2018年9月10日(月)
「投資家が信頼してよい情報は財務局に提出された法定開示書類だけである。」、
という点について指摘をした昨日のコメント↓。
2018年9月9日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201809/20180909.html
「理論的には、証券制度(上場制度)における会計監査では、会計監査人は株主からも独立した存在でなければならないので、
会計監査人は株主ではなく金融当局が選任する(株主は会計監査人を選任できない)、という監査制度でなければならない。」、
という点について指摘をした時のコメント↓。
2018年8月21日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201808/20180821.html
【コメント】
昨日のコメントに一言だけ追記をしたいと思います。
個人的な伝聞やビジネス雑誌や報道機関を通じた報道やインターネットを通じた公表等といった手段により、
投資家は証券投資を行う中で様々な情報を受け取るわけですが、それらの情報はまさに真偽ごちゃまぜの玉石混交であるわけです。
Information which investors in the market receive everyday is a mixture of
the true and the false.
(市場の投資家が日々受け取る情報は玉石混交である(真実の情報と虚偽の情報の混合物である)。)
しかし、証券制度上は、どの情報が真実でその情報が虚偽なのかを分別・区別することは投資家には求められてはいません。
むしろ、「どの情報が真実でその情報が虚偽なのか?」は証券制度が明らかにしなければならないことだと言わねばなりません。
実は、「投資家は真実の情報のみを根拠に投資判断を行う。」ということが証券制度上の前提だとすら言えるわけです。
虚偽の情報を根拠に投資判断を行うことは、証券投資ではなく、ただのギャンブルであるわけです。
そこで、証券制度は、情報の真偽を明確にするために、
「投資家が信頼してよい情報は財務局に提出された法定開示書類だけである。」、という制度を構築しているわけです。
財務局に提出された法定開示書類だけは真実である、という前提を置いているわけです。
「財務局に提出された法定開示書類のみを根拠に投資判断を行えば、投資家は正しい投資判断ができる。」、
というのが証券制度の前提であるわけです。
ただ、会社制度・証券制度の初期の頃(例えば、市場取引以外には公開買付制度しかなかった頃)と比較して、
M&Aの規定や手続きが複雑化している(公開買付以外に、会社法に新たな他の株式取得手法が用意されている)現代では、
「法定開示書類の提出」一本では投資家が投資判断をできない部分もあるわけです。
その具体的かつ最も典型的な一例が「株式交換」であり、昨日は上場企業に対する株式交換について次のように書きました。
>例えば、ある上場企業を現金を対価として株式交換により完全子会社化することを計画している買収者は、
>たとえ完全子会社化する意思決定をしても、株式交換に関する記者会見や何らかの情報発信は行うかもしれませんが、
>金融商品取引法上は何らの法定開示書類も提出しないわけです。
日本の株式交換とは異なり、例えば英国でスキーム・オブ・アレンジメントを実施する際には、
証券制度上買収者は英国金融当局に対し何らかの法定開示書類を提出する義務があるのではないかと思います。
日本において上場企業に対する株式交換が計画されている場合は、対象会社の既存株主や市場の投資家は、
財務局に提出された法定開示書類ではなく、現実には報道機関に報道等を根拠にして投資判断を行うことになります。
「投資家が信頼してよい情報は財務局に提出された法定開示書類だけである。」、という制度上の前提に重きを置くのなら、
証券制度としては、株式交換実施に関する法定開示書類を財務局に提出する義務を買収者に対し課するべきなのです。
例えば、買収者が株式交換実施に関する法定開示書類を財務局に提出していない場合は、たとえ株主総会を招集しても、
株式交換実施に関する株主総会決議を採決することが会社法上できない(採決しても会社法上無効)、と定めるべきなのです。
完全子会社が上場している場合は、株式交換は完全子会社の既存株主だけの問題ではない(市場における投資判断の問題)のです。
紹介しています2018年8月23日(金)付けの日本経済新聞の記事は、会社側が自主的に議案を撤回する事例が多いという内容ですが、
会社法上は、株主総会招集通知に記載した議案を決議することなく撤回するということはできません(そのような規定はない)。
会社法上は、株主総会招集通知に記載した議案しか決議することができません(仮に議案を記載していないなら決議はできない)が、
逆に、株主総会招集通知に記載した議案は必ず株主総会で決議しなければならない、という考え方・解釈になります。
記事によりますと、証券制度上は議案の撤回に関する「臨時報告書」(やその提出)があるとのことですが、
会社法上はそもそも議案の撤回についての規定がない(その趣旨の「臨時報告書」やその提出は会社制度上あり得ない)のです。
議案の撤回は「招集通知の訂正・修正」に相当しますが、会社法上は「招集通知の訂正・修正」についての規定もありません。