2019年3月22日(金)



レノ陣営の南青山不動産、TOB進行中の中堅印刷会社「廣済堂」に新たなTOBを実施へ

南青山不動産(東京都渋谷区)は20日、中堅印刷会社の廣済堂(東証1部上場)に対してTOB(株式公開買い付け)を実施する
と発表した。廣済堂は米投資ファンドのベインキャピタルの支援を得て、TOBを通じたMBO(経営陣が参加する買収)を実施中で、
3月25日にTOB期限を迎える。廣済堂株式をめぐっては、TOB公表後に旧村上ファンドの関係企業であるレノ(東京都渋谷区)の
大量保有が判明しているが、南青山不動産はそのレノ陣営に属する。
MBOで株式の非公開化(上場廃止)を目指している廣済堂は南青山不動産によるTOBについて、
後日、賛成か反対かなどの意見を表明するとしている。
南青山不動産による廣済堂株式の買付価格は1株750円。買付予定数の下限は910万900株(買付金額約68億円)で、
TOB成立後の廣済堂株式に対する所有割合は50%となる。買付期間は3月22日〜4月18日。
廣済堂経営陣の要請に基づきベインキャピタルの傘下企業が廣済堂へのTOBを1月18日に始めた。買付価格は1株610円。
しかし、市場価格がTOB価格を上回る高値で推移しているのを受け、TOB期間を2度延長し、買付価格も
当初の610円から700円に引き上げる一方、買付予定数の下限を所有割合で66.67%から50%へとハードルを引き下げた経緯がある。
南青山不動産を含むレノ陣営は現在、廣済堂株式の13.47%を保有し、事実上の筆頭株主。
レノ陣営が提示した買付価格750円は市場価格(20日の廣済堂株価の終値は737円)を上回っている。
廣済堂側がTOBを成立させるためには最低でもレノ陣営の買付価格か、それ以上に引き上げることが不可欠。
廣済堂としては25日まで2営業日となった現行のTOB期間中に買付価格の再引き上げの有無について決断を迫られることになる。
(M&A online 2019-03-21)
ttps://maonline.jp/news/20190320s

 

 



MBO目指す廣済堂へ 旧村上ファンド系「レノ」が対抗TOB
(M&A online 2019-03-22)
ttps://maonline.jp/articles/counter_tob_kosaido2019


3月25日を期限にTOB(株式公開買い付け)が進行中の中堅印刷買会社「廣済堂」(東証1部)に対して、対抗TOBが提起された。
南青山不動産(東京都渋谷区)が22日から廣済堂にTOBを開始する。

買付価格の再々引き上げを誘う?
TOBを仕掛けた南青山不動産は旧村上ファンドの関係企業であるレノ(東京都渋谷区)のパートナー企業。
レノと南青山不動産は廣済堂株式の13.47%を共同保有する。レノ側は今回の対抗TOBで保有割合50%(下限)を目指している。
買付価格は1株750円で、現在進行中のTOBに比べ50円高く設定した。
廣済堂は米投資ファンドのベインキャピタルの支援を得て、TOBを通じたMBO(経営陣が参加する買収)を1月18日に開始した。
この間、TOB成立の確度を高めるために、買付価格の引き上げなどの条件変更を行った。
しかし、廣済堂株の市場価格は買付価格の700円をいぜん上回ったままで、TOBの成立が困難視されている。

 


ぎりぎりの決断迫られる廣済堂
対抗TOBが提起された以上、廣済堂側がTOBを成立させるためには最低でもレノ側を上回る条件変更が不可欠。
レノ側には買付価格の引き上げを誘う思惑があるとみられる。
いずれにせよ、廣済堂としては25日まで2営業日となったTOB期間中に買付価格の再引き上げの有無について決断が避けて通れない。
南青山不動産を含むレノ側は現在、廣済堂株式の13.47%を保有し、事実上の筆頭株主。
レノ側の買付価格750円は市場価格(20日の廣済堂株価の終値は737円)を上回る水準に設定している。
買付予定数の下限は910万900株(買付金額約68億円。上限はなし)で、TOB成立後の保有割合は50%となる。
買付期間は3月22日〜4月18日。
廣済堂へのTOBはベインキャピタルの傘下企業が実施中。MBOの一環として行われ、完全子会社化による非公開化を目的とする。
3月8日には買付価格を610円から700円に引き上げる一方、買付予定数の下限を保有割合で当初の66.67%から50%に引き下げる
と発表した。12日までだった買付期間は25日に延長した。
こうしたTOB条件変更の背後にあったのがレノの存在。2月初めにレノが廣済堂株式を買い集めていることが判明した。
これをきっかけに廣済堂株価は買付価格を20%程度上回る高値で推移し、TOBの成立が危ぶまれていた。
株主にとってはTOBに応募するよりも市場売却した方が得だからだ。
廣済堂は2月中にレノとレノと関係が深い村上世彰氏と計5回の協議を行った。700円への買付価格引き上げも村上氏を含めた
レノ側の意見を踏まえた模様。このため、レノ側がTOB賛同に回る可能性が高いとみられていた。
廣済堂が3月20日に発表した資料によると、8日にTOB条件変更を公表した同日夜に、レノ側から700円を上回る価格で
TOBを開始する用意があるなどとする書簡を受け取った。その後、村上氏を含むレノ側と複数回意見交換した。

レノ「十分な株式価値向上の機会が提供されていない」
これに対し、レノ側は対抗TOBまでの経緯を説明した同日の発表資料で、廣済堂が610円から700円に引き上げた買付価格について
「対象企業(廣済堂)の本来の価値に鑑みると、
必ずしも対象会社の既存株主に対して十分な株式価値向上の機会が提供されていない」などと指摘した。
もっとも、レノ側の指摘は的を射ている。その会社の純資産と株価の関係を示す株価純資産倍率(PBR)は廣済堂の場合、
0.67倍で、長年1倍を下回っている。PBRが低ければ、それだけ株価が割安というわけだ。
ちなみに伊藤忠商事との経営対立で敵対的TOBの対象となったデサントのPBRは2.46倍。
つまり1株あたり純資産約1040円に対し、直近株価は2555円。その点は廣済堂に比べ申し分ない。

◎廣済堂TOB(MBO)をめぐる動き

 

 


2019年3月21日(木)日本経済新聞
旧村上F系がTOB 廣済堂のMBOに対抗
(記事)




2019年3月21日(木)日本経済新聞
▼廣済堂へのTOB
買い手=南青山不動産、株数=予定数2155万7549株(910万900株を下限)、価格=普通株式750円、期間=3月22日〜4月18日
(記事)




2019年3月22日(金)日本経済新聞 公告
公開買付開始公告についてのお知らせ
株式会社南青山不動産
(記事)



 


2019年3月20日
株式会社廣済堂
株式会社南青山不動産による株式会社廣済堂(証券コード:7868)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
ttps://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01383/760a2974/1469/4504/b667/542c0ddf3fe7/140120190320493172.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2019年3月20日
株式会社廣済堂
株式会社南青山不動産による当社株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ
ttps://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01383/8ccc5e5e/9776/4bc5/ba17/555cc4c03cdb/140120190320492722.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2019年3月22日
株式会社廣済堂
(経過開示)平成31年3月期配当予想の修正(無配)及び株主優待制度の廃止に関するお知らせ
ttps://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01383/0780fbee/1beb/487b/8bda/2e468dd2c5fa/140120190322493428.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2019年3月22日
株式会社廣済堂
(変更)「MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ」の一部変更について
ttps://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01383/2695bde1/7b78/4725/b043/6d76d79bb58d/140120190320493013.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)



2019年3月22日
株式会社廣済堂
株式会社南青山不動産による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明(留保)のお知らせ
ttps://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01383/a1a3abbf/de6e/4ec2/8148/81073b5c9e6e/140120190320493010.pdf

(ウェブサイト上と同じPDFファイル)

 

 


H31.03.22 11:50
株式会社南青山不動産
公開買付届出書
(EDINET上と同じPDFファイル)



H31.03.22
株式会社南青山不動産
公開買付開始公告
(EDINET上と同じhtmlファイル)



H31.03.12 09:13
株式会社廣済堂
訂正意見表明報告書
(EDINET上と同じPDFファイル)

 




2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計94日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜)
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

 


 


【コメント】
なんとなんと、あの村上ファンドが株式会社廣済堂に対して公開買付を実施する、とのことです。
少数割合の(と言っても、最少で1%前後から最大で30%前後までの割合ですが)株式を保有するだけであれば、
投資家は、「何らかの手段で保有株式をできる限り高い価格で売却できさえすればそれでいい。」、
という投資方針で構わないわけですが、
公開買付を行い発行者の意思決定機関を事実上支配するとなりますと、
投資家は公開買付後自分自身が発行者を経営しなければならなくなる、ということになります。
公開買付を行う時、投資家は一投資家ではありません。
公開買付を行う時、投資家は対象会社の経営を行う経営者でなければならないのです。
率直に言えば、公開買付は投資ではないのです。
生半可な気持ちで公開買付を行うことは決してできないのです。
さて、2019年3月22日に株式会社廣済堂が発表したプレスリリース
「(変更)『MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ』の一部変更について」には、
経営陣側が現在実施している公開買付への応募の推奨に関連して、次のような記載の変更があります↓。


3.本公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由
(1)意見の内容
【変更前】
【変更後】
(2/12ページ)



従来は、対象会社である株式会社廣済堂は、
経営陣が行う公開買付に賛同の意見を表明し株主に対して公開買付けに応募することを推奨していたわけですが、
より高い買付価格による公開買付が新たに開始されたため、若干推奨意見が変更になっています。
変更後は、対象会社である株式会社廣済堂は、
経営陣が行う公開買付に賛同する旨の意見は維持するものの、株主に対して経営陣が行う公開買付への応募を推奨する旨の
意見を撤回し、株主が経営陣が行う公開買付に応募するか否かについては株主の判断に委ねることにしました。

 

 


対象会社である株式会社廣済堂は、村上ファンドが実施する公開買付に対する意見はまだ表明しておらず(留保中)、
今後公開買付に関する評価・検討を行った上で意見を表明する予定です、とプレスリリースには記載されています。
しかし、経営陣が行う公開買付への応募を株主が取り消すことができるのは、3月25日の15時30分までではないかと思います。
「村上ファンドが実施する公開買付に応募するかそれとも経営陣が実施する公開買付に応募するか?」、
市場の投資家(対象会社である株式会社廣済堂の株主)にとってはこれもまた1つの投資判断です。
「銘柄Aを購入するかそれとも銘柄Bを購入するか?」が投資家の投資判断ならば、
公開買付という場面では「公開買付者甲に売却するかそれとも公開買付者乙に売却するか?」
もまた投資家の投資判断なのです。
市場の投資家(対象会社である株式会社廣済堂の株主)の立場からすると、投資判断の根拠という点において、
村上ファンドが実施する公開買付に対する意見は同時に経営陣が実施する公開買付に対する意見でもあるのです。
ただ、株主により高い価格で株式を売却する機会を提供することも受託者が負うべき受託者責任の1つであるとも言えますので、
受託者としては基本的にはより高い買付価格を申し出ている公開買付に応募することを推奨することになるのだと思います。
それから、何かの気付き・理解のきっかけにならないだろうかと思ったのですが、1991年以前の公開買付制度において、
このたびのような対抗的公開買付が実施されることはあり得るだろうか、とふと思いました。
「上場前からの株主」が複数人いることは現実に全く考えられるわけですが、
それら複数の「上場前からの株主」が仲違いをして互いに競い合う形で対象会社に対して公開買付を実施する、
ということも理屈では考えられる(会社の上場後に兄弟喧嘩や親子喧嘩が始まった、等々)と思ったわけです。
対象会社としては、同意書を提出する・提出しないにより公開買付後の支配株主を事前に任意に選択できるわけですが、
潜在的公開買付者(対抗的公開買付の提案者)はより高い買付価格を申し出ているにも関わらず対象会社は同意書を提出しない、
というのは、「株主により高い価格での株式売却の機会を提供する」という観点から言えば、
明らかに受託者責任に反している(投資家の利益を害している)、という見方もできると思いました。
「応募を推奨しない」と「同意書を提出しない」は、投資家による投資判断(そして株式売却の機会)そのものを
投資家から奪っているという点において、根本的に異なっていると思いました。
たとえ対象会社が「応募を推奨しない」としても、現行の公開買付制度では株主は公開買付に応募ができます。
しかし、対象会社が「同意書を提出しない」となりますと、
それは、旧来の公開買付制度では株主はより高い価格での株式の売却機会そのものが奪われるということを意味しているのです。


 

A sequence of events on a tender offer for Kosaido.

廣済堂に対する公開買付に関する経緯

 

A fiduciary can never recommend shareholders to accept the lower-price offer.

受託者は買付価格が低い方の申し出に応募をすることを株主に推奨することはとてもできないのです。