2016年10月20日(木)



2016年10月19日(水)日本経済新聞
遺産相続、配偶者分引き下げ 意見公募の半数「反対」 法務省
(記事)



2016年10月19日(水)日本経済新聞
相続税対策で賃貸経営 家賃保証の更新も考慮して
(記事)


2016年10月20日(木)日本経済新聞
預金も遺産分割対象に 最高裁、判例見直しへ
▼遺産分割
(記事)

 


預貯金も遺産分割対象に 最高裁が判例見直しへ

 相続の取り分を決める「遺産分割」の対象に預金は含まれない――。こんな裁判のルールが見直されることになりそうだ。
遺族間で争われた審判で最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)が19日、双方の意見を聞く弁論を開いた。
判例を見直す可能性が高い。話し合いや調停では預金を含めて配分を決めるのが一般的で、裁判所も実態に合わせる。
 判例は預貯金を遺産分割の対象とせず、不動産や株式といった他の財産と関係なく、
法定相続の割合に応じて相続人に振り分けられると考えてきた。
最近では2004年の最高裁判決が「預貯金は法定相続分に応じて当然に分割される」とした。
 話し合いや調停では預貯金も含めて取り分を決めることが多い。
ただ話し合いで結論が出ず家庭裁判所の審判に争いが持ち込まれた場合、原則は預貯金を区別して分配しなければならない。
「兄は土地と建物、弟は預貯金全額」のような分配ができず、調停などの実務との隔たりが指摘されていた。
 今回の審判では、約4千万円の預金の相続をめぐって遺族2人が争った。
1人は故人から生前に5千万円を超える贈与を受けたため、
もう一方の親族の女性が「生前贈与を考慮せず、法定相続分に従って預金を2分の1(2千万円)ずつ分けるのは不公平だ」と主張。
遺産分割の審判を裁判所に申し立てた。
 一、二審は判例に従って女性の主張を退けたが、最高裁は今年3月、審理を大法廷に回付した。
大法廷は判例を変更する場合などに開かれる。決定は早ければ年内に出る見通しだ。
 19日の弁論で、審判を申し立てた女性の代理人は「預貯金を遺産分割の対象から外せば、
相続人同士の平等性を確保する道が閉ざされる」と主張。
生前贈与を受けた親族の代理人は「現行法では遺産分割の対象としなくても法令違反はない」と反論した。
 法制審議会(法相の諮問機関)が進める相続分野の見直しでは、遺産分割に預貯金を含める案が議論されており、
最高裁の判断は法改正にも影響するとみられる。
(日本経済新聞 2016/10/19 20:48)
ttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDG19H4P_Z11C16A0CR8000/

 


相続についての過去のコメント

2016年9月14日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201609/20160914.html

2016年9月23日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201609/20160923.html

 


【コメント】
相続については、2016年9月14日(水) のコメントで私の考えは書き尽くしていると思います。
また、2016年9月23日(金) のコメントでは、”現代の相続税の取り扱いは贈与税の取り扱いと非常に類似している”ということ、
”現代においても相続税はない方が理に適う”という両方の点について、相続に関する自分の考えの追記を行いました。
「相続」の概念については、2016年9月14日(水) と2016年9月23日(金) のコメントで私個人の考えとしては書き尽くしている
と自分で思うわけですが、今日は、現代の相続税について一言だけ書きます。
相続に関する記事を合計4つ紹介していますが、最後のテキストベースの日本経済新聞(日経電子版)の記事は、
紙媒体をスキャンした2016年10月20日(木)の日本経済新聞の記事(画像ファイル)と本文部分は全く一緒です。
ただ、スキャンした記事の方には、「遺産分割」に関する解説が載っていまして、
私としては、この解説部分を読んで初めて、遺産相続の実務上の取り扱いがやっと分かったところです。
どういうことかと言いますと、極めて端的に言えば、「現行の民法の規定では、現実には相続を行えない。」ということが、
私の頭の中にずっとあったわけです。
記事の文言を引用しつつその理由について書きますと、
遺産の相続は、全ての相続財産を相続人の間で法定割合に従って、均等に分割しなければならないわけなのですが、
記事にも書かれていますように、例えば土地や建物は分割のしようがないわけです。
一言で言えば、現金・預金は法定割合に当然に分割できますし、また、国債に関しても、その売却そして再購入の容易さを考えれば、
事実上国債も法定割合に容易に分割できると言えますが、
それら以外の財産は全て、現実には分割することはできないのです。
土地を2つや3つに分けることはできませんし、建物を2つや3つに分けることはできません。
また、株式であれば、被相続人の所有株式数を法定割合に従い均等に分割しなければならないわけですが、
例えば、被相続人の所有株式数が1株であったとしたら分割はできないわけです。
また、上場株式の場合を想定してみても問題はあります。
例えば1単元100株だけ被相続人が所有していたとします。
被相続人には配偶者はおらず、子が3人だとします。
この場合、1単元100株を3等分しなければならないわけですが、当然100は3で割り切れません。
また、仮に割り切れる株式数であったとしても、上場株式の場合、単元未満株式の取り扱いはどうなるのだろうか、と思います。
組織再編行為の場合は、単元未満株式が生じても問題はないかと思いますが、
相続の場合も、単元未満株式について証券会社が対応してくれるのであればよいのですが。
また、仮に、相続した単元未満株式について証券会社が対応してくれる(単元未満株式の相続自体はできる)としても、
単元未満株式は通常売却する機会は全くありません。
組織再編行為が行われた場面であれば、単元未満株式を会社側に買い取るよう請求できる場合はあると思いますが、
相続の結果単元未満株式が生じた場合は、単元未満株式を会社側に買い取るよう請求できるということはないと思います。
会社が親切にも個別の自社株買いで対応してくれればもちろんそれでよいのですが、
そのような対応を取ることは、会社にとって少なくとも会社法上の義務ではないと思います。

 


さらに言えば、被相続人が所有していた財産というのは包括的に相続人に相続されるわけですが、
被相続人が所有していた財産には、土地や建物や有価証券だけではなく、日常の身の回りの品全ても含むわけです。
自動車、自転車、書籍、CD、机、パソコン、携帯電話、テレビゲーム機、時計、バッシュ、衣類、文房具類、などなど、何でもです。
遺産相続では、これら全てを、法定割合に従い均等に分割しなければならないわけです。
そんなことはできるわけがない、と一瞬で分かるかと思います。
また、これらは金額に換算することもできないことも多いわけです。
自動車であれば、中古車販売店に売ることはできるかもしれませんが、
有名ブランドやアンティーク物ではないくたびれた運動靴や日常の文房具類などは、誰も買わないでしょう。
金額で表現できないからと言って相続はしない(相続の対象ではない)という考え方はないわけです。
「死んだじいちゃんの私物だから捨てていいのではないか。」というわけにはいかないわけです。
むしろ、死んだじいちゃんの私物を相続するのか相続なのです。
相続では、被相続人の私物を相続人らで包括的に相続することになります。
しかし、率直に言えば、現金・預金を除く相続財産の大半は、物理的にも分割できませんし、金額にも換算できないわけです。
ですので、最初に書きましたが、まさに「現行の民法の規定では、現実には相続を行えない。」のです。
「現行の民法の規定で、現実には相続を行える」のは、@相続人が1人だけの場合、か、A相続財産は現金・預金・国債だけの場合、
の2つの場合だけなのです。
この2つの場合以外は、「現行の民法の規定では、現実には相続を行えない。」のです。
この辺り、相続は実務上はどのように行われているのだろうか、とずっと思っていたわけです。
実務上は、乱暴に言えば法律の規定とは異なる取り扱いがなされている、ということなのだろうか、とずっと思っていたわけです。
相続人全員が合意をする相続方法であればそれでよし、というような感じに現実にはなっているのだろうか、と思っていたわけです。
民法の規定を厳格に運用すれば、たとえ相続財産を物理的には分割しないとしても、記事の文言を引用すれば、

>「兄は土地と建物、弟は預貯金全額」のような分配ができず、

ということになるわけです。
現実の取り扱いはどのようになるのだろうか、と思っていたわけですが、「遺産分割」の解説部分には、

>家庭裁判所に遺産分割の調停や審判を申し立てることができる。
>遺産分割の審判では、裁判所が民法が定める法定相続分や当事者の主張などをもとに、遺産の分け方について決定をする。

と書かれています。

 


相続人全員が合意を行った、ということではなく、家庭裁判所が決定した、ということにその相続の合法性の根拠がある、
ということなのでしょう。
やや極端に言えば、「家庭裁判所が決定には相続人らの誰も逆らえない。」という制度に現実にはなっているのだと思います。
なぜこの点について気になっているのかと言えば、相続人は「相続の放棄」が民法上できるからです。
「相続の放棄」ができると何が問題かと言えば、「相続人間で無税で寄付ができる。」ということになるからです。
これは、相続税法と所得税法とが複合した議論になるかと思いますが、税法の立場から見ると、
仮に「相続の放棄」に相当することを相続人の誰かが行いたい場合は、
一旦「法定の相続」を行った後、改めて相続したその財産を自分が分け与えたいと考えている他の相続人に寄付もしくは贈与をする、
という手続きを経るべきだ、と見えるのではないかと思ったのです。
この考え方ですと、1円も財産を相続しなかったとしても、その相続人は法定の相続税を負担しなければならない、
ということになります。
つまり、税法上は、法定の相続をしたものと見なす、ということになるわけです。
また、「相続の放棄」が行われた結果、相続財産の取り分が増えた相続人にとっても、
一旦「法定の相続」を行った後、別途他の相続人から財産の寄付もしくは贈与を受けたもの、
という見方に税法からはなるわけです。
この場合、相続財産の取り分が増えた相続人は、法定の相続税法と、別途所得税もしくは贈与税を負担しなければならない、
という考え方になるわけです。
税法理上、「相続の放棄」という取引を、「法定の相続」+「相続財産の寄付・贈与」という2つの取引に分割して考えるわけです。
その理由は、簡単に言えば、「相続人間で無税で寄付をする」ことを避けるためです。
現代の相続は、事実上、被相続人から相続人らに対する寄付と贈与です。
相続人の同士の平等性を担保しなければならないのは、民法だけではありません。
相続税法と所得税法においてもそうなのです。
したがって、実務上「相続人の同士の平等性は担保されている」との公のお墨付きを与えるのが、
「家庭裁判所の決定」ということではないだろうか、とふと思ったわけです。
相続税法と所得税法としても、「家庭裁判所の決定」に基づく財産の相続(相続の放棄も含む)であれば、
相続人各々に相続金額に応じた相続税を課するだけにする、と考えるわけです。
相続人全員が合意を行っただけの財産の相続では、「相続人の同士の平等性は担保されていない」と税法ではこの場合考えるわけです。
以上のような整理の仕方が法理的にできないだろうか、と思いましたので書いてみました。
また、現行の規定上も、「相続の放棄」は当事者間(相続人間)で任意に行ってよいわけでは決してなく、
「被相続人の最後の住所地の家庭裁判所」へ申し述べることにより行わなければならないと定められています。
この規定は、「相続人の同士の平等性を担保する」ための規定ではないかと思います。
「家庭裁判所へ相続の放棄を申し述べた場合、相続人の同士の平等性は担保されている。」、と現行の規定でも考えているようです。
逆から言えば、当事者間(相続人間)で任意に「相続の放棄」を行った場合は、
実は現行の相続税法と所得税法上も、先ほど私が書きました課税関係になる、ということではないでしょうか。
「家庭裁判所へ相続の放棄の申し述べが行われたこと証する書類」を、相続人らは税務当局に提出しなければならないと思います。
そうでないと、相続人らには、(相続の放棄がない)法定の相続税と、
さらには追加的な所得税と贈与税が課されることになると思います。

 



私が上記の考え方が頭に思い浮かんだ背景には、いわゆる「会社清算時の債務の弁済」があります。
以前私は、法定の優先権(担保物権と先取特権)以外には、債務に弁済順位などはない、と書きました。
実務上、劣後債といったりシニア債といったりしますが、実は会社法上は劣後債やシニア債というのはないわけです。
全債務の弁済の順位は同一なのです。
債務の弁済順位というのは、債権者と会社間との私的な契約に過ぎません。
「会社清算時の債務の弁済」の際、私的な契約に基づく弁済順位は考慮されません。
そして、税法上も同じ考え方に基づき課税関係が決まります。
仮に、当事者間で任意に決めた債務の弁済順位を実現させたいなら、
一旦法定の弁済が行われた後、差額を当事者間(債権者間)でやり取りする、という方法しかありません。
その際の金銭(弁済金額の差額・調整)のやり取りは、税法上は寄付金のやり取り、ということになり、
各債権者の課税関係は、寄付金のやり取りを行った場合と同じ課税関係になります。
以上の考え方が頭にありまして、それで「これは自然人の相続の場合も同じなのではないか?」とふと思ったのです。
債務の弁済額を当事者(債権者)間で任意に決めることは認められないように、
遺産の相続額を当事者(相続人者)間で任意に決めることは認められない、ということだと思います。
ただ、「会社清算時の債務の弁済」の場合は、債務の弁済額は債権金額のみに基づき清算人が一意に決めるのみであるのに対し、
自然人の相続に関しては、現実には自然人であるがゆえに様々な事情があるかと思いますので、
そういった各家庭の事情を考慮・反映するために、「相続の放棄」もしくは「調整・調停など」を家庭裁判所に申し立てることが
できるようになっているのだと思います。
最初に書きましたように、「現行の民法の規定では、現実には相続を行えない。」以上、実務上は、
事実上全ての相続は家庭裁判所の調停や決定の下に行われる、ということになると思います。
「相続のためには家庭裁判所の決定がいる。」、そう理解すればよいのだと思います。
現行の民法の規定に厳密に基づくと、現金・預金・国債以外の遺産は全て、uninheritable inheritance (相続できない相続財産)、
ということになるな、と思いましたので、以上、自分の理解の整理のために、現行の「相続」について書いてみました。

 

Uninheritable inheritance.

相続できない相続財産

 

On the old Civil Code, an inheritance used to be a position of the "head of a family" only,
whereas, on the modern Civil Code, an inheritance becomes cash only,

旧民法では、相続は「戸主」の地位だけだったものです。
しかし、現代の民法では、相続はお金だけになってしまいました。