2017年12月9日(土)



2017年12月9日(土)日本経済新聞
ゼロから解説
煩雑な相続 証明書で軽減 戸籍の束代わりの一覧、税申告には使えず
(記事)




法務省:「法定相続情報証明制度」について
ttp://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00284.html


新しい相続手続「法定相続情報証明制度」(日本司法書士会連合会)
ttp://www.shiho-shoshi.or.jp/html/hoteisozoku/index.html


死亡届(法務省)
ttp://www.moj.go.jp/ONLINE/FAMILYREGISTER/5-4.html

届書用紙
ttp://www.moj.go.jp/content/000011718.pdf

「ウェブサイト上と同じPDFファイル」




「法定相続情報証明制度」についての昨日のコメント

2017年6月19日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201706/20170619.html

2017年6月20日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201706/20170620.html

 


【コメント】
「法定相続情報証明制度」については、過去には主に2017年6月19日(月)にコメントを書きました。
2017年6月19日(月)のコメントでは、主に「私文書と公文書の違い」といった観点からコメントを書いたわけですが、
今日は「法定相続情報証明制度」そのものについて一言だけコメントを書きたいと思います。
相続にあたり、名義変更の手続きを行う際には、非常に多くの書類をそろえなければならないのですが、
記事には、その書類をそろえる手間や名義変更の届け先の多さについて次のように書かれています。

>まず、被相続人が生まれてから死亡するまで、全ての戸籍謄本(除籍謄本含む)を集める必要があります。
>誰が法定相続人にあたるかを確定してからでないと法律上、遺産を分けることはできません。
>謄本は生前に本籍のあった全ての市区町村から集めます。
>何代もさかのぼって集めるとなると、「戸籍の束」といわれるほど枚数が増え、
>手数料(通常、戸籍謄本は1通450円、除籍謄本は750円)もかさみます。

>不動産の名義を変更する際には戸籍の束は法務局(登記所)に提出します。
>預金であれば銀行、株式なら証券会社、自動車は運輸支局などと、財産の種類ごとに別々の場所に出さなければなりません。
>謄本を複数セット用意したり、使い回したりする必要があり、時間がかかっていました。

記事を読みますと、被相続人が複数の種類の財産を所有していた場合は、相続人が所有財産を相続をするのは非常に手間がかかる、
ということが分かるわけですが、率直に言って、私が一番意味不明だと思うのは、
相続に際し、相続人は、被相続人が生前に本籍のあった全ての市区町村まで赴き
被相続人が生まれてから死亡するまでの全ての戸籍謄本(除籍謄本含む)を集める必要がある、という点です。
相続に際し、なぜ生前の全ての戸籍謄本を集める必要があるのか全く意味が分からないと思います。
一言で言えば、被相続人の「死亡時」の戸籍謄本だけで十分であると思います。
なぜならば、相続は、被相続人の「死亡時」の親族関係に基づき行われるだけだからです。
確かに、過去の戸籍を閲覧すれば、例えば、「ああ、あの頃はまだ息子さんが独身で、戸籍に息子さんの名前が載っているね。」、
や、「そういえば、娘さん離婚して帰ってきたっけ。一旦名前が消えたけどまた親父さんの戸籍に娘さんの名前が載っているよ。」
といった具合に、その人の過去の親族関係が分かったりはするわけです。
しかし、そのことと相続とは何の関係もないわけです。
被相続人の戸籍の過去の変動は相続とは何の関係もないわけです。
相続は、被相続人の「死亡時」の親族関係に基づき行われますので、
「死亡時」の戸籍謄本だけあれば法定相続人の確定には十分なのです。
結局のところ、被相続人の戸籍の過去の変動も含め、とにかく今現在の戸籍はこうなっている、というのを示すのが戸籍です。
被相続人の今現在の戸籍というのは、相続に際しては、結局のところは、「死亡時」の戸籍、ということになると思います。
誰が法定相続人にあたるのかを確定するためには、「死亡時」の戸籍が必要十分であることを理解するために、
人が死亡した後に親族等が提出しなければならない「死亡届」について考えてみましょう。
「死亡届」は、被相続人が生前に本籍のあった全ての市区町村まで赴きそれぞれ(つまり複数)提出する必要があるでしょうか。
「死亡届」は、故人の本籍地がある(「死亡時」の戸籍がある)市区町村の役場に提出をすれば、それで必要十分であるわけです。
その理由は、結局のところ、故人(被相続人)の戸籍とは「死亡時」の戸籍のことだからであるわけです。
「死亡届」は、1通しか提出できないわけです。
「死亡時」の戸籍に、故人の戸籍の過去の全ての変動が集約されているわけです。
一言で言えば、被相続人の過去の戸籍に未判明の法定相続人の手がかりが書かれている、などということは一切ないのです。

 


行政機関に対する書類提出等に時間がかかるという点に関連して、次のような記事がありました↓。


2017年11月27日(月)日本経済新聞 核心
行政こそ生産性革命を 手続き簡素に 経済後押し
(記事)



政府が簡素化を進めている行政に対する手続きの例として、記事では、法人設立の手続きが挙げられています。
記事には、日本における会社設立の煩雑さについて、次のように書かれています。

>「登記ねっと」と「供託ねっと」は法務省、「e-Tax」は国税庁、「エルタックス」は地方自治体、「イーガブ」は厚生労働省関連。
>起業に必要な届け出の窓口は、縦割りでばらばらだ。

対比事例として、記事には、諸外国の例として次のように書かれています。

>シンガポールやエストニアでは会社設立の登記が原則オンラインででき、20分以内で完了する。

シンガポールやエストニアでは、たった1つの電子申請ウェブサイト上で会社設立のための全ての手続きが可能となっている、
と記事には書かれています。
ただ、記事中のこれらの記述は額面通りにはとても受け取れないと思います。
単純に考えましても、法人設立のための払込資本の確認が必要になります。
基本的には、法人に資本が本当に払い込まれたのかどうかを確認するため、登記申請に際し銀行の残高証明が必要となります。
仮にオンラインで銀行残高を確認するとなりますと、それはもはや行政事務の範疇ではない(銀行のサービスの問題)でしょう。
他にも、役員の登記のためには、役員の住民票も法務局に提出しなければならないと思います。
さらに設立のための手順を遡れば、例えば定款を一体どうやってオンラインで認証するのでしょうか。
法人設立の手続きは全てオンラインで済む、という話とはとても思えないわけです。
私の過去の経験から言っても、会社の設立のためには、少なくとも10日以上はかかる、と考えなければならないと思います。
会社というのは、設立してそれで終わりではないわけです。
むしろ、会社を設立してから業務が始まる(行いたいビジネスを行っていく)わけです。
法務局であれ公証役場であれ税務署であれ県税事務所であれ町役場の税務課であれ労働基準監督署であれ年金事務所であれ、
会社経営を行う上では必然的に行政機関と長いお付き合いになるわけです。
会社設立の手続き自体がたとえ1分間で済むとしても、何の意味もないわけです。
「会社設立って、ほんと簡単だよね。」、では経営にならないわけです(会社設立後、業務を行っていくことが本分のはず)。
オンライン化だ電子化だと言いますが、会社設立というのはネット通販ではないわけです。
ネット通販であれば、欲しい商品をカートに入れて必要な情報を入力すればそれで完了でよいわけです。
しかし、法人の設立というのは、「本当に法律上の人をこの世に生み出してよいのか?」を法務局が確認する手続きであるわけです。
設立希望者が必要な情報を入力してそれで終わり、というわけにはいかないわけです。
法人というのは生物ではないとは言え、現に権利や義務の主体となる存在です。
したがって、権利や義務の主体を社会に作り出すためには、事前に十分に確認をすることが社会的に求められると思います。