2018年7月4日(水)



2018年7月3日(火)日本経済新聞
有価証券報告書 トップ自ら発信 金融庁、情報拡充へ指針 優位性やリスク分析
監査の透明化も要請
(記事)





有価証券報告書の総会前提出について
(株式会社大和総研 コラム 2010年02月03日)
ttps://www.dir.co.jp/report/column/100203.html

>従来、有価証券報告書には定時株主総会に報告した(承認を受けた)計算書類・事業報告の添付が要求されていた。
>そのため、有価証券報告書の提出は必然的に総会が終わった後となっていた。

>これは株主・投資者の立場から見れば、
>例えば、平成X年3月期分の有価証券報告書・内部統制報告書は、平成X年6月の定時株主総会が終わった後に、
>ようやく眼にすることができるということである。
>そのため、本来、上場会社の株主・投資者にとって関心が高いと考えられる有価証券報告書や内部統制報告書の内容は、
>総会での報告・説明の対象とはなりえないという問題が指摘されていた(いわゆる「期ずれ」問題)。

 


「理論上は、上場企業は、株主総会招集通知には有価証券報告書を添付し、株主総会招集通知を株主に発送すると同時に
株主総会招集通知(有価証券報告書をも含む)を金融庁に提出しなければならない。」という点と、
「『議決権の行使結果』が確定しなければ株式の本源的価値の算定・予想はできない。」という点について書いた時のコメント↓

2018年7月1日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201807/20180701.html

 

「『議決権の行使結果』が確定して初めて投資家は株式の本源的価値の算定・予想を行うことができるようになるので、
『議決権の行使結果』が確定するまでは証券制度上株式の取引を認めるべきではない。」
という点について別の観点(「定款変更」(会社の目的の追加)の株主総会決議に関して)から書いた時のコメント↓

2018年7月3日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201807/20180703.html


 


【コメント】
株主総会招集通知や有価証券報告書や会社法の事業報告の位置付け・関係については、
現行の規定や新旧の規定から言えば間違っている点がいくつかあるのですが、2018年7月1日(日)に自分なりにコメントを書きました。
会社制度と証券制度の整合性(特に「フェア・ディスクロージャー・ルール」の観点)を鑑みますと、上記のように、
「理論上は、上場企業は、株主総会招集通知には有価証券報告書を添付し、株主総会招集通知を株主に発送すると同時に
株主総会招集通知(有価証券報告書をも含む)を金融庁に提出しなければならない。」、という結論になるわけです。
と同時に、「『議決権の行使結果』が確定して初めて投資家は株式の本源的価値の算定・予想を行うことができるようになるので、
『議決権の行使結果』が確定するまでは証券制度上株式の取引を認めるべきではない。」、という結論にも辿り着きました。
2018年7月1日(日)にコメントでは、現行の規定を調べずに、次のように書きました。

>従前は、「議決権の行使結果」は有価証券報告書の記載事項であった(だから、株主総会の終結後でなければ提出できなかった)

今日改めて調べてみますと、日本において上場企業の議決権行使結果の開示が義務付けられたのは何と2010年度からとなっていまして、
「議決権の行使結果」は有価証券報告書の記載事項であるという考え方は日本では実は伝統的ではないようです。
しかし、「『議決権の行使結果』が確定しなければ株式の本源的価値の算定・予想はできない。」というのは明らかに真なのです。
従来は、むしろ、日本においては上場企業が議決権行使結果を開示するという考え方や証券規制はなかったのですが、
「株式の本源的価値の算定」という観点から言えば、証券制度の不備(投資家保護に反している)と言わねばならなかったのです。

 


それから、大昔の証券取引法の規定がそうであったということではないか(そのような話を聞いた気がします)と思いますが、
「上場企業は『同一日に』有価証券報告書を提出しなければならない。」という考え方について一言だけ書きたいと思います。
「上場企業は『同一日に』有価証券報告書を提出しなければならない。」という考え方の根拠は、
一言で言えば、「銘柄間の比較可能性の担保」であるわけです。
Aという銘柄は有価証券報告書が既に提出されているがBという銘柄は有価証券報告書がまだ提出されていない、という状態では、
投資家は銘柄Aと銘柄Bとを比較・分析することはできないわけです。
大昔の証券取引法の規定の趣旨も「銘柄間の比較可能性の担保」であったと一般に解されていると思います。
そのこと自体(規定の趣旨の解釈)はもちろん何の問題もないわけですが、この点について個人的に2つふと思うことがありました。
まず1点目ですが、大昔の証券取引法の「上場企業は『同一日に』有価証券報告書を提出しなければならない。」
という規定の趣旨は、「銘柄間の比較可能性の担保」ではない、という解釈もあると思いました。
では一体どのような趣旨だったのかと言えば、単に「有価証券報告書の提出日の明確化」であったのではないかと思います。
現行の制度で言えば、公開買付制度が理解のヒントになると思います。
公開買付者は、「公開買付届出書」を金融庁に提出するのに加え、別途「公開買付開始公告についてのお知らせ」を日刊新聞紙に
掲載しなければならないわけですが、その理由は、「公開買付開始公告についてのお知らせ」を日刊新聞紙に掲載しなければ
公開買付が開始されるという事実そのものを投資家が知ることができない(つまり、情報の到達を目的としている)からなのです。
「公開買付届出書」が金融庁に提出されたということ自体(その事実)を投資家に伝達しなければならないわけです。
そのための手段が「公開買付開始公告についてのお知らせ」を日刊新聞紙に掲載することなのです。
同様に、有価証券報告書についても、「毎年この日に金融庁に有価証券報告書は提出される。」ということを予め明確に
しておかなければ、投資家は一体いつ有価証券報告書が金融庁に提出されるのか(いつ財務局に赴けばよいか)分からないわけです。
次に2点目ですが、証券制度上そもそも「銘柄間の比較可能性」に過剰な重点を置く必要はないのではないか、と個人的に思います。
今日紹介してる2018年7月3日(火)付けの日本経済新聞の記事がまさにそうなのですが、最低限度の書式(フォーマット・雛形)さえ
統一すれば、後は経営者さらには監査人が投資家の投資判断に資すると考える内容を追加的に記載するのはよいことだと思います。
結局のところ、投資家の立場からすると、目的としているある銘柄(株式)の本源的価値を算定できればそれで必要十分なのです。
例えば、鹿島建設株式会社株式の本源的価値を算定するのに株式会社竹中工務店の開示情報は一切必要ない(1社単独で算定可能)、
ということを考えれば私が何を言いたいか分かると思います(要するに、株式の本源的価値に他社との関連性はないのです)。
投資家の立場からすると、「銘柄間の比較」というのは、証券投資を行う中で二次的・副次的に出てくる行為・事柄だと思います。
「私はあの銘柄に投資をしているのだが、別の銘柄も有望かもしれない。」
と投資家が考える時、投資家は新たな銘柄の有価証券報告書を閲覧し、その株式の本源的価値を算定するわけです。
「銘柄間の比較」から証券投資を行う投資家はいないと私は思うわけです。
投資家が、「トヨタに投資をしようと考えたが有価証券報告書を閲覧して株式の本源的価値を算定したが有望ではないと判断した。」
という場合、その投資家は自動的に日産やホンダへの投資を行うのかというとそうではないわけです。
その投資家は、日産に投資を行うなら投資を行うで日産の有価証券報告書を閲覧して株式の本源的価値を算定するというだけですし、
また、ホンダに投資を行うなら投資を行うでホンダの有価証券報告書を閲覧して株式の本源的価値を算定するというだけなのです。
つまり、トヨタへの投資と日産への投資とホンダへの投資とはそれぞれ独立している(互いに影響を与えない)わけです。
その投資家は結果トヨタへも日産へもホンダへも投資をしない、ということは実務上証券投資では全くあり得ることなのです。
投資家は、自分が有望だと判断する銘柄へ投資をするというだけなのです。
極端なことを言えば、投資家が「銘柄間の比較」を行うことはない、という言い方ができるように思うわけです。
投資家の立場からすると、証券投資を行う中で一次的・本来的に出てくる行為・事柄は「株式の本源的価値の算定」なのです。
したがって、「銘柄間の比較可能性の担保」ではなく「株式の本源的価値の算定」に重点を置いた有価証券報告書の作成が
証券制度上は求められる、という結論になると思います(投資家からすると記載内容に若干の差異があっても構わないと感じる)。