2016年8月29日(月)



一昨日2016年8月27日(土)と昨日2016年8月28日(日)のコメントに一言だけ追記をします。


2016年8月27日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201608/20160827.html

2016年8月28日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201608/20160828.html


このたびAG2号投資事業有限責任組合が実施している公開買付は、「買付予定の株券等の数」が極めて特徴的であると思います。
「買付予定の株券等の数」を書きますと、次のようになります。

買付予定数      ・・・21,994,126株
買付予定数の上限・・・21,994,126株
買付予定数の下限・・・21,994,126株

買付予定数の上限と買付予定数の下限の両方が設定してあるわけですが、
買付予定数の上限と買付予定数の下限が同じ株式数となっているわけです。
また、ユニーグループ・ホールディングス株式会社が公開買付に応募する予定となっている株式数も、
同じ「21,994,126株」であるわけです。
公開買付成立後も株式会社さが美株式は上場が維持される計画となっていますし、また、
買付価格は直近の株価よりも30%も低い価格ですので、ユニーグループ・ホールディングス株式会社以外の株主からの応募は
基本的には想定はしていない、ということかとは思います。
しかし、ユニーグループ・ホールディングス株式会社以外の株主はこのたびの公開買付に応募してはならない、
などということは一切ないわけです。
そうしますと、ユニーグループ・ホールディングス株式会社以外の株主が1株でもこのたびの公開買付に応募しますと、
「買付予定数の上限」を超えてしまうことになるわけです。
その場合、公開買付に応募がなされた株式会社さが美株式は、あん分比例の方式で決済が行われることになるわけですが、
当然のことながら、ユニーグループ・ホールディングス株式会社が応募した株式の一定部分は決済がなされない、
ということになるわけです。
ユニーグループ・ホールディングス株式会社は、保有している全株式を売却するという明確な経営方針を持っているわけですが、
応募した株式の一定部分は決済がなされないとなりますと、
決済がなされなかった株式については何らかの形で売却していくことを考えなければならないわけです。

 



あん分比例の方式で決済が行われることになった場合の株式売却方針については、2016年8月17日に株式会社さが美が発表した
「AG2号投資事業有限責任組合による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明及び
AG2号投資事業有限責任組合との資本業務提携契約の締結に関するお知らせ」の中に、
ユニーグループ・ホールディングス株式会社の意向として、以下のような記載があります。


3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由
(2)本公開買付けに関する意見の根拠及び理由
@ 本公開買付けの概要
(4/20ページ)

>あん分比例の方式で決済が行われた結果ユニーが所有する当社株式の一部について買付け等が行われなかった場合、
>ユニーは、証券取引所市場での売却等により当社株式の所有割合を減少させていく意向である


ユニーグループ・ホールディングス株式会社の公開買付への応募株式数自体が、21,994,126株という数字であるわけです。
あん分比例の方式となりますと、ユニーグループ・ホールディングス株式会社の手許に残る決済が行われなかった株式の数というのは、
当然、半端な数、すなわち、単元株式数未満の数を含む株式数となるわけです。
Yahoo! で検索して株式会社さが美のウェブサイトを見てみますと、”単位株式数 1,000株”と書かれています。
ユニーグループ・ホールディングス株式会社の手許に残る決済が行われなかった株式の数は、
他の株主の応募株式数次第であるわけですが、話の簡単のため端数は全て切り捨てる形で、少しだけ計算してみましょう。
まず、最少は、計算するまでもなく「1株」となります(単元株式数未満の数)。
次に、最多は、公開買付に発行済株式の全てが応募された場合になります。
その場合にユニーグループ・ホールディングス株式会社が応募した株式のうち、決済される株式数は、
(21,994,126株÷40,834,607株)×21,994,126株=11,846,363株、となりますので、
手許に残る株式数は、21,994,126株−11,846,363株=10,147,763株、と計算されます(単元株式数未満の数を含む株式数)。
自分以外の株主が公開買付に応募した場合、ユニーグループ・ホールディングス株式会社は、
最少で1株、最多で10,147,763株もの株式を、証券取引所市場での売却等により、
公開買付成立後に株式売却を進めていかねばならないわけです。
ただ、証券取引所市場での売却となりますと、株式の売買単位は、株式会社さが美株式の場合「1,000株」となります。
証券取引所市場では、1株のみ売却することはできませんし、763株のみ売却することもできません。
最多の場合、「10,147,000株」(10,147単元)までは市場で売却できますが、単元未満株式は市場で売却することはできないわけです。
単元未満株式に関して、ユニーグループ・ホールディングス株式会社がどのように株式売却を行っていく方針かは分かりませんが、
いずれにせよ、ユニーグループ・ホールディングス株式会社は、最悪の場合、最大10,147,763株もの株式を、
公開買付成立後に売却を進めていかねばならなくなる可能性がある、ということは理解しておく必要はあるでしょう。

 



それで、先ほどキャプチャーと引用をしたユニーグループ・ホールディングス株式会社の意向を読んで、
私はあることをふと思いました。
あん分比例の方式で決済が行われた場合、ユニーグループ・ホールディングス株式会社が所有する株式会社さが美株式の
一部については買付(決済)が行われないことになるわけですが、その場合、ユニーグループ・ホールディングス株式会社は、
証券取引所市場での売却等により当社株式の所有割合を減少させていく意向を持っているわけです。
ここでは、論点を絞るために、単元未満株式のことは度外視します。
すなわち、公開買付成立後、ユニーグループ・ホールディングス株式会社は全ての株式を証券取引所市場で売却できる、
としましょう。
ではこの時、ユニーグループ・ホールディングス株式会社は一体いくらで株式会社さが美株式を売却するでしょうか。
証券取引所市場で売却を進めていくわけですから、要するところ、
ユニーグループ・ホールディングス株式会社は株価で株式会社さが美株式を売却していくことになるわけです。
その株価についてなのですが、このたびの公開買付の買付価格は56円、直近の株価は80円であったわけです。
公開買付成立後も株式会社さが美は上場が維持される計画となっていますので、
このたびの公開買付が株価に与える影響はないものと考えられるでしょう。
そうしますと、ユニーグループ・ホールディングス株式会社は、概ね80円前後で株式会社さが美株式を売却していくことになる
と考えられるでしょう。
そうしますと、ここで私はふとこう思ったのです。
「公開買付者は1株56円で株式会社さが美株式を購入できるのに、
市場の投資家は1株80円でしか株式会社さが美株式を購入できないな。」
と。
なぜ公開買付者は低い価格で対象会社株式を買えるのだろうか、と思ったわけです。
もちろん、公開買付に応募する人がいるからであるわけですが、
ではなぜその人は低い買付価格の公開買付にわざわざ応募するのだろうか、と思ったわけです。
その人は自分の利益を最大化しようとはしていない、という言い方ができないだろうか、と思ったわけです。
この辺り、実務上は、市場取引だと売却を進めていくうちに株価がどんどん下がってしまう恐れがあるので、
少々買付価格が株価よりも低くても、公開買付という形でまとめて売ることができるのならそちらの方が自分にとって有利だ、
という判断を株主がする、ということは確かにあり得るとは思います。
公開買付という手続きでは、買付価格は上昇はしません(買い手=公開買付者にとって有利な制度)が、
同時に買付価格は下落もしないのです(売り手=株主にとって有利な制度とも言える。特にこの事例のように大株主が応募する場合)。
上手く言えませんが、公開買付という制度は、需給関係に基づく価格変動メカニズムは一切働かないことだけは確かだと思います。

 

A tender offerer can buy a listed share at an arbitary tender offer price,
whereas an investor in the market can buy the same share only at a market price.

公開買付者は上場株式を任意の買付価格で買うことができますが、
市場の投資家は同じ株式を市場価格でしか買うことができないのです。