2017年2月22日(木)



2017年2月21日(水)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてお知らせ
三菱地所株式会社
(記事)



2017年2月20日
三菱地所株式会社
株式会社丸ノ内ホテル(非上場)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
ttp://www.mec.co.jp/j/news/archives/mec180220_TDmarunouchihotel.pdf

(ウェブサイトと同じPDFファイル)



H30.02.21 10:28
三菱地所株式会社
公開買付届出書  
(EDINETと同じPDFファイル)


H30.02.21 10:41
株式会社丸ノ内ホテル
意見表明報告書
(EDINETと同じPDFファイル)

H29.12.14 12:18
株式会社丸ノ内ホテル
半期報告書−第160期(平成29年4月1日−平成29年9月30日)
(EDINETと同じPDFファイル)

H29.06.26 11:28
株式会社丸ノ内ホテル
有価証券報告書−第159期(平成28年4月1日−平成29年3月31日)  
(EDINETと同じPDFファイル)

 


【コメント】
三菱地所株式会社が株式会社丸ノ内ホテル株式に対して公開買付を実施する、とのことです。
ただし、株式会社丸ノ内ホテルは非上場企業です。
非上場企業株式に対して公開買付を実施する、という事例になります。
非上場企業株式に対して公開買付を実施することはできるのか、という点についてですが、
金融商品取引法上は、「できない」とは書かれていないのではないかと思います。
現実的には、公開買付代理人の対応次第、ということになるのではないかと思います。
株主が公開買付に応募をした株式を応募後は売却できなくする(応募株主による株式の二重譲渡をできなくする)、
ということをどのように実務上担保していくのかが、非上場株式の場合は問題になるのではないかと思います。
上場株式の場合は、応募が行われた株式については、コンピューター・システム上売却をできなくする仕組みが整っている
のではないかと思いますが、非上場株式については、株式自体がコンピューター・システム上取り扱われていないわけです。
「株主名簿上はれっきとした株主なのだが、公開買付には応募済みなので、その株主はその応募株式の売却を行えない。」
という状態を非上場株式についてどのように実現していくのか、が私が今思い付く実務上の一番の問題点ではないかと思います。
非上場企業の株主は、本来的に特定・少数です(株主は皆、家族や知り合い同士だったりする)ので、
紳士協定のような形で、互いにトラブルが起きないように手続きを進めていくようにするはできるのかもしれないなと思いました。

 


次に、関連する論点ということで、「上場廃止」について教科書をスキャンして一言だけコメントを書きたいと思います。


「ゼミナール 金融商品取引法」 大崎貞和 宍戸善一 著 (日本経済新聞出版社)

第2章 上場制度と発行開示
2. 取引所の上場制度
(2) 上場廃止
上場廃止の意義
「69ページ」

経営破綻以外の理由による上場廃止
「71ページ」



結論を一言で言いますと、「上場廃止基準」が設けられている理由は上場廃止をさせないためである、と言えると思います。
どういうことかと言いますと、株式市場が投資家にとって「換金の場」として機能するためには、
上場廃止基準に定められている各項目に常に注意を払いながら発行者が経営を行うことが大切だ、という意味です。
端的に言えば、「上場廃止基準」の目的は上場廃止を行うことではないわけです。
なぜならば、上場が廃止されますと、「換金の場」を失うことになった投資家が最も大きな影響を受けることになるからです。
ですので、仮に上場廃止基準に抵触する事態が生じた場合は、証券取引所は当該株式を即座に上場廃止にするのではなく、
株式市場ができる限り「換金の場」として機能するよう、株式の取引を活性化させる策を講ずるよう発行者に指示する、
ということが上場制度上求められると思います。
逆説的ですが、常日頃から「上場廃止基準」の各項目を意識した経営を行うことが発行者には求められるわけです。
この意味において、「上場廃止基準」は刑法に似ているのだろうと思いました。
刑法の目的は、犯罪の処罰ではないわけです。
刑法の目的は、犯罪の予防であるわけです。
「上場廃止基準」の目的は、上場廃止の予防なのです。
また、投資家が不特定多数の場合は、
投資家が「換金の場」を失うことがないようにすることが、現実的な投資家保護の観点からは重要になりますので、
事業を継続している会社が任意に(買収などの理由以外に)株式の上場を行うことは上場制度上は認められない、
と考えなければならないと思います。

 



それから、株式会社丸ノ内ホテルは非上場企業なのですが、どういうわけか有価証券報告書を関東財務局長に提出しています。
金融商品取引法上の提出義務は全くなくても、金融商品取引法第24条第1項を根拠条文として、
会社は有価証券報告書を財務局長に提出できる、ということなのでしょう。
@非上場企業が「売出し」や「募集」や行う、A非上場株式に対して公開買付を行う、に続き、
B金融商品取引法上の提出義務は全くなくても会社が有価証券報告書を提出する、という意外な行為に気付きました。
おそらく、金融商品取引法には違反していないと言えば違反はしていないのでしょう。
ただ、継続的に上場企業と同じ水準の情報開示を行っていると、
非上場企業が「売出し」や「募集」や「株式の上場」を行いたいと考えた際には、
実務上は比較的容易に・速やかに行いやすくなる、というようなことは言えるのだと思います。
新規上場時や募集・売出し時に発行者に義務付けられる法定開示の延長線上に、毎期行う法定継続開示があるのだと思います。
例えば、株式会社丸ノ内ホテルが株式の上場を行おうと考えた場合には、
証券取引所に提出せねばならない書類の大半は現時点で既に揃っている状態にある、と言えるのだと思います。
それから、株式会社丸ノ内ホテルが提出している有価証券報告書を見ていて、あるおかしな記載に気付きました。

「【縦覧に供する場所】は、『該当なし』となっています。」 

一体どういうことなのでしょうか。
私はEDINETで株式会社丸ノ内ホテルが関東財務局長に提出した有価証券報告書を閲覧しているのですが。
株式会社丸ノ内ホテルのこの有価証券報告書はまさに文字通り「EDINET提出書類」のはずですが。
参考までに、トヨタ自動車株式会社が平成23年6月24日に提出しました「平成23年3月期」の有価証券報告書を見てみました。

「【縦覧に供する場所】は、トヨタ自動車株式会社株式が上場している計5つの証券取引所となっています。」

結論を一言で言えば、金融商品取引法に定義される種々の法定開示書類は全国の財務局において縦覧に供され、
証券取引所が定める有価証券上場規定に定義される種々の開示書類(決算短信等)は当該証券取引所において縦覧に供される、
というだけなのではないかと思います。
「『全国の財務局以外の場所』において縦覧に供する場合」のことを、
金融商品取引法では「縦覧に供する」と定義しているのでしょうか。
それとも、現在では、全国の財務局では有価証券報告書を閲覧できないのでしょうか(そんなはずはないと思いますが)。
おそらく説明の付かない記載になっているだけなのではないかと思いますが、
「発行者がEDINETに提出し投資家はEDINET上で提出された書類を閲覧できる状態にあること」を
「書類は縦覧に供されている」と解釈することは何ら間違ってはいないと思います。
おそらくですが、株式会社丸ノ内ホテルは、株式の上場を行っていないことから、
【縦覧に供する場所】について「該当なし」と有価証券報告書に記載したのだと思いますが、
【縦覧に供する場所】とは元来的には財務局のことを指すのではないと私は思います。

 


The fact that I as a mere citizen in this society can read this securities report means
that this document is available for public inspection, that is to say EDINET.

この社会の一市民に過ぎない私がこの有価証券報告書を閲覧できているということは、
この文書は縦覧に供されているということです。すなわちEDINETのことです。

 

Where do investors read various legal disclosure documents defined in the Financial Instruments and Exchange Act?

投資家は、金融商品取引法に定義される種々の法定開示書類をどこで見るのですか?

 

If a tender offer agent should deal with unlisted shares, a tender offerer can do a tender offer for unlisted shares.

万一公開買付代理人が非上場株式を取り扱っているとすれば、公開買付者は非上場株式に対して公開買付を行うことができます。

 



The "delisting criteria" provided in the "Securities Listing Regulations" is essentially similar to the Penal Code
in terms of an inducement to avoid troubles beforehand.

前もってトラブルを避けようという気を起こさせるという点において、
「有価証券上場規定」に定められている「上場廃止基準」は刑法に本質的に似ているのです。

 

Just as the essential significance of the Penal Code is not the punishment of crime but the prevention of crime,
that of the "delisting criteria" provided in the "Securities Listing Regulations" is
not delisting itself but providing a place for realizing securities.

刑法の本質的意義は、犯罪の処罰ではなく、犯罪の予防にあるように、
「有価証券上場規定」に定められている「上場廃止基準」の本質的意義は、
上場廃止そのものにではなく、有価証券の換金の場の提供にあるのです。

 

The only cause for delisting except a bankruptcy is mergers and acquisitions of a listed company.
An application for delisting of a listed company's own free will is not permitted
from a viewpoint of investor protection.

経営破綻を除く上場廃止の唯一の原因は、上場している企業のM&Aだけなのです。
上場している企業が自主的に上場廃止を願い出ることは、投資家保護の観点から認められないのです。

 

In case holders of securities are many and unspecified,
"disclosure" by an issuer is not sufficient for investor protection.
An issuer's sustaining effort to provide a place for realizing securities for investors in the market is
the second essentials to investor protection (the first essentials are "disclosure" by an issuer thoroughly).

有価証券の保有者が不特定多数の場合は、発行者による「ディスクロージャー」では投資家保護のためには不十分なのです。
市場の投資家に有価証券の換金の場を提供する努力を発行者が絶え間なく行うことが、
投資家保護にとって二番目に本質的なことなのです(最も本質的なことはどこまでいっても発行者の「ディスクロージャー」です)。