2019年2月2日(土)



2019年1月8日
武田薬品工業株式会社
Shire社買収完了のお知らせ
ttps://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2019/20190108-8037/

 

2019年1月8日
武田薬品工業株式会社
当社によるShire plcの全株式取得に関するお知らせ
ttps://www.takeda.com/siteassets/jp/home/newsroom/news-releases/2019/takeda-completes-acquisition-of-shire-
becoming-a-global-values-based-rd-driven-biopharmaceutical-leader/j-press-release-completion.pdf

 

2019年1月7日
武田薬品工業株式会社
募集株式の募集事項に関するお知らせ
ttps://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2019/20190107-8036/

「キャプチャー画像」

>募集株式の数 770,303,013株

 

2018年6月28日
武田薬品工業株式会社
第141期(2017年4月1日?2018年3月31日) 有価証券報告書
ttps://www.takeda.com/siteassets/jp/home/investors/report/consolidated-financial-statements/asr141_ja.pdf


>【株式等の状況】
>【発行済株式】
>普通株式 794,688,295


【大株主の状況】
(54/189ページ)

 

 



米国SEC提出書類(武田薬品工業株式会社)
ttps://www.takeda.com/jp/investors/reports/sec-filings/

 

Companies with names matching "TAKEDA" (EDGAR)
ttps://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?company=TAKEDA&owner=exclude&action=getcompany

 

アメリカ上場企業の主要株主を調べる方法
(2012年12月27日 Investment and Beyond)
ttp://investmentandbeyond.blogspot.com/2012/12/blog-post.html

>アメリカの上場企業の大株主についての情報を調べようとして、少し時間がかかったのでメモ。
>簡単に手っ取り早く調べるには、米国会社四季報ですね。
>さらに詳しく(そして無料で)調べるには、財務情報を調べる時に参照する10-K(年次報告書)や10-Q(四半期報告書)と同様に
>SECへの届出書類であるDEF 14Aから、大株主の状況は調べることができます。
>DEF 14AとはProxy Statement(株主総会招集通知)の書類コードです。

 

 


2018年12月18日(火)のコメントで、ソフトバンク株式会社の上場に関する記事を計26本紹介し、
「有価証券の上場には4つのパターンがある。」という資料を作成し、以降、集中的に証券制度について考察を行っているのだが、
2018年12月18日(火)から昨日までの各コメントの要約付きのリンクをまとめたページ(昨日現在、合計46日間のコメント)。↓

各コメントの要約付きの過去のリンク(2018年12月18日(火)〜)
http://citizen.nobody.jp/html/201902/PastLinksWithASummaryOfEachComment.html

 

 



【コメント】
今日は、一昨日と昨日同様、武田薬品工業株式会社が米国預託証券をニューヨーク証券取引所に上場させたという事例について、
一言だけ追記をしたいと思います。
今日考察を行いたいのは、シャイアーとの経営統合後の武田薬品工業株式会社の大株主の状況についてです。
有価証券報告書によりますと、2018年3月31日現在の武田薬品工業株式会社の発行済株式総数は「794,688,295株」となっています。
一方、2019年1月7日に発表されたプレスリリース「募集株式の募集事項に関するお知らせ」によりますと、
シャイアーとの統合に際して発行される武田薬品工業株式会社の新株式の数は「770,303,013株」となっています。
そして、2018年3月31日現在、武田薬品工業株式会社の筆頭株主は「47,021千株」(所有割合:「5.92%」)を所有しています。
ただ、筆頭株主は信託銀行の「信託口」となっており、信託の委託者の詳細についてはこれ以上は分からない状態です。
昨日は、原株式の「米国預託証券」を希望するシャイアー株主に「米国預託証券」を割り当てるのは"tricky"だと指摘し、
「武田薬品工業株式会社は、一旦預託銀行であるニューヨークメロン銀行に武田薬品工業株式を割り当てる流れになる。」
という概念図を描きました。
事の問題点は実はこの図で既に描き表しているわけなのですが、今日は設例を設け、少しだけ数値計算をしてみましょう。

【設例@】仮に、シャイアー株主の全員が原株式の「米国預託証券」の受け取りを希望したとしましょう。
その場合、株主名簿上の預託銀行であるニューヨークメロン銀行の株式所有割合は次のようになります。
770,303,013株÷(794,688,295株+770,303,013株)×100=49.22%
【設例A】仮に、シャイアー株主の半数(所有株式ベース)が原株式の「米国預託証券」の受け取りを希望したとしましょう。
その場合、株主名簿上の預託銀行であるニューヨークメロン銀行の株式所有割合は次のようになります。
(770,303,013株÷2)÷(794,688,295株+770,303,013株)×100=24.61%
【設例B】仮に、シャイアー株主の5分の1(所有株式ベース)が原株式の「米国預託証券」の受け取りを希望したとしましょう。
その場合、株主名簿上の預託銀行であるニューヨークメロン銀行の株式所有割合は次のようになります。
(770,303,013株÷5)÷(794,688,295株+770,303,013株)×100=9.84%
【設例C】仮に、シャイアー株主の10分の1(所有株式ベース)が原株式の「米国預託証券」の受け取りを希望したとしましょう。
その場合、株主名簿上の預託銀行であるニューヨークメロン銀行の株式所有割合は次のようになります。
(770,303,013株÷10)÷(794,688,295株+770,303,013株)×100=4.92%

シャイアー株主の10分の1(所有株式ベース)が原株式の「米国預託証券」の受け取りを希望したとしたら、
株主名簿上の預託銀行であるニューヨークメロン銀行の株式所有割合は「4.92%」になる計算になるわけなのですが、
実はこの受取希望割合においても、株主名簿上は預託銀行であるニューヨークメロン銀行が筆頭株主になります。
なぜならば、経営統合前の筆頭株主の株式所有割合は、新株式の発行の結果、「約2.9%」にまで低下するからです。
たとえシャイアー株主の15分の1(所有株式ベース)が原株式の「米国預託証券」の受け取りを希望したとしたとしても、
株主名簿上は預託銀行であるニューヨークメロン銀行が筆頭株主になります。
昨日引用した記事によりますと、旧シャイアーの株主は5割超がグローバルな機関投資家だったとのことですが、
旧シャイアーの株主の一定割合以上は「米国預託証券」の受け取りを希望するのではないかと推測できます。
ここで言う「一定割合以上」というのはどんなに少なく見積もっても「1割以上は」という割合です。
「米国預託証券」を大規模に発行している状況下での【大株主の状況】をどのように記載・開示するべきかは
実は非常に難しい問題であり、理論上は米国の預託銀行を株主として記載・開示するべき、という考え方になると思います。
なぜならば、米国の預託銀行から先は日本の発行者にはブラックボックスの領域だからです。
「米国預託証券」の保有者(保有者名簿)を管理するのは預託銀行の役割である、という考え方に理論上はなると思います。
「米国預託証券」の大量保有者は、実は証券制度上は明らかにならない、という考え方に理論上はなると思います。
理由は、「米国預託証券」の保有者は議決権を有しておらず、預託銀行がその意を汲んで代わりに行使するだけだからだと思います。


 



それから、そもそもそのような状態は生じてはならないと言わねばならない部分もあるのですが、
「武田薬品工業株式」という銘柄(米国在住の米国人投資家から見ると「武田薬品工業株式」の「米国預託証券」という銘柄)
に関しては、米国のニューヨーク証券取引所よりも日本の東京証券取引所の方が市場参加者(この銘柄の売買を行う投資家)の
人数がはるかに多い、という事実は否定できないと思います。
他の言い方をすると、この銘柄の保有者の立場から言えば、
米国のニューヨーク証券取引所で「武田薬品工業株式」の「米国預託証券」という銘柄を売却するよりも、
日本の東京証券取引所で「武田薬品工業株式」という銘柄を売却する方が多くの点で容易だ、と言えます。
銘柄の購入希望者の人数が全く異なりますので、たとえ英語圏の投資家(シャイアー株主)であっても、
「武田薬品工業株式」の「米国預託証券」ではなく、「武田薬品工業株式」の受け取りを希望する、
ということは十分に考えられます。
それでも、やはり、どんなに少なく見積もっても、
シャイアー株主の10分の1(所有株式ベース)以上は原株式の「米国預託証券」の受け取りを希望するのではないか
と私は思いますので、シャイアーとの経営統合後は、
株主名簿上は預託銀行であるニューヨークメロン銀行が武田薬品工業株式会社の筆頭株主なのは間違いないと私は思います。
それから、上記の株式所有割合を計算していて気が付いたのですが、2019年1月31日(木)に紹介したプレスリリースを再度紹介し、
重要な部分(これは完全に間違っていると私が考える箇所)に赤色で下線を引いて改めてキャプチャーしたいと思います↓。


2018年12月19日
武田薬品工業株式会社
ニューヨーク証券取引所への当社米国預託証券の上場について
ttps://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2018/20181219-8032/

(キャプチャー画像)

>本件買収において、Shire株主は、その保有するShire社株式1株に対し、
>現金30.33米ドル、及び当社の新株式0.839株又は当社のADS 1.678株を受領することができます。


簡略化して言えば、シャイアー株主は、「新株式1株」か「ADR1株」のどちらかを受領するという選択をしなければなりません。
それぞれの「本源的価値」を考えれば分かると思うのですが、原株式1株と米国預託証券1株は全く同じ価値を持つのです。
例えば、武田薬品工業株式会社株式は、東京、名古屋(以上、市場第一部)、福岡、札幌の各証券取引所に上場しているのですが、
仮に東京証券取引所における株価と名古屋証券取引所における株価とに差異がある場合、
東京証券取引所で武田薬品工業株式会社株式を購入した株主と名古屋証券取引所で武田薬品工業株式会社株式を購入した株主との間で、
買収者による株式買取価格に差異を設けてよいでしょうか。
そんなはずはないでしょう。
東京証券取引所で武田薬品工業株式会社株式を購入した株主からも
名古屋証券取引所で武田薬品工業株式会社株式を購入した株主からも、
買収者(株式買取希望者)は全く同じ価格で武田薬品工業株式会社株式を買い取らねばならないはずです。
なぜならば、東京証券取引所で取引されている武田薬品工業株式会社株式と
名古屋証券取引所で取引されている武田薬品工業株式会社株式とは同一の株式だからです。


 



以上の論理展開が、原株式と米国預託証券との関係にそのまま当てはまります。
米国のニューヨーク証券取引所で取引されている「武田薬品工業株式」の「米国預託証券」という銘柄と
日本の東京証券取引所で取引されている「武田薬品工業株式」という銘柄は、同一の株式なのです。
少なくとも、その「本源的価値」という点において同一の株式なのです。
ですので、シャイアー株主に割り当てる株式数に差異があってはならないのです。
また、「米国預託証券」自体は米国市場で米ドル建てで取引をするのですが、
「米国預託証券」では、為替レートは問題としないのです。
米国人投資家は、武田薬品工業株式会社株式と同一の株式(同一の本源的価値を持った株式)を、
ただ単に米ドル建てで取引をするというだけなのです。
一言で言えば、為替レートは「米国預託証券」の本源的価値を構成しない、ということです。
買収者(株式買取希望者)が株式交換比率を算定する際、東京証券取引所で武田薬品工業株式会社株式を購入した株主と
名古屋証券取引所で武田薬品工業株式会社株式を購入した株主との間で差異を設ける(それぞれ異なる株式交換比率にする)
というのは間違いである(同一の株式なのだから、両証券取引所における株価の差異はこの際度外視しなければならない)ように、
原株式(1株)と米国預託証券(1株)との間に何らかの差異を設けてはならないのです。
為替レートというのは、換算や両替の際の結果の要素に過ぎません(つまり、"an external factor"(外在の要因)に過ぎません)。
為替レートは、米国預託証券の本源的価値の構成要素(つまり、"an inherent factor"(内在の要因))では決してないのです。

 

In this case, the issuer must issue its new shares not to Shire's shareholders but to New York Melon Bank, actually.

この事例では、発行者は、シャイアー株主にではなくニューヨークメロン銀行に新株式を交付しなければならないのです。

 

One unit of an American Depositary Receipt is equivalent to one unit of the original share.
For the intrinsic value of each one of the securities is quite equal.

米国預託証券の1単位は原株式の1単位と等価値なのです。
というのは、各有価証券の本源的価値は全く等しいからです。

 

The foreign exchange rate doesn't constitute the intrinsic value of an American Deposiary Receipt.
The intrinsic value of an American Depositary Receipt is determined
exclusively on the basis of the original share.

外国為替レートは米国預託証券の本源的価値を構成しません。
米国預託証券の本源的価値は、専ら原株式のみに基づいて決まるのです。