2018年9月13日(木)
「『継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)』は、『財務諸表の注記』ではない。」、
という点について指摘をした昨日のコメント↓
2018年9月12日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201809/20180912.html
>「継続企業の前提に関する事項」は、
>「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成された財務諸表」の「注記」という位置付けであるようです。
そして、そのより具体的な「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」として、次のように書きました。
>「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)」の記載は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」
>及び「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」に定められていることである
昨日は「継続企業の前提に関する事項」が定められている「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」として、
上記の2つだけをコメントの中で言及したわけですが、昨日は忘れていた(考えが及ばなかった)のですが、今日になって、
「そう言えば、もう1つ『一般に公正妥当と認められる企業会計の基準』があるな。」と気付きました。
それは、「会社計算規則」です。
「会社計算規則」の第三条には次のように書かれています。
>第三条 この省令の用語の解釈及び規定の適用に関しては、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の
>企業会計の慣行をしん酌しなければならない。
この第三条だけを読むと、「会社計算規則」は何か「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」ではないかのように
感じてしまいますが、「会社計算規則」は紛れもなく「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」です。
この第三条が言いたいのは、「会社計算規則」を適用する上で解釈が分かれるようなことが仮にある場合は、
企業会計原則を始めとする原理原則や企業会計の慣行をしん酌しなければならない、という意味だと思います。
それで、今日になって「会社計算規則」の規定について調べようと思ったのですが、
「会社計算規則」の規定について調べる前は、
「会社計算規則」には「継続企業の前提に関する記載」についての定めはないはずだ、と私は考えました。
なぜならば、理論的には「会社計算規則」は株式の譲渡を前提とはしない会社に適用される会計基準だからです。
現行の日本の会社法では、「非上場企業だが株式の譲渡ができる株式会社」も予定されているわけですが、
理論的には、会社というのは、株式の譲渡が可能な会社と株式の譲渡が不可能な会社とに大きく分けられます。
この理論上の考え方から推論しますと、株式の譲渡が不可能な会社では、
「継続企業の前提に関する記載」は一切不要なはずなのです。
なぜならば、株式の譲渡が不可能な会社では、たとえ継続企業の前提に関する重要な不確実性が生じようとも、
株主の利益には無関係だから(そして、投資家がその会社の株式を買うということがないから)です。
「継続企業の前提に関する記載」があろうがなかろうが、どちらにせよ株主は株式の譲渡はできないわけです。
簡単に言えば、株式の譲渡が不可能な会社では、株主は投資判断をしないわけです。
株主が所有株式を譲渡することができないのですから、「継続企業の前提に関する記載」の意味が全くないわけです。
理論的には、「継続企業の前提に関する記載」は、株式の譲渡が可能な会社(上場企業)を前提とした開示制度であるわけです。
確かに、既存株主も市場の投資家も、「継続企業の前提に関する記載」を見て証券投資に関する投資判断と意思決定をする、
ということがあるわけですが、それは株式の譲渡が可能な会社(上場企業)の場合だけなのです。
株式の譲渡が不可能な会社では、既存株主も株式を売れませんし市場の投資家も株式を買えないわけです。
ですから、株式の譲渡が不可能な会社では「継続企業の前提に関する記載」は一切必要がない(株主の利益に影響を与えない)のです。
ところが、「会社計算規則」の規定を調べてみますと、個人的には理論的には記載を求めるの間違っていると思うのですが、
次のように「会社計算規則」にも「継続企業の前提に関する記載」についての定めがありました。
会社計算規則
>(注記表の区分)
>第九十八条 注記表は、次に掲げる項目に区分して表示しなければならない。
>一 継続企業の前提に関する注記
>(継続企業の前提に関する注記)
>第百条 継続企業の前提に関する注記は、事業年度の末日において、当該株式会社が将来にわたって事業を継続するとの
>前提(以下この条において「継続企業の前提」という。)に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が
>存在する場合であって、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続企業の前提に関する
>重要な不確実性が認められるとき(当該事業年度の末日後に当該重要な不確実性が認められなくなった場合を除く。)における
>次に掲げる事項とする。
>一 当該事象又は状況が存在する旨及びその内容
>二 当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策
>三 当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由
>四 当該重要な不確実性の影響を計算書類(連結注記表にあっては、連結計算書類)に反映しているか否かの別
考えてみますと、投資家にとっては「不確実性」というのが投資判断を行う上で一番困るわけです。
紹介している記事には、「提案をした」、「メディア観測が伝わった」、「現時点では最終的な合意には至っておらず、
買収が成功するかどうかの保証はない」、といったよく聞きなれた文言が並んでいますが、実は投資家の立場からすると、
このような不確実な情報を開示されても、結局どう判断すればいいか分からない、という状態になるだけなのです。
投資家が慌てて取引を行ったり市場が混乱したりということを避けるために、適時開示という位置付けで今後の方針を発表している、
ということなのだとは思いますが、実は、不確実な発表をされるくらいならサプライズの方が投資家には悪影響がないのです。
不確実な早期開示よりも確実なサプライズの方が、投資家はより正確な投資判断ができるのです。
究極的には(最も元来的には)、不確実性に関して予想を行うのは証券投資ではない、という考え方になると思います。
究極的には(最も元来的には)、不確実性に関して予想を行うのは実はギャンブルだ、という考え方になると思います。
In the stock market, the harmfulness of uncertainty is much greater than
that of surprise.
株式市場では、不確かさはサプライズよりもはるかに有害なのです。
H30.09.12 16:21
東武鉄道株式会社
公開買付報告書
(EDINET上と同じPDFファイル)
H30.09.12
16:22
東武鉄道株式会社
変更報告書
(EDINET上と同じPDFファイル)
H30.09.12 16:33
株式会社東武ストア
臨時報告書
(EDINET上と同じPDFファイル)
↑今まで触れたことはありませんでしたが、通常は、公開買付が成立しますと公開買付者は大量保有報告書(または変更報告書)を
公開買付報告書と同時に財務局に提出することになります。
東武鉄道株式会社による株式会社東武ストア株式に対する公開買付についての前回のコメント↓。
2018年8月1日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201808/20180801.html
【コメント】
新聞記事は全くありませんが、東武鉄道株式会社による株式会社東武ストア株式に対する公開買付が成立した、とのことです。
この事例そのものについては特にコメントはありませんが、
2018年8月1日(水)のコメントでは、理論的には全ての株式を取得する手法が用意されている証券制度では公開買付は認められない、
と指摘をして、次のようなことを書きました。
>「完全子会社化を目的としている場合は公開買付を実施してはならない。」
>公開買付という株式取得方法と全ての株式を取得する手法の両方が法制度に用意されていること自体が理論的に間違っている
>「公開買付という株式取得方法が認められるのは全ての株式を取得する手法が用意されていない法制度の場合のはずだ。」
全ての株式を取得する手法が法制度に用意されている場合は、公開買付により過半数の株式を取得することは間違っており、
さらに言えば、そのような法制度では、市場取引により過半数の株式を取得することすら間違っているのです。
その理由は、支配株主の誕生は将来に完全支配関係が生じることの原因となり得るからです。
少数株主は、「一体いつ支配株主が子会社を完全子会社化するのか分からない。」、と思いながら証券投資を行うことになります。
少数株主の立場からすると、「支配株主は、自分が算定している株式の本源的価値よりも低い価格で残りの株式の全てを
強制的に取得するかもしれない。」(希望価格で売却できない)という状態になりますから、仮に支配株主が誕生するという場面では、
買収者には過半数ではなく全ての株式を一度に取得するよう義務付けることが証券制度上(投資家保護の観点)求められるわけです。
現在の日本の会社法には、買収者が会社の全ての株式を強制的に取得する手法が導入されていますので、
理論的にはですが、実はその導入と同時に金融商品取引法から公開買付の規定を全面的に削除するべきであったのです。
それから、2018年9月9日(日)と2018年9月10日(月)のコメントでは、
「投資家が信頼してよい情報は財務局に提出された法定開示書類だけである。」、という点について考察を行いました。
この点について一言追記をしたいのですが、理論的には、性悪説に立てば、上記の言葉は、
「投資家は法定開示書類を財務局でのみ入手する。」という意味でもあるわけです。
法定開示書類の電子化が進んだ現在では、より実務的に言えば、「投資家はEDINETでのみ法定開示書類を入手する。」、となります。
証券会社の支店や公開買付者のウェブサイトや対象会社のウェブサイトでプレスリリースを入手するのは、理論的には間違いです。
株式会社東武ストアのウェブサイトを見ますと、法定開示書類(やその写し)は一切アップロードされていません(下記参照↓)が、
本来法定開示書類は財務局(EDINET)でのみ入手するものですから、実は株式会社東武ストアの開示方法が理論的には正しいのです。
決算短信・決算説明会資料(株式会社東武ストア)
ttps://www.tobustore.co.jp/index.php/company/ir/settle
「キャプチャー画像」