2018年2月11日(日)


2018年2月1日(木)日本経済新聞
「理財商品」債務不履行続く 中国、投融資先が焦げ付き 元本保証禁止も影響
(記事)


元来的には、「そもそも他者の債務の保証を行うという考え方自体がない。」という点と、
「連帯債務では債務は分割されていない。」という点について書いた昨日のコメント↓

2018年1月30日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180130.html

 

理論的には、連帯債務者間には求償権は存在しないのです。

2018年1月31日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201801/20180131.html


 



【コメント】
中国で「理財商品」と呼ばれる金融商品の債務不履行が相次いでいる、という内容です。
記事によりますと、中国における「理財商品」は大きく「信託商品」と「銀行商品」に分かれると書かれていますが、
記事の文脈を踏まえますと、現在問題になっている「理財商品」は、元本と利息がある債券の一種と考えればよいと思います。
中国における「理財商品」の債務不履行問題について、記事には次のように書かれています。

>当局は17年11月、理財商品への元本保証を禁じる方針を公表。

>明文化されていないが、投資家の間では理財商品を販売した金融機関が元利金を補填する「暗黙の保証」への期待が強い。

記事を読んで、私は「債務の保証」と「連帯債務」の相違点について、次のようなことを考えました。

債権債務関係としては、債券は元本部分と利息部分とに分かれるのだが、
「債務の保証」では、@元本部分のみもしくはA利息部分のみを保証するということを保証人は行うことができるが、
「連帯債務」では、「債務の保証」とは異なり、@元本部分のみもしくはA利息部分のみを保証するということは
連帯債務者は行うことができず、連帯債務者は必ず元本部分と利息部分の両方(すなわち、債券の債権債務関係の全て)
について保証(すなわちこの文脈では連帯保証)をすることしかできない。

端的に言えば、連帯債務者は、債権債務関係の一部分についてのみ連帯債務を負う、ということはできないのです。
上記の結論に即して言えば、連帯債務者は、@元本部分のみについて連帯債務を負うということはできませんし、
A利息部分のみについて連帯債務を負うということもできません。
2018年1月30日(火)のコメントでは、「連帯債務では債務は分割されていない。」と書きましたが、
連帯債務という文脈では、債券の元本と利息とを分割することはできないのです。
その理由は、「借入人は、貸付人から元本を借り入れたからこそ利息を支払う。」という一体不可分の関係があるからです。
元本の借り入れというのは、利息を支払うことの根本事由であるわけです(この2つは観念的に絶対に分離できない事柄)。
ですので、例えば、「債券の元本部分だけは連帯債務を負うという形が私が債務の履行を保証します。」
などという考え方はないわけです(「債券の利息部分だけは(以下同文)・・・。」という文脈でも全く同じです)。
「保証人が債券の元本部分だけは保証する。」という考え方を行う場合は、観念的には債券を分割している状態であるわけです。
「債務の保証」であれば、「保証人が債券の元本部分だけは保証する。」ということができます。
しかし、「連帯債務」の場合は、「連帯債務者が債券の元本部分だけは連帯債務を負う。」ということはできないのです。
「連帯債務は分割できない。」とは、「連帯債務者はある債権債務関係の全部について連帯債務を負う。」という意味です。
なぜならば、連帯債務者=真の意味の債務者自身(法律上は、連帯債務者全員が「主たる債務者」)という関係にあるからです。
真の意味の債務者(真の借入人、本当に借り入れを行った人)が、債権者に対し、「私は利息部分だけを支払います。」
などと主張したとしたらすぐにおかしいと分かる(債務者は当然に元本と利息の両方について義務を負っている)と思いますが、
考え方はまさにそれと全く同じであり、連帯債務者は「私は利息部分だけについて連帯債務を負います。」とは言えないのです。


Conceptually speaking, a joint and several obligation is indivisible in theory,
whereas a guarantor can divide an obligation in practice.

観念的に言えば、理論上連帯債務は分割できませんが、保証人は実務上債務を分割できるのです。