2019年2月4日(月)



2018年11月8日(木)日本経済新聞
中古品アプリ「キャッシュ」MBO
(記事)





DMM大損害 換金アプリのバンクが5億円でMBO

中古品の即時買い取りアプリ「CASH(キャッシュ)」を運営するバンク(東京・渋谷)は7日、MBO(経営陣が参加する買収)を
実施したと発表した。動画配信などを手がける親会社のDMM.com(東京・港)が保有する全株式を光本勇介社長が5億円で取得した。
DMMは2017年10月にバンクの全株を70億円で取得していたが、わずか1年で売却した。
バンクは17年2月の設立。スマートフォンでブランド品などを瞬時に買い取り現金化できるアプリ「CASH」や
代金後払いで旅行ができるアプリ「トラベルナウ」を運営する。17年6月のCASHのサービス開始時に利用者からの換金依頼が殺到。
一時サービスを中断したが、17年10月にDMMの子会社となり、運営体制の強化に取り組んでいた。
今回のMBOについてバンクは「よりスピーディーで柔軟な経営判断が行える」などとしている。
一方、DMMはバンクを子会社化した後、運転資金として20億円をバンクに貸し付けていた。
バンクへの貸付金20億円は「光本勇介氏がバンク社を引き続き運営することで、5年間で返済する」(DMM)という。
17年10月の買収発表当時、スタートアップ業界では「70億円の買収額は割高」との見方もあった。
今回の譲渡額は14分の1に価値が目減りしており、M&A(合併・買収)のリスクが表面化した格好だ。
今回の件に関してDMMの亀山敬司会長は「お騒がせして申し訳ありません。敗軍の将語らずです。
今後もDMMは積極的に投資を続けてまいります。バンク社の今後の発展を祈っております」とコメントしている。
(日本経済新聞 2018/11/7 13:36)
ttps://www.nikkei.com/article/DGXMZO37467610X01C18A1000000/

 

 

2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計48日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜)
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

 

 


【コメント】
昨日は、伊藤忠商事株式会社による株式会社デサント株式への公開買付の事例と
株式会社廣済堂によるマネジメント・バイアウト(MBO)の事例を題材にして、MBOについて考察を行いました。
昨日はMBOについて、「現経営陣がその後も事業を手がけ続けることができるというのがMBOである。
したがって、その後解任されることがないよう、現経営陣自身が現金を拠出をしなければならない。」という旨のことを書きました。
今日は、非常に珍しいMBOの事例を紹介しています。
「dmm バンク 売却」というキーワードで検索をしますと、新聞記事や解説記事がヒットしますので各自で読んで下さい。
DMMはバンク株式を70億円で取得して1年後に5億円で売却した(65億円の売却損を被った)一方、
バンクの創業者(社長)はバンクを株式を70億円で売却して1年後に5億円で再取得した(結果的に65億円の売却を得た)、
ということで、俗語で言いますと「元鞘」とでも言いましょうか、「出戻り」とでも言いましょうか、
同じMBOでも、「マネジメント・バイアウト」(Management Buy-Out)というよりも、株主(会社の出資者)という観点から見れば、
"The Management is Back and Owns the company."(経営陣が戻ってきて会社を所有をしている。)とでも表現するべきだと思います。
税務当局からは、バンク株式の一連の取引は、DMMからバンク創業者への寄附金に過ぎない、というふうにも見えるかもしれません。
それで、昨日題材としました伊藤忠商事株式会社による株式会社デサント株式への公開買付の事例では、株式取得後、
伊藤忠商事株式会社は株式会社デサントの「取締役会の構成を大幅に刷新する」計画を持っているわけですが、
株式取得者が株式取得後にできることは、煎じ詰めれば、取締役の解任・選任か所有株式の売却かのどちらかしかないわけです。
DMMは、バンクの経営陣を刷新するという選択はせずに、所有株式を売却するという選択を行ったのです。
始めから出資先企業の経営陣を刷新する計画を持った上で(新経営陣候補者を既に用意した上で)株式を取得することは
全く問題ありませんが、経営陣の交代は前提とはせずに(現経営陣に経営を任せることを前提に)株式の取得を行った場合は、
有事の際、短期間に新たな有能な候補者を見つけるのは現実には困難ですので、
株式取得者は現実には所有株式を売却するという選択をすることになります。
実務上は、株式の買い手を探すのも非常に難しい(したがって、現実には買収企業を清算する結果になりがちです)のですが、
それ以上に、買収企業の経営ができる有能な経営者を探す方が難しいのです。
DMMは、バンクの経営陣を刷新しなかった(それどころか、創業者が引き続き事業の運営を行うことで返済が
十分に見込めることから、多額の運転資金をバンクに対し貸し付けることまでしている)のですが、
バンクの経営陣を刷新しなかったことが不幸中の幸いということかもしれませんが、
DMMには「買収企業の創業者」(現経営陣)というある意味格好の買い手がいただけまだ幸運だったと思うべきかもしれません。
仮に株式取得後にDMMがバンクの経営陣を刷新していた場合は、DMMには株式の買い手はいなかったことでしょう。
理論上は、出資者は会社の事業を運営するのがこの世で最も有能な人物に会社の業務の執行を委任します。
その意味において、理論上は「設立時取締役」が会社の事業を運営するのがこの世で最も有能な人物です。
しかし、現実には、人脈の広さや有能な人材を広く社会から探し出す能力や依頼応諾の可能性が人によって大きく異なりますので、
出資者が変わると、「設立時取締役」よりも有能な人材が会社の取締役に就任する、ということがあり得るのです。

 

In case of need after acquiring shares of a company, an acquierer of the shares
either carries out a director reshuffle or divests itself of its holdings in the investee company.

ある会社の株式を取得した後の有事の際は、株式取得者は、
取締役の刷新の断行か被出資会社の自分の持ち株を投げ出すかのどちらかを行います。