2016年6月10日(金)



2016年6月10日(金)日本経済新聞
LINE、日米同時上場 公募増資1000億円 アジア展開強化
(記事)





2016年6月10日
LINE株式会社
東京証券取引所への新規上場承認及びニューヨーク証券取引所への新規上場に関するお知らせ
ttps://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2016/1376

 


証券保管振替機構
ttps://www.jasdec.com/

 


過去の関連コメント

2016年6月6日(月)
http://citizen.nobody.jp/html/201606/20160606.html

2016年6月7日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201606/20160607.html

 


【コメント】
LINE株式会社が東京証券取引所とニューヨーク証券取引所へ同時に新規上場するとのことです。
記事とプレスリリースには書かれていませんが、ニューヨーク証券取引所への株式上場に関しては、
結局のところ、LINE株式会社はADR(米国預託証券)を活用することになるのではないかと思います。
なぜなら、LINE株式会社株式は、直接にはニューヨーク証券取引所へ上場できないからです。
アメリカ在住のアメリカ人投資家は、LINE株式会社株式を直接には所有できないのです。
また、アメリカでは、日本の会社法も金融商品取引法も適用されません。
アメリカでの証券取引には、1933年米国証券法が適用されます。
ですので、LINE株式会社は、アメリカ国内では1933年米国証券法が適用される形で
証券の発行・資金調達を行っていく必要があるわけです。
したがって、LINE株式会社はADR(米国預託証券)を活用することになると思います。
改めてプレスリリースの本文をよく見てみましたら、
”当社株式に係る米国預託株式のニューヨーク証券取引所(The New York Stock Exchange)への新規上場”と書かれていました。
やはりLINE株式会社は、アメリカ国内では、米国預託株式(ADR、米国預託証券)という形を取るようです。
ADRについては、2016年6月6日(月) と2016年6月7日(火) にコメントを書きました。
ADRの基本的仕組みは2016年6月6日(月)に描きました参謀作解説図
「アメリカ在住のアメリカ人投資家Smithさんが、日本の株式会社今北産業株式を買いたいと思った場合。」
の通りであるわけですが、今日はこの解説図に加筆し、
日本国内の上場株式の取引の流れとADRの取引の流れとを比較してみました。
現在、上場企業の株券は全て電子化されており、株券は証券保管振替機構が保管することになっています。
結局、投資家が上場企業の株券を所有することはなく、
概念的には、投資家は証券会社から株券の預り証を受け取るだけとなっているわけです。
この辺りの証券取引の様子が、ADRと上上場株式とで類似しているわけです。
つまり、「結局、その預り証を持っているということが株式を所有しているということではないのか?」と思われるかもしれません。
ところが、同じ預り証でも、株券の預り証とADR(預り証)とでは全く異なるわけです。
株券の預り証を持っていればまさに株式を所有していることを表します(預り証の所有者が株主)が、
ADR(預り証)を持っていても株式を所有していることにはなりません(預り証の所有者は株主ではない)。
別の言い方をすれば、株券の預り証の所有者が株式の名義人(株券の預り証の所有者が株主名簿に記載される)であるのに対し、
ADR(預り証)の所有者は株式の名義人(ADR(預り証)の所有者が株主名簿に記載される)というわけでは全くないのです。
その理由は、ADRというのは、私が描きました参謀作解説図で言えば、
「株式会社乙証券より先の世界でのみ存在する証券」に過ぎないからです。
他の言い方をすれば、法理的には、ADRは株式会社今北産業には全く関係がない証券だからです。
株式会社今北産業にとって、議決権の行使者はあくまで株式会社乙証券のみなのです。
そして、株式会社今北産業は、株主(株式の名義人)である株式会社乙証券にのみ配当を支払うのです。
株式会社今北産業は、ADRの所有者であるSmithさんには配当を支払わないのです。
株式会社今北産業にとって、ADRの所有者であるSmithさんは株主でも何でもないのです。

 



法理的には、ADRは会社には全く関係がないのです。
株式会社今北産業は、Simithさんに、"Who are you?"(あなたは誰ですか?)と言いたくなる状態であるわけです。
Smithさんは、"How are ADRs working?"(ADRはどうなっているの?)と株式会社今北産業に言いたくなると思います。
Smithさんは謙遜して、"I'm a humble investor."(私はつまらない一投資家ですよ。)と株式会社今北産業に言いました。
株式会社今北産業は、Simithさんに、"Nice to meet you."(はじめまして。)と挨拶をしようと思っていましたら間違えてしまい、
"(It) Suits you."(卑しい投資家とはあなたにお似合いですね。)と言ってしまいました。
というのはアメリカの大統領選挙を踏まえた冗談ですが、
要するところ、日本国外に株主がいることを会社法は想定していないわけです。
したがって、日本国外にも実質的に株主がいる株主構成・株式流通市場を実現させるためには、会社法の枠組みを超えて、
複数の私的な契約を積み重ねるせることにより擬似的な株式所有状態を作り出すしかないわけです。
そのための手段がADRであるわけです。
一方、日本国内の上場企業の株式に関しては、株券の電子化だ証券保管振替機構による保管だとは言うものの、
全ては会社法(日本の国内法)の枠組みの範囲内に収まっているわけです。
決して私的な契約を積み重ねにより、株券の電子化や証券保管振替機構による保管を実現させているわけではないわけです。
同じ「預り証」でも、日本国内の株式とADRとでは全く法的位置付けが異なる、という点には注意が必要です。

 

「株式とADRの違い」


山田太郎さんが手許に持っている証券も、Smithさんが手許に持っている証券も、どちらも「預り証」に過ぎない。
しかし、山田太郎さんが所有しているのは「株式」であり、Smithさんが所有しているのはあくまで「ADR」である。
山田太郎さんは直接に株式会社今北産業に対する権利を有する。
しかし、法理的には、Smithさんは、株式会社今北産業に対する権利は有しない。
なぜなら、ADRは株式会社今北産業が発行した証券ではないからである。

 


LINE's shares listed and trades in the New York Stock Exchange are another kind of ADR.

ニューヨーク証券取引所に上場され取引されるLINE株式は、別の種類の米国預託証券なのです。

 

A share is issued by a company itself, whereas a ADR is issued by a securities company.

株式というのは、会社自身が発行するものです。一方、米国預託証券というのは、証券会社が発行するものです。