行が正常な営業を続ける限り再び貸出市場シェアは上昇するだけであるわけですから、
それならばいっそのこと経営統合後の貸出利率と預金利率にハードルを課する方が、
長期的に見ればよっぽど競争環境の維持の理念に適うわけです。
統合当事会社の既存の借入人は、借入金の返済や借り換えを期に、自然と他行から借り入れるようになるでしょうし、
統合当事会社の既存の預金者は、既存の口座を解約するなどして、自然と他行へ預金を預け入れるようになるでしょう。
繰り返しますが、経営統合の審査に関しては、経営統合時ではなく、経営統合後の競争環境が本質的に重要であるわけです。
融資先の「出戻り」では、債権譲渡(貸出金の他行への移転)の意味がないわけです。
経営統合にハードルを課するというのなら、銀行業の場合は、「利率」にハードルを課さなければ元の木阿弥になるのです。
銀行業における貸出市場シェアに影響を与える本質的手法は、「利率」を操作することなのです。
公正取引委員会の審査員がどこまで銀行業のことが分かっていたのかは分かりませんが、
銀行業の競争環境は第一には「利率」で決まるのです。