2014年1月12日(日)



昨日2014年1月11日(土) の訂正から行います。


2014年1月11日(土)
http://citizen.nobody.jp/html/201401/20140111.html


>ただ、権利義務を包括的に承継するという関係上、消滅会社の株主にも一定の責任を負ってもらう(言わば株主)という意味を込めて
>旧商法では合併の対価は存続会社の株式に限られていた、というだけなのです。

のカッコ内の”株主”は「人質」の間違いです。
正しくは、

ただ、権利義務を包括的に承継するという関係上、消滅会社の株主にも一定の責任を負ってもらう(言わば人質)という意味を込めて
旧商法では合併の対価は存続会社の株式に限られていた、というだけなのです。

となります。

 


この点について一言付け加えますと、私は昨日、消滅会社の株主にも一定の責任を負ってもらうことを「人質」と表現しましたが、
これは誰にとっての「人質」かと言うと、主に「存続会社の債権者」にとっての人質、ということになると思います。
もちろん、承継した資産負債に問題がある場合は存続会社の既存株主(合併前の株主)が割を食うことになりますから、
存続会社の既存株主(合併前の株主)にとっての人質という意味も当然あるのですが、承継した資産負債に問題がある場合、
消滅会社の株主に存続会社の株式を割り当て交付した後は、もう存続会社の既存株主(合併前の株主)は救われないわけです。
合併そのものを法的に無効にすることも法律上はできるのでしょうが、実務上はまず不可能でしょう。
一旦合併したら合併前にはもう戻れない(二社に現実には戻せない)、というのが実情でしょう。
そうしますと、株主は株主総会決議により意思決定をした責任ということも含め、
存続会社の既存株主(合併前の株主)の利益保護(人質)の意味合いはやや薄れるわけです。
また、問題のある吸収合併の結果会社倒産が倒産してしまいますと、
全株主は平等なので、倒産時には合併前の株主も合併後からの株主もなく、全ての株式の価値はゼロになるわけです。
要するに、対価が存続会社株式であっても、存続会社の既存株主(合併前の株主)は救われないわけです。
さらに、存続会社株式を消滅会社株主に割当て交付するということは、イコール存続会社株主の議決権割合が減少するということです。
対価が存続会社株式であれば何の問題もない、などということは決してないわけです。
対価が存続会社株式であれば、消滅会社株主は合併の対価である現金を受け取って後は知らん顔、
という事態を避けられる、というだけなのです(もちろんこれが対価が限られている理由・目的であるわけですが)。
そういったことを考えますと、特に合併を原因とした会社倒産時のことを想定しますと、
対価が存続会社株式に限られるのは「存続会社の債権者」の利益保護の意味合いが相対的に強いのではないだろうか、と思うわけです。
もちろん、現金が社外流出すればするほど、会社倒産のリスクも高まりますから、既存株主の利益もリスクにさらされるわけですが、
しかしそもそもの話をすれば、合併することを決めたのは他ならぬ既存株主自身です。
対価が現金なのは既存株主の利益を害するというのは、極めて筋違い・お門違いな話ではないだろうかと思います。
つまり、対価が現金の場合、誰の利益が一番害されるのかと言えば、「存続会社の債権者」であるわけです。
対価が現金の場合、まず合併の対価として現金が社外流出しますし、
さらに、消滅会社の債務も存続会社が言わば代わりに弁済していかねばなりません。
現金の社外流出を避けるためにも、消滅会社株主に後は知らん顔させないためにも、
議決権がない「存続会社の債権者」の利益保護の観点から、旧商法では合併の対価は存続会社の株式に限られていたのだと思います。

 

 


ちなみに、こちらは本物の所在不明株主です。

 

2013年11月30日(土)日本経済新聞
■東芝 所在不明株主の株処分へ
(記事)


2013年11月29日
株式会社東芝
所在不明株主の株式売却に関するお知らせ
ttp://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20131129.pdf

 


2013年12月26日(木)日本経済新聞
■サッポロHD 所在不明株主の株取得へ
(記事)


2014年12月25日
サッポロホールディングス株式会社
所在不明株主の株式売却に関するお知らせ
ttp://www.sapporoholdings.jp/news_release/0000020160/pdf/20131225kaiji.pdf

 



「所在不明株主の株式売却」については今までに何回か書きました。
会社法の条文及びそれに沿った法手続きにについてのコメントで一番詳しく書いたのは「2013年9月19日(木)」のコメントになります。

2013年9月19日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201309/20130919.html

2013年9月19日(木) では主に法手続き面について詳しく書いたわけですが、
今改めて考えてみましても、「2013年2月28日(木)」 のコメントで結局正しいのではないだろうか、という気がしています。
「2013年2月28日(木)」 のコメントとは、

>はっきりとしたことは分かりませんが、これは会社が(所在不明)株主から相対で株式を取得する、という取引になると思います。
>市場価格が存在する上場企業株式とはいえ、「誰に対価を支払えばいいか分からない」わけですから、対価はない無償取得となると思います。

という結論です。
2013年9月19日(木) のコメントで言えば、「B所在不明株主の株式を会社が無償取得した場合」になるのではないだろうかと思っています。
例えば、サッポロホールディングス株式会社からのプレスリリースには、

>※ 所在不明株主の株式売却につきましては、株式売却に関する法定の公告および催告
>手続きを経た後、当社が自己株式として買い取ることを予定しております。

と書かれています。
所在不明株主は株主としての地位・役割を全く果たしていないわけですから、一種の株主責任を問うということで、
所在不明株主が保有している株式は法的に無効にする(会社が株式を無償取得する)、
ということを会社法の定めに則って行うのだと思います。

 


ところで、2013年9月19日(木) のコメントでは、

>2013年4月8日(月)のコメントでも書きましたように、実務上所在不明株主というのは一人もいない、というのが実際のところだと思います。
>上場企業・非上場企業問わず、株式と言うのは一定の財産的価値がありますから、結局株式の所有者が不明になることは現実にはないと思います。

と書きました。
しかし、これは間違いであり、株式というのは一定の財産的価値がありますが、所在不明株主というのは現に生じ得ると思います。
それはどういう場合かと言うと、誰もその株式を相続しない場合、ということになると思います。
例えば私自身結婚はしないと決めているのですが、その場合相続人というのはいないわけです。
私のようにはじめから結婚はしないと決めている人は少ないとは思いますが、
晩婚化・非婚化であったり、さらには結婚をしても子供を一人も作らないという夫婦も最近は現に非常に増えているわけです。
最近の夫婦を見ますと、結婚をしても子供を一人も作らないということが当たり前であるかのように現になっているわけです。
今後、相続人は誰もいないというお年寄りの数は増えていくのは確実なのです。
こうなりますと、最後は人は死ぬわけですから、相続する者もいないとなりますと、
文字通り株主は所在不明になるわけです。
相続人が一人もいない場合の死亡者保有の株式の取り扱いについては詳しくは知りませんが、
おそらく、他に法的にはどうしよもないと思いますので、相続人が一人もいない場合は、
死亡した株主が保有している株式は法的に無効にする(会社が株式を無償取得する)、
ということを会社法の定めに則って行うのだと思います。