2017年1月16日(月)

ホットストック:日立工機が売り気配、米投資ファンドによるTOBを発表

[東京 16日 ロイター] - 日立工機 が売り気配で始まった。
日立製作所 が13日、子会社の日立工機を米投資ファンドKKR に売却すると発表した。
KKRは1月30日から3月22日までの間、日立工機に対しTOB(株式公開買い付け)を実施。
日立工機は上場廃止となる見通し。買い付け価格は1株870円だが、
日立工機はTOB成立を条件として1株580円の特別配当の実施を決定している。
TOBに応募する株主が受け取るのは1株1450円で、前営業日の終値1508円と比べ3.8%安い水準となる。
(ロイター 2017年 01月 16日 09:05 JST)
ttp://jp.reuters.com/article/idJPL4N1F6002

 


日立工機が大幅続落、HKホールディングが実質1株1450円でTOBを発表◇

 日立工機<6581.T>が大幅続落となっている。
米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)傘下のHKホールディングスが13日、
同社の完全子会社化を目指してTOBを実施すると発表したが、
TOB価格が実質1450円(TOB価格870円に、TOBが成立すれば応募した株主に1株580円の特別配当金を支払うため)
と前週末株価1508円を下回ることなどが売り材料視されている。
 買付予定数は1億142万9921株(下限6763万2900株、上限設定なし)で、
買付期間は1月30日から3月22日まで。
なお、親会社である日立製作所<6501.T>は、保有する日立工機全株式5188万5353株(間接保有分を含む)を
応募するとしており、TOB成立後、日立工機は日立グループから外れることになる。
また、日立工機は上場廃止となる見通しで、これを受けて東京証券取引所は13日付で、
日立工機株を監理銘柄(確認中)に指定している。
(株経ONLINE 2017年01月16日(月) 12:30)
ttp://kabukei.jp/posts/5374977

 


2017年1月13日
日立工機株式会社
剰余金の配当(特別配当)、剰余金の配当(特別配当)に関する基準日設定
及び平成29年3月期(第95期)配当予想の修正に関するお知らせ
ttp://www.hitachi-koki.co.jp/ir/newsrelease/2017/pdf/201701133.pdf


4. 理由
(2/2ページ)

>本公開買付けは平成29 年1月30日に開始予定であり、本特別配当は、平成29年3月期末前後を目途に行われる予定であることから、
>当社は、平成29 年3月期末配当に相当する額も加味したうえで本特別配当を実施することが合理的であると判断しており、
>公開買付者との間で、原則として本特別配当以外の配当を行わないことを確認しております。
>そのため、本日開催の取締役会において、平成29 年3月期の配当予想を修正し、
>平成29年3月期の期末配当を行わないことを決議いたしました。

 

 

「日立工機株式会社株式のここ1週間の値動き」




過去の関連コメント


2017年1月13日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201701/20170113.html

2017年1月15日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201701/20170115.html

 



【コメント】
昨日のコメントで、日立工機株式会社の理論上の推論株価を作図しましたので、
日立工機株式会社の事例について一言だけコメントを書きたいと思います。
日立工機株式会社株式の今日の値動きはキャプチャーしている通りなのですが、
公開買付者と対象者が株式の対価の金額と考えている「1,450円」に張り付くという結果にはならなかったようです。
今日の終値は「1,398円」(前日比7.29%安)であったようで、株価は大幅に下落したと表現してよいでしょう。
このような株価になった理由については全く分かりません(既存株主から見ると、1,450円未満で株式を売る理由は全くないはず)が、
出来高を見ますと朝方に(取引開始後すぐに)大量に株が売られた、ということがうかがえます。、
株経ONLINEの記事によりますと、株主にとって公開買付価格は実質1,450円であると言える理由として、

>TOB価格870円に、TOBが成立すれば応募した株主に1株580円の特別配当金を支払うため

と書かれています。
しかし、これは間違いです。
公開買付が成立すれば1株当たり580円の特別配当が支払われるのは確かですが、
それは公開買付に応募した株主だけに支払われるのではなく、全株主に支払われます。
この公開買付期間の最中または前後を基準日とした配当に関してですが、
実務上は、公開買付に応募した株主と応募しなかった株主との間で経済的な差異が生じてしまうのを避けるため、
そして、公開買付への応募を促すため、対象者は公開買付近傍の配当を支払わない旨決定することがよく行われます。
友好的な公開買付など、対象者が公開買付への応募を推奨している場合は、実務上はそうした方がよいとは言えるでしょう。
ただ、理論的には、配当と公開買付とは全く関係はありません。
配当の基準日が、公開買付の開始日の前であろうが後であろうが、公開買付の終了日の前であろうが後であろうが、
配当の支払いと公開買付の決済代金の支払いとは独立して行われます。
確かに、配当の基準日が公開買付の終了日の後の場合は、配当を受け取りたいという気持ちが株主にある場合は、
公開買付への応募にマイナスの影響が生じるとは言えるでしょう(応募してしまうと株主はその後配当を受け取れないため)。
そういった影響は実務上あるにはあるのですが、公開買付では株式の譲渡を行うのだ、という見方をすれば、
公開買付への応募はただ単に株式の譲渡の結果基準日の前に株主が異動する、というだけの意味しかないわけです。
すなわち、基準日に株主でいたいのなら公開買付へ応募しなければよい、という株式譲渡における基本的考え方に
行き着くだけの話であろうと思います(基準日に株主でいたいなら株式を譲渡しなければよいだけのこと)。
株式は譲渡したがその後も株主のままでいたい、というのは明らかにおかしな考えと言わねばならないでしょう。
理論的には、対象者の配当政策は公開買付に中立であるべき(公開買付の実施に影響を受けるべきではない)だと思います。

 


それから、昨日私が「絶対に解決不能の大きな問題」と表現した、
二段階買収における「強制取得の際の買取価格はいくらか?」、という問題についてです。
プレスリリースによりますと、「強制取得の際の買取価格」は買付価格と同じ「870円」である、とのことです。
昨日作図した推論株価の値動きの図中にも書きましたが、
理論的には、公開買付成立後の二段階買収における株式の取得価格は買付価格である「870円」が公正であろうと思います。
その理由は、一言で言えば、「公開買付者の株式取得価額は『870円』だからである。」となろうかと思います。
公開買付者は応募株主に対し「870円」を支払って対象者株式を取得した、
だから、公開買付に応募しなかった株主に対しても公開買付者は「870円」を支払って対象者株式を取得する(それが公正だ、と)、
という論理の流れが「強制取得の際の買取価格」の算定の背景にあるのだろうと思います。、
この論理の流れ自体は正しいと思います。
しかし、「強制取得の際の買取価格」が「1,450円」ではやはりおかしいわけです。
「強制取得の際の買取価格」を「1,450円」にしますと、合計の受取金額がおかしなことになってしまうからです。
公開買付者と対象者は意識していないと思いますが、「株主」はこの場合実は4つに分類されます(株主には実は4パターンがある)。
強制取得まで含めた各株主の合計の受取金額は次のようになります(特別配当+公開買付の決済代金+強制取得における売却代金)。

@基準日前から株主であり公開買付に応募する株主 → 580円+870円+0円=1,450円
A基準日前から株主であり公開買付に応募しない株主 → 580円+0円+1,450円=2,030円
B基準日後から株主であり公開買付に応募する株主 → 0円+870円+0円=870円
C基準日後から株主であり公開買付に応募しない株主 → 0円+0円+1,450円=1,450円

「強制取得の際の買取価格」を「1,450円」に設定しますと、各株主の合計の受取金額は全くばらばらになってしまうわけです。
ただ、「強制取得の際の買取価格」を「870円」に設定しても、やはりおかしいわけです。
強制取得まで含めた各株主の合計の受取金額は次のようになります(特別配当+公開買付の決済代金+強制取得における売却代金)。

@基準日前から株主であり公開買付に応募する株主 → 580円+870円+0円=1,450円
A基準日前から株主であり公開買付に応募しない株主 → 580円+0円+870円=1,450円
B基準日後から株主であり公開買付に応募する株主 → 0円+870円+0円=870円
C基準日後から株主であり公開買付に応募しない株主 → 0円+0円+870円=870円

結局、たとえ「強制取得の際の買取価格」を「870円」に設定しても、基準日前から株主であるか基準日後から株主であるかで、
強制取得まで含めた各株主の合計の受取金額が異なる、という結果になるわけです。
プレスリリースには、基準日より後に株式を取得した株主は特別配当を受領することができません、
とだけ簡単に一言だけ書かれていますが、この事例では配当の支払いに公開買付の成立を条件として付けている以上、
やはりこれは大問題だと言わねばならないのです(配当の支払いを公開買付から切り離せば理論的には問題はないのですが)。


From a standpoint of a shareholder, a dividend earned is not a consideration of a transfer of his share.

株主の立場から見ると、受取配当金は所有株式の譲渡の対価ではないのです。