2012年5月5日(土)
>これまでの企業経営においては、ともすると、不確実性やリスクとは好ましくないもの、企業価値を減少させるかもしれないものと
>認識され、可能な限り回避すべきだと考えられることが多かった。だが、近年注目されているリアルオプションという発想によれば、
>不確実性やリスクは対処の仕方によって、逆に企業価値を高める源泉や機会となり得る。本稿では、このリアルオプション手法が、
>企業価値の増大を企図した戦略策定における視点/視座として重要な要素を含んでいることを指摘したい。
>なお本稿では、読者の方々のリアルオプションに関する予備知識がゼロであると想定し、
>理論的な厳密性よりも実務的な有益性を念頭に置いて論を進める。
今日はまずこれを。
大変興味深い論文だと思いましたので紹介します。
「理論的な厳密性よりも実務的な有益性」
応用ではこの考え方が大切だと思います。
米フェイスブックIPO、最大で120億ドル調達へ
[サンフランシスコ 3日 ロイター] 米ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)大手フェイスブックは3日、
計画している新規株式公開(IPO)で、最大120億ドルを調達する計画。
当局に3日提出した目論見書によると、同社はIPO価格の仮条件レンジを1株28─35ドルに設定。
これは同社の企業価値を770億─959億ドルと評価しており、時価総額1000億ドル強のアマゾン・ドット・コムや
シスコシステムズにほぼ匹敵する。
調達額は最大120億ドルとなり、オーバーアロットメントやグリーンシューオプションが行使された場合は136億ドル近くに達する見通し。
ハイテク株のIPO調達額では、2004年実施のグーグルが20億ドル弱、昨年実施のグルーポンが7億ドル、
ジンガが10億ドルとなっており、フェイスブックの調達予定額はこれらを大きく上回っている。
仮条件の中間でプライシングされた場合の調達額は106億ドルだが、フェイスブックが手にするのは56億ドルで、
49億ドルは既存株主らに配分される。
フェイスブックは7日から投資家へのマーケティングを開始する予定。
ロイターが入手したロードショーの予定によると、早ければ18日から取引が開始される可能性がある。
IPOでは投資家の応募超過が見込まれるが、SNSサービスの将来性やザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が
経営権を持ち続けることから、これを懸念する見方もでている。
(ロイター 2012年
05月 4日 15:04
JST)
ttp://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE84202P20120504
2012年5月5日(土)日本経済新聞
米フェイスブック 新規上場、調達1兆円超 仮条件を決定 17・18日にも
(記事)
2012年5月5日(土)日本経済新聞
米カーライル上場 公開価格22j 初日終値は小幅高
(記事)
【コメント】
売上高がほとんどゼロなのに上場というのはやはりおかしいと思います。
架空増資なら聞いたことありますが架空情報による上場というのは聞いたことありません。
フェイスブック株式を買う方も買う方と言えなくもないですが。
アメリカもフェイスブックも一体どうなっているのでしょうか。
2012年5月2日
株式会社フジ・メディア・ホールディングス
特別利益等の計上及び業績予想並びに配当予想の修正に関するお知らせ
ttp://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10114676/20120502203945.pdf
2012年3月2日
株式会社フジ・メディア・ホールディングス
株式会社フジ・メディア・ホールディングスの完全子会社である株式会社フジ・メディア・サービスによる
株式会社サンケイビル株券等に対する公開買付けの結果及び子会社の異動に関するお知らせ
ttp://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10114676/20120302203164.pdf
・・・と言いたいところですが、これには会計上のからくりがあります。
2012年1月19日(木)
http://citizen.nobody.jp/html/201201/20120119.html
2012年1月19日(木)にコメントしましたように、フジ・メディア・ホールディングスはサンケイビル株式を
非常に高い(異常なといってもいいくらい高い)価格で買っています(時価の2倍以上)。
元々の株価が著しく安かったというのであれば話は別ですが、通常は、その時の株価やプレミアムを乗せた価格で株式を買いますと
大なり小なり必ずと言っていいほど連結調整勘定が連結貸借対照表に載ってきます。
サンケイビル株式の場合はその時の株価が適正水準だったかどうかは分かりませんが、
時価の2倍以上となりますとやはりどうしても連結調整勘定が連結貸借対照表に載ってくるはずです。
にも関わらず、連結調整勘定どころか負の連結調整勘定が発生した、と言っています。
これには会計上のからくりがあります。
連結決算上、子会社の資産・負債は取得時の”時価”で評価し連結貸借対照表に載せることになっています。
簿価ではないわけです。
連結財務諸表上の子会社の資産・負債は取得時の簿価ではなく”時価”で載っている、
これが負の連結調整勘定のからくりです。
どういうことかというと、フジ・メディア・ホールディングスは連結手続きにおいてサンケイビルの資産を非常に大きく再評価した、
その結果、差額の貸借が逆転してしまった、というわけです。
連結修正仕訳を大まかに書けばこうです(数値はあくまで例です)。
子会社の資産・負債を簿価で評価する場合
(サンケイビル諸資産) 500 / (サンケイビル負債) 300
(サンケイビル資本金) 100 (サンケイビル株式) 800
(サンケイビル連結剰余金) 100
(連結調整勘定) 400
子会社の資産・負債を簿価で評価する場合 (サンケイビル資産が500から1000に増加、負債は簿価と等価)
(サンケイビル諸資産) 1000 / (サンケイビル負債) 300
(サンケイビル資本金) 100 (サンケイビル株式) 800
(サンケイビル連結剰余金) 100 (連結調整勘定) 100
*↑貸方の連結調整勘定が負の連結調整勘定です。
サンケイビルの資産が簿価のままなら連結調整勘定が400ですが、時価に再評価なら負の連結調整勘定が100になります。
サンケイビルの他の勘定科目やサンケイビル株式取得額(この例では800)は何も変わらないことに注意してください。
フジ・メディア・ホールディングスは連結手続きにおいてサンケイビルの資産・負債を時価評価しました。
サンケイビルはその社名の通り、不動産の賃貸事業、取引事業、管理及び鑑定業等を営んでいます。
つまり、サンケイビルの資産は土地・建物(有形固定資産)の塊なのです。
土地は減価償却を行いませんので取得時の価額のまま貸借対照表に載っています。
また、建物は減価償却を行いつつ貸借対照表に載っています。
特に土地は何十年も前に取得したものであれば非常に小さな価額で載っているでしょう。
通常はこれらの価額は取得原価を基に毎期毎期その価額が決まっているものです。
本当にその簿価で厳密に正しいと言えるかは分かりません。
それは神にしか分からないことです。
しかし、人間が勝手に決める評価額よりははるかに客観性があると言えるでしょう。
仮にその簿価では価額が大きすぎると判断できる場合は適切な額まで減額すればよいでしょう(固定資産の減損処理)。
簿価を切り下げる分にはそれほど大きな問題は生じません。
それは保守主義の原則の考え方です。
しかし、簿価を大きくするのには大きな危険が伴います。
万が一大きくした簿価が間違っている場合は減損処理を行う必要が出てくることになり、投資家の判断を誤らせます。
率直に言えば、土地や建物の時価というのは非常に評価が難しいのです。
その再評価額が間違っているのに比べれば、取得原価を基に決まっている簿価が間違っている方が投資家の判断を誤らせません。
何が言いたいかといえば、連結手続きにおいて、子会社の資産・負債は時価ではなく簿価で評価すべきなのではないか、ということです。
これは子会社化の場合だけでなく合併の場合も同じだと思います。
合併の場合も被合併会社の資産・負債は簿価で引き継ぐべきだと思います。
これは合併の場合も同じです。
合併は2つの会社が完全に一つになります。
その完全に一つの貸借対照表の中で、各勘定科目の値は簿価と時価の合計値、ということになっています。
合併の場合はただ単に完全子会社株式を取得したというだけでなく、確かに全資産・全負債を取得した(継承した)という取引になりますが、
合併後の貸借対照表の値が簿価と時価の合計値になってしまうというのはあまり正しい価額を表しているとは思えません。
合併の場合も被合併会社の資産・負債は簿価で引き継ぐ方がむしろ整合性が取れていると思います。
根本的な話をすれば、子会社や被合併会社の資産・負債を時価評価することにそもそも理論的根拠がないと思います。
子会社や被合併会社の資産・負債は簿価のままである方がむしろ整合性が取れていると思います。
現在の日本基準では、子会社や被合併会社の資産・負債は時価評価することになっていますが、
その考え方は間違いだと思います。
米国基準やIFRSといった間違った会計基準に毒された結果でしょうか。
また、子会社の資産・負債を時価評価するのは連結手続きにおいてであるわけですが、
子会社の単体の貸借対照表では再評価は現在の日本基準でも認められず子会社化された後も簿価のままであるわけです。
親会社が変わった(株式の保有者が変わった)というだけで、子会社の貸借対照表には何ら変化はないわけです。
これは子会社の実態が変わったわけではないのですから当然ですね。
そうであるならば、連結手続きにおいて子会社の資産・負債を時価評価するというのは、
子会社単体の貸借対照表の資産・負債は簿価、親会社の連結貸借対表に載っている子会社の資産・負債は時価、
となってしまい、単体と連結で整合性が取れないことになっていまいます。
子会社単体の貸借対照表を開示することはあまりないのかもしれませんが、それでも、
「親会社単体、子会社単体、親会社連結」は全て整合性が取れている状態であることが会計理論上は望ましいでしょう。
会計理論上から考えても、そして、そもそも子会社の資産・負債の時価評価は困難であることを考えても、
子会社の資産・負債は簿価でそのまま連結貸借対照表に載せることが望ましいと思います。
笑い話ではなくまじめに書きますが、
寿司屋ではないのですから、あまり「時価」という言葉に踊らされない方がよいでしょう。
日々売買が行われている市場が存在する場合は別ですが、人間が決める”時価”ほど当てにならないものはありません。
もっと言えば、そもそも人間が決めるものを”時価”と呼んでいいのか、という根底からなる疑問があります。
「親会社の貸借対照表に子会社の貸借対照表の資産・負債を載せたもの」
を言うのです。
念のため書いておきますが連結損益計算書も同じです。
連結損益計算書とは、「親会社の損益計算書に子会社の損益計算書の収益・費用を載せたもの」を言うのです。
何が言いたいかと言えば、連結貸借対照表とは、
親会社と子会社は同じであり親会社の株主と子会社の株主は同じであり従ってそれらが渾然一体となって何か一つの貸借対照表を形成しているもの
ではないということです。
ここまで書けば何が言いたいか分かると思いますが、連結財務諸表には「親会社説」しかないのです。
なぜなら、そもそも連結貸借対照表は「親会社の貸借対照表に子会社の貸借対照表の資産・負債を載せたもの」だからです。
連結財務諸表は根本的にそのようにしか作れないのです。
米国基準やIFRSの連結財務諸表は経済的単一説だといっています。
しかし経済的単一説という考え方・連結財務諸表の作り方は根本的にないのです。
連結財務諸表は何かよく分からないでとにかく親会社と子会社の財務諸表を足し算して作成するのではありません。
あくまで親会社の財務諸表をベースにして、親会社の財務諸表に子会社の財務諸表を合算するのです。
もちろん子会社の財務諸表に親会社の財務諸表を合算するわけでもありません。
連結財務諸表はどのように考えても「親会社説」しかないのです。
記事やプレスリリースには、
持分法適用関連会社となり、負のれんが発生しため、持分法による投資利益として計上
持ち分法適用会社とし、負ののれん発生益を持ち分法投資利益に計上した
といったことが書かれていますが、これは間違いです。
持分法の場合はやはりのれんや負ののれんという言い方はしないと思います。
2011年10月5日(水)
http://citizen.nobody.jp/html/201110/20111005.html
ここに書いていますように、持分法におけるのれん(のようなもの)に相当するのは、「投資差額」と呼ばれます。
「投資差額」とは、親会社の投資とそれに対応する関連会社の資本との金額の差額のことです。
連結貸借対照表に出てくる連結調整勘定は貸借の差額、持分法で出てくるのれん(のようなもの)に相当するのは「投資差額」、
どちらも差額ならどちらも「のれん」と呼んでもよさそうな気がするかもしれませんが、
(しつこいようですが)やはり「投資差額」はのれんとは呼びません。
>連結調整勘定は連結修正仕訳の最中に直接的に出てくる貸借の差額なのですが、
>持分法の「投資差額」は、株式取得額と被投資会社の資本の部を見比べて算出する差額、
>という点において両社には違いがあると言えるでしょう。
ということなのです。
上の方でサンケイビルの貸借対照表を親会社の貸借対照表に載せるための連結修正仕訳を2つ(正の場合、負の場合)書きました。
この仕訳中に連結調整勘定が出てくるわけですが、この連結調整勘定の価額はまさに「貸借の差額」から出てくるものです。
連結修正仕訳では、まず最初に連結調整勘定以外の勘定科目と価額を書きます。
通常は貸借で合計値が一致しませんから、借方が少なければ貸借が一致する価額だけ連結調整勘定を借方に書きます(連結調整勘定)。
逆に、貸方が少なければ貸借が一致する価額だけ連結調整勘定を貸方に書きます(負の連結調整勘定)。
まさに貸借の価額を合わせるためだけの調整勘定なのです。
連結調整勘定の価額はこのように認識されます。
一方、持分法はと言いますと、連結修正仕訳に似た持分法修正仕訳のようなものは切りません。
持分法の「投資差額」は、株式取得額と被投資会社の資本の部とを直接比較して「投資差額」の価額を計算します。
株式取得額は例えば30パーセント分を400万円、持分法適用会社の資本の合計は1000万円(親会社の持分金額は300万円)だとします。
すると、「投資差額」は差額の100万円(=400万円−300万円)というだけです。
この「投資差額」100万円を連結決算日ごとに修正します。
持分法ではこの「投資差額」である100万円分がはじめから株式取得額(=投資勘定、ここでは400万円)に含まれている、と考えます。
そしてこの投資の額の修正も一応”償却”と呼ぶようです。
なお、この「投資差額」と呼ばれるものは明示的には連結貸借対照表には出てきません(投資勘定に含まれるという考え方)。
「投資差額」をのれんと呼ぶかどうかの議論はあまり本質的ではないのですが、
持分法の投資差額は投資勘定と資本勘定の直接比較から算出されるのに対し、
連結調整勘定の方は時価評価した資産・負債と投資勘定、さらには少数株主持分との貸借の差額から計算される調整勘定である、
という点ではやはり両者には大きな違いがあると言えると思います。
持分法と連結調整勘定の違いについてもう一言付け加えます。
それぞれの「差額」の算出過程を見れば分かるように、
持分法の投資差額は簿価(株式取得原価)対簿価(資本勘定)の差額であるのに
連結調整勘定は簿価(株式取得原価)対時価(資産・負債の時価評価)の差額です。
これは何を意味するのかと言うと、持分法の投資差額に裁量の余地はない客観的なものであるのに対し、
連結調整勘定は特に資産の時価評価次第でいかようにもその価額の操作が可能である、ということです。
サンケイビルのケースを見れば分かると思います。
本来は多額の連結調整勘定が計上されるはずが資産の時価評価次第で負の連結調整勘定を計上することが可能になっています。
会計は真実を表すためにあることを忘れないでいただきたいと思います。
会計は操作をするためにあるのでは決してありません。
【注】
*「企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」」を見ますと、
>(投資と資本の差額の会計処理)
>26-2.
>持分法適用関連会社については、投資会社の持分に相当する部分に限定する方法(部分時価評価法)により、
とありますので、持分法の場合も、持分法適用会社の資産・負債は時価評価します。
上のコメントでは簿価と書いていますが、上のコメントは会計基準に照らし合わせれば間違いです。
しかし、時価評価をするとなりますと、持分法適用会社の資産を大きく評価替えすれば資本勘定も大きくなることになります。
これは持分法適用会社の資産を大きく評価替えしさえすれば、その後の投資差額の償却を避けられるのみならず、
持分法では連結貸借対照表には評価替え後の資産が乗ってこないわけですから、その後の減価償却をも避けることができます。
(これとは別にその他の持分法適用後の各種資産の評価減は資本勘定の減少を通じて投資差額を減少させねばなりませんが。)
単体で有形固定資産を減価償却をしようがその費用が損益計算書に計上されようが、
連結上では評価替えした資産の減価償却を行いませんし当然連結損益計算書にも計上されません。
単体での減価償却が持分法での投資勘定の減少にはつながらないわけです。
持分法適用会社単体の貸借対照表と損益計算書と、持分法を適用した連結ベースの貸借対照表と損益計算書とはある意味関係がないわけです。
関係があるのは最終的な関連会社株式と持分法投資損益のみですから。
連結ベースでは(連結貸借対照表には乗ってきませんが)時価評価後の大きな資産のままで話をすますことができてしまいます。
以上のことを考えますと、
持分法では持分法適用会社の資産・負債は時価評価せず簿価で投資差額を計算する、という考え方は
会計基準に照らし合わせれば間違いなのですが、
会計理論的に考えれば、整合性を保持することや恣意性をなくすことを考えると、
簿価で投資差額を計算する方がむしろ正しいと思います。
また、評価減を行うことは避けられたとしても、例えば建物などの有形固定資産であれば連結上も減価償却を行わなくてはいけません。
この場合の連結上の減価償却費は単体上の減価償却費よりも大きいのです。
なぜなら、取得原価が大きい固定資産と考えて新たに減価償却を行っていくからです。
単体上の減価償却費ともそして税務上の減価償却費とも異なる減価償却費を連結上で計上せねばなりません。
連結上だけに存在するいわば架空の減価償却費、とでも言いましょうか。
この点もまた単体と連結で整合性が取れないという意味で会計上、ある意味矛盾といえるのかもしれません。
記事やプレスリリースについて最後にもう一言だけ付け加えます。
>株式サンケイビルが平成24年3月期末において当社の連結子会となり、負ののれん304億円及び段階取得に係る差損55億円が発生したため、
>負ののれん発生益については特別利益として、段階取得に係る差損ついては特別失として計上いたします。
とありますが、負ののれん発生やその償却を特別利益として計上する、の部分は正しいのですが、
”段階取得に係る差損”などというものはありません。
何と間違えたのかすら分からないくらいあり得ない話をしていると思います。
子会社株式を段階的に取得しようが段階的に売却しようが、一回で売買しようが、
売却益や売却損という言葉はありますが、取得損、取得益、などというのもは決してありません。
会計上の矛盾といえば、決して忘れてならない矛盾がありました。↓
2012年1月6日
株式会社フジ・メディア・ホールディングス
関係会社株式評価損等の計上に関するお知らせ
ttp://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10114676/20120106202208.pdf
↓
2012年4月3日
株式会社フジ・メディア・ホールディングス
関係会社株式評価損の戻入れに関するお知らせ
ttp://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10114676/20120403203546.pdf
「関係会社株式評価損の内容」
株式会社フジ・メディア・ホールディングスの仕訳
2011年12月31日の仕訳 (当然単体)
(関係会社株式評価損) 6,737百万円 / (関係会社株式) 6,737百万円
2011年12月31日の連結修正仕訳
(持ち分法による投資損失) xxx / (関係会社株式) xxx
2012年1月1日の仕訳 (当然単体)
(関係会社株式) 6,737百万円 / (関係会社株式評価損戻入益) 6,737百万円 ・・・@
*↑@の仕訳は評価損を行った第3四半期の翌期首(=第4四半期首=2012年1月1日)に必ず行う仕訳です。
3月末の株価の回復は全く関係ありません。
株価が回復していようがいまいが必ずこの仕訳を切ります。
仮に3月末に株価が回復していない場合は改めて評価損を計上します。
それと、持ち分法による投資損失の戻し入れは(少なくとも1月1日には)行わないようです。
しかし、3月末の時点で関係会社株式は第3四半期末の評価損を行う前の価額に戻していますから、
その時に改めて今度は「持ち分法による投資利益」を計上しなくてはならないと思います。
これは持ち分法による投資損失の戻入益とはまた考え方が違うのだと思います。
この時の「持ち分法による投資利益」の額は、
「持ち分法による投資損失の戻入益に相当する分」±「従来から行っている持ち分法投資損益」
になると思います。
通期(1年間)トータルで見れば、結局、連結決算上は(純額表示すれば)「従来から行っている持ち分法投資損益」分のみが
計上されるだけなのだと思いますが
(仮に総額表示すれば「持ち分法による投資損失」と「持ち分法による投資利益」とが両建てで同額載ってきます(これはこれで異様ですね))、
第4四半期(3ヶ月間)のみで見れば、「持ち分法による投資損失の戻入益に相当する分」が
いきなり「持ち分法による投資利益」として載ってきます。
これは投資家の投資判断を著しく誤らせる原因となります。
この場合で言えば、ただ単に関連会社の株価がほんの少しだけ上昇しただけなのに、
この四半期(3ヶ月間)にその関連会社の業績が突然超急成長した、という風に見えてしまいます。
これは四半期決算だからいいではないか、通期で見ればその問題は生じないではないか、という問題ではありません。
このような矛盾がなぜ生じてくるかと言えば、煎じ詰めれば、(しつこいようですが)やはり四半期洗替法に原因が行き着くのです。
四半期切放法であれば、「持ち分法による投資損失の戻入益に相当する分」を
「持ち分法による投資利益」として計上する(こういうのも足し戻すというのでしょうか)といった事態にはならないのです。
四半期洗替法は、翌四半期(3ヶ月間)に投資有価証券評価損戻入益を計上するという矛盾を生じさせ得るのみならず。
「持ち分法による投資損失の戻入益に相当する分」を「持ち分法による投資利益」として計上するという矛盾をも生じさせ得るのです。
率直に申し上げれば、四半期洗替法は四半期損益計算書(3ヶ月間)の利益額を無意味に変動させかねないのです。
現に株式会社フジ・メディア・ホールディングスはこのたびの第4四半期では大きな特別利益を二重に計上しています。
二重とはもちろん「投資有価証券評価損戻入益」と「持ち分法による投資損失の戻入益に相当する分」の「持ち分法による投資利益」のことです。
通期(1年間)もしくは四半期累計期間(6ヶ月間もしくは9ヶ月間)で見れば相殺消去されるから問題点が目立たなくなっているだけです。
それならば通期(1年間)もしくは四半期累計期間(6ヶ月間もしくは9ヶ月間)で見ればいいじゃないか、という意見は
四半期決算を根底から否定することにつながると思います。
季節変動性がある業種業界もありますし期中に何か大きな業績変動要因が発生するかもしれません。
その際には累積期間よりも3ヶ月間のみの四半期決算というのが重要になってきます。
累積期間の業績というのは直近の3ヶ月間の業績が見えづらいのです。
四半期末計上の投資有価証券評価損も、株価が回復した場合には通期や累積の決算では消えてしまうというのであれば意味がないのです。
それなら始めから四半期末では投資有価証券評価損など計上しない方がいいのではないか、という話になると思います
(以前も書きましたが四半期決算では投資有価証券評価損を損益計算書に計上ではなく
例えば「その他有価証券評価差額金」として資本直入にする、という考え方もあると思います)。
なぜ四半期決算で投資有価証券評価損を損益計算書の計上しているかと言えば、「保守主義の原則」の考え方から来ているのです。
収益(売上)は遅めに、損失(費用)は早めに、が「保守主義の原則」です。
株価が一定以上下落したのであれば四半期の時点で早めに損益計算書に損失として出す、これが基本的な考え方です。
それなのに翌四半期首に戻し入れるのであれば、一体何のための投資有価証券評価損か、という話になります。
損益計算書に一度計上した費用や損失は決して戻し入れてはならない、これが損益計算書の大原則だと思います。
四半期洗替法の適用は明らかに会計理論上の矛盾と言わねばなりません。
私は改めて四半期洗替法はやはり認めてはならない会計処理だと思いました。
なお追加で書きますが、記事には、
>前期末に北海道文化放送や仙台放送などフジテレビ系列9社を持ち分法適用会社とし、
と書いてあり、さらに、プレスリリースには、
>フジテレビ系列局9社が平成24年3月期末において月期末において新たに当社の持分法適用持分法適用関連会社となり、
と書かれていますが、過去のプレスリリースや有価証券報告書・四半期報告書やグループ会社一覧を見ると、そのような事実はありません。
おしらせ(2012年)
ttp://www.fujimediahd.co.jp/news/2012.html
おしらせ(2011年)
ttp://www.fujimediahd.co.jp/news/2011.html
グループ会社一覧
ttp://www.fujimediahd.co.jp/business/group.html
「いや、それは公式サイトの更新が遅れているだけで、プレスリリース通り2012年3月末にフジテレビ系列を関連会社化したのだ、
プレスリリースも公式な情報だ」
と言われればもはや何が事実で何が正確な情報かは判別不能です。