2016年9月19日(月)



2016年9月15日(木)日本経済新聞 公告
公開買付条件等の変更の公告についてのお知らせ
株式会社イトーキ
(記事)




2016年9月14日
株式会社イトーキ
平成28年8月3日付開示文書の訂正及び
子会社である株式会社ダルトン普通株式(証券コード7432)に対する公開買付期間延長等に関するお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1401189

 


2016年8月3日
株式会社ダルトン
支配株主である株式会社イトーキによる当社株式に対する公開買付けに関する賛同及び応募推奨に関する意見表明のお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1389450


2016年9月14日
株式会社ダルトン
支配株主である株式会社イトーキによる当社株式に対する公開買付期間延長等に関するお知らせ
ttp://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1401200

 


「株式会社ダルトンの過去3ヶ月間の値動き」


「株式会社ダルトンの過去1ヶ月間の値動き」

 



【コメント】
株式会社イトーキが連結子会社である株式会社ダルトンに対して公開買付を実施しているのですが、
公開買付の条件を変更する、とのことです。
株式会社イトーキが実施している公開買付については、2016年8月4日(木) と2016年8月5日(金)  にコメントしています。

2016年8月4日(木) 
http://citizen.nobody.jp/html/201608/20160804.html

2016年8月5日(金) 
http://citizen.nobody.jp/html/201608/20160805.html

さて、公開買付の条件の変更の公表は、2016年9月14日(水)付けであったわけです。
すなわち、株式会社イトーキが「訂正公開買付届出書」をEDINETに提出した日時は「H28.09.14 16:32」であったわけです。
また、「訂正公開買付届出書」をEDINETに提出すると同時に、株式会社イトーキは自社ウェブサイト上に、
公開買付期間延長等に関するお知らせ(PDFファイル)を発表したわけです。
「公開買付の条件の変更の公表日」は、「2016年9月14日(水)」であった、と言っていいのだと思います。
2016年8月5日(金) のコメントでは、「買付条件等の変更をした場合の開示の方法」についてコメントを書いたわけですが、
株式会社イトーキが2016年8月3日に発表したプレスリリースには、
「買付条件等の変更をした場合の開示の方法」について、

>買付条件等の変更を行おうとする場合は、その変更等の内容につき電子公告を行い、その旨を日本経済新聞に掲載します。

と書かれていたわけです(2016年8月5日(金) のコメント中のキャプチャー画像参照)。
それで、このたび、株式会社イトーキは「公開買付の条件の変更を行うことになったわけなのですが、
プレスリリースの記載通り、公開買付の条件の変更の内容につき公告を行い、その旨を日本経済新聞に掲載したわけです。
そのこと自体は何の問題もないのですが、公開買付の条件の変更の日本経済新聞への掲載日は「2016年9月15日(木)」であったわけです。
つまり、EDINETを通じた「公開買付の条件の変更の公表日」は「2016年9月14日(水)」であったのに対し、
同じ旨の日本経済新聞への掲載日は「2016年9月15日(木)」であった、ということになっているわけです。
その1日の違いというのは、電子的な方法による公表と紙媒体による公表の違いではないのか、と思われるかもしれませんが、
法律や金融市場の世界では日付や公表日の一意性というのは重要ではないだろうか、と思うわけです。
すなわち、EDINETを通じた「公開買付の条件の変更の公表」で情報伝達として事足りているのであれば、
同じ旨の官報や日本経済新聞への掲載は不要、ということにならないだろうか、と思ったわけです。
日本経済新聞への掲載は補完的な位置付けのものと捉えることもできるとは思いますが、
この辺りのことが少し気になったわけです。
それで、EDINETを改めて見てみますと、あることが分かりました。
以下、論点を絞るために、「公開買付の条件の変更」ではなく「公開買付の開始」についてのみ記述します(事の本質は同じです)。

 


EDINETのサイト(https://disclosure.edinet-fsa.go.jp)に行き、「公告閲覧」をクリックして見てみて下さい。
そうしますと、「公告閲覧(一覧)画面」というページが表示されると思います。
ここに、株式会社イトーキが行った「公告」が掲載されています。
「公開買付届出書」とは異なり、PDFではないようでして、上手く保存できませんので、画面をキャプチャーしました。
各公告の内容をさらに見たい場合は、各自でEDINETのサイトを見てみて下さい。


H28.08.04
株式会社イトーキ
公開買付開始公告
(キャプチャー画像)


H28.09.14
株式会社イトーキ  
公開買付条件等の変更の公告
(キャプチャー画像)



公告の名称はそれぞれ、「公開買付開始公告」と「公開買付条件等の変更の公告」であるわけですが、
これら2つのEDINET上の「公告」が金融商品取引法上の正式な公告なのだと思います。
つまり、現在、公開買付に関しては、「公開買付届出書」の提出もEDINET、「公開買付開始公告」もEDINET、となっているわけです。
「公開買付届出書」の提出も「公開買付開始公告」の公告も、
どちらも公開買付者に課せられた金融商品取引法上の義務であるわけです。

 



ところが、2016年8月4日(木)に日本経済新聞に掲載された「公開買付開始公告についてのお知らせ」と
2016年9月15日(木)に日本経済新聞に掲載された「公開買付条件等の変更の公告についてのお知らせ」は、
どちらも公開買付者に課せられた金融商品取引法上の義務ではないと思います。
一言で言えば、公開買付を実施するに際し、公開買付者は、金融商品取引法上、
「公開買付届出書」を提出し「公開買付開始公告」を行わなければなりません(この2つは法的義務)が、
官報もしくは日刊新聞紙に「公開買付開始公告についてのお知らせ」を掲載することは法的義務ではない、と思います。
金融商品取引法を細かく読んだわけではないのですが、おそらく、金融商品取引法上の義務としては、
「公開買付届出書」の提出と「公開買付開始公告」の公告だけなのだと思います。
官報もしくは日刊新聞紙に「公開買付開始公告についてのお知らせ」を掲載することは、金融商品取引法上は任意なのだと思います。
別の言い方をすると、「公開買付届出書」と「公開買付開始公告」は法定開示書類なのですが、
「公開買付開始公告についてのお知らせ」は法定開示書類ではない、という位置付けに金融商品取引法上はなっていると思います。
その理由は、端的に言えば、「公開買付開始公告についてのお知らせ」は公告ではない、
という位置付けに金融商品取引法上はなっているからだと思います。
すなわち、公開買付に関する金融商品取引法上の公告とは、EDINET上の「公開買付開始公告」のみを指すのだと思います。
「公開買付府令」には、官報もしくは日刊新聞紙に「公開買付開始公告についてのお知らせ」を掲載するよう定められている
のかどうかは知りません。
しかし、公開買付に関する「届出書」や「公告」については金融商品取引法はEDINETに一本化している、
ということであるように思います。
官報もしくは日刊新聞紙に「公開買付に関するお知らせ」を掲載するようには、
金融商品取引法は定めていない、ということではないかと思います。

 


もし私の以上の理解が正しいならば、公開買付者は、
「公開買付開始公告についてのお知らせ」や「公開買付条件等の変更の公告についてのお知らせ」を、
官報もしくは日刊新聞紙に掲載する必要はない(少なくとも法的義務ではない)、ということになります。
それで、「公表日」や「提出日」や「公告日」と、「(官報や)日刊新聞紙への掲載日」がずれていても、法的には問題はない、
という取り扱いになっているのではないかと思いました。
金融商品取引法には非常に数多くの関連する法令があります。
ですので、関連する法令に何か定めがあるのかもしれません。
しかし、今手許にあります金融商品取引法の教科書を読む限り、「(官報や)日刊新聞紙への掲載」は法的義務ではないようです。
金融商品取引法の条文をざっと読んでも、官報もしくは日刊新聞紙に掲載する云々という文言はないようです。
他の取引・場面・文脈では、金融商品取引法も日刊新聞紙や官報を公告掲載媒体として用いているのですが、
公開買付に関しては、金融商品取引法は日刊新聞紙や官報を公告掲載媒体として用いていることはしていないようです。
金融商品取引法の条文には、「公告」という文言が非常にたくさんあるわけですが、
少なくとも公開買付に関しては、「公告」とはEDINETに提出するもののみを指し、
官報もしくは日刊新聞紙に掲載するものは指さない、ということだと思います。
以前、「公開買付開始公告」と「公開買付開始公告についてのお知らせ」は異なる、といったことを書きましたが、さらに言えば、
単にそれらの記載内容(詳細さ)が異なるだけではなく、金融商品取引法上の位置付けが全く異なる、ということだと思います。
英語で言えば、金融商品取引法上は、「公開買付開始公告」は(法的義務である)「public notice」、
「公開買付開始公告についてのお知らせ」は、さすがに「advertisement」(広告)とまでは言いませんが、
法的義務ではない「announcement」(発表、告知)に過ぎない、ということになると思います。
さらには、後者については、「news」(知らせ)や「information」(通知、伝達)、そして、
「attention」(配慮、気配り、(人などの)世話、手当て、親切、心遣い」という単語でも的を射ているのではないかと思います。
以上の私の理解が正しいとしますと、
金融商品取引法は「世の投資家は毎日EDINETを閲覧する」ということを理論上の前提にしている、
と言えると思います。
なぜなら、官報もしくは日刊新聞紙への公告掲載は金融商品取引法は行われないことを前提としているからです。
つまり、官報もしくは日刊新聞紙への公告掲載がなくても、世の投資家には公開買付の事実が公表日に到達する、
ということを金融商品取引法は理論的前提としているわけです。
それはイコール、世の投資家は毎日EDINETを閲覧するということでしょう。
そしてさらにその前提として、
金融商品取引法は「世の投資家はインターネットを自由に利用できる状態にある」ということを理論上の前提にしている、
と言えると思います。
例えば、20年前であれば、「EDINETを見て下さい。以上。」では全く情報伝達にならなかったわけです。
しかし、パソコンとインターネットの普及により、世の投資家がインターネットを自由に利用できる環境が整った、と言えるでしょう。
それで、金融商品取引法はそのインターネット環境を理論的前提としているわけです。
「世の投資家は毎日EDINETを閲覧する」という理論上の前提が現実に成り立っているのかどうかは分かりませんが、
金融商品取引法は「世の投資家は毎日EDINETを閲覧する」という理論的前提を置いているわけです。
「EDINETを毎日閲覧する投資家」と「日刊新聞紙を毎日読む投資家」との間に、公開買付に関する情報到達日に差異が生じることを
金融商品取引法は是認している、ということは、そのような理論的前提を金融商品取引法は置いているということです。