2017年3月6日(月)
2017年3月1日(水)日本経済新聞
ファーストリ、欧米企業に追随 取引先リスト 150工場公開 企業価値の低下懸念
(記事)
過去の関連コメント
2017年3月4日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201703/20170305.html
2016年12月21日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201612/20161221.html
もちろん、現実には、その時テレビをつけていなかったらどうするのか(その投資家はニュースを視聴し損なうのではないか)、や、
上場企業といっても3,500を超える数の会社があるのだから、上場企業が報道機関に対し公表のため情報を伝達しても、報道期間の方は、
全上場企業の情報は現実には報道し切れない(番組時間や紙面には当然限りがある)はずだ、という現実的問題は確かにあるのですが、
理論的には、全情報を伝達できる抽象的な「報道機関」という概念を用いることで、この問題を解決しているわけです。
ですので、以上の「上場企業は情報の伝達は報道機関を通じなければならない」という観点から言えば、
「上場企業が情報を何も伝達しない」というのもまた「フェア・ディスクロージャー」を間違いなく遵守している状態だ、
と言えるわけです。
「上場企業が情報を何も伝達しない」のならば、少なくとも投資家間に情報格差は生じてはいないからです。
他の言い方をすれば、「上場企業が情報を何も伝達しない」のならば、
少なくとも一部の投資家だけが投資判断を行う上で他の投資家よりも有利になる、という状態は決して生じないからです。
結局のところ、「少なくとも投資家間に情報格差は生じないこと」や
「一部の投資家だけが投資判断を行う上で他の投資家よりも有利になるという状態が生じないこと」を担保するために
「フェア・ディスクロージャー・ルール」が求められるわけです。
万が一、ある投資家が未公表の情報を知ってしまった(仕入先の従業員やメインバンクの行員やその会社の商品の消費者等)場合は、
今度は「インサイダー取引規制」によって、市場におけるそれらの状態を作り出していく他ないでしょう。
上場企業も日々事業活動を行っているのです、「未公表の情報を知る投資家」が生じるのは避けられませんし、
むしろ理論的には「未公表の情報を知る投資家」が生じることはもはや前提とすら言えるでしょう。
これが「インサイダー取引規制」が情報格差が生じることを禁止する規制の中で「主」である理由だと思います。
昨今では、「フェア・ディスクロージャー・ルール」の方が相対的には補足的位置付けにあるとされているかと思います。
たとえ「上場企業が情報を何も伝達しない」としても、「未公表の情報を知る投資家」は事業上、必然的に生じるのですから。
改めて考えてみますと、「フェア・ディスクロージャー・ルール」は、実は理論上は「インサイダー取引規制」をはるかに超えた、
市場における大前提である(「情報の発表は理論上は必ず報道機関を通じるべき」という大前提)と言えるのかもしれません。
しかし、たとえ「上場企業が情報を何も伝達しない」としても「未公表の情報を知る投資家」は事業上必然的に生じるという現実的理由や、
最近では「自社ウェブサイト」という、未公表の情報を市場の投資家全員に対し同時に・一斉に・一瞬で伝達できる、
報道機関を補完する役割を果たすことができる媒体(報道機関もその本質は「情報伝達媒体」としての役割でしょう)が
1990年代後半に誕生しましたので、今までとは異なる「フェア・ディスクロージャー」のあり方が現実に考えられるようになった、
という技術の進歩と時代の変遷を踏まえた現実的理由にょり、
インターネットが一般に普及して20年たった今になって「フェア・ディスクロージャー・ルール」の議論が再燃し、
もしくは、現実的には初めて、行われているところなのだと思います。
「フェア・ディスクロージャー(・ルール)」は証券市場における元来からの大前提ではあるのですが、
現実には今までは概念論に過ぎなかったと言っていいと思います(だから今までは「インサイダー取引規制」が主だった)。
報道機関を通じて情報を発表しさえすれば、事実上自動的にそれで「フェア・ディスクロージャー」になっていた、と言えたわけです。
ただ、先ほど書きました経緯に加え、最近では、会社と投資家との対話も投資促進の上では重要であるとの思惑・認識があり、
上場企業が報道機関を通じずに自社情報を発信する場面があることから、
「フェア・ディスクロージャー・ルール」の策定が議論されているのだと思います。
ただ、今日(そして2016年12月21日(水)に)紹介している記事によると、
「フェア・ディスクロージャー」の趣旨からアパレル企業が生産委託先(仕入先)のリストを開示している、
とのことですが、「フェア・ディスクロージャー」というだけなら、その生産委託先(仕入先)のリストは開示しなくても、
「フェア・ディスクロージャー」は始めら遵守されていることになります。
なぜなら、開示しないなら開示しないで、
市場の投資家は全員、生産委託先(仕入先)を一切知らないというだけだ(つまり、投資家間に情報格差はない)からです。
他の投資家とは異なり、生産委託先(仕入先)を知っている投資家には、
株式の取引を控えてもらう(これが「インサイダー取引規制」)、という考え方で現実には対応を取るしかないのだと思います。
その生産委託先(仕入先)のリストは開示すれば、従来から(開示前から)生産委託先(仕入先)を知っていた投資家も、
その後は株式の取引を行っても差し障りはなくなる、というだけのことなのです。
ではどの情報を開示しどの情報を開示しないのか、という議論になると、やはり答えはないでしょう。
元来的な「フェア・ディスクロージャー」の観念から言えば、
「どの情報であれ、報道機関を通じて発表すれば『フェア・ディスクロージャー』は遵守されたことになる。」
というだけの話であろうと思います。
結局、現実には、この種の情報格差の「問題」をなくすためには、「インサイダー取引規制」による運用を行う他ない、
ということになります。
「インサイダー取引規制」では、情報格差そのものは解消されません(つまり、投資家間の情報格差は依然として存在するまま)。
しかし、「インサイダー取引規制」により、少なくとも株式の取引を行う上での有利・不利はなくなると言えるでしょう。
「インサイダー取引規制」により、未公表の情報を知っている投資家(有利な投資家)は株式の取引を行わないのですから、
後は市場では未公表の情報を知らない投資家(不利な投資家)だけで株式の取引を行うことになります。
その意味において、「株式の取引を行う者達の間に情報格差はない」と言えるわけです。
この問題の根治は、「フェア・ディスクロージャー(・ルール)」だと言ってしまえば確かにそれまでだと思います。
「フェア・ディスクロージャー」を行えば、情報格差そのものがなくなるのですから。
ただ、「この種の情報は任意開示として開示しなさい。」という形で「フェア・ディスクロージャー・ルール」を策定するのは
現実には難しいのだろうと思います。
実際にルールを運用しようとすると、企業の自主性に任せる、という部分が多くなると思います。
この点について考えてみますと、「会社は法定開示のみを行う。」が、さらに元来的な考え方なのだろうか、という気もします。
「法定開示のみを行う」ことが最も元来的な「フェア・ディスクロージャー」と言えるのかもしれません。
そして、「@法定開示のみ+Aインサイダー取引規制」による証券制度の運用、これが現実的な落としどころなのかもしれません。
「フェア・ディスクロージャー・ルール」に基づく開示は、法定開示なのかそれとも任意開示なのか、分かりづらいなと思います。
開示すべき情報が明確でないのなら、必然的に任意開示の側面が出てきます。
「法定任意開示」という言葉を思い付きました。
今日も「フェア・ディスクロージャー・ルール」の策定(ルールとして規定すること)については答えは出ませんが、
結局のところ、強制力を持たせるなら「フェア・ディスクロージャー・ルール」は最後は線引きの問題になると思いました。
The "fair disclosure rule" is at once the most primitive and most
fundamental basic concept
and the most up-to-date issue in which the Internet
is reflected.
「フェア・ディスクロージャー・ルール」は、最も元祖的で最も本質的な基礎概念であると同時に、
インターネットを反映させた最も現代的な論点でもあるのです。