2018年8月5日(日)



2018年7月4日(水)日本経済新聞
連続増配銘柄の底力 「安心感」買われ資金流入
(記事)



 

「理論上は、実は上場企業は『同一日に』株主総会を開催しなければならない。」という点について書いた時のコメント↓

2018年6月29日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201806/20180629.html

 

「理論的な整合性を考えれば、『PBR』(Price Book-value Ratio、株価純資産倍率)の分子の『株価』には、
分母の『純資産額』を織り込んだ株価でなければならないのではないか?」、という点について指摘をした昨日のコメント↓

2018年8月4日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201808/20180804.html

 


【コメント】
まず最初に、昨日のコメントに一言だけ追記をします。
昨日は、理論的な整合性の観点から、記事で分析がなされています「PBR」について次のように書きました。

>株価と言っても取引時間中に変動し続けるわけですが、おそらくのところ、記事や棒グラフで用いられている「PBR」の計算式は、
>「株主総会開催日の終値÷(3月末の貸借対照表の純資産額÷株主総会開催日時点の発行済株式総数)」、なのだと思います。
>「3月末日の終値÷(3月末の貸借対照表の純資産額÷3月末日時点の発行済株式総数)」、ではおそらくないのだろうと思います。

昨日コメントを書き終わった後に自分で気付いたのですが、昨日紹介した日本経済新聞の記事は2018年6月26日(火)付けであった
わけですが、棒グラフには翌日の6月27日(水)と翌々日の6月28日(木)の「PBR」も記載されているわけです。
そうしますと、記事本文や棒グラフ中の「PBR」の分子の「株価」はいつの日のどのような株価を参照しているのか全く分からない、
ということになるのですが、推測するに、純資産の日(=貸借対照表日=決算日)である「3月末日」の「終値」を用いている、
ということなのではないかと思います。
しかし、そう考えますと、今度は記事本文や棒グラフ中の「PBR」の分子の「株価」には分母である「純資産」は全く反映されていない、
ということになります(3月末日時点では決算の内容は市場にまだ開示されていないから)し、さらに言えば、
市場の投資家は「これは集中日に株主総会を開催する銘柄だ。」とは分からずに株式の取引を行っていることになります。
なぜならば、3月末日時点では会社の株主総会開催日は市場にまだ開示されていないから(昨年度までの開催日なら分かるが)です。
より具体的に言えば、2018年3月31日の時点では、市場の投資家には、株式を購入した会社の株主総会の開催日も分かりませんし、
上場企業全体の株主総会の集中日がいつになるのかも分からない、という状態であったわけです。
去年までの傾向を踏まれれば、今年2018年の上場企業全体の株主総会の集中日は概ね6月21日から6月28日の間であろう、
と予想をすることはできますが、自分が株式を購入した会社の株主総会開催日がいつになるのかは予想のしようもないわけです。
株主総会開催日の分散化が市場で求められている昨今、昨年と全く同じ日程を今年も組むだろう、とは予想しづらいわけです。
3月末日時点では、「私は集中日に株主総会を開催する会社の株式を買った。」、
とは市場の投資家には分からない(したがって、その会社の株価にも今年も集中日か否か云々は一切反映されていない)わけです。
また、別の論点としては、株主総会の開催日(「開催日は集中日か否か?」等)と株式の本源的価値とは一切関係がありません。
株主総会の開催日とは全く無関係に株式の本源的価値は決まります。
したがって、仮に株主総会の開催日と株価が関係あるとするならば、それはイコール、
「株価と株式の本源的価値とが乖離している。」、ということを意味することになります。
株主総会の開催日が集中日であることのみを理由に株価が低迷している(自分が算定した本源的価値未満の)銘柄が市場にあるならば、
投資家はすぐにその銘柄を市場で購入することでしょう。
なぜならば、概念的には、株価と株式の本源的価値との差額の鞘取りができるからです。
仮に市場が完全で効率的であるならば、以上のような裁定取引が行われる結果、
株主総会の開催日が集中日であることのみを理由に株価が低迷する銘柄というのは市場からなくなります。
ファイナンス理論上は、株主総会の開催日が集中日であることを理由として株価が低迷する銘柄など1銘柄もないのです。
会社が集中日に株主総会を開催するということは、実務上は株主総会に出席できる株主が相対的に減少してしまう、
ということを意味しているわけですが、理論上は「株主総会への出席可能人数」と「株式の本源的価値」とは全く関係ありません。
「株主総会への出席可能人数」は0人だ、などというのなら現実には会社運営上の問題(取締役の選任等)が生じるでしょうが、
特に書面による議決権行使が可能な法制度では「株主総会への出席可能人数」の多寡は実務上全く問題になりません。
理論上は、「株主総会への出席可能人数」が少ないと株式の価値が損なわれる(株式の本源的価値が減少してしまう)、
などということは一切ないのです。
株式の本源的価値は、会社における日々の業務の執行によってのみ決まるのです。

 



それから、件の「PBR」に関してですが、分母と分子の整合性を保つことを目的に、昨日は次のように書きました。

>「3月末日(決算日)から株主総会開催日までの間は株式の取引を一時停止する。」、というのが理論上の1つの対応策だと思います。

そして、2018年6月29日(金)のコメントでは、
「理論上は、実は上場企業は『同一日に』株主総会を開催しなければならない。」という点について書きました。
理論上の話になりますが、全ての上場企業は3月期決算(決算日は3月31日)だと想定しますが、
全ての上場企業は「同一日に」株主総会を開催することにしますと、
全銘柄で株式の取引が一時停止される期間が同一になるわけです。
全銘柄で株式の取引が一時停止される期間が同一の場合は、株式市場そのものを言わば閉鎖(lockout)することができるわけです。
以上のような考え方を応用して考えてみますと、平時においても土曜日と日曜日と祝日は株式市場は閉鎖されるように、
「4月1日から6月30日までの間は株式市場の閉鎖期間(lockout)である。」、と証券制度上定めるわけです。
投資家は、4月1日から6月30日までの間は、"hibernate"(冬眠)するわけです。
「この期間は株式の取引はできないものだ。」、というふうに株式市場の閉鎖期間が予め明確であるならば、
それはそれで市場の投資家の利益は害されないはずだ、と思いました。
発行者は6月30日までに有価証券報告書を提出することにすれば、7月1日からは市場の全投資家は同一の開示情報に基づいて
株式の取引を再開できる、ということになるわけです。
株主総会の開催日や有価証券報告書の提出日を証券制度で定めるのではなく、
株式の取引が可能な期間(株式市場を閉鎖する期間)を証券制度で定めることによって、
市場の投資家間の不公平さを解消する、という手法が理論上は考えられると思いました。
「4月1日から6月30日までの間は、有価証券報告書を投資家が閲覧し分析し株式の本源的価値を算定する期間である。」
といった具合に、株式の本源的価値の算定期間と株式取引の可能期間とを再定義するわけです。
特に、有価証券報告書が証券制度上最も分量が多く包括的な開示情報であることを鑑みますと、特段の算定期間が求められます。
また、昨日指摘しました「ETF」("Exchange Traded Funds"、「上場投資信託」)には、実は「本源的価値」がありません。
議論の焦点を絞るために話を簡略して考えますと、「ETF」の構成銘柄がある上場株式1商品のみである状態を想定しますと、
その「ETF」は概念的にはその上場株式の先物取引("future")に近くなるのではないだろかとふと思いました。
簡単に言えば、「株式の本源的価値を算定するのではなく、将来の株価を予想する。」という点において類似性があると気付きました。
現物取引に目的物の本源的価値はあります(算定可)が、先物取引には目的物の本源的価値はない(少なくとも関係はない)のです。
紹介している2018年7月4日(水)の日本経済新聞の記事についてですが、目下連続増配銘柄の株価が日経平均を上回って推移している、
という内容になるのですが、その背景としては、連続増配は経営者の先行きへの自身を示していると投資家が感じており、
今後も安定成長を続けている銘柄だと投資家が判断をしている、ということがあるとのことです。
確かに、会社が投資額を下回る金額の回収しかできない投資を行うくらいならば、配当をした方が株主の利益にはなるわけですが、
しかしそれでも、どんなに少なく算定しても配当金額の分だけは株式の本源的価値は減少するわけです。
会社が配当を支払うとそれに伴い株式の本源的価値は増加する、ということだけは絶対にないわけです。
「あの経営者は十分な回収ができない投資ばかりをこれからも行うだろう。」、と投資家が評価していたというのなら話は別ですが。
「マイナスが減少する見込みの分、株式の本源的価値が増加する。」、ということは理屈では考えられるのかもしれないなと思いました。


With a company with its expiry date, its paying a dividend to its shareholders means that its prospects are dark.

会社に満了期日がある場合は、会社が株主に配当を支払うことは会社の将来の展望は暗いということを意味しているのです。