2018年8月21日(火)
2018年8月21日(火)日本経済新聞
「半期決算に」トランプ氏を評価 短期主義の経営に警鐘
(記事)
2018年8月21日(火)日本経済新聞
トーマツ前期 営業益10億円 人件費増で実質減益
(記事)
「理論上は(元来の会社では)、証券制度上会社の清算期日は決算日(期末日)だけであったはずだ。」という点と、
「理論上は、監査人にとって業務執行や証憑(業務執行の結果)は所与のこと(監査人には変えようがないこと)である。」、
という点について指摘をした昨日のコメント↓
2018年8月20日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201808/20180820.html
アングル:米四半期決算を半期に、トランプ案に「課題山積」
[17日 ロイター] - トランプ米大統領は17日、
企業の決算発表を四半期ごとから半期ごとに変更した場合の影響を
調査するよう米証券取引委員会(SEC)に求めたことを明らかにした。
トランプ氏は発表が年2回になれば「柔軟性が増し、資金が節約できる」としているが、
変更の実現には長い期間を要する公算が大きく、先行きは不透明だ。
制度変更手続きを巡る、主な課題をまとめた。
●トランプ氏はSECに制度変更を強要できるか
SECは独立した機関であり、大統領がSECに個別の制度変更を直接命じることはできない。
大統領はSECの委員長や委員を指名する権限を持つが、業務の監督権限はない。
トランプ氏はツイッターに「SECに検討を求めた」と投稿したが、公式にはあくまでも「要請」であり、「命令」ではない。
●SECはトランプ案を調査するか
トランプ氏にはSECに制度変更を強要する権限がないが、SEC委員長は儀礼上、この案について調査すると
約束するかもしれない。SECのスタッフは独自に調査し、学術的な資料を調べて幅広い業界から意見を集め、
制度変更に備えた土台作りに着手しようとするだろう。
規制当局は自らの判断で調査を実施することが可能なほか、議会や大統領、さらには国民の求めに応じて調査を行うこともある。
ただ、調査を行っても政策や規制が変わるという保証はない。
●規則変更の手続きは
規則変更の手続きは行政手続法で厳しく定められており、費用対効果の観点から変更は正当だとの調査結果が必要となる。
その上、いかなる規則変更案についてもクレイトンSEC委員長は正式な手続きに則り、
委員の過半数の支持を取り付けなければならない。
委員長は規則変更案を文書化した上で、意見公募を行う必要がある。投資家や企業、取引所、年金ファンド、
利益団体などから大量の意見が寄せられるだろう。
最後にSECは規則変更の是非について委員から過半数の支持を得る必要がある。
SECの規則策定、特に異論の多い問題については、数年とは言わないまでも数カ月を要する可能性がある。
●議会の承認は必要か
1934年証券法は企業に対して定期的に決算発表を行うよう定めているが、SECは発表の頻度についての個別の規則の策定や
変更を行う裁量権を持っている。議会は四半期報告を義務付ける法案を成立させてSECによる制度変更の決定を
事実上覆すことが可能だが、議員は二の足を踏みそうだ。
(ロイター 2018年8月20日
/
14:28)
ttps://jp.reuters.com/article/us-sec-trump-process-explainer-idJPKCN1L5098
日本への影響は…トランプ「四半期決算見直し」指示の波紋
トランプ大統領が17日、年4回・四半期ごとの上場企業の決算発表を年2回に変更できないか検討するよう、
米証券取引委員会(SEC)に指示した一件。トランプ大統領は「経費節減につながるかもしれない」とツイートし、
記者団に「とても真剣に検討している」とヤル気満々だ。
「四半期決算」は、株主利益を重視する米国ならではのもの。欧州は採用していないが、日本は米国に押し付けられ、
2004年3月期から全上場企業に四半期決算が義務付けられている。米国発の制度なのに、なぜ今、見直すのか。
岡山商科大学経営学部の長田貴仁教授が言う。
「さすがに、米国の経営者もシビレをきらしたようです。現在、株式投資の中心である個人投資家は経営のど素人。
そんな何もわかっていない株主が四半期ごとに目に見える成果を求めてくる。
これではどっしり構えた経営などやってられません。とりわけ、トランプ支持の経営者は、鉄鋼業や製造業など老舗企業が多く、
ITなど短期間で急成長する企業とは異なります。四半期決算の見直しは、ペプシコのヌーイCEOがトランプ大統領に進言した
ようですが、多くのトランプ支持の経営者の要望だったのでしょう」
ヌーイ氏は「より長期的な視点に立った企業のあり方を議論している」と語っている。単なる経費節減ではなさそうだ。
もし米国が年2回の決算に戻せば、日本が追随することは確実。経団連も17年度の規制改革要望で、
書類作成に携わる社員の稼働・負担は膨大だとして、<将来的には欧州を初めとした諸外国(英、仏等)と同様に
第1及び第3四半期開示義務を廃止すべき>と提言している。
「四半期決算が日本で導入されて15年になりますが、短期の成果に追われる経営スタイルは、日本企業にはそぐわなかった。
何世代も引き継がれる同族企業が多く、終身雇用が定着している。長い目で経営を捉えるのが日本企業の特徴です。
トランプ大統領の動きは日本企業にとって朗報ではないでしょうか」(長田貴仁氏)
投資家からは「タイムリーな情報を得られなくなる」「インサイダー取引の温床になる」と懸念の声も上がる。
ただ、株主至上主義によって経営者が長期展望を描けなくなり、日本企業の弱体化が進んだ側面があるのも事実。
四半期決算の本家・米国の動向は、日本企業も他人事ではない。
(日刊ゲンダイ 2018年8月21日)
ttps://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/235830
A company closes its books at each annual closing date,
whereas it closes
itself at a liquidation date (at the last closing
date).
(会社は毎年決算日毎に帳簿を締め切りますが、清算期日には(最後の決算日には)会社自体を清算するのです。)
そして、「会計監査」とは、煎じ詰めれば、「仕訳が正しいのか否かを検査する。」、ということであり、
証憑の真実性は「会計監査」の前提である(証憑の改竄等は会計監査の対象外である)、という点について昨日は指摘しました。
会社の監査役というのは、元来的にはまさに「会計監査」を行う会社機関であり(監査役は業務執行の監査などは行わない)、
理論的には、取締役が証憑を改竄・捏造することについては監査役は何もできない、と考えなければならないのです。
それから、昨日は、証券制度における会計監査を行う者の法的資格に関して、次のように書きました。
>理論的には、会計監査人と監査役とでは独立性という点では相違は一切ない(どちらも会社から独立して監査を行う機関)のです。
上記の記述自体は間違ってはいないのですが、今日になって関連するある追加的な論点を思い付きました(思い出しました)。
それは、「証券制度における会計監査を行う者は株主からも独立していなければならない。」という点です。
理論上の話になりますが、会社制度における会計監査(≒株式の譲渡は前提としていない会社法監査)では、
会計監査を行う者は株主から独立していなければならないという考え方はないのですが、
証券制度における会計監査(≒株式の上場を前提とした金融商品取引法監査)では、
会計監査を行う者は株主から独立していなければならないという考え方になるわけです。
すなわち、前者(≒会社法監査)の会計監査人は株主が選任しても何ら問題ないのですが、
後者(≒金融商品取引法監査)の会計監査人を株主が選任するのは投資家保護の観点からは問題が生じ得る、という結論になります。
後者(≒金融商品取引法監査)の会計監査人を株主が選任しますと、その既存株主(=選任者)の利益に配慮した会計監査が
行われ得る、という考え方に理論上は(性悪説に立てば)なると思います。
会計監査人は、会計監査人として十分な職責を果たしさえすればそれで十分な「会計監査」が遂行されるとも言えますが、
市場の投資家から見ると、既存株主(=選任者)が選任した会計監査人が「会計監査」を行ったのでは中立性に欠ける、
という考え方になるわけです。
元来的には、会計処理は証憑から一意に決まる(会計監査人が経営や業務執行に関連した判断をすることはない)のですが、
現代では将来予想や見積りその他を行う会計処理が実務上ありますので、
簡単に言えば、既存株主が株式を高い価格で売却できるように、本来行うべき貸倒引当金の計上や減損処理を先送りする会計処理を
会計監査人が認める恐れが証券制度における会計監査ではあるわけです。
したがって、理論的には、証券制度における会計監査では、会計監査人は株主からも独立した存在でなければなりませんので、
会計監査人は金融当局が選任する(株主は会計監査人を選任できない)、という監査制度でなければならないのです。
株式の譲渡は認められているのか否かにより、会計監査人に求められる独立性の高さが大きく変わるのです。
今日紹介している2018年8月21日(火)付けの日本経済新聞の記事について、一言ずつコメントを書きたいと思います。
監査法人トーマツの記事についてですが、一般に、監査法人の収入ほど時期による変動が多い業種業界もないと思います。
一般に、監査法人の業務(会計監査に関する契約)は監査先の株主総会の終結の時までとなっているかと思いますが、
上場企業は3月期決算が6割超(東証一部だけで言えば7割超)ですので、
監査法人が収入を計上する時期は「6月」に極端に偏っている、と言えると思います。
もしくは、監査法人が監査先の取締役会に有価証券報告書に添付する「独立監査人の監査報告書」を提出するのは、
定時株主総会の開催日の後(開催日の次の日等)というスケジュールになっていることが多いようですので、
実際にはケースバイケースなのかもしれませんが、
監査法人の業務(会計監査に関する契約)は監査法人が監査先の取締役会に有価証券報告書に添付する
「独立監査人の監査報告書」を提出する時まで(当該監査報告書の提出までが監査法人が負っている監査契約の範囲)
となっているとも考えられますが、いずせにせよ、
監査法人が収入を計上する時期は「6月」に極端に偏っている、と言えると思います。
現在、収益認識基準が企業会計や法人税法の分野では大きなトピックになっているわけですが、
毎年監査法人が収益(企業から受け取る監査報酬)を認識する時期は「6月」に極端に偏っている、と言えると思います。
一般に、公認会計士にはゴールデンウィーク休みが一切なく(4月と5月が一年で公認会計士が最も忙しい時期)、
6月の終わりから7月が公認会計士が一番暇な時期、と言われるわけですが、
公認会計士の繁忙・閑散時期と監査業務の集中・終了時期とは一致しているわけです。
現在では、四半期報告制度が導入されていますので、
監査法人が「四半期レビュー」の報酬を企業から受け取る(結果収益の認識時期が分散する)ことも契約次第ではあると思いますが、
会計監査は年に1回のみ行う(もしくは「四半期レビュー」も含めて1年間で行う監査である)という伝統的な監査制度を想定しますと、
監査法人が収益を認識する時期は「6月」に極端に偏っている、と言えると思います。
記事中の監査法人トーマツは5月期決算であるようですが、そうしますと、
監査法人トーマツは毎年事業年度の期初(「6月」)に極端に大きな金額の収益を認識する、ということになります。
記事には監査法人トーマツの決算の期間について次のように書かれています。
>前の期は8ヶ月間の変則決算だったため単純比較できない
「2017年6月から2018年5月までの期」(12ヶ月間)について記事では言及されているわけですが、
その前の期というのは「2016年10月から2017年5月までの期」(8ヶ月間)であるわけです。
この「2016年10月から2017年5月までの期」(8ヶ月間)では、2016年の6月に受け取った監査報酬は当然計上されないわけですが、
監査法人にとって一番の稼ぎ時である「6月」の収入が抜け落ちた決算では、他の期との実質的な比較も非常に難しいと思います。
監査法人は月別の収入の金額は開示していないと思いますが、監査契約の義務の履行の完了という観点から言えば、
監査法人が収入を計上する時期は「6月」に極端に偏らざるを得ないのではないかと思います。
収益の分割計上や収益計上の平準化はどの程度認められるのか、という点も収益認識基準の議論では重要だと思います。
ところで、紹介している日刊ゲンダイの記事には、日本における四半期の決算について次のように書かれています。
>日本は米国に押し付けられ、2004年3月期から全上場企業に四半期決算が義務付けられている。
記事中の「2004年3月期から全上場企業へ義務付けられた四半期決算」とは、証券取引所の有価証券上場規定の話だと思います。
金融商品取引法上の四半期報告制度の義務付けは2008年4月以降に開始される事業年度から(一般には2009年3月期から)です。
すなわち、この空白期間(5年間)の間は、上場企業(発行者)は、決算短信の開示により四半期決算を発表していたにも関わらず、
四半期報告書は金融当局に提出していなかった、という証券制度上の財務情報開示に関する制度間の乖離が実は当時はあったのです。