2019年3月19日(火)


「ゼミナール 金融商品取引法」 大崎貞和 宍戸善一 著 (日本経済新聞出版社)

第7章 株式公開買付け(TOB)をめぐる規制
1. 株式公開買付規制
(1) 公開買付制度の変遷
「191〜192ページ」 

 

 



2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計91日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜)
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

 

 


【コメント】
昨日のコメントに一言だけ追記をします。
今日は金融商品取引法の教科書を題材にて、「公開買付制度の変遷」について一言だけ書きたいと思います。
昨日のコメントでは、実務上起こり得る状況を想定して公開買付者と対象会社との関係性について考察を行い、
「1999年以前の日本の証券制度においても、実は、『敵対的公開買付』は現実に十分に起こり得たはずだ。」
という結論に辿り着きました。
1999年以前の日本の証券制度において「敵対的公開買付」が行われた実例は一例もないのかもしれませんが、
と昨日は書きましたが、今日紹介している教科書にでも、
日本で初めて「敵対的公開買付」が行われたのは2000年2月のことである、と書かれています。
また、教科書の説明によりますと、1990年に公開買付制度について大幅な制度改正が行われたのだが、
1990年以降に実施された公開買付は、

>そのほとんどは、買収対象会社の経営陣が同意したうえで行われる友好的公開買付けであった

と書かれています。
この辺りの経緯を正確に理解するためには、「公開買付制度の変遷」について理解をしておかなければならないと思いました。
今日は、私が今まで聞いた話を思い出しながら次のような図を書いてみましたので参考にして下さい。

"A transition of the tender offer system in Japan."
(「日本における公開買付制度の変遷」)

日本では、1971年に公開買付制度が初めて導入されたのですが、
紹介している教科書には言及が一切ありませんが、私が思い出す限り、
1971年に導入された(1990年まで施行)当時の公開買付制度では、
公開買付者は「対象会社の同意」の下、公開買付を実施しなければならない、という制度であったとのことです。
「公開買付を実施するのに『対象会社の同意』は必要か否か?」という点は、公開買付制度を考える上で決定的な相違点です。
それこそ10年前後前のコメントになるのではないかと思うのですが、
「敵対的だ反対意見の表明だという話になるので、対象会社の同意を得た上で公開買付を実施することにしてはどうか?」
という趣旨のことを私は以前何気なく書いたことがある(何かを思い出して書いたわけではない)のですが、
自分でも驚いたことに、1990年以前の公開買付制度はまさに「対象会社の同意」が必要であったわけです。
また、1999年以前の証券制度では、正確な数字は思えていませんが、上場企業の株式を一定数以上取得できるのは、
「上場前から株主であった者」という規制になっていた、という話を聞いたことも今日思い出しました。
「上場前から株主であった者」であれば、大株主になっても会社(発行者)の利益を害さない、との考え方が背景にあるのでしょう。
結果、1999年以前は、同意以前に、「上場前から株主であった者」でなければ公開買付は実施できなかった、ということになります。
「日本における公開買付制度の変遷」は、証券制度の推移を理解する上で非常に重要だと思います。
紹介している教科書には一切言及がないのですが、日本における公開買付制度は、対象会社と公開買付者双方にとって、
1990年と1999年に抜本的な・根本的な制度変更が行われたのです(現在の公開買付制度は「第3段階」と呼べるでしょう)。


The current tender offer system is the third phase as of now, which has begun in 1999.

現行の公開買付制度は現在その第3段階にあるわけですが、1999年に始まりました。