2018年12月17日(月)



「会計学辞典 第五版」 森田哲彌、宮本匡章 編著 (中央経済社)
「株式」






「端株を所有している株主が株主名簿上存在している(株主名簿に端株を所有している株主が記載されている)。」
という事例を題材にして、端株の位置付けについて考察を行った昨日のコメント↓。

2018年12月16日(日)
http://citizen.nobody.jp/html/201812/20181216.html

 

 


【コメント】
昨日のコメントの最後では端株について考察を行ったわけですが、「株券」を理解のヒントにして考察を進めていき、
株式の単位(株式を把握する単位)は現実には「1株」だけである(現実には株式に端数は存在しない)、と書きました。
昨日書きましたこの結論は正しいのだとは思いますし、また、コメントを書き終わった後になって、
「『株券』から考えると端株というの存在しない。」という話を以前に実際に聞いたことを思い出しました。
昨日私が書きました結論は正しかったのだと思います。
では逆に、現行の会社法のように、「株券」を発行しないことを前提にした会社制度の場合はどのように考えるべきでしょうか。
「株券」を発行しないことを前提にした会社制度においては、一見すると、端株が観念できるように思えますし、
株主名簿上も端株を所有している株主を把握・記載できるように思えます。
「株券」を発行することを前提にした会社制度では、「株券」1枚1枚に番号(serial number)が付されますし、
株主名簿上は「株券」に付された番号(serial number)毎に1人の株主が把握・記載されます。
「株券」を複数所有する株主は、所有する「株券」の枚数と同じ回数だけ自分の名義(名前)が株主名簿に記載されるわけです。
「株券」を発行することを前提にした会社制度では、「株券」の番号が主、株主の名義が従、であると言えるわけです。
一方、「株券」を発行しないことを前提にした会社制度では、株主名簿の記載方法について異なる方法が観念でき、
株主毎に所有株式数を記載する(株主の名義が複数記載されることはない)、という記載方法が観念できるように思えます。
「株券」を発行しないことを前提にした会社制度では、株主の名義が主、所有株式数が従、であると言えるわけです。
より実務に即したことを言えば、「株券」を発行することを前提にした会社制度においては、
株主名簿の作成にはエクセルを始めとした表計算ソフトが実務上は必要となるのに対し、
「株券」を発行しないことを前提にした会社制度では、株主名簿の作成には文書作成ソフトやメモ帳だけで事足りるわけです。
そして、「株券」を発行しないことを前提にした会社制度では、端株を観念できるように思えますので、
端株を所有している株主を株主名簿に記載する、ということが観念できるように思えるわけです。
しかし、たとえ「株券」を発行しないことを前提にした会社制度においても、実は端株は観念できないのです。
その理由は、スキャンして紹介している「会計学辞典」の「株式」の項目の冒頭に書かれています。

>株式とは、株式会社における株主の(均等割合的な)地位ないし株主権のことであり、株主の責任および権利の単位である。

「株券」を発行することを前提にした会社制度であろうが「株券」を発行しないことを前提にした会社制度であろうが、
株式そのものの概念は全く同じであり、株式とは「均一の割合的単位」のことである、と理解しなければなりません。
「均一の割合的単位」という概念が株式の本質なのです(株式は「均一の割合的単位」であることが株式会社制度上の前提なのです)。
「均一の割合的単位」とは、株式の単位(数え方)は常に「1株」であるという意味です。
ある株式は2株の価値を持つということはありませんし、ある株式は0.5株の価値しか持たないということもありません。
簡単に言えば、全ての株式は「1株」なのです(「均一の割合的単位」とはそういう意味です)。
あとは、「均一の割合的単位」(1株)を何単位所有しているのかで、各株主の持株比率が異なる、というだけなのです。
2株所有している株主というのは実は存在せず、その株主は「1株」を2単位所有しているだけなのです。
株式とは均一の割合的単位のことですので、当然のことながら(株式の定義からして)端株は存在しないのです。
例えば「0.5株」では出資(社員の地位)を均一に細分化したことにならないのです(均一とは「1株」という意味です)。


A share is a uniform proportional unit.

株式とは、均一の割合的単位のことである。