2019年2月5日(火)


今日もいくつか記事を紹介しながら、また、会計学辞典スキャンしながら、一言ずつコメントを書いていきたいと思います。

 

2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計49日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜)
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

 

 



2018年9月22日(土)日本経済新聞
中間配当 最高の4.9兆円 9年連続増 企業の積極還元進む
(記事)




2018年9月22日(土)日本経済新聞
三菱電4〜9月中間配 据え置きの14円に 株主還元を重視
Mスター6.5円 初の中間配当 4〜9月
(記事)




 

「会計学辞典 第五版」 森田哲彌、宮本匡章 編著 (中央経済社)

「中間配当、中間配当積立金」 ("Interim Dividend"、"Interim Dividend Reserves")

 

 



【コメント】
「中間配当」は、一般的には"interim dividend"と訳されます。
英和辞書を引きますと、"interim"は、ラテン語が語源のようですが、
"in the meantime"(「その間に」、「合間の」)と同じ意味であると載っています。
英和辞書を引きますと、"interim"は、「合間、しばらく、当座の、臨時の、仮の、暫定的な」という意味であると載っています。
自動車教習所で一時的に交付される運転免許のいわゆる「仮免許」は、"an interim driver's license"と訳すのだろうか
と思ったのですが、インターネットで検索すると、
米国では"learner's permit"、英国では"provisional licence"と訳されるとのことです。
英文会計の辞書を引きますと、"interim period"で「中間期間」という意味になるのですが、
"interim period"の解説に次のように書かれています。

>1事業年度全体よりも短い財務報告の期間で、半期のみならず四半期も含む

会計用語としての"interim"は、半期(6ヶ月間)を意味する場合もあれば四半期(3ヶ月間)を意味する場合もあるわけです。
日本語で「中間」と言いますと、「6ヶ月間」を意味することが多いのですが、"interim"に「6ヶ月間」という意味はないようです。
半期(6ヶ月間)という意味を明確にしたい場合は、"half-yearly"や"semiannual"という用語を用いるべきであるようです。
四半期(3ヶ月間)という意味を明確にしたい場合は、"quarterly"という用語を用いるべきであるようです。
以前も書きましたが、理論上は、会社が四半期配当を支払うためには、会社は当該四半期の法人税の確定申告をしなければなりません。
すなわち、会社は四半期毎に(3ヶ月毎に)法人税の確定申告をしなければなりません。
旧商法上会社が中間配当を行えるようになった時点で、「6ヶ月間」毎に法人税の確定申告を行うよう、
法人税法も改正するべきであったのだ(そして、現在では「3ヶ月間」毎に確定申告を行うように、です)と私は思います。
件の「中間配当積立金」は、旧商法上は(法律的意味合いとしては)「確定している」と言うのでしょうが、
「配当の財源」としては、財務上は何ら確定していなかったと言わねばならなったわけです。
前営業年度の所得と当営業年度の所得は全く関係がない、という見方を法人税法では行うのではないかと思うのですが、
その観点から言えば、前営業年度末の配当財源を根拠に当営業年度中に配当を支払うというのは、
実は配当財源としての整合性に欠けるところがあると私は思います。
理論上の話をすれば、前営業年度末の配当財源を根拠に会社が配当を支払うことができるのは、
言わば「前営業年度に帰属する期間のみ」(すなわち、当営業年度が開始する前)である、という考え方になると思います。
現代の会社法制では、例えば3月期決算の会社の場合は、
会社は前営業年度末の配当財源を根拠に当営業年度中に(すなわち6月に)配当を支払っているわけです。
しかし、配当支払期日時点における剰余金(貸方)という意味でも手許現金(借方)という意味でも、
理論上は会社は当営業年度が開始する前に配当を支払い終えねばならない、という考え方になります。
当営業年度が開始した時点で、剰余金(貸方)も手許現金(借方)も、前営業年度末のそれらとは異なってしまうからです。
率直に言えば、「中間配当積立金」は中間配当の配当財源足り得ない、と私は思います。
理論上は、会社が配当を支払う都度、会社は厳密な配当財源(分配可能な剰余金の金額)を計算し確定させなければならないのです。
そして、会社が厳密な配当財源(分配可能な剰余金の金額)を計算し確定させた後は、
その配当支払期日までは会社は一切営業活動を行ってはならない(借方も貸方も一切変動させてはならない)のです。
そうでなければ、会社が厳密な配当財源(分配可能な剰余金の金額)を計算し確定させた意味自体がなくなってしまうからです。
「意味自体がなくなってしまう」とは、
「結局何の配当財源もなしに配当を支払っていることと同じになってしまう。」、という意味です。

 



それから、スキャンして紹介している「会計学辞典」のスキャンとその説明についてなのですが、
私は最初、「スキャンして紹介はしたが、説明が間違っている気がするな。」と思いました。
旧商法の改正についても調べ直さないといけないな、と思ったのですが、「会計学辞典」の説明を読んでいて、
ふとあることに気が付きました。
それは、スキャン画像にも書いていることなのですが、次のようなことです。

>旧商法上の定期外配当と現会社法上のそれとは本質的に異なるように思います。

上記の「定期外配当」は、私の造語なのですが、営業年度(1年間)において、定時株主総会決議に基づく通常の配当を「定期配当」、
それ以外の配当を「定期外配当」と私は定義しました(そのように概念整理をしました)。
旧商法では、営業年度(1年間)に1回に限り「定期外配当」が認められていたわけです。
旧商法では、会社は「定期配当」を1回、「定期外配当」を1回、合計2回の配当が認められていたわけです。
そして、現会社法では、その旨定款に定めないと「定期外配当」自体をそもそも会社は支払えない、
という規定に変わったのではないかと思います。
旧商法では会社は特段の定めなく当然に「定期外配当」を行えたのだが、現会社法では別途定款にその旨定めないと
会社は「定期外配当」を行えない、といういうふうに法制度が変わったのだと思います。
ただ、旧商法上の定期外配当と現会社法上のそれとは本質的に異なると私が感じたのは、その部分(定款云々)ではありません。
旧商法上の定期外配当と現会社法上のそれとは本質的に異なると私が感じたのは、配当財源の部分です。
旧商法上の定期外配当では前営業年度末の分配可能額にその配当財源は制限されていたということは、
旧商法上の定期外配当は「『前営業年度の配当』の後払い分」である、ということを意味しているに他ならないわけです。
たとえ「中間配当積立金」を積み立てておいた場合であっても、その「中間配当積立金」の財源は前営業年度末の分配可能額である
わけですから(前営業年度末の分配可能額の一部を「中間配当積立金」に振り替えたに過ぎないわけですから)、
たとえ会社が「中間配当積立金」を財源とする「定期外配当」を行う場合であっても、
やはりその「定期外配当」(中間配当)は「『前営業年度の配当』の後払い分」に他ならないのです。
一方で、現会社法における「定期外配当」は、「『前営業年度の配当』の後払い分」では全くないのです。
話の都合上「四半期配当」を例にしますと、現会社法における「定期外配当」は、
まさに「当該四半期の配当」そのものであるわけです。
なぜならば、現会社法における「定期外配当」(四半期配当)は、当該四半期末の分配可能額にその配当財源があるからです。
その「配当財源」という点において、旧商法における「定期外配当」は"later payment"(後払い)に過ぎない一方、
現会社法における「定期外配当」は"payment on the spot"(その場で支払うこと)であるわけです。
現会社法における「定期外配当」は、その「配当財源」を都度計算するという点において、もはや「定期配当」と呼ぶべきなのです。
さらに考察を行いますと、旧商法上の「定期外配当」では、
「法人税を支払った後」の勘定科目を配当財源としていると言えるのに対し、
現会社法の「定期外配当」では、現行の法人税法の規定のままでは、「法人税を支払う前」の勘定科目を配当財源としている、
という見方になるかと思います。
なぜならば、前営業年度末の分配可能額も積み立てた「中間配当積立金」も、法人税法から見れば確定している価額であるのに対し、
当四半期末の分配可能額は法人税法から見ればまだ確定はしていない価額であるからです。
当営業年度が開始した時点で、剰余金(貸方)も手許現金(借方)も、前営業年度末のそれらとは異なってしまうのは事実ですが、
あくまで理論上の話になりますが、会計上の整合性(法人税法納付後の勘定科目)という点では、旧商法上の定期外配当では、
「前営業年度末の分配可能額」にその配当財源を求めるべきである、という結論になると思います。
理論上は、法人税法から見ると、旧商法の規定(配当財源に関する制限)が実は正しかった、という結論になると思います。
「前営業年度末の分配可能額」は、やはり会社が法人税を納付した後の価額なのです。

 



In order for a company to pay a quarterly dividend, in theory,
it must file its final Corporation Tax return for the quarter (i.e. declare its earnings for its Corporation Tax quarterly).

会社が四半期配当を支払うためには、理論上は、
会社は当該四半期の法人税の確定申告をしなければなりません(すなわち、四半期毎に法人税の確定申告をしなければなりません)。

 

The reason why financial resources of an interim dividend used to be restricted
only to the distributable amount as at the end of the previous business year under the old Commercial Code
is the Corporation Tax Act, actually.
Under the old Commercial Code, the financial resources of a "non-regular dividened" used to be restricted
only to the distributable amount as at the end of the previous business year.
For the Corporation Tax Act didn't use to accept an "interim payment" of the Corporation Tax of a company
as its final tax return.
In theory, from a standpoint of the Corporation Tax Act,
an "interim dividend" requires an "interim payment."
The term "interim" in this context means "between the beginning of a business year and the end of the business year"
or "before the end of the business year has come."
That prescription in question of the old Commercial Code used to be, as it were, the last resort, actually.
Because the old Commercial Code prescribed that financial resources of an interim dividend were restricted
only to the distributable amount as at the end of the previous business year,
the old Commercial Code got able to manage to neglect the Corporation Tax Act.

旧商法において中間配当の財源が前営業年度末時点の分配可能額のみに制限されていた理由は、実は法人税法なのです。
旧商法においては、「定期外配当」の財源は前営業年度末時点の分配可能額のみに制限されていました。
というのは、法人税法は、会社の確定申告として会社の法人税の「期中納付」を受け付けていなかったからです。
理論上は、法人税法の立場から言えば、「期中配当」をするためには「期中納付」をしなければならないのです。
この文脈における"interim"という用語は、「営業年度の開始日から営業年度の終了日までの間は」や
「営業年度の終了日が到来するそれまでは」という意味です。
旧商法の論点となっているあの規定は、実は、言わば苦肉の策だったのです。
旧商法が中間配当の財源は前営業年度末時点の分配可能額のみに制限すると定めたので、
旧商法は法人税法をなんとか無視することができるようになったのです。

 

Under the old Commercial Code, financial resources of an "interim dividend" used to be calculated
several months before the delivery, whereas, under the current Companies Act, they are calculated just on the delivery.

旧商法では、「期中配当」の財源は配当支払いの数ヶ月前に計算されていたのですが、
現会社法では、「期中配当」の財源はまさに配当支払いの時に計算されるのです。