2016年12月18日(日)
2016年8月29日(月)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
マミヤ・オーピー株式会社
(記事)
2016年8月26日
マミヤ・オーピー株式会社
自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ
ttp://www.mamiya-op.co.jp/data/news20160826-1.pdf
(ウェブサイト上と同じPDFファイル)
【コメント】
マミヤ・オーピー株式会社が実施する「自己株式の取得及び自己株式の公開買付」を題材にコメントを書きたいと思うのですが、
題材となる事柄の中心部分は「公開買付開始公告についてのお知らせ」に全て記載されているように思います。
書きたい論点を一言で言えば、「買付期間中に株式併合が行われることの問題点」、となります。
このたびの公開買付は、対象者自身によって行われる公開買付(自己株式の公開買付)です。
そして、対象者が買付期間中に株式併合を実施する、という過去ほとんど例がない公開買付となっています。
買付期間中に株式併合が実施されることを見越した上でのことだと思いますが、
公開買付開始公告日(もしくは公開買付届出書提出日)時点において公開買付に設定されている買付予定数と買付価格はどちらも、
「株式併合実施後」の株式数と価格になっています。
これは、公開買付者と対象者とが同一だからこそ可能なことであり、
公開買付者と対象者とが異なっている場合は、通常は株式併合を見越した買付予定数と買付価格を
公開買付に設定する(公開買付開始公告や公開買付届出書に記載する)ことはできません。
なぜなら、通常は株式併合が行われることを事前に公開買付者が知ることはないからです。
より実務的なこを言いますと、株式併合をしようとするときは、そのつど株主総会の特別決議によって、
株式併合の割合と株式併合効力発生日を定めなければならない、と会社法に定められています。
買付期間の日数は最短で20営業日(土日や祝日の入り具合にもよるが通常は約4週間(26暦日〜28暦日+1暦日程度)である一方、
対象者が緊急に(contingently(付随的に))株式併合を行いたい場合は、臨時株主総会の招集から始めなければなりません。
臨時株主総会の招集のためには、まず基準日の設定を行わなければなりませんが、
基準日の設定公告は基準日の2週間前までに行わなければならないと会社法に定められています。
そして、会社は基準日の株主に対して株主総会招集通知を送付せねばなりませんが、
株主総会招集通知の送付は株主総会開催日の2週間前までに行わなければならないと会社法に定められています。
さらに、会社は株主併合の効力発生日の2週間前までに株主に対し一定の事項を通知しなければならない(この通知は公告で代用可)、
と会社法に定められています。
つまり、対象者が緊急に(contingently(付随的に))株式併合を行いたいと
意思決定をしてから(判断日・意思決定日≒基準日設定公告日)、株主併合の効力発生日までには
最短でも合計6週間(=2週間+2週間+2週間)もかかるわけです。
ですので、株式併合の場合は、株式併合が行われることを事前に公開買付者が知ることはできなくても、
実務上は何の問題もないわけです(株式併合の効力発生日には既に公開買付は終了しているから)。
問題が生じ得るのは、株式併合の逆、すなわち株式分割の場合かと思います。
株式分割は、取締役会の決議により実施することができます。
また、会社法の第百八十三条(株式の分割)と第百八十四条(効力の発生等)を読む限り、
株式分割の基準日から効力発生日までの期間に特段の定め(例えば「2週間前までに」等)はないようです。
他の関連法令にも定めはないのだとすると、株式分割は、株主総会の招集の手続きが省略できる上に、
効力発生までの間に何らかの一定の期間を設けなければならないということはない(何らかの公告も不要)ため、
株式併合よりも圧倒的に短期間のうちに実施できます(基準日の設定は必要だが、基準日も取締役会決議のみで即設定可能)。
おそらく、法令上は、会社は株式分割の意思決定のその日に株式分割を実施する(効力を発生させる)ことができるのだと思います。
これらの定めの背景には、株式併合とは異なり株式分割では株主保護の観点は必要ない、ということがあるのだろうと思います。
私の以上の理解が正しいなら、対象者は買付期間の最中に即時に株式分割を実施することができる、ということになります。
それで、対象者は買付期間の最中に即時に株式分割を実施することができる、となりますと、対象者が必要だと判断した場合は、
対象者は緊急に(contingently(付随的に))株式分割を行うことを意思決定し即座に株式分割を実施できるわけなのですが、
先ほどの株式併合の場合同様、通常は株式分割が行われることを事前に公開買付者が知ることはありませんので、
株式分割を見越した買付予定数と買付価格を公開買付に設定する(公開買付開始公告や公開買付届出書に記載する)ことは
やはり公開買付者にはできない、ということになるわけです。
現行の金融商品取引法上、実務上は、対象者が株式併合や株式分割を買付期間中に実施した場合は、
「買付条件の変更」により公開買付者は対象者の行為に対し対応を取っていくことになります。
端的に言えば、対象者が買付期間中に株式分割を実施した場合は、分割割合に応じて買付価格を引き下げることが
金融商品取引法上認められます。
また、当然、対象者が買付期間中に株式分割を実施した場合は、分割割合に応じて買付予定数を引き上げることになります。
対象者が買付期間中に株式分割を実施した場合に、分割割合に応じて買付予定数を引き上げないこと自体は自由だとは思います。
しかしその場合、例えば、「議決権割合の過半数が買付予定数の下限だったので応募したのに、
株式分割の結果買付予定数の下限が著しく減少してしまった(下限が51%から5.1%へ等)、
それだったら公開買付に応募しなければよかった(株式分割実施前に応募したのだが応募を全部解除すればよかった)。」、
と後悔・判断ミスする株主が生じる恐れがあると思います。
株式分割を実施しても、公開買付への応募株式数までもが自動的に増加するわけではありません。
株主は、株式分割実施後、改めて公開買付代理人へ株式分割に伴い増加した所有株式についても追加的に応募しなければなりません。
株式分割の実施に伴い公開買付への応募株式数までもが自動的に増加すると応募株主が勘違いをしている場合は、
所有株式は全部応募するつもりだったのに応募し損ねてしまった(増加株式数が手許に残ってしまった)、
という事態が生じるわけです。
制度が柔軟になれば柔軟になるほど、公開買付者だけではなく株主の方も制度に適った行動をたくさん取っていかなければならない、
ということになります。
逆に、株式併合の場合は、例えば、100株所有している株主が公開買付に100株応募したのだが、
株式併合の結果会社法上その応募株主は10株しか所有していないという状態になったわけなのですから、
減少株式数(差異)である90株については応募を解除しなければならない、ということになると思います。
株式併合を実施しても、公開買付への応募株式数までもが自動的に減少するわけではありません。
実務上は、公開買付代理人(証券会社)の現場では応募株式数について説明が付かないことになると思います。
応募株主は所有株式数を超えて公開買付に応募していることになる(そのような状態が突然発生する)わけですから。
現実には、所有株式数を超えて応募をしていることになる応募株主に対しては、
公開買付代理人(証券会社)が応募株主に個別に連絡をして、応募株式数の変更の手続きを取っていくことになると思います。
制度が柔軟になれば柔軟になるほど、公開買付者だけではなく、公開買付者も株主も、
制度に適った行動を加速度的にたくさん取っていかなければならない、ということになります。
さらに、株式併合を実施しますと、理論的には所有株式数に1株未満の端株が生じることになります。
端株に関しては、発行会社(この場合は対象者)が買い取るというような手当ても会社法上規定されているかと思いますが、
買付価格(公開買付者による株式買取価格)と端株の買取価格(対象者による株式買取価格)とは必ずしも一致しないでしょう。
公開買付での買付であれば、「応募株式数×買付価格」の代金を受け取ることができたのに、
株式併合が行われた結果(言わば応募株式数に端株が生じた結果)、
「応募株式数×買付価格」未満の代金しか受け取ることができなかった、という応募株主が現実に生じてしまうわけです。
端株の買取価格(対象者による株式買取価格)は会社法制度上当然公正な価格でなければなりませんが、
例えば対象者は端株をプレミアムを付けて買い取る必要はないわけです。
公開買付者は、一定以上の議決権割合を取得するためにプレミアムを付けた買付価格を設定するわけです。
俗に、それはコントロール・プレミアムと呼ばれるものです。
しかし、対象者はそれにより一定以上の議決権割合を取得する意思・意向は何らありませんので、
端株の買い取りの際にプレミアムを付けなければならない理論的根拠は何もないのです。
要するに、対象者が買付期間中に株式併合を実施することは、
結果的に金融商品取引法の趣旨(投資家保護)に反することになってしまうと思います。
株式分割の場合も、細かいことを言えば、応募株主は当初の「応募株式数×買付価格」未満の代金しか受け取ることができない、
という問題は生じ得ると思います。
例えば、当初の買付価格は「111円」だったのだが、対象者が1株を10株にする株式分割を行ったのに伴い、
公開買付者が買付価格を「11円」に変更した場合などです。
買付価格は整数でなければなりません(1株のみ応募する株主もいますので。現実に「決済」ができなければなりませんので。)。
株式分割の結果、分割後の株式1株当たり「0.1円」だけ株主が受け取ることができる代金が減少してしまう、
という事態は考えられると思います。
ただ、これは、買付価格の引き下げに金融商品取引法上制限を課することで十分対処できる問題ではあります。
簡単に言えば、株式分割の分割割合に応じ買付価格を引き下げた結果端数が生じた場合は、端数は切り上げなければならない、
というふうに定めればよいわけです。
この設例で言えば、買付価格は最低でも「12円」以上にに変更しなければならない、ということになります。
「11円」への買付価格の引き下げは認められない、と金融商品取引法に定めればこの問題は簡単に解決すると思います。
それから、買付期間中に株式併合を行うことは、公開買付制度の重要な一部分を否定することにもなります。
それは「議決権割合の変動」です。
一言で言えば、株式の併合を行った時は、各株主の議決権割合は、ほとんど全ての場合、大なり小なり変動してしまうのです。
全株主が100株や1000株やその倍数の株式数のみを保有していると考えるから、
株式の併合を行っても各株主の議決権割合は変動しないと思ってしまうわけです。
各株主の保有株式数が、1株や2株や5株や11株や111株・・・などの時に、
10株を1株に併合する株式併合を行った、と考えてみて下さい。
株式併合の結果、1株も所有しない株主が発生したりするわけです。
端的に言えば、保有株式数の減少割合は株主によって完全にばらばらであるわけです。
株式併合の結果、保有議決権割合が著しく減少してしまう株主もいれば(文字通り0%になってしまう株主もいる)、
保有議決権割合が逆に増加する株主もいるわけです(減少した株主の分が結果的にその株主に回ってくるわけです)。
公開買付制度には、公開買付者の公開買付開始前と公開買付終了後の保有議決権割合を明確にする目的もあるわけです。
公開買付が公開買付により何株買い付けたら公開買付者の公開買付終了後の保有議決権割合はいくらになる、
ということを予め明確する(そして投資家の投資判断に資する)ことが、公開買付制度の目的でもあるわけです。
それなのに、買付期間中に株式併合を行ってしまいますと、
公開買付が公開買付により何株買い付けたら公開買付者の公開買付終了後の保有議決権割合はいくらになる、
という点が全く明確ではなくなるわけです。
株式併合の結果、発行済株式総数や各株主の保有株式数自体が変わってきますので、
公開買付において重要な「1株当たりの重み」が全く分からなくなってしまうわけです。
公開買付者にとっても、何株買い付けたら目的の議決権割合に達するのか、全く分からなくなると思います。
株式併合の実施自体でも発行済株式総数は機械的に減少しますが、
株式併合に伴い一定数の株式が端株になった結果、さらに発行済株式総数は減少するからです。
株式併合に伴い端株になった株式数というのは、公開買付者には分からないわけです。
これでは、例えば51%の株式を買い付けたいという場合に、何株買い付ければ51%に達するのか分からない、ということになります。
公開買付者が株式併合前から対象者株式を所有していた場合は、
株式併合の結果現在自分がいくらの議決権割合を所有しているのかすら分からなくなるわけです。
株式併合を行いますと、少数株主から端株が生じる分大株主は保有議決権割合が増加するのですが、
どれくらい保有議決権割合が増加するかはどれくらい端株が生じるかで決まるのです。
買付期間中に株式併合を行いますと、公開買付者ですら現在の自分の保有議決権割合も分からなくなりますし、
公開買付終了後の保有議決権割合も分からなくなる、という状態に陥ってしまいます。
結論を言いますと、買付期間中には株式併合は行ってはならない、となると思います(株式分割は均等に増加するからまだよい)。
In cases of consolidating shares, a proportion of voting rights of
respective shareholders
almost always changes to a greater or lesser
degree.
株式の併合を行った時は、各株主の議決権割合は、ほとんど全ての場合、大なり小なり変動します。
「金融商品取引法と会社法の乖離」という論点を考えるに当たり、次の記事も1つの題材になると思いましたので紹介します。
2016年12月3日(土)日本経済新聞
日興が民事再生法申請 ゴルフ場は継続
(記事)
日興ゴルフクラブCUE
ttp://www.nikkocue.sakura.ne.jp/
(トップページをPDF印刷で出力)
「日興ゴルフクラブCUE」を運営する日興という会社が民事再生法の適用を申請したとのことですが、トップページには、
>現在、通常営業いたしております。皆様のお越しをお待ちしております。
と書かれてあり、年末年始の営業案内まであります。
何ら悪びれることなく、今後も営業を続ける気満々のようです。
サイトには「試打会情報」まで掲載されていますので、ウェブサイト(htmlファイル)もPDF印刷ができるのだろうかと思い、
試しにトップページをPDF印刷で出力してみたところです。
ここまでふてぶてしい債務者は初めて見ました。
というのは冗談ですが、債権者としては、債務者が営業を継続する結果今後債権の弁済額が減少してしまうくらいであるならば、
やはり債務者は一旦営業を停止し債権の弁済額を最大化させる努力を行ってもらいたいと債権者は望むのではないかと思いました。
と思って何か都道府県が違うなと思って再度検索してみましたら、このたび倒産したゴルフ場は別のゴルフ場でした。
ただ、上記「日興ゴルフクラブCUE」も株式会社日興が運営しているゴルフ場の1つなのかもしれませんので、
やはり関係はある(民事再生法の適用はゴルフ場単位ではなく法人単位だから)のかもしれませんが、
民事再生法の適用に関するプレスリリースのリンクを貼っておきたいと思います。
2016年12月2日
株式会社日興
民事再生手続開始の申立てに関するお詫び
ttp://www.wakasacc.co.jp/news/617
本題に入りますが、「金融商品取引法と会社法の乖離」という論点についてです。
2016年12月4日(日) と2016年12月5日(月)
に株式会社アコーディア・ゴルフに対する公開買付についてコメントを書いたかと思います。
2016年12月4日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201612/20161204.html
2016年12月5日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201612/20161205.html
それで同じゴルフ場運営会社ということでふと思ったことがあります。
ふと思ったことというのは、
「買付期間中に@公開買付者が倒産した場合、そして、A対象者が倒産した場合、はそれぞれどのような考え方になるのだろうか?」
という点についてなのです。
金融商品取引法上は、買付期間中に公開買付者や対象者や公開買付代理人が倒産する場合については何ら想定はしていないと思います。
逆から言えば、金融商品取引法は、買付期間中には公開買付者も対象者も公開買付代理人も絶対に倒産はしないことを前提にして、
各規定を定めている、ということになります。
基本的には、当事者の倒産に関しては金融商品取引法の対象外(倒産についてはまさに会社法の担当範囲)ということだと思いますが、
現実には、買付期間中に公開買付者や対象者や公開買付代理人やさらには株主が倒産することは全く考えられることかと思います。
最初は公開買付者と対象者が倒産する場合のみが頭に浮かんだのですが、公開買付代理人と株主が倒産する場合も含め、
それぞれの場合について、このような考え方になるのではないか、と思ったことを書きたいと思います。
公開買付代理人(証券会社)が倒産する場合に関しては、公開買付代理人が公開買付者から預かっている決済代金に関しては、
公開買付代理人自身のお金ではない(つまり、そのお金が代理人の債権者への債権の弁済に当てられることはない)ということで、
話の整理は付くのだろうと思います(つまり、買付期間が終了するまでは代理人は営業を継続することが認められるべきでしょう)。
ただ、法理的には、代理人の倒産時には公開買付代理人の業務だけは継続してよいという理屈もないと思いますので、
法理的なことを言えば公開買付期間中に公開買付代理人を清算させる手続きを取ることはできると思います。
その場合は、公開買付の手続き自体が成り立たない(公開買付の手続き自体が買付期間の途中で終了する)、
ということになります。
公開買付代理人に関する特例ということで、買付期間が終了するまでは公開買付代理人は営業を継続することができる、
というふうに金融商品取引法で定めるべきなのだと思いますが、現行の金融商品取引法にはそのような定めはないと思います。
金融商品取引法は、買付期間中に公開買付代理人が倒産することはない、ということが前提になっていると思います。
次に、株主が買付期間中に倒産した場合についてですが、基本的には応募株主は公開買付者に対し一種の債権(株式の代金債権)を
有する、という見方ができると思います(正確に言えば、公開買付の成立をもって確定債権になる、ですが)。
ですので、株主の清算人は、その代金債権の回収を行っていくことをまず考えると思います(債権の回収は確実なため)。
ただ、清算人の権限として、清算人には公開買付への応募を解除する権限もあると思います。
例えば、株主が株価よりもディスカウントされた買付価格に応募してる場合は、
市場内でもしくは他に高い価格での買い手がいる場合はその人に、応募を解除した上で売却する、ということはあると思います。
その辺りは、どのような会社財産の処分が一番債務の弁済額が最大化されるのか、という点に関する清算人の判断、
ということになるわけですが、清算人の判断によっては、一旦応じた応募の解除もあり得る、という考え方になると思います。
ただ、株主の倒産の場合、金融商品取引法の論点としては、公開買付手続きには何らの影響も及ぼさない、ということになります。
次に、公開買付者が買付期間中に倒産した場合についてですが、
買付代金は公開買付代理人が予め預かっており保管している以上、
公開買付者が倒産しても、金融商品取引法の論点としては、公開買付手続きには何らの影響も及ぼさない、ということになります。
他の言い方をすると、公開買付者と決済(その他公開買付の手続き全般)とを切り離すために公開買付代理人がいる、
という言い方になると思います。
金融商品取引法上、買付代金を公開買付代理人に予め預け入れ保管してもらうのは、
純粋に投資家保護の観点からであり(手許資金は十分であるにも関わらず決済代金の支払いを公開買付者が拒否するのを避けるため)、
買付期間中に公開買付者が倒産することを想定してのことではないと思いますが、
結果的に買付期間中に公開買付者が倒産しても何の問題も起きない、という(副次的)効果を生じさせていると思います。
もちちん、決済が行われた結果、応募があった対象者株式は公開買付者の所有物になるわけですが、
公開買付者の清算手続きにおいて清算人が対象者株式(倒産後に・清算手続き中に取得した会社財産)を
どのように処分するのかは清算人の判断というだけであり、
公開買付者の倒産は公開買付手続きには何らの影響も及ぼさないのだけは確かです。
公開買付者は清算手続きに入ったのだから公開買付代理に預け入れた決済代金を返してくれ、
という権限は清算人にはないと思います。
金融商品取引法には、決済代金を買付期間中に公開買付者に返済する、という定め自体がないからです。
最後に、対象者が買付期間中に倒産した場合についてですが、これはなかなか難しい論点だと思います。
対象者が清算されますと、公開買付の目的となっている証券自体が消滅するということになりますので、
まさに公開買付自体が成り立たないということになると思います。
消滅してしまった証券に関してまで、投資家保護の観点から決済をする必要があるのか、という論点はあると思います。
この時、公開買付者は決済の結果何を取得するというのでしょうか。
公開買付者は決済の結果何も取得しないのですから、その場合は十分な応募あったとしても決済をする必要もないと思います。
公開買付の目的物が存在する場合に、投資家保護という概念が生じるものだと思います。
公開買付の目的物が存在しないにも関わらず、応募があった分には決済を要請するというのは、
投資家保護というものを勘違いしているのではないかと思います。
極論すれば、対象者が倒産したのは投資家(株主)の責任、という言い方もできると思います。
少なくとも公開買付者の責任ではないでしょう。
対象者が買付期間中に倒産した場合は、公開買付手続きの根幹が崩れてしまう(公開買付の目的物自体が消滅する)わけですから、
公開買付は買付期間の途中で終了する、という考え方になると思います(金融商品取引法にその旨規定はないと思いますが)。
決済代金は、そのまま(何ら決済に当てられることなく)公開買付代理人から公開買付者へ返還されることになると思います。
応募株主は公開買付者からの決済があると信じて(そのような法的担保もあると理解したうえで)公開買付に応募したのだから、
すなわち、一旦公開買付が開始されたならば、
その公開買付では応募が十分であり成立しさえすれば必ず決済は行われるという約束で応募株主は公開買付に応募したのだから、
応募があった分に関しては全て公開買付者は決済を行うべき(その旨公開買付代理人も応募株主に対し代金の支払いを行うべき)、
という考え方もあるかもしれません。
しかし、その理屈が成り立つのは公開買付の目的物がある場合の話であるわけです。
公開買付の目的物が消滅する場合は、公開買付が成立するということ自体がない、と考えなければならないでしょう。
公開買付の目的物が消滅した結果、応募株主は何も応募していないことと同じなのです(つまり、公開買付は成立しない)。
何も取得しないのが公開買付制度ではないはずです。
対象者が倒産したとなりますと、例えばもはや市場に株価はありませんし、市場における株式の取引もないわけです。
金融商品取引法上、上場企業が倒産すること自体は投資家保護の観点には反さないように、
対象者が倒産した公開買付において応募株式について決済を行わないことは、投資家保護の観点に反さない、と解するべきでしょう。
公開買付の枠組みにおいて、公開買付の決済に関しては、
公開買付者と決済とは切り離されていますが、対象者と決済とは切り離されてはいない、と解するべきだと思います。