2012年9月18日(火)



NTT、米のクラウドコンサル企業を買収

 NTTは18日、クラウドコンピューティング関連のコンサルティング業務を手掛ける米ベンチャー企業、
センタースタンス社(オレゴン州)の全株式を取得すると発表した。買収金額は約40億円とみられる。
国内通信市場が頭打ちになるなか、NTTは買収を通じ、手薄だった分野をテコ入れし、クラウドにおけるグローバル事業の拡大を加速する。
 ネットワーク経由でソフトや情報サービスを利用するクラウドは急速に普及している。
NTTはセンタースタンス社の創業者や経営陣が保有する全株式を10月末までに取得し、複数の社外取締役を派遣する方向で調整している。
買収後の社名はNTTセンタースタンス社になる見通しだ。
 センタースタンス社は2001年に創業。米国西海岸を中心に主に北米でクラウド関連のコンサル業務を手掛けている。従業員は約100人。
これまで約2千件以上のプロジェクトに携わってきた実績があるという。
 NTTは10年にも南アフリカの情報システム会社、ディメンションデータを約2860億円で買収している。
クラウドを軸にNTTグループ各社の事業資産の融合を進めながら、海外市場の開拓を急ぐ考えだ。
(日本経済新聞 2012/9/18 19:11)
ttp://www.nikkei.com/markets/kigyo/ma.aspx?g=DGXNASDD180FS_18092012TJ1000

 

 

 

2012年9月18日
日本電信電話株式会社
Centerstanceの買収について
ttp://www.ntt.co.jp/news2012/1209/120918a.html

 

 



【コメント】
NTTがクラウドサービス関連企業を買収するそうです。
この買収に意味があるかどうかは分かりませんが。
インターネットは簡単に国境を越えますが、人間自体が瞬間移動できるようになったわけではありません。
また、インターネットは簡単に複数の言語を扱えますが、人間自身が複数の言語を操れるようになったわけではありません
クラウドサービスと言ってもお客様あってのビジネスです。
インターネットを活用したビジネスと言っても、各ビジネスとしては結局国内(ネットワーク用語で言えば「ローカル」)で完結している、
ということが多いのではないでしょうか。
例えばあの楽天でも楽天市場で買い物をする消費者の99%以上は日本人・日本国内販売で占められるでしょう。
それは楽天市場で使用されている言語が日本語だから、という理由に尽きるわけです。
仮にサーバーが海外にあってもインターネット・ビジネスを運営していく上では何も不自由はしませんが、
消費者が接するインターフェイス部分というのは人間である以上どこまで行ってもやはり「ローカル」なのです。

 

さて、戦略面については言うことはありませんので、英語の勉強をしますと、
クラウドは英語で「cloud」です。「cloud」は”クロウド”と読むわけではありません。
また、「allowed」は”アラウド”と発音します。”アロウド”ではありません。
ちなみに、このたびNTTが買収したCenterstanceの「Center」ですが、イギリス英語では「centre」とつづります。
光ファイバーの「fiber」もイギリス英語では「fibre」とつづります。

 

 


法務面の話をします(本来はグループ戦略の話になるのでしょうが)と、記事には、


>NTTはセンタースタンス社の創業者や経営陣が保有する全株式を10月末までに取得し、複数の社外取締役を派遣する方向で調整している。


とありますが、”社外取締役を派遣する”という表現はどうでしょうか。
日本とアメリカでは法律が異なりますのでここでは日本国内の企業を買収した場合のことを考えますと、
今まで資本関係や深い業務上の関係がなかった企業を買収したとします。
ここで自社から役職員を派遣し被買収企業の取締役を新たに選任しますと、その取締役は会社法の定義上、「社外取締役」になると思います。
理屈の上では、買収に伴い同じグループ企業になったのですから、グループ内から派遣された役職員のことを「社外取締役」と呼ぶのは
やはりおかしい気がしますが、会社法の定義上はそうなってしまうのです。
法的側面からのみ考えると実態を見誤ることがある点には注意が必要です。


もう少し法律の話をしますと、実は、会社法には「連結」の文字自体あまりないのです。
会社法の条文を「連結」で検索しますと「連結計算書類」くらいしか出てきません。
会社計算規則を見ましても、「連結計算書類」には何があるのか、「連結」の範囲はどの範囲か、といった法形式的なことしか出てきません。
率直に言えば、会社法では「連結」ということをあまり考えていないのです。
経営的な視点からすると、買収企業から被買収企業へ派遣された取締役が社外取締役でないのは当たり前ですが、
連結決算やグループ経営については会社法は何も考えてないのです。
さらに言えば、上場企業の株式について関係が深い金融商品取引法でも連結については何も書かれていません。
例えば子会社に際して株式公開買付を行う際は金融商品取引法の定めに従わねばなりませんが、
その金融商品取引法を「連結」で検索しますとたったの4件しかヒットしません。
条文全体のうち、連結の文字があるのは4ヵ所のみです。
要するに、連結決算やグループ経営については法ではカバーし切れませんし、さらには、連結やグループの範囲が国内だけであればまだしも、
このたびのNTTの買収のように連結やグループの範囲が海外ということも出てきますと、国内法の効力範囲すら超えた話になってきます。
単純に国内のみに限った話でも、例えば「多重株主代表訴訟」ということは法的に不可能なのです。
結局、「連結とは何か」、を法的に定義付けすることすら不可能なのでしょう。

つくづく、連結決算やグループ経営というのは会計や経営だけの話なのだろうな、と思いました。


 

 



2012年9月15日(土)日本経済新聞
■マツモトキヨシホールディングス 兵庫のドラッグ店買収
(記事)



 


この件につきましては2012年9月14日(金)にもコメントしましたが、まずその時のコメントを少し訂正します。

 

2012年9月14日(金)
http://citizen.nobody.jp/html/201209/20120914.html


>組織再編等により計上することができる資本金等の金額について、
>吸収分割の場合は利益剰余金は「変動しない」(=増加総株主資本から資本金と資本剰余金を引き算した残余額という意味になるかと思います)、

>吸収分割の場合は利益剰余金を承継することができる

 

と2012年9月14日(金)のコメントでは書いてしまいましたが、これは間違いです。2012年9月14日(金)のコメントで書きました
”組織再編等により計上することができる資本金等の金額について、吸収分割の場合は利益剰余金は「変動しない」”
という意味は、文字通り「吸収分割承継会社の利益剰余金は吸収分割によっても増加(も減少も)しない、という意味です。
つまり、吸収分割の場合も新設分割の場合同様、「利益剰余金を承継することはできません」。
吸収分割により増加する総株主資本額は資本金と資本剰余金の合計額で全てです。
仮に増加総株主資本から資本金と資本準備金を引き算して残余額額がある場合は「その他資本剰余金」が増加することになります。

 


 



2012年9月14日(金)のコメントでは、
例えば「ドラッグストア事業」が独立採算制を採用しており事業部別の貸借対照表と損益計算書を社内で作成しているとしたら、
会社分割に際して設立される新会社の貸借対照表にも利益剰余金がはじめからあっても(経営的・概念的には)おかしくないな、
という思いが頭の中にありましたので間違えて”吸収分割の場合は利益剰余金を承継することができる”と書いてしまいました。
独立採算制や事業部別社内貸借対照表・損益計算書を念頭に置くと、
経営的・概念的には新会社設立時から利益剰余金があってもおかしくはないな、という気がしますが、
会計処理上は新設分割の場合も吸収分割の場合も増加する株主資本は資本金か資本剰余金のみであり、
利益剰余金は増加せず、はじめから承継会社以外の利益剰余金があることはないわけです。

 


2012年9月14日(金)ではいろいろと見当外れなことも書いてしまったのですが、結論を言えば、
モリスリテール株式会社は資本金の額は10百万円、資本準備金は不明、資本剰余金の額は2,000百万円以上、ということになるかと思います。
(モリスのサイトを見ますと「ウェルネス事業」がドラッグストア事業以上に多店舗舗展開しています。
また、不動産(ショッピングモール)開発事業も手がけているようです(これはモリスリテールではなくモリス本体かもしれませんが)。
多角化の度合いやドラッグストアの出店形態が自社店舗なのかテナントなのかで
ドラッグストア事業の総資産額に大きな違いが出てきますので正確には推定できませんが、
いずれにせよ利益剰余金は会社分割では増加させてはいけない定めになっていますので
「ウェルネス事業」等を考慮に入れても資本剰余金合計が資本金よりはるかに大きいのは確かです。
なぜ、資本金の額を10百万円にしたのかは分かりません。他のモリス子会社の資本金の額も10百万円だから合わせたのでしょうか。)


 

 



訂正や間違えてしまった理由は以上書いたとおりですが、言い訳と言っては何ですが、もう少し間違えた理由を書きますと、
「利益剰余金を承継できる組織再編がある」ということが頭にあったからです。
利益剰余金を承継できる組織再編とは何かと言いますと、「完全子会社を吸収合併する場合」になります。

 

完全子会社を吸収合併するという組織再編に関しては、
新日本製鉄株式会社と住友金属工業株式会社の経営統合についてのコメント(2012年6月12日(火))の中で詳しく書いたことがあります。


2012年6月12日(火)
http://citizen.nobody.jp/html/201206/20120612.html


2012年6月12日(火)のコメントに書いていますように、結論を一言で言えば、
「完全子会社を吸収合併する場合は合併消滅会社の利益剰余金の額を当該吸収合併存続会社のその他利益剰余金として引き継げる」、
となります。
このことが頭にありましたので、完全子会社を吸収合併する場合は利益剰余金を承継できたので、
逆に完全子会社に吸収分割する場合も利益剰余金を承継できるのかもしれない、と思ってしまいました。

 

合併の場合は消滅会社の権利・義務を包括的に存続会社が承継するため利益剰余金を利益剰余金として承継してもあまり問題は生じないが、
会社分割の場合は包括的にではなく分割会社が承継会社へ分割する権利・義務をある意味任意に選べてしまいますので、
承継会社が株主資本を増加させる際は資本金か資本剰余金のみと定められているのでしょう。
(まあ、現在では資本金と資本剰余金と利益剰余金には事実上区別はない(事実上相互に任意に振り替え可)ことになっていますので、
会社分割の際に利益剰余金を増加させてはいけないと定めたところで実は何の意味もないのではないかと思いますが。)

 


 


*以下の文章は「会社分割の際の利益剰余金の承継」について経営面そして会計処理面から書いたのですが、
まだ自分の中で完全には整理しきれていません。いまいちきれいにまとめきれていませんが蛇足であり駄文だと思って読んでください。
(経営と会計の接点の部分の話になると思いますが。)

 

 


承継という言葉の定義の話になるかもしれませんが、利益剰余金は「事業」ではありませんので、
会社分割に際し利益剰余金を承継するということは概念的にあり得ない、という考え方もあるかもしれません。
利益剰余金を承継しても分割会社単体の利益剰余金が減少するわけではないから承継はできない、というのがその考え方の背景です。
仮に会社分割に際し利益剰余金を承継できると定められていて承継会社に利益剰余金を計上したとしても、
分割会社単体の利益剰余金は減りませんよね。
(まあそれを言い出したら、会社分割を行っても分割会社単体の資本金も資本剰余金も減少しないことも指摘しないといけなくなりますが。)

何が言いたいかと言えば、独立採算制や事業部別社内貸借対照表・損益計算書を頭に思い浮かべますと、
分割会社から承継会社へ利益剰余金を承継した場合は、分割会社単体の利益剰余金が減少しないといけないのではないだろうか、
というようなイメージがわいてしまうわけです(私だけでしょうか?)。

独立採算制や事業部別社内貸借対照表・損益計算書を作成している場合、法的(法人的)には一つなわけですが、
(社内の管理)会計上は事業部(もしくは社内カンパニー)の数だけ貸借対照表と損益計算書があるわけです。
その事業部(もしくは社内カンパニー)が、社内一部署から新設分割した場合と、はじめから別法人(完全子会社)である場合とで、
貸借対照表と損益計算書は同じでないといけないな、と少なくとも経営の立場からは思うわけです。
経営の立場から見ると、その「事業」が、社内の一事業部で行われていようが、グループ内の完全子会社で行われていようが、
事業単位としては差はないわけですから。
これまでその事業部(もしくは社内カンパニー)がどれだけ稼いできたかは一つの評価基準でしょう。
そして事業部(もしくは社内カンパニー)の事業でこれまでに稼いできた利益はいわば内部留保と言えるでしょう。
その内部留保を会社分割すると引き継げない(新会社に利益剰余金として計上できない)というのはおかしいという考え方もあるかと思います。
(もちろん、資本充実の原則から考えますと、いわば内部留保分は資本金もしくは資本剰余金として計上すべきなのは会計上は理解できますが。)

 


 



会計上は会社分割に際して承継会社の資本金をいくら増加させようが資本剰余金をいくら増加させようが
(会計計算規則上は間違いですが)利益剰余金をいくら増加させようが、
分割会社単体の資本金、資本剰余金、利益剰余金には何の変化もないのですが、
分割する「事業」で稼いだ利益剰余金を承継会社に承継させたのに分割会社単体にもまだ同じ額利益剰余金が残っているというのは
経営的・概念的には何か違うといいますか上手く言えませんが利益剰余金を水増ししているかのように感じてしまうわけです。
(親会社子会社各貸借対照表上の利益剰余金の額を合計すると現に増えていますよね。
会社分割を行っただけなのになぜ利益剰余金の合計額が増えるのか、という話になるわけです。)


このことは逆に会計初心者の方が私が何を言いたいか分かるかもしれません。
生まれつき会計の才能がある公認会計士の方がかえって「いえ会計上はそのようには仕訳は切りませんが」と言って
分割会社の利益剰余金が減少しないのは当たり前じゃないかと思ってしまうかもしれません。


これは実際には親会社と子会社とでの利益剰余金の二重計上というようなことではないわけでして、何と言いますか
上手く言えず分かりづらい文章になっていますが、この違和感は実は間違いであることは自分でも分かってはいるわけです。
会計上は、単体ベースで見ると確かに親会社子会社両方に利益剰余金が計上されるが、連結ベースでは子会社の利益剰余金は相殺消去される、
だから単体ベースでは両方に利益剰余金が計上されても二重計上でもなんでもない、となります。

 

 



ただ、私のこの違和感の原因は何かなともう少し考えてみますと、仮に会社分割に際して承継会社の利益剰余金を増加させてよいとなると、
連結会計上は連結利益剰余金を増加株主資本の範囲内でいくらでも増やせることになるように感じてしまうことが原因なのかな、と思っています。
分割会社、承継会社それぞれの仕訳を書きますと下のようになるわけですが↓、


(諸負債) xxx    / (諸資産) xxx
(子会社株式) xxx


(諸資産) xxx / (諸負債) xxx
            (利益剰余金) xxx


これを分割会社の連結ベースで見ますと、
「のれん(連結調整勘定)を相手方勘定科目として連結利益剰余金を増加させることが可能となる」
ということになるかと思います(そのように思えてしまう)。
実際には、連結手続きの中で分割会社の子会社株式と承継会社の利益剰余金は相殺消去されますので、
連結利益剰余金をいくらでも増やせる、さらには、その際の相手方勘定科目はのれん(連結調整勘定)である、
といったことは完全に間違いなのですが、私が何が言いたいかは会計初心者の方が分かるかもしれません。
(「実は俺も分割会社の利益剰余金は減るのではないかと思っていた」という声が例えばマ○チモーターの経理部からも聞こえてきそうです。)

(参考までに書きますと、分割会社単体の利益剰余金が減少しない理由が分からない人は、例えば、
分割会社は利益剰余金を減らす代わりに子会社株式が計上されている(利益剰余金の相手方勘定科目が子会社株式)
というふうに理解してはどうでしょうか。)


以上の説明が私の中の”分割会社の利益剰余金を減少させないといけないのでは”という違和感の原因かもしれません。
まあ実際には会社分割に際しては利益剰余金は増加させてはいけませんから今までのことは頭の体操に過ぎないわけですが、
頭の体操ついでに言いますと、会社分割に際して利益剰余金を承継会社に承継させるような会計処理はできない
(=分割会社の利益剰余金を会社分割に際し減少させるような会計処理はできない)
というのは会計と呼ばれるものの一つの限界を表しているのかもしれないな、と思いました。