2018年2月3日(土)



2018年2月3日(土)日本経済新聞
ゼロックス買収 下
事務機7割 いばらの道 市場成熟、成長へ統治課題
(記事)





連結会計上の「みなし支配獲得日」という考え方は理論的には間違いである、という点について書いた一昨日のコメント↓

2018年2月1日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180201.html

 

連結会計上、たとえ「真の支配獲得日」に基づいて連結手続きを行うとしても、
現実には、他の様々な要素・要因をも斟酌した上で「意思決定機関の支配」の状態を判断せざるを得ない、
という点について書いた昨日のコメント↓

2018年2月2日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201802/20180202.html

 

 

Consolidated financial statements begin with "provisional account closing," actually.

連結財務諸表は、実は「臨時決算」から始まっているのです。


 


【コメント】
一昨日2018年2月1日(木)と昨日2018年2月2日(金)のコメントに一言だけ追記をします。
昨日のコメントでは、連結会計の理論上は、支配の獲得は一日のうち任意の時間に行ってというよいわけではない、と書き、
「支配の獲得は、『支配獲得日』の0:00に行う。」という理論上の前提が置かれている、と書いた上で、次のように書きました。

>実務上は、簡単に言えば、「子会社株式の取得は必ず0:00に行わなければならない。」ということになるわけです。

このたびの事例は、子会社株式を取得したわけでもないにも関わらず、親会社の所有議決権割合が過半数を超えてしまう、
という事例であったわけです。
そして、一昨日2018年2月1日(木)に書きました【設例】では、
「米ゼロックスはいつ富士ゼロックスの意思決定機関を支配したと言えるのか?」、という点については、
実は答えは明確ではない部分がある(実務上の様々な事柄を斟酌し判定することになる)、という意味のことを書きました。
さらには、実務上行われる「契約」(将来の約束)ということを考えますと、
子会社株式の取得前に親子会社間で締結された契約に関しては、契約内容の履行(取引の実行)は支配獲得の後だとしても、
親子会社間で行われたその取引は連結会計上は「内部取引」とは見なさない、
という修正や調整が実務上は求められる、といったことを昨日は書きました。
どの取引が連結会計上の「内部取引」なのか、すなわち、
どの取引が親会社の意思決定のみに基づき親子会社間で行われた取引(子会社は親会社の意思に従属しただけの取引)なのか、
という線引き問題は、実は、「取引日(契約の履行日)は支配獲得日の前か後か?」だけでは答えが出せない問題なのです。
この問題に厳密に答えを出そうと思えば、取引日(契約の履行日、会計事業の発生日)ではなく、意思決定日、すなわち、
親子会社間の契約締結日にまで遡って判定をしなければならない、ということになるのです。
一言で言えば、意思決定日(契約締結日)が支配獲得日以降であれば、親子会社間で行われた取引は「内部取引」である、
という判定方法になります。
この論点に関しては、連結会計の議論では全くと言っていいくらい触れられていないことだと思います。

 


それで、昨日は書きそびれてしまったのですが、今日は連結会計における「連結決算日」について一言だけ書きたいと思います。
まず先に結論を一言で書きますと、「理論的には個別財務諸表と連結財務諸表は全く異なる財務諸表である。」、となります。
理論的には、個別財務諸表の延長線上に連結財務諸表がある、というわけでは全くないのです。
理論的には、親会社が毎期作成する個別財務諸表と子会社が毎期作成する個別財務諸表を合算して毎期連結財務諸表を作成する、
ということとはかなり異なる考え方をしなければならない、
という結論に、現行の「みなし支配獲得日」について考察を行っていましたら辿り着いたわけです。
この点について、昨日2018年2月2日(金)に書きました【設例】を基にして、理論上の考え方について考えてみましょう。
【設例】において、話の簡単のために、会社の仕入先に対する支配獲得日を「2018年2月2日」であるとしましょう。
そして、会社と仕入先はどちらも3月期決算の会社である(どちらも2018年3月31日が決算期末日である)としましょう。
この時、会社は、まず、「2017年4月1日から2018年3月31日まで」を会計期間とした個別財務諸表を作成するわけです。
これがいわゆる「2018年3月期」(期首日が2017年4月1日、期末日が2018年3月31日)の(個別)財務諸表です。
そして次に、会社は連結財務諸表の作成に取り掛かるわけですが、
この時会社が作成する連結財務諸表の「期首日」は、2017年4月1日ではなく、実は「2018年2月2日」なのです。
なぜならば、支配獲得日が「2018年2月2日」だからです。
すなわち会社は、「2018年2月2日から2018年3月31日まで」を会計期間とした連結財務諸表を作成することになるわけです。
この連結財務諸表のことを、「2018年3月期」の連結財務諸表、と呼んでもよいのですが、
その期首日はあくまで2017年4月1日であり、その期末日は2018年3月31日である、という点には注意が必要です。
「期首日が2017年4月1日であり期末日が2018年3月31日である連結財務諸表」、というのは実はこの場合存在しないのです。
2017年4月1日から2018年2月1日までの間も、親会社は親会社で多くの取引先と商取引を行っているのだから、それらを反映し、
親会社は「期首日が2017年4月1日であり期末日が2018年3月31日である連結財務諸表」を作成することはできるのではないか、
と思われるかもしれませんが、その考え方は理論的には間違いなのだと思います。
この場合、親会社は「期首日が2018年2月2日であり期末日が2018年3月31日である連結財務諸表」しか作成できないのです。
一言で言えば、連結財務諸表とは、「連結している間の経営状態を表示するもの」であるわけです。
連結していない期間が存在する(親会社のみの経営状態が反映されている)連結財務諸表というのは観念できないわけです。
「連結している間の親会社と子会社の経営状態を合算して表示する」のが連結財務諸表なのです。
2017年4月1日を期首日とする連結財務諸表というのは、この場合は存在しない(観念できない)のです。
「連結会計期間」とは、「親会社が子会社の意思決定機関を支配している期間」という意味です。
「親会社が子会社の意思決定機関を支配している期間」の財務諸表のことを連結財務諸表と呼ぶわけです。
その意味において、例えば「『2018年3月期』の連結財務諸表」という言い方(呼び方・表現方法)は少しおかしいわけです。
なぜならば、「連結会計期間」というのは、単に「親会社が子会社の意思決定機関を支配している期間」を意味するからです。
例えば、2018年4月1日から2019年3月31日までの間、親会社が子会社の意思決定機関を支配していた場合は、
「『2019年3月期』の連結財務諸表」という言い方をしても何となく意味が通じる、というだけのことなのです。
理論的には、連結財務諸表の期首日というのは実は何ら明確ではないわけです。
連結財務諸表の期首日は、特段に明記しなければ、財務諸表利用者には期首日がいつか分からないわけです。
連結財務諸表の期首日は個別財務諸表の期首日と同じなのではないか、と漠然と経験的に思ってしまうだけなのです。
しかし、上記の議論から明らかなように、連結財務諸表の期首日は個別財務諸表の期首日と同じでは全くないのです。
さらに、理論的には、連結財務諸表の「連結決算日」は、親会社の個別上の決算期末日とも関係ありませんし、
子会社の個別上の決算期末日とも関係がないのです。
実務上は、連結財務諸表の「連結決算日」を親会社の個別上の決算期末日と同一の日にしているだけなのです。
それくらい、連結財務諸表と個別財務諸表とは会計期間という意味では関係がないのです。

 



現行の規定ではそう書かれていませんが、理論的には、
支配獲得日の前日には、子会社だけではなく、親会社も仮決算を行わなければなりません。
なぜならば、支配獲得日から連結財務諸表の期首日が始まるからです。
現行の会社法では、仮決算ではなく、厳密には「臨時決算」という文言が用いられていますが、
親会社と子会社両方の会社において、支配獲得日の前日に臨時決算を行い、
支配獲得日の前日付けの貸借対照表を作成しなければなりません。
「支配獲得日の前日」が「臨時決算日」です。
親会社による「支配獲得」と親会社における「臨時決算」は、連結決算の上で極めて本質的なのです。
また、この臨時決算において作成される損益計算書は、連結財務諸表作成の上では全く本質的ではありません。
連結財務諸表作成の上では本質的な損益計算書は、支配獲得日を期首日とする損益計算書です。
なぜなら、支配獲得日より前(支配獲得日を含まない)の損益計算書は、連結財務諸表には全く関係がないからです。
簡単に言えば、支配獲得日を期首日とする親会社の損益計算書と支配獲得日を期首日とする子会社の損益計算書を合算したものが、
連結損益計算書(支配獲得日を期首日とする連結損益計算書)です。
そして、個別決算との連携性という意味でも継続的・規則的な情報開示(決算)という意味でも実務上の事務負担という意味でも、
連結財務諸表の期末日は個別財務諸表の期末日と同一の日とすることが結局のところは最も望ましいわけです。
理論的には、連結財務諸表の期末日を個別財務諸表の期末日と同一の日としなければならない理由はないわけです。
理論的には、支配獲得時に設定した「臨時決算日」の1年後を連結財務諸表の期末日とすることは間違いではないわけです。
それくらい、連結財務諸表と個別財務諸表(会社法上の計算書類)とは会計期間という意味では関係がないのです。
そして、この場合、親会社は「期首日が2018年2月2日であり期末日が2018年3月31日である連結財務諸表」しか作成できない、
ということは、親会社に子会社は1社しかない(そのような連結財務諸表しか作成できない)、
ということを意味してもいるのです。
現行の実務上は、連結子会社が何十社も何百社もある上場企業(大手総合商社等)があったり、
また、持株会社の場合は連結子会社が複数あることが大前提(連結子会社が1社だけの場合は持株会社制の意味が全くないから)
となっていたりで、親会社に子会社が複数あることは当たり前のことのようになっていますが、
連結会計の理論上は、親会社に子会社は1社だけなのです(子会社が複数ある連結財務諸表というのは理論上は存在しない)。
他の言い方をすれば、連結会計の理論上は、親会社にとって連結の範囲に含まれるのは、子会社1社のみ、ということになります。
このことは、実は、「親会社は連結子会社毎に連結財務諸表を作成することはできる。」という意味でもあります。
すなわち、親会社に連結子会社が2社あれば、親会社は連結財務諸表を合計2つ作成することができる、という意味です。
親会社にとって、1つの連結財務諸表の連結の範囲に含まれる子会社の数は1つだけである、というだけのことであって、
親会社が連結子会社1社毎に連結財務諸表をそれぞれ作成することは、理論的にも何ら間違ってはいないわけです。
簡単に言えば、子会社が複数あれば連結財務諸表も複数ある(文字通り、子会社の数だけ連結財務諸表がある)、
ということに親会社にとってはなるわけです(そして、理論的にもそのことは正しいことなのです)。
連結の範囲に複数の子会社が含まれる、ということが理論的には間違いだ、ということになるのです。
個別財務諸表は1つしかありませんが、連結財務諸表は子会社の数と同じ数だけある(子会社と同じ数だけ作成される)のです。
それくらい、連結財務諸表と個別財務諸表とは会計期間という意味では関係がないのです。
現行の規定では、「みなし支配獲得日」という考え方を導入していたり、また、
「みなし支配獲得日」という考え方を導入したことと関係があるのですが、連結の範囲に複数の子会社が含まれていたりと、
理論上の連結会計の基本概念とはかなり大きく異なる考え方に基づき、連結財務諸表が作成されています。
実務上の事務負担その他を鑑みますと致し方ない面もあろうかと思いますが、
少なくとも「理論的には、個別財務諸表と連結財務諸表とは実は全く関係がない。」という点は理解しておいてよいと思います。